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<糖質制限食に関するお知らせ・お願いなど> 2013年11月改訂版
こんばんは

<糖質制限食に関するお知らせ・お願いなど> 2013年11月改訂版 です。

腎機能に関して、新しい情報がでてきたので、改訂しました。

【糖質制限食を実践される時のご注意】

本にも書いてありますが、 糖質制限食によりリアルタイムに血糖値が改善します。

このため既に、経口血糖降下剤(オイグルコン、アマリールなど)の内服やインスリン注射をしておられる糖尿人は、低血糖の心配がありますので必ず主治医と相談して頂きたいと思います。

一方、薬を使用してない糖尿人やメタボ人は、低血糖の心配はほとんどないので、自力で 糖質制限食を実践して糖尿病やメタボ改善を目指していただけば幸いです。

内服薬やインスリン注射なしの糖尿人が糖質制限食を実践すると、食後高血糖は改善しますが、低血糖にはなりません。

血糖値が正常範囲である程度下がると、肝臓でアミノ酸・乳酸・グリセロール(脂肪の分解物)などから、ブドウ糖を作るからです。

これを糖新生といいます。

血液検査で、活動性の膵炎がある場合、肝硬変の場合、そして長鎖脂肪酸代謝異常症は、糖質制限食は適応となりませんのでご注意ください。

糖質制限食は相対的に高脂肪食になるので、活動性膵炎には適応とならないのです。

肝硬変では、糖新生能力が低下しているため適応となりません。

長鎖脂肪酸代謝異常症では、脂肪酸が上手く利用できないので、適応となりません。

腎機能に関して、日本腎臓病学会編「CKD診療ガイド2012」において、GFR60ml/分以上あれば顕性たんぱく尿の段階でも、たんぱく質制限の必要なしと明示され、日本糖尿病学会も2013年3月の提言で、それに従うとしました。

従いまして、糖尿病腎症第3期Aまでは、糖質制限食OKです。

また、米国糖尿病学会(ADA)は、

Position Statement on Nutrition Therapy(栄養療法に関する声明)
Diabetes Care 2013年10月9日オンライン版

において、糖尿病腎症患者に対する蛋白質制限の意義を明確に否定しました。

根拠はランク(A)ですので、信頼度の高いRCT研究論文に基づく見解です。

今後は、糖尿病腎症第3期B以降(GFRが60ml/分未満)の場合も、患者さんとよく相談して、糖質制限食を実践するか否か、個別に対応することとなります。


なお、機能性低血糖症の場合、炭水化物依存症レベルが重症のとき、糖新生能力が低下していることがあり、まれに低血糖症を生じますので注意が必要です。

また、どのような食事療法でも合う合わないがあります。

糖質制限食もその一つですので、合わないとご自分で判断されたら中止していただけば幸いです。


【糖質制限食とは】

米国糖尿病協会(ADA)の患者教育用のテキストブックLife With Diabetesによれば、食べ物が消化・吸収されたあと、糖質は100%血糖に変わりますが、タンパク質・脂質は血糖に変わりません。

また糖質は、摂取直後から急峻に血糖値を高く速く上昇させ、2時間以内にほとんどすべてが吸収されます。

これらは含有エネルギーとは無関係な三大栄養素の生理学的特質です。 

1997年版のLife With Diabetes(ADA刊行)では、

「タンパク質は約半分が血糖に変わり、脂質は10%未満が血糖に変わる」

という記載がありましたが、2004年版以降は変更されています。

このように糖質、脂質、タンパク質のうち糖質だけが血糖値を上昇させます。

従って、糖質を摂取した時にはインスリンが大量に追加分泌されます。

脂質を摂取しても、インスリンの追加分泌はありません。

タンパク質はごく少量のインスリンを追加分泌させます。

現在糖尿病において、食後の急激な高血糖(グルコーススパイク)が大きな問題として注目されています。

食後高血糖が、心筋梗塞や脳梗塞などの合併症を起こす危険因子として確立されたからです。

また一日における、食前・食後・空腹時など血糖値の変動幅(平均血糖変動幅)が大きいほど、酸化ストレスが増強し動脈硬化のリスクとなることがわかってきました。

そして、食後高血糖と平均血糖変動幅増大を起こすのは、三大栄養素のなかで糖質だけなのです。

1gの糖質が、体重64kgの2型糖尿病の人の血糖値を約3mg上昇させます。

炊いた白ご飯茶碗1杯150g(252kcal)には、55.3gの糖質が含まれており、血糖値を166mg上昇させます。

一方、牛サーロインステーキを200g(約1000キロカロリー)食べても、糖質含有量は1gもないので、食後血糖は3mg未満の上昇しかないのです。 

なお、1gの糖質が体重64kgの1型糖尿病の人の血糖値を5mg上昇させます。

糖質制限食の基本的な考え方は、上述のような生理学的事実をベースに、できるだけ糖質の摂取を低く抑えて、食後高血糖を防ぐというものです。

簡単に言えば、主食を抜いておかずばかり食べるというイメージになります。

抜く必要がある主食とは米飯・めん類・パンなどの米・麦製品や芋類など、糖質が主成分のものです。

3食主食抜きのスーパー糖質制限食(糖質12%、タンパク質32%、脂質56%)なら、薬に頼ることなく速やかにリアルタイムで良好な血糖コントロールが可能です。

一方、上述の白ご飯とステーキの例でも明らかなように、カロリー計算に基づいて血糖値をコントロールすることは理論的に不可能です。

従って、現行の日本糖尿病学会推薦の糖尿病食(糖質60%、タンパク質20%、脂質20%)を実践する限りは、一日の摂取カロリーを1200キロカロリーと低く抑えたとしても、食後高血糖が必ず生じるのです。

糖尿病の改善には、カロリー制限より糖質制限ということがおわかりいただけたと思います。

なお糖質制限食は、カロリー無制限ということではありません。

日本糖尿病学会「食品交換表」の
男性1400~1800kcal
女性1200~1600kcal
ほど厳しいカロリー制限は必要ありませんが、

国立健康・栄養研究所の
「日本人の食事摂取基準」(2010年、厚生労働省)
への解説に示す推定エネルギー必要量の範囲、

すなわち18才以上の成人で身体活動レベルが普通なら
男性:2200~2650キロカロリー 
女性:1700~1950キロカロリー

身体活動レベルが低い人は
男性:1850~2250キロカロリー  
女性:1450~1700キロカロリー

くらいが目安です。



江部康二
テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
先日はお返事ありがとうございました
お礼が遅くなりましてすみません。閃輝暗転の頭痛は後遺症状が何日も続き、また整形外科通いもあったのでお返事を書く気力が出るまで回復するのに時間が掛かってしまい申し訳ありません。
私の場合は思うに機能性低血糖ですかね。確定診断は下りてないですが、恐らくそうだと言われたことがあります。でも、今はA1C6.5前後で糖尿病診断が下りててメトグルコ一日5錠の処方です。このダイエット中はシックディの指示に準じて一日2錠に減らしてます。お米を食べる時だけ飲んでます。
私の場合は適応外でしょうか?それとも続けてれば糖新生力は回復するでしょうか?最近は目のかすみがたまにあるくらいに慣れてきてはいます。
2013/12/08(Sun) 00:14 | URL | 保坂 | 【編集
先日はお返事ありがとうございました
お礼が遅くなりましてすみません。閃輝暗転の頭痛は回復するのに数日掛かる上に、整形外科通いもあったので、やっとお礼が書き込めました。
先生のこの記事を読んで、私はやはり機能性低血糖なのだと確信しました。十年以上前に、恐らくそうだと低血糖症専門の医師に言われたことがあります。でも今は、完全に糖尿人です。A1C6.5前後でメトグルコ一日5錠処方です。このダイエット中は、シックディに準じて一日2錠お米を食べる時だけ飲んでます。
今は身体が慣れてきて、低血糖の症状は出ていないです。糖新生力が回復するのであればこのまま続けていきたいですが、適応になるでしょうか。
質問ばかりですみません。ちなみに腎臓機能も問題ないそうです。インクレチンは適応しなかったので、切羽詰まってます。
2013/12/08(Sun) 08:19 | URL | 保坂 | 【編集
ダブってしまいました
一回目の投稿が完了したというメッセージが出ず、反映もされなかったので、時間を置いてまた投稿したら今度は即座に反映されていて、結果的に二つダブってしまいました。重ねがさね申し訳ありませんでした。
2013/12/08(Sun) 09:14 | URL | 保坂 | 【編集
糖負荷試験やってきました
おひさしぶりです。
最近糖質制限を一時休止し、糖質摂取を
してますのでまた本腰を入れて取り組む方向で
います。
産後半年以上経ちましたので糖負荷試験してきました。

HbA1c  5.4(新基準)
前    76(2.9)
30分  175(40.2)
60分  143(40.6)
120分 142(30.4)
  ※()内はインスリンです。

という結果で現在154㎝で35㌔なのですが
抵抗性ありと言われ、かなり凹んでいます。
インスリンが出るのが遅いと前から言われてい
ましたが今回は抵抗性も出てきたようでショック
を受けています。
糖負荷試験はその日の体調や季節的なものでも多少変化するものでしょうか?
因みにいつもは30分の時点でのインスリンは20台です。
主治医も30分でインスリンが40も出てるのに血糖値175はあり得ないと
首をかしげていました。

また、血中クレアチニン値が0.79と女性にして
は高いので気になりました。この値でも糖質
制限しても大丈夫なのでしょうか?
先生的にはこの数値やクレアチニン値をみて
どう判断いたしますでしょうか?

主治医は負荷試験の1週間前は糖質制限しないでください。と言ってました。結果を聞きに行った際は、太めならOKですが痩せ形なので極端な糖質制限はお勧めしません。むしろ運動をして筋肉をつけてくださいと言われたので糖質制限には多少の理解はありそうです。
今後の食生活、主治医の言う通りスーパー糖質制限はやめた方が良いのか悩みどころです。
2013/12/08(Sun) 14:13 | URL | シュガーライフ | 【編集
初めまして、いつも参考にさせて頂いてます。
現在IgA腎症治療の為にステロイドを服用していて、副作用で食後血糖値が摂取した糖質の約2~3倍(朝は約1.5倍)上がってしまう状態で、糖尿病になるのが怖くて糖質が摂れずにガリガリに痩せてしまい(158cm40kg)病院の先生にも食べる様に言われてますが、野菜と糖質の少ない肉や魚とご飯を50g食べるだけでも100以上上がって200近くなってしまうので、食べれなくてカロリーも足りないので腎臓にもよくないと言われました。
たんぱく質は1日50gで塩分は6gカロリーは1600くらい摂るようにしてと言われてますが、糖質とたんぱく質を考えると難しいです!

これ以上痩せると免疫力が厳しいらしいです、少し太る様に言われました、どうしたら良いでしょうか?助けて下さい!!
2013/12/08(Sun) 17:04 | URL | セロリ | 【編集
Re: 先日はお返事ありがとうございました
保坂 さん

偏頭痛には、スーパー糖質制限食が、極めて有効なことが多いです。
HbA1c6.5%ですので、コントロール良好ですが、
スーパー糖質制限食なら6.0%くらいになるでしょう。
また、HbA1c6.5%ということは、糖新生は普通にしていると思います。
スーパー糖質制限食なら、機能性低血糖の症状もでなくなると思います。

スーパー糖質制限食なら、薬なしで、糖尿病・偏頭痛・機能性低血糖が改善するので
一石三鳥ですね。
2013/12/09(Mon) 17:23 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: 糖負荷試験やってきました
シュガーライフ さん

糖負荷試験の変化は結構あると思います。

前    76(2.9)

HOMA-R=<インスリン×空腹時血糖値> ÷ 405

HOMA-R=0.54 なのでインスリン抵抗性は1.6以下で正常です。

インスリン分泌指数は、0.377で、0.4未満なので初期分泌がやや低下です。

OGTTは正常に近い境界型ですね。

腎機能に関して、血清シスタチンCのほうが、クレアチニンより正確なので、気になれば
次回に検査しては如何でしょう。

摂取エネルギーをしっかり確保すれば、痩せ型の人が糖質制限して、体重が標準になることも多いですよ。
正常に近い境界型なので、緩やかな糖質制限食で充分と思います。
2013/12/09(Mon) 18:00 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: ご無沙汰しています。
ドリーム さん

体調不良で、
湯豆腐とかも無理で、
絶食状態のときは、
兎に角水分補給で脱水注意ですね。
2013/12/09(Mon) 18:04 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: タイトルなし
セロリ さん

日本腎臓病学会編の
CKD診療ガイド2012 (JSN) によれば、
GFRが60ml/分以上あれば、顕性タンパク尿の段階でも、タンパク質制限必要なしです。

しっかり、脂質を摂取して、蛋白質も普通に摂ってカロリーを充分確保して、
糖質制限でOKと思いますので
主治医とよくご相談ください。

2013年03月24日 (日)の本ブログ記事
「日本腎臓病学会編CKD診療ガイド2012。タンパク質制限は?」
もご参照ください。
2013/12/09(Mon) 18:12 | URL | ドクター江部 | 【編集
お返事ありがとうございました
スーパーですか!今やっているスタンダードに慣れてきたら試してみたいと思います。ご教示
ありがとうございました。6.0
目指して
頑張ります。
2013/12/10(Tue) 10:33 | URL | 保坂 | 【編集
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