2013年11月26日 (火)
【超肥満肝硬変患者へのケトン食
Citation: Nutrition & Diabetes (2013) 3, e95; doi:10.1038/nutd.2013.36
Published online 18 November 2013
Very low calorie ketogenic weight reduction diet in patients with cirrhosis: a case series
http://www.nature.com/nutd/journal/v3/n11/full/nutd201336a.html
Very low calorie ketogenic diets (VLCDs) を2名の肝移植予定患者に実施した。
800 kcal/day; 25%炭水化物, 45%蛋白, 30% 脂肪である
症例1:46歳男性。アルコール性肝硬変。VLCDを28週続け、特に副作用なく体重が145.8→101.7kgに減少。MELD scoreは改善し、肝臓移植の対象外となった
症例2:64歳女性。非アルコール性脂肪性肝炎。VLCDを30週続け、特に副作用なく体重が125.9→86.1kgに減少。MELD scoreは改善なく、肝臓移植待機者のリストに乗っている】
こんにちは。
精神科医師Aさんから、とても興味深い論文情報をコメントいただきました。
ありがとうございます。
1例目は、移植の必要がなくなったのですから、快挙です。
体重:145.8→101.7kg
身長:170.2cm
BMI:50.3→35.1
いやはや、BMI:50.3 て、想像を絶する肥満ですね。ヾ(゜▽゜)
2例目は、体重はかなり減少しましたが、MELD score(*)は不変で、移植待機が持続です。
しかし、BMIが49から34に改善して手術時のリスクは大分減っているので、
Very low calorie ketogenic diets (VLCDs)・・・超低カロリーケトジェニックダイエット
は、有効だったと考えられます。
超低カロリーケトジェニックダイエットは、低カロリーと低糖質を両立させた食事療法ですね。
<800 kcal/day; 25%炭水化物, 45%蛋白, 30% 脂肪>
超肥満肝硬変患者へのケトン食といっても、日本ではピンとこない人も多いと思います。
米国において肥満は、肝不全の主要な危険因子です。
非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、インスリン抵抗性の肝症状は、肥満およびメタボリックシンドロームと並行して罹患率が増加しています。
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)(**)は、炎症、肝細胞の損傷によって特徴づけられる、NAFLDのサブセットで、現在、米国での肝移植症例で3番目に多いのです。
肥満は生検で確認されたNASH患者において、線維症の進行に独立して関連しています。
日本では、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)で肝移植の適応など皆無ですが、米国では上記のような背景があるので、超低カロリーケトジェニックダイエットに意味があるのですね。
(*)MELD score(12歳以上の患者)
アメリカの移植ネットワーク(UNOS)において、12歳以上の肝臓移植希望患者の重症度の判定、優先順位の決定に用いられています。PT-INR, ビリルビン、クレアチニンの値から計算されます。
http://optn.transplant.hrsa.gov/resources/MeldPeldCalculator.asp?index=98
で簡単に計算する事ができます。
15点以上は移植すべきと考えられています。
(**)NASH
脂肪肝はかつては、放置してもさしたることはないと言われていましたが、近年、「NASH」が認識されるようになり、様相が一変しました。
非アルコール性脂肪性肝炎(Non-alcoholic steatohepatitis)を略してNASHです。
NASHは、肝炎から肝硬変や肝臓癌に進展することもあり、結構こわいのです。
肝臓に脂肪が蓄積→脂肪肝→非アルコール性脂肪性肝炎→肝硬変→肝癌
B型ウィルスやC型ウィルス以外に、NASHからも肝癌になり得るので、ゆめゆめ油断は禁物なのです。
江部康二
Citation: Nutrition & Diabetes (2013) 3, e95; doi:10.1038/nutd.2013.36
Published online 18 November 2013
Very low calorie ketogenic weight reduction diet in patients with cirrhosis: a case series
http://www.nature.com/nutd/journal/v3/n11/full/nutd201336a.html
Very low calorie ketogenic diets (VLCDs) を2名の肝移植予定患者に実施した。
800 kcal/day; 25%炭水化物, 45%蛋白, 30% 脂肪である
症例1:46歳男性。アルコール性肝硬変。VLCDを28週続け、特に副作用なく体重が145.8→101.7kgに減少。MELD scoreは改善し、肝臓移植の対象外となった
症例2:64歳女性。非アルコール性脂肪性肝炎。VLCDを30週続け、特に副作用なく体重が125.9→86.1kgに減少。MELD scoreは改善なく、肝臓移植待機者のリストに乗っている】
こんにちは。
精神科医師Aさんから、とても興味深い論文情報をコメントいただきました。
ありがとうございます。
1例目は、移植の必要がなくなったのですから、快挙です。
体重:145.8→101.7kg
身長:170.2cm
BMI:50.3→35.1
いやはや、BMI:50.3 て、想像を絶する肥満ですね。ヾ(゜▽゜)
2例目は、体重はかなり減少しましたが、MELD score(*)は不変で、移植待機が持続です。
しかし、BMIが49から34に改善して手術時のリスクは大分減っているので、
Very low calorie ketogenic diets (VLCDs)・・・超低カロリーケトジェニックダイエット
は、有効だったと考えられます。
超低カロリーケトジェニックダイエットは、低カロリーと低糖質を両立させた食事療法ですね。
<800 kcal/day; 25%炭水化物, 45%蛋白, 30% 脂肪>
超肥満肝硬変患者へのケトン食といっても、日本ではピンとこない人も多いと思います。
米国において肥満は、肝不全の主要な危険因子です。
非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、インスリン抵抗性の肝症状は、肥満およびメタボリックシンドロームと並行して罹患率が増加しています。
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)(**)は、炎症、肝細胞の損傷によって特徴づけられる、NAFLDのサブセットで、現在、米国での肝移植症例で3番目に多いのです。
肥満は生検で確認されたNASH患者において、線維症の進行に独立して関連しています。
日本では、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)で肝移植の適応など皆無ですが、米国では上記のような背景があるので、超低カロリーケトジェニックダイエットに意味があるのですね。
(*)MELD score(12歳以上の患者)
アメリカの移植ネットワーク(UNOS)において、12歳以上の肝臓移植希望患者の重症度の判定、優先順位の決定に用いられています。PT-INR, ビリルビン、クレアチニンの値から計算されます。
http://optn.transplant.hrsa.gov/resources/MeldPeldCalculator.asp?index=98
で簡単に計算する事ができます。
15点以上は移植すべきと考えられています。
(**)NASH
脂肪肝はかつては、放置してもさしたることはないと言われていましたが、近年、「NASH」が認識されるようになり、様相が一変しました。
非アルコール性脂肪性肝炎(Non-alcoholic steatohepatitis)を略してNASHです。
NASHは、肝炎から肝硬変や肝臓癌に進展することもあり、結構こわいのです。
肝臓に脂肪が蓄積→脂肪肝→非アルコール性脂肪性肝炎→肝硬変→肝癌
B型ウィルスやC型ウィルス以外に、NASHからも肝癌になり得るので、ゆめゆめ油断は禁物なのです。
江部康二
(株)貧困大国アメリカ 堤美果 岩波新書のプロローグはなかなかです。
まるで、映画脚本か小説のようです。
SNAP(補助的栄養支援プログラム)、以前フードスタンプと呼ばれていたものです。
月末の深夜に、割引クーポンを手に、スーパーに向かう人々。生鮮食料品には見向きもせず、多量に購入される炭水化物。
このシステムを支える経済?利権の構図。
なるほど!と納得する内容です。
まるで、映画脚本か小説のようです。
SNAP(補助的栄養支援プログラム)、以前フードスタンプと呼ばれていたものです。
月末の深夜に、割引クーポンを手に、スーパーに向かう人々。生鮮食料品には見向きもせず、多量に購入される炭水化物。
このシステムを支える経済?利権の構図。
なるほど!と納得する内容です。
2013/11/26(Tue) 19:24 | URL | 中年サムライ | 【編集】
『超低カロリー・ケトジェニックダイエット』をやれば、肥満外科手術なんかいらないという事を証明してくれている
2013/11/26(Tue) 22:51 | URL | 精神科医師A | 【編集】
『入院時高血糖ACSへの厳格な血糖管理に利益なし』
入院時に血糖値が上昇している急性冠症候群(ACS)患者に対する厳格な血糖管理には利益がなく、逆に有害事象が増える可能性があることが、ランダム化比較試験(RCT)の結果として示された。オランダAlkmaar医療センターのMaarten de Mulder氏らが、JAMA Internal Medicine誌2013年11月11日号に報告した。
ACS患者における高血糖は有害な転帰の独立した危険因子であることが知られている。これまでにも、ACS患者に対する血糖管理の影響を調べた臨床試験は複数行われていたが、心血管転帰について一貫した結果は示されていなかった。そこで著者らは、オープンラベルの前向きRCT試験BIOMArCS-2 Glucose trialをオランダの大規模な教育病院1施設で実施した。
08年7月23日から12年2月8日に患者登録を実施。インスリン依存性の糖尿病患者などは除外して、入院時の血糖値が140~288mg/dLだったACS患者を登録。同意が得られた294人をランダムに厳格な血糖管理を行う厳格管理群、または通常の血糖管理を行う通常管理群に割り付けた。
厳格管理群には、自動注入ポンプを用いたインスリンアスパルト静注を実施。目標とする血糖域を午前6時から午後10時59分は85~110mg/dL、午後11時から午前6時前は85~139mg/dLとして、低血糖を回避しつつ血糖値を正常化するようポンプの設定を調整した。加えて食前にはインスリンの皮下注射も実施した。
最終的な梗塞サイズは3通りの方法で推定した。1つ目は入院から72時間後の高感度トロポニンT(hsTropT72)値、2番目はACS発症から72時間後までのCK-MB時間-活性曲線を描いて求めた曲線下面積(AUC-CK-MB)、3番目はACS発症から6週後に行うテクネチウム99m心筋血流シンチグラフィー(MPS)単一光子放射断層撮影(SPECT)によって検出される心筋損傷の範囲とした。
主要転帰評価指標は、入院から72時間後のhsTrop72に示される梗塞サイズに、2次評価指標は、発症から72時間後までのAUC-CK-MB、6週追跡時点のMPS-SPECTの結果、全死因死亡または非致死的心筋梗塞の再発などに設定した。
データが得られなかった患者や同意を撤回した患者を除いて、280人(うち140人が厳格管理群)が分析対象になった。280人中218人(77.8%)が男性、年齢の中央値は65歳、229人(81.8%)がST上昇心筋梗塞(STEMI)だった。入院時の血糖値が140~179mg/dLだった患者が全体の67.1%で、残りは180~288mg/dLだった。割り付けられた血糖管理以外に、両群に実施された治療には差はなかった。
厳格管理群に対するインスリン静注は症状発現から5.0時間時点で開始され、発症から6時間時点で40.1%の患者の血糖値が目標域にあった。24時間時点ではその割合は59.8%に増加した。この時点の血糖の中央値は112mg/dLだった。50mg/dL未満の重症低血糖はまれで、13人の患者が計16回経験していた。
72時間後のhdTrop72の中央値は、厳格管理群で1197ng/L(四分位範囲は541~2296)、通常管理群では1354ng/L(530~3057)と、有意差は見られなかった(P=0.41)。
発症から72時間後までのAUC-CK-MBの中央値は厳格管理群で2372 U/L(1242~5004)、通常管理群で3171 U/L(1620~5337)で、やはり有意差はなかった(P=0.18)。
6週間時点でMPS-CPECTを用いて測定した心筋損傷範囲の中央値は厳格管理群が2%、通常管理群が4%(P=0.07)。左室駆出分画も59%と57%で有意差は見られなかった(P=0.33)。
その一方で、退院前の死亡または非致死的な心筋梗塞の再発は、厳格管理群で8人(5.7%)、通常管理群で1人(0.7%)と、厳格管理群での発生が多い傾向があった(P=0.04)。
「厳格な血糖管理は患者の血糖値を速やかに正常化したが、酵素を用いて推定した梗塞サイズも、シンチグラフィーを用いて評価した梗塞サイズも低減しないだけでなく、死亡または心筋梗塞再発のリスクが上昇する傾向が示されたことから、血糖値が上昇したACS患者への血糖値の厳格管理は推奨されない」と著者らは述べている。
原題は「Intensive Glucose Regulation in Hyperglycemic Acute Coronary Syndrome: Results of the Randomized BIOMarker Study to Identify the Acute Risk of a Coronary Syndrome–2 (BIOMArCS-2) Glucose Trial」、概要は、JAMA Intern Med誌のWebサイトで閲覧できる。
* * * * * *
糖質制限をすれば良いのですが・・・
入院時に血糖値が上昇している急性冠症候群(ACS)患者に対する厳格な血糖管理には利益がなく、逆に有害事象が増える可能性があることが、ランダム化比較試験(RCT)の結果として示された。オランダAlkmaar医療センターのMaarten de Mulder氏らが、JAMA Internal Medicine誌2013年11月11日号に報告した。
ACS患者における高血糖は有害な転帰の独立した危険因子であることが知られている。これまでにも、ACS患者に対する血糖管理の影響を調べた臨床試験は複数行われていたが、心血管転帰について一貫した結果は示されていなかった。そこで著者らは、オープンラベルの前向きRCT試験BIOMArCS-2 Glucose trialをオランダの大規模な教育病院1施設で実施した。
08年7月23日から12年2月8日に患者登録を実施。インスリン依存性の糖尿病患者などは除外して、入院時の血糖値が140~288mg/dLだったACS患者を登録。同意が得られた294人をランダムに厳格な血糖管理を行う厳格管理群、または通常の血糖管理を行う通常管理群に割り付けた。
厳格管理群には、自動注入ポンプを用いたインスリンアスパルト静注を実施。目標とする血糖域を午前6時から午後10時59分は85~110mg/dL、午後11時から午前6時前は85~139mg/dLとして、低血糖を回避しつつ血糖値を正常化するようポンプの設定を調整した。加えて食前にはインスリンの皮下注射も実施した。
最終的な梗塞サイズは3通りの方法で推定した。1つ目は入院から72時間後の高感度トロポニンT(hsTropT72)値、2番目はACS発症から72時間後までのCK-MB時間-活性曲線を描いて求めた曲線下面積(AUC-CK-MB)、3番目はACS発症から6週後に行うテクネチウム99m心筋血流シンチグラフィー(MPS)単一光子放射断層撮影(SPECT)によって検出される心筋損傷の範囲とした。
主要転帰評価指標は、入院から72時間後のhsTrop72に示される梗塞サイズに、2次評価指標は、発症から72時間後までのAUC-CK-MB、6週追跡時点のMPS-SPECTの結果、全死因死亡または非致死的心筋梗塞の再発などに設定した。
データが得られなかった患者や同意を撤回した患者を除いて、280人(うち140人が厳格管理群)が分析対象になった。280人中218人(77.8%)が男性、年齢の中央値は65歳、229人(81.8%)がST上昇心筋梗塞(STEMI)だった。入院時の血糖値が140~179mg/dLだった患者が全体の67.1%で、残りは180~288mg/dLだった。割り付けられた血糖管理以外に、両群に実施された治療には差はなかった。
厳格管理群に対するインスリン静注は症状発現から5.0時間時点で開始され、発症から6時間時点で40.1%の患者の血糖値が目標域にあった。24時間時点ではその割合は59.8%に増加した。この時点の血糖の中央値は112mg/dLだった。50mg/dL未満の重症低血糖はまれで、13人の患者が計16回経験していた。
72時間後のhdTrop72の中央値は、厳格管理群で1197ng/L(四分位範囲は541~2296)、通常管理群では1354ng/L(530~3057)と、有意差は見られなかった(P=0.41)。
発症から72時間後までのAUC-CK-MBの中央値は厳格管理群で2372 U/L(1242~5004)、通常管理群で3171 U/L(1620~5337)で、やはり有意差はなかった(P=0.18)。
6週間時点でMPS-CPECTを用いて測定した心筋損傷範囲の中央値は厳格管理群が2%、通常管理群が4%(P=0.07)。左室駆出分画も59%と57%で有意差は見られなかった(P=0.33)。
その一方で、退院前の死亡または非致死的な心筋梗塞の再発は、厳格管理群で8人(5.7%)、通常管理群で1人(0.7%)と、厳格管理群での発生が多い傾向があった(P=0.04)。
「厳格な血糖管理は患者の血糖値を速やかに正常化したが、酵素を用いて推定した梗塞サイズも、シンチグラフィーを用いて評価した梗塞サイズも低減しないだけでなく、死亡または心筋梗塞再発のリスクが上昇する傾向が示されたことから、血糖値が上昇したACS患者への血糖値の厳格管理は推奨されない」と著者らは述べている。
原題は「Intensive Glucose Regulation in Hyperglycemic Acute Coronary Syndrome: Results of the Randomized BIOMarker Study to Identify the Acute Risk of a Coronary Syndrome–2 (BIOMArCS-2) Glucose Trial」、概要は、JAMA Intern Med誌のWebサイトで閲覧できる。
* * * * * *
糖質制限をすれば良いのですが・・・
中年サムライ さん
「貧困大国アメリカ 堤美果 岩波新書」
私も読みました。
とても面白かったです。
アメリカは世界一の肥満大国で、
2010年OECD調査で35.9%が、BMI30以上の肥満です。
清涼飲料水、コーンチップ、ポテトチップ、フライドポテト、お菓子、パン、バーバー、ピザ・・・
炭水化物の消費量は半端じゃないでしょうね。
「貧困大国アメリカ 堤美果 岩波新書」
私も読みました。
とても面白かったです。
アメリカは世界一の肥満大国で、
2010年OECD調査で35.9%が、BMI30以上の肥満です。
清涼飲料水、コーンチップ、ポテトチップ、フライドポテト、お菓子、パン、バーバー、ピザ・・・
炭水化物の消費量は半端じゃないでしょうね。
2013/11/27(Wed) 13:07 | URL | ドクター江部 | 【編集】
精神科医師A さん
同感です。
肥満外科手術の前に、食事療法ですよね。
同感です。
肥満外科手術の前に、食事療法ですよね。
2013/11/27(Wed) 13:09 | URL | ドクター江部 | 【編集】
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