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肥満改善と糖質制限食
こんばんは。

ここのところ、雑誌や新聞やテレビから、肥満改善と糖質制限食についての取材申し込みがありました。

自分の勉強を兼ねて、肥満の要因について整理してみました。

まずは、インスリンについて考えてみます。

インスリンは血糖値を下げる唯一のホルモンですが、実は肥満ホルモンでもあります。

肥満のメカニズムは、インスリンによる脂肪蓄積であり、その血中濃度と総量が関係します。

そしてインスリンを大量に分泌させるのは糖質のみです。

結局、糖質の頻回・過剰摂取とそれによるインスリンの頻回・過剰分泌が肥満の元凶なのです。

なおインスリンの名誉のために一言。

人類の歴史において、農耕開始前の700万年間、インスリンの卓越した中性脂肪合成能力は、飢餓に対する唯一のセーフティーネットである体脂肪蓄積に関して、極めて大きな役割を果たしていたことは忘れてはなりません。

インスリンがせっせと中性脂肪を蓄えてくれたからこそ、人類のご先祖は生き延びてきたのです。

その卓越した中性脂肪合成能力が、現代は結果としてあだとなってしまったのです。

<インスリンは三重の肥満ホルモン>
◇インスリンは脂肪細胞内の中性脂肪分解を抑制する。
◇インスリンは血中の中性脂肪を分解し脂肪細胞内に蓄える。
◇インスリンは筋肉細胞に血糖を取り込ませるが、
余剰の血糖は脂肪細胞に取り込ませて中性脂肪として蓄える。
◇肥満のメカニズムはインスリンによる脂肪蓄積。
◇インスリンを大量に分泌させるのは、糖質のみ。
◇ハーバード大学医学部元教授、ジョージ・ケーヒル
「脂肪を操るインスリンを、炭水化物(糖質)が操る」



<糖質制限食でやせるメカニズム>
糖質を制限した場合
1)肥満ホルモン(インスリン)分泌がごく少量ですむ。
2)食事中も体脂肪が常に燃えている。
3)食事中も肝臓でアミノ酸などから糖新生が行われるがそれに高エネルギーが消費される(ハーパー生化学)
4)糖質制限食は高タンパク食なので、食事誘発熱産生(DIT)が増加する。



<摂食時の食事誘発熱産生(DIT:Diet Induced Thermogenesis)>
◇食事をした後は安静にしていても代謝量が増える。
  これを食事誘発熱産生(DIT)という。
  体内に吸収された栄養素が分解され、
  その一部が体熱となって消費されるからである。
◇DITによる消費エネルギーは、実質吸収エネルギーの、
  糖質では6%、脂質では4%、タンパク質で30%であり、蛋白質が多い。
☆☆☆
食事誘発熱産生(DIT)を、簡単に説明すると、
100キロカロリーの糖質を摂取した時は、6キロカロリーが、
100キロカロリーの脂質を摂取した時は、4キロカロリーが、
100キロカロリーのタンパク質を摂取した時は、30キロカロリーが
熱に変わり、消費エネルギーとしてカウントされる。



<糖質を摂取すると太るメカニズム>
糖質を摂取した場合
1)血糖値が上昇しインスリンを大量に分泌。
2)脂肪は燃焼せず、血糖が中性脂肪に変わり脂肪細胞に蓄えられる。
3)糖新生はストップする。
4)食事誘発熱産生(DIT)の増加はなくなる。


このように、少なくとも同一カロリーなら、理論的に考察すると、糖質制限食の方が高糖質食に比し、減量効果があり、カロリー神話の崩壊ということになります。


<摂取エネルギーと消費エネルギー>
1)摂取エネルギー > 消費エネルギー   → 体重増加
  摂取エネルギー = 消費エネルギー   → 体重不変
  摂取エネルギー < 消費エネルギー   → 体重減少
2)通常のカロリー制限食(高糖質食)なら
 「消費エネルギー=基礎代謝量+身体活動量(運動や家事)+食事誘発熱産生(DIT)」
3) 糖質制限食なら、上記に加えて
 「肝臓の糖新生でエネルギーを消費」→基礎代謝の亢進
「高蛋白食による亢進した食事誘発熱産生(DIT)」


ごく普通に考えて、摂取エネルギーが消費エネルギーを上回れば太るし、下回れば痩せます。

このことに関しては異論はないと思います。

糖質制限食の場合は、高糖質食に比し、基礎代謝及び食事誘発熱産生の亢進があります。

このことが減量において、大きなアドバンテージとなるのです。

私自身も、高糖質食から糖質制限食に切り替えるだけで、摂取エネルギーを減らすことなく、半年間で10kgの減量に成功しました。

2002年、身長167cm、体重67kgだったのが、半年間のスーパー糖質制限食で、57kgと学生時代の体重に戻り、高血圧も正常になりました。

2013年現在も、そのまま57kgを維持しています。

ブログ読者の肥満の方々、試してみる価値は充分ありますよ。


江部康二

テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
おはようございます。

いつも楽しく読ませていただいております。
私もスーパー糖質制限食を1年間続けて167センチ91.7キロから69キロまで減少しました。
とくに運動もしませんでしたが、52歳の年齢を考えると、他の方法ではここまでの減量はできなかったとおもいます。今まで色々ダイエットしてきましたが、こんなに楽だったのも初めてです。
高血圧 中性脂肪 脂肪肝 睡眠時無呼吸症候群(だったと思います。いびきがなくなったと家族がいいます。)が改善しました。
月に2~3キロずつの減量だったので、シワシワにもならず、健康的に減量できました。
現在もスーパー糖質制限継続中です。

今、私の健康状態がかなり良くなったのは、先生の御本とめぐりあえたおかげだと感謝いたしております。
2013/11/22(Fri) 08:16 | URL | あすらん | 【編集
Re: タイトルなし
あすらん さん

拙著のご購入ありがとうございます。

肥満改善(161.7cm  91.7kg → 69kg)
そして
高血圧 中性脂肪 脂肪肝 睡眠時無呼吸症候群 の改善、良かったです。
これからも美味しく楽しく糖質制限食をお続けくださいね。
2013/11/22(Fri) 16:46 | URL | ドクター江部 | 【編集
江部先生

お忙しい中コメントをありがとうございます。
糖質制限 これからもがんばります。
2013/11/22(Fri) 23:20 | URL | あすらん | 【編集
超肥満肝硬変患者へのケトン食
Citation: Nutrition & Diabetes (2013) 3, e95; doi:10.1038/nutd.2013.36
Published online 18 November 2013

Very low calorie ketogenic weight reduction diet in patients with cirrhosis: a case series
http://www.nature.com/nutd/journal/v3/n11/full/nutd201336a.html

Very low calorie ketogenic diets (VLCDs) を2名の肝移植予定患者に実施した。

800 kcal/day; 25%炭水化物, 45%蛋白, 30% 脂肪である

症例1:46歳男性。アルコール性肝硬変。VLCDを28週続け、特に副作用なく体重が145.8→101.7kgに減少。MELD scoreは改善し、肝臓移植の対象外となった

症例2:64歳女性。非アルコール性脂肪性肝炎。VLCDを30週続け、特に副作用なく体重が125.9→86.1kgに減少。MELD scoreは改善なく、肝臓移植待機者のリストに乗っている
2013/11/23(Sat) 21:29 | URL | 精神科医師A | 【編集
Re: 超肥満肝硬変患者へのケトン食
精神科医師A さん

大変興味深い情報をありがとうございます。
2013/11/24(Sun) 09:58 | URL | ドクター江部 | 【編集
等質制限で
江部先生。おはようございます(*^^*)3ヶ月前に糖尿病、高血圧と診断され、等質制限スタートしました!四年前から太りだし、50キロの体重が80キロに増えました。太り出した頃から、血圧が上がっていました。上が150以上になったり、下が90ありました。体調もおかしく、疲れやすいし動悸もありました。病院で、血圧の薬とジャヌビアを処方してもらい、血圧が上が80下が50とか40まで下がってしまい血圧の薬を11月7日に中止になりました。それから、毎日血圧を計っていますが、上が90、下が70くらいをずっと維持しています。体重も80キロが、69キロになりました。体調も良くなり、体もかるいです。a1cも3ヶ月前は、7.6から、6.1になりました。江部先生のおかげです。わからない事にも答えて頂き本当に感謝します。これからも宜しくお願い致します。
2013/11/24(Sun) 10:02 | URL | あかね | 【編集
Re: 等質制限で
あかね さん

糖質制限食で、体重減少、血圧改善、血糖値改善、
良かったです。

これからも美味しく楽しく末長く糖質制限食をお続け下さいね。
2013/11/24(Sun) 10:07 | URL | ドクター江部 | 【編集
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