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糖尿病治療の優先順位、「食事療法・運動療法→薬物療法」
おはようございます。

今日は、糖尿病治療の優先順位のお話です。

日本糖尿病学会
糖尿病治療ガイド2012-2013 血糖コントロール目標改訂版(抜粋)
http://www.jds.or.jp/uploads/fckeditor/uid000025_201303281330013eac374d.jpg

日本糖尿病学会の糖尿病治療ガイド2012-2013

3、治療の基本方針(ステップ)

 インスリン非依存状態

1、食事療法と運動
 性、年齢、肥満度、身体活動量、血糖値、合併症の有無などを考慮し、
 摂取エネルギー量を決定する。有酸素運動を最大酸素摂取量の50%前後の強度で、
 1回15~30分、一日2回行うことが好ましい。

2、薬物療法
 食事療法、運動療法を2~3ヶ月続けても、なお目標の血糖コントロールを達成できない場合薬物療法を開始する。

3、薬物療法の内容
 経口血糖降下薬や注射薬を少量からはじめ徐々に増量する。・・・・・1種類の経口血糖降下薬によって
 良好な血糖コントロールが得られない場合は、作用機序の異なった薬を併用する。



日本糖尿病学会の糖尿病治療ガイド2012-2013に、上記治療方針(緑色)が記載してあります。

インスリン非依存状態というのは、内因性インスリン(自分自身で分泌するインスリン)が残っている2型糖尿病が対象という意味です。

1型糖尿病などで、内因性インスリンがゼロレベル(インスリン依存状態)の糖尿人は、このガイドラインの対象外です。

糖尿病治療ガイドには

糖尿病治療の優先順位の一番は、食事療法と運動療法と明記してあります。

まあ残念なのは、摂取エネルギー量にしか言及がなくて、

「血糖値を上昇させるのは糖質だけで、タンパク質・脂質は上げない」

という、食事療法で最も肝腎な事実が無視されていることです。

この点、米国糖尿病学会では、患者用テキストブックにおいて、

「血糖値を上昇させるのは糖質だけで、タンパク質・脂質は上げない」

ということを、きっちり教育します。

「食事療法、運動療法を2~3ヶ月続けても、なお目標の血糖コントロールを達成できない場合薬物療法を開始する。」

この優先順位の2番目の薬物療法開始という前に、食事療法である糖質制限食を何故考慮しないのか理解に苦しみます。

食事療法で改善するのなら、経口血糖降下薬も注射薬も必要ありません。

糖尿病以外のどんな病気においても、食事療法で改善するなら薬は要らないと思います。



食事療法と薬物療法の優先順位という話なら、医者や医療関係者でなくても、誰でも理解できると思います。

繰り返しますが、「食事療法・運動療法」→「薬物療法」なのです。

さて、食事療法と運動療法が効果がないときにやむを得ず、仕方ないので開始するのが、優先順位の2番目の「薬物療法」です。

その、薬物療法、すごい勢いで種類が増えてきました。

年々、創薬が相次いで、内服薬で7種類、注射薬で2種類の糖尿病薬が勢揃いです。

1)経口血糖降下剤(SU剤)
2)α-グルコシダーゼ阻害薬(グルコバイ、ベイスン)
3)ビグアナイド剤(メトホルミン、グリコラン、メルビンなど)
4)インスリン抵抗性改善薬(チアゾリジン誘導体・アクトス)
5)速効型インスリン分泌促進剤(グルファスト、スターシス)
6)DPP-4阻害剤(ジャヌビア、ネシーナなど)
7)SGLT2阻害薬 

A)インスリン注射
B)GLP-1注射薬(インクレチン関連薬)

糖尿病学会は、

「いろんな種類の糖尿病薬が開発され、治療効果が期待し易くなったが、それには専門的知識が必要・・・。」

といった見解ですが、なんだが本末転倒と思うのは私だけでしょうか?

つまり糖尿病学会推奨のエネルギー制限食(カロリ-制限食)が、本当に効果があるのなら、何故、9種類もの薬が必要なのでしょう?

次々と新薬が開発されて、とうとう9種類に達したということは、カロリー制限食と運動では、どうにもならなかったのでひたすら薬物の創薬が行われたということです。

端的に言えば、カロリー制限食が糖尿病治療に、あまり効果がないので、これだけ薬物に頼らざるを得ないということです。

さらに言えば、糖尿病から年間16000人の人工透析、3000人の失明、3000人の足切断に至るという厳しい現実の、責任はいったい誰にあるのでしょうか?

カロリー制限食を実践し、薬を飲んで注射もしても、これだけの合併症の犠牲者が多発していることは厳然たる事実です。

日本糖尿病学会は、この事実を真摯に受けとめて、しっかり自分の頭で真実を見つめ直す義務があると私は思います。



江部康二



テーマ:糖尿病
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
読みました
いつも先生の著書、ブログで日々勉強中です。感謝します。私もその本を読みました。読み進むと何となく?違和感があり3回ほど読みその原因がわかりました。この本はあくまでも薬を処方する事を前提書かれているんだなー、低カロリー、運動と言いながら 結局は薬やんか! 糖尿病で病院に診察に行っても詳しい病状の説明も無く薬だけが増えてくる、そして悪化して行く患者を今までたくさん見てきました。もう帰ってこない時間です。なんなんでしょうか。
2013/09/20(Fri) 10:05 | URL | 奈良県吉野けんさん | 【編集
ヘモグロビンa1c優良になりました!
江部先生、お久しぶりです
大事な記事のコメントに、検査結果報告失礼します(*_*;
妊娠糖尿病発覚後、江部先生ブログをきっかけに糖質制限食を去年11月からとりいれ、
1月に出産。その後は境界型に。
産後も糖質制限食を続けて、母乳育児もうまくいき、
今月、産後初の血液検査をしました。

結果は、優良になり、嬉しくて、糖質制限食を知るきっかけになった江部先生ブログに、
いちはやく報告したくて、お忙しいなか、
報告コントロールですみません。m(__)m

新しく統一された国際基準の6.2未満が優良で、
結果5.8だったので、
内科の先生からは、

「本当に血糖高いんですか?
治ってるでしょ?
食事コントロールだけでこんな優良なんですか?
何もしなくていいんですけど、、、」
と、
「本当にですか?」
を、
数分の診察のあいだに、連発されました(笑)

糖質制限食の話もしてみたら、

「それだけで、こんなに良いんですか?
へ~!」

て、何回も、かなり驚かれてました!

家から一番近い内科の先生なので、
また一人糖質制限食を理解されるお医者様が増えたらいいなと思いました!

江部先生のレシピ本を参考に、
日々のおかず作り、おやつも手作りしたり、
私の場合、最初は慣れるまで、
カロリーオーバーになりがちだったから、
糖質制限プラス、1日の平均摂取カロリーも厳守で
BMI標準より体重も減り、産後ですが
美容体重を保てています!

江部先生がブログで情報を発信してくださっていたおかげです、あらためてまた感謝しています。

ありがとうございます!o(T□T)o

先生には感謝の気持ちでいっぱいなので、
糖質制限食が最近ブームにもなりつつあるからなのか、
周りが騒がしそうで、気がかりです、これからも、
江部先生の御多幸と御健康をお祈り申し上げます。
-☆∠※。.:*:・'°☆
2013/09/20(Fri) 10:41 | URL | 母親が糖尿病 | 【編集
糖質制限のこれからにワクワクします
以前、コメントさせて頂きました棗です。
糖質制限は江部先生と同じ頃…?十年ちょっとくらい前からずっと継続しております。

糖質制限食がかなり話題になって来て、
やっと私も変人扱いされなくなって(笑)
それどころか「教えて!!」と懇願されるたびにざっくりと教えて差し上げ、
どなたからも大感謝されて嬉しいこのごろです。

本当に、いい時代になったなあと…。
これも、江部先生をはじめとするお医者さんがきちんと有効性を認めて下さるおかげです。
心から、感謝申し上げます。

いろんなネガティブキャンペーンがありますよね。
糖質制限の恩恵に、長年あずかってる私には、
「どうしてれっきとした医師の方がこんな支離滅裂な反対意見をおっしゃるのかな?」
と、不思議でなりません。
私のような素人にも、論破されちゃうような本を見かけます。

でも、私のかかりつけ医もとうとう認めて下さいました!
江部先生の著書をプレゼントしたら、「勉強します!」と喜ばれて、
私まで嬉しかったです。

まさに、パラダイムを実感した出来事でした。

これからも「自分の頭で判断する」頼もしいお医者さんが増えて行かれることを夢見ています!

ブログ、応援してます!!
2013/09/20(Fri) 17:01 | URL | 棗 | 【編集
Re: 読みました
奈良県吉野けんさん

拙著の御購入、ありがとうございます。
確かに日本糖尿病学会の糖尿病治療ガイド、
本気で食事と運動で治るとは、毛頭考えてないようですね。
合併症の多発も含めて、
糖尿病学会の責任は重いと思います。
2013/09/20(Fri) 19:19 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: ヘモグロビンa1c優良になりました!
母親が糖尿病 さん

拙著の御購入ありがとうございます。

コントロール優良も良かったですね。
主治医も驚いたけれど、反対しないのは少なくともニュートラルで好ましいです。
2013/09/20(Fri) 19:22 | URL | ドクター江部 | 【編集
インスリン注射が招いた悲劇?
御本、拝読しました。
糖質制限や湿潤療法について、ある程度の知識があり、実践もしている私ですら読みながらワクワクしてしまう内容だったので、予備知識の無い方が読んだら、タイトル通り多大なインパクトを受けると思われます。
よって、布教用に何冊か追加購入させていただこうと思っております。

なお、夏井先生が「僕は五五歳で、江部先生は六三歳。お互い、せいぜいあと二〇年くらいの命で…」と冗談半分に仰っていましたが、いやいや、ご謙遜を…。
日野原重明先生のように、肉・魚やオリーブオイルを毎日摂取し、ご飯は一日に茶碗半分程度と、結果的にプチ糖質制限食のような食事内容になっている方ですら101歳で現役の医師をされている程お元気なのですから、スーパー糖質制限食を実践されているお二人の場合は、更に老化速度も抑制されるでしょうし…。

ところで、昨年、「重度の糖尿病で仕事(夫婦で建設会社を切り盛りしていた)が出来なくなったことに悩んでいた母親がインスリン注射を放棄して(?)死亡、そして、その母親を看病していた長女と長男が、それぞれ自らにインスリンを注射して低血糖による意識不明の重態に陥る」という、心中未遂と見られる悲しい事件があったようですね。
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/120826/crm12082607470003-n1.htm

他人の不幸をひき合いに出すのは不謹慎かもしれませんが、仮にこの母親が「カロリー制限+インスリン投与」ではなく「糖質制限」による治療を行っていたら、このような悲劇は防げた可能性もあるのではないかとの思いを抱かずにはいられません。

少なくとも、糖質制限によってインスリン処方の必要が生じなくなり手元に無ければ、これを心中の手段として使うことは物理的に不可能だったはずです。
むろん、それ以前に、糖尿病が寛解して病苦から開放されていた可能性も非常に高いでしょう。

このような不幸な出来事を減らすためにも、一刻も早くパラダイムシフトが完了することを、そして、その社会変化が、トフラーが言うところの「引き返せない楔」となって、二度と元の誤った治療法には戻らなくなることを願わずにはいられません。
2013/09/20(Fri) 20:58 | URL | 豆蔵 | 【編集
Re: インスリン注射が招いた悲劇?
豆蔵 さん

夏井先生との対談本のご購入ありがとうございます。

確かに糖質制限食で、糖尿病合併症が激減すれば、様々な悲劇が予防できると思います。
2013/09/21(Sat) 17:09 | URL | ドクター江部 | 【編集
江部先生、こんにちは。
2ヵ月前からスーパー糖質制限に取り組んでいます。
アトピーの調子が少しずつ良くなってきました。
糖質制限を始めてみて、自分が重度の糖質依存だったことに気づきました。
今までアトピーと言えばアレルギー(&低脂肪、動物性タンパク質制限)、ダイエットといえばカロリーしか見ていませんでしたが、糖質制限を通して、自分の体を見つめるまったく新しい視点をいただいたと思っています。今まで以上に健康に興味を持つようになりました。意識を改革していただき、先生には感謝の気持でいっぱいです。

19日(木)の読売新聞の1面に「糖尿病500万人抑制、25年度厚労省目標」と大きな見出しが出ていました。
私には医療行政のカラクリなどはわかりませんが、理にかなった糖尿病治療が認知される後押しになったらいいなぁと願っています。
糖質制限慎重派の言う「長期のエビデンス」も、それほど遠くない将来に得られるでしょうし、最後には自ずと真実が認められると思います。

22日の今日は、またまた1面に「和食と健康、1万人調査」という見出しがあり、生活習慣病を防ぐとされる日本食の効果を3年間かけて立証するという記事が載っていました。
半年前の私なら、何の疑問も持たず、素晴らしい計画だと思ったことでしょう。和食は大好きですし、素晴らしい文化だと思っています。
でも、炭水化物比率は高い食文化だと思うので、今回この記事を見たときは「最初に結果ありきの調査になってしまわなければいいけれど」と少し心配になりました。農水省のプロジェクトだそうなので、「米を食べよう!」となりそうですね。お米、美味しいですけどね。生活習慣病を防ぐために食べる食品ではないと、今はわかるようになりました。
2013/09/22(Sun) 17:06 | URL | くろ | 【編集
Re: タイトルなし
くろ さん

人類70億人を養うには、テーラーメードダイエットの考えで、穀物も必要と思います。

ただ、白米を多く食べる女性に糖尿病多いというブリティッシュ・メディカル・ジャーナルの論文があります。
そして久山町研究でも白米を多く食べる人はアルツハイマー病のリスクが高いと報告されていますので
注意は必要ですね。
2013/09/23(Mon) 13:32 | URL | ドクター江部 | 【編集
食後2時間血糖値より、翌日の空腹時血糖値が高いのは何故
2007.6.22のブログにコメントしてしまいました(汗)
現在、糖尿病がどんどん良くなる糖質制限読破中です。糖質制限うまくいっているのでしょうか不安です。
主人が会社の検診(H25.5.14)で、空腹時血糖161mg/dl・HbA1c6.8%という結果で要加療の指示がでたので、H25.7.22崇高クリニック受診(受診時:随時血糖125mg/dl・HbAlc6.5%)しました。
今年で、銀婚式を迎える私たちですが、受診後、最後の晩餐ということで、1泊2日のご馳走旅行にでかけ、帰り道より、見よう見まねの糖質制限を始め、22日に処方されたメトホルミン250mgも毎食後服用しました。
1週間後のH25.7.27糖負荷試験の結果は、下記の通りでした。
前    1.29μU/mL(113mg/dl)
30分  4.33μU/mL(213mg/dl)
60分  16.6μU/mL(285mg/dl)
90分  14.9μU/mL(273mg/dl)
120分  16.6μU/mL(221mg/dl)

薬を飲むことには抵抗があった(*1)ので、メトホルミンは服用せずまずは食事療法をと、先生の「主食を抜けば糖尿病は良くなる!」「糖質制限食」「糖質オフごちそうごはん」を参考に、スタンダード糖質制限を開始し約2ヶ月が経過しました。

ブログにありましたニプロTRUEpicoを購入し、どきどきしながら血糖を測りました。
結果 H25.9.21  夕食後2時間 108mg/dl
H259.22 空腹時 114mg/dl
昼食後2時間 127mg/dl
夕食後2時間 95mg/dl
H25.9.23 夕食後2時間 99mg/dl
H259.24 空腹時 114mg/dl
何とか糖質制限はできているのではないかと、ホッとしていますが、前夜の夕食後2時間の血糖値より、翌日の空腹時血糖値が高いのはどういうことでしょうか。
夫は、就寝前に必ず牛乳を飲む習慣がありますが、今も牛乳の量を減らして(150cc程度)続けています、そのせいでしょうか。
メトホルミンの服用を止めてしまったのがいけなかったのでしょうか。

(参考:夫は現存する検診結果(H3~)によると、当初より空腹時血糖が110を少し超えており、H19以降は120を下回ることはなく140前後で、HbAlcは、H15に5.5%、H22以降6.2%を下回ることはなく、H25.5の結果となっています。
糖質制限1ヶ月後:体重70.7kg・BIM23.6・体脂肪18・内臓脂肪12やや過剰
糖質制限2ヶ月後:体重67.9kg・BMI22.7・体脂肪15.7・内臓脂肪10.5やや過剰)

*1.「薬のチェックは命のチェック」No.44,45
UKPDS比較検査によりメトホルミンの評価が高まっているが、効果はBMI平均30をこえる肥満の人に用いた結果であり、食事療法群は、空腹時血糖値が270mg/dlまではインスリンを用いないという治療で、BMIが30にならない人の多い日本でもっときめ細かい治療をする人に適用できるかきわめて疑問。BMIが30以上で糖質制限食やストレス解消、睡眠確保、運動などでは体重が減らない糖尿病の人に限って、有用かもしれません。
2013/09/24(Tue) 11:00 | URL | 糖質制限万歳 | 【編集
Re: 食後2時間血糖値より、翌日の空腹時血糖値が高いのは何故
糖質制限万歳 さん

拙著のご購入ありがとうございます。

結果 H25.9.21  夕食後2時間 108mg/dl
H259.22 空腹時 114mg/dl
昼食後2時間 127mg/dl
夕食後2時間 95mg/dl
H25.9.23 夕食後2時間 99mg/dl
H259.24 空腹時 114mg/dl


このデータなら、糖質制限食が上手に実践できていると思います。
早朝空腹時血糖値が夕食後2時間より高値なのは、「暁現象」と思います。
このまま薬なしで、半年くらい経過をみては如何でしょう。
早朝空腹時血糖値が正常化する可能性もあります。

2011年12月23日 (金)の本ブログ記事
「糖質制限食でHbA1c改善、暁現象への対応は?」
をご参照ください。
2013/09/24(Tue) 15:32 | URL | ドクター江部 | 【編集
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