FC2ブログ
食後高血糖、国際糖尿病連合ガイドライン。 HbA1cの推奨値は?
【13/09/15 たま

グルコーススパイク

江部先生。

グルコーススパイクの危険性に対して、疑義を唱えている書籍があります。
今年出版されたばかりのようです。

岡本卓 著
「本当は怖い「糖質制限」」
祥伝社新書

上記本の60~62ページに、「グルコーススパイクに関する信頼できる、大規模な、前向きの無作為試験はありません。つまり、糖尿病研究に携わる世界の医師や研究者を納得させるスタディがないということです」と書かれていました。

上記の主張は本当なのでしょうか。

岡本氏は結論として、HbA1C7.5%がもっとも長生きであるエビデンスがあるので、ほどほどの血糖コントロールが一番と主張しているようです。】



こんにちは。

たま さんから、食後高血糖について、コメント・質問を頂きました。

まず食後血糖値に関して信頼度の高い以下のガイドラインがあります。

国際糖尿病連合・2011年発表 「食後血糖値の管理に関するガイドライン」
http://www.idf.org/sites/default/files/postmeal%20glucose%20guidelines.pdf

2007年の国際糖尿病連合「食後血糖値の管理に関するガイドライン」
http://www.idf.org/webdata/docs/Guideline_PMG_final.pdf

いずれのガイドラインにも、

「食後および負荷後高血糖は大血管疾患の独立した危険因子である。」

ということが、欧米の無作為試験とメタ解析論文によるエビデンスに基づき、記載してあります。

日本においても「熊本スタディー」があります。

1987 年から 1997 年まで10 年間、熊本大学の代謝内科で実施された無作為試験です。

2型糖尿病110例の経過を観察したものです。

本試験において、血糖コントロール状態と網膜症・腎症の悪化率の関係を調べると、

空腹時血糖値 110mg/dl 未満
食後2時間血糖値 180mg/dl 未満
HbA1c 値 6.5%未満

では網膜症と腎症の発症、進展が認められませんでした。

つまり、食後2時間血糖値が180mg/dlを超えると、網膜症と腎症の発症、進展リスクがあるということです。

次に
「HbA1c7.5%がもっとも長生きであるエビデンスがある。」

というのは、ACCORDとLancet誌2010年2月6日号の報告によるものと思います。

ACCORDは、米国とカナダの77施設の10251例による大規模臨床試験です。

2008年2月、厳格血糖管理群における総死亡率および心血管死亡率が、通常血糖管理群を有意に上回ることが確認され、同試験は5年間の期間満了を待たずに平均追跡期間3.4年で中止となりました。

中止時の平均HbA1cは、厳格血糖管理群6.4%、通常血糖管理群7.5%でした。

さらに

「2型糖尿病患者の死亡率はHbA1c7.5%前後が最も低い」

という衝撃的な後ろ向きコホート研究報告が、英国の医学雑誌Lancet誌2010年2月6日号に、英Cardiff大学のCraig J Currie氏により発表されました。

いずれの研究も、

普通に糖質を摂取しながら厳格に薬物療法を行う

と、HbA1cが改善しても、かえって総死亡率が上昇するというエビデンスとなります。

なぜ、このようなパラドックスが生じたのかが、ACCORDで検討されて、厳格治療群で低血糖がよく起こったのが一番の元凶で、インスリンで肥満したことなども関与という結論でした。

低血糖がよく起こったということは、平均血糖変動幅も増大して、酸化ストレスも亢進して、死亡リスクが上昇したと考えられます。

こうなると、普通に糖質を食べて薬物療法をしている糖尿人は、HbA1c7.5%くらいのほうが、合併症はいろいろでてくるかもしれないけれど、総死亡率はHbA1c6.4%より低いということになります。

しかしながら、上記はあくまでも糖質を普通に摂取している糖尿人のお話です。

糖質制限食なら、低血糖も平均血糖変動幅増大も食後高血糖も生じないので、
HbA1cは6.0%未満とかコントロール優秀なほど、合併症も生じないし、総死亡率のリスクもおおいに減ると考えられ、パラドックスはありません。


☆☆☆

2011年07月21日 (木)の本ブログ記事
「ACCORDとLancet誌2010年2月6日号の報告、HbA1cの目標値は?」

2011年07月20日 (水)の本ブログ記事
「ACCORD後の血糖管理・推奨HbA1cは? 2011年米国糖尿病学会」

2011年07月18日 (月)の本ブログ記事
「ACCORD試験の死亡リスクと低血糖とSMBGサブ解析2011」

もご参照いただけば幸いです。



江部康二

テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
ありがとうございました
江部先生。

丁寧なご返答、ありがとうございました。
食後血糖値に関してエビデンスが存在すること、HbA1c7.5%が最も長生きである、というのは糖質食を食べて薬で無理に下げた場合であること、など理解できました。

岡本卓氏は知らない(不勉強)で執筆されたのか、知っていてわざと書いたのかは分かりませんが、専門家によって主張することがばらばらだと、一般人は混乱します。

私はこれまで職場の健康診断でHbA1c値が少々高めながら基準値内でしたので、あまり気にしていませんでしたが、泌尿器科を受診した際、尿糖++で非常に驚き、初めて自分が糖尿病であることに気づきました。健康診断では空腹時でしたので、尿糖もマイナスで血糖値も正常値だったのでしょう。

これまでご飯食を中心とする日本型食生活がベストである信じ込んでいましたので、糖質制限食もかなり懐疑的でした。試しに江部先生の本を参考に、自己流に糖質制限食をしばらく実施してみたところ、今年の健康診断ではHbA1c値も血糖値も完全に正常域に納まっており、遅ればせながら糖質制限の勉強を開始した次第です。

糖質制限食の正当性が万人の知るところとなり、糖尿病治療食のスタンダードになることを願っています。
2013/09/16(Mon) 05:50 | URL | たま | 【編集
9月15日付け日経新聞一面の「成長戦略の忘れ物」という連載の中で「炭水化物の食べ過ぎが血糖値を上げてしまいますから、」と載っていました。
2013/09/16(Mon) 11:10 | URL | 菜の花 | 【編集
Re: タイトルなし
菜の花 さん

情報をありがとうございます。

成長戦略の忘れ物(3) 会わないとダメですか 対面信仰 医療・教育縛る
2013/9/15付日本経済新聞 朝刊


この連載記事ですね。
ネットでは、会員限定記事なので、
「炭水化物の食べ過ぎが血糖値を上げてしまいますから、」
という文言は、私は見ることができませんでしたが、
いろんな分野の人に正しい認識が広がっているのは、嬉しいことです。
2013/09/16(Mon) 11:20 | URL | ドクター江部 | 【編集
コメントを投稿
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可