2013年09月10日 (火)
こんにちは
昨日に続いて、京大病院・疾患栄養治療部・幣 憲一郎氏の著述への批判です。
Diabetes Strategy 2013年8月 号において、幣 憲一郎氏は
「国民健康・栄養調査(2010年)によれば、炭水化物の摂取量は減少し、脂質の摂取量が増加、炭水化物と脂質のエネルギー比率はそれぞれ59.4%、25.9%とされ脂質栄養の過剰摂取が日本人における肥満、そして糖尿病の増加に大きく関与、・・・」
と述べておられます。
しかし、精神科医師Aさんのご指摘のように、平成22年国民健康・栄養調査報告年次別結果によれば、2000年から2010年にかけて、脂質摂取総量は、57.4g → 53.7g/日 と減少しており、幣 憲一郎氏は事実誤認です。
また同様に脂質摂取比率も2000年から2010年で、26.5% → 25.9% と減少しています。
すなわち真実は、
「脂質の摂取量、摂取比率ともに減少しているのに、肥満・糖尿病は増加した」
のが日本の現状なのです。
そして、糖質の摂取比率は、2000年から2010年にかけて、57.5% → 59.4% と増加しているのです。
要するに、脂質が減って糖質が増えて、糖尿病・肥満が増えたのです。
「近年は脂質摂取量・動物性食品総量エネ比が減り、穀類エネ比率が上昇している。その結果、糖尿病が増加している」
統計をしっかり検証すれば、まさに、精神科医師Aさんの仰る通りなのです。
このように初歩的な数字を、幣 憲一郎氏は誤解されたのか意図的なのかは不明ですが、いずれにせよ根幹を間違っておられます。
『また食事摂取基準2010には、炭水化物の目標量50%以上70%未満を設定しているが、これには大きな根拠はないとしている。また糖新生がおこなわれるため、100gという数値は、真に必要な最低量ではないと明記している。脂肪の項には、高脂質/低炭水化物食はインスリン抵抗性を改善すると書かれている。
食事摂取基準2005では炭水化物の目標量の項に、
「わが国よりも炭水化物摂取比率が低い欧米諸国では、脂質摂取過剰による健康障害の問題から、炭水化物の摂取比率を増加させることによって脂質摂取比率を制限することの重要性が指摘されている」
との記載があったが、2010年版では削除された。』
こちらも精神科医師Aさんのご指摘どおりであり、厚生労働省食事摂取基準2010版は、2005年版に比べて、糖新生のこととか、インスリン抵抗性改善とか、低炭水化物・高脂肪食に対する一定の理解が認められますね。(^^)
江部康二
【13/09/08 精神科医師A
京大病院・疾患栄養治療部(7)
[7]Diabetes Strategy 3(3)132-133, 2013年8月
『わが国における栄養素摂取量の現況と極端な糖質制限の考え方への疑問』
P132
国民健康・栄養調査(2010年)によれば、炭水化物の摂取量は減少し、脂質の摂取量が増加、炭水化物と脂質のエネルギー比率はそれぞれ59.4%、25.9%とされ[1]、脂質栄養の過剰摂取が日本人における肥満、そして糖尿病の増加に大きく関与しており、栄養学的にも大きな課題とされています。
また、「日本人の食事摂取基準(2010年版)」[2]では、推定エネルギー必要量を基礎代謝量kca1/日×身体活動レベルとし、炭水化物摂取量はおおむねエネルギー比50~70%、炭水化物の最低必要量をおよそ100g/日と推計しており…
1) 厚生労働省: 6. 栄養素等摂取量。平成22年国民健康・栄養調査結果の概要、19-21, 2010
2) 厚生労働省: 日本人の食事摂取基準2010年版、第一出版、東京、2010
<批判>
1) 平成22年国民健康・栄養調査報告年次別結果(H24年5月)
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/eiyou/dl/h22-houkoku-10.pdf
174頁106表 栄養素等摂取量の年次推移
‐‐‐‐‐‐‐‐2000‐‐‐‐2010
脂質総量‐‐‐‐57.4g‐‐‐‐53.7g
穀類エネ比率‐‐41.4%‐‐‐42.5%
176頁108表 食品群別摂取エネルギー比率の年次推移
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐2000‐‐‐‐2010
穀類総量エネ比‐‐‐‐41.4%‐‐‐42.5%
動物性食品総量エネ比‐25.0%‐‐‐23.5%
このように、近年は脂質摂取量・動物性食品総量エネ比が減り、穀類エネ比率が上昇している。その結果、糖尿病が増加している
2) また食事摂取基準2010には、炭水化物の目標量50%以上70%未満を設定しているが、これには大きな根拠はないとしている。また糖新生がおこなわれるため、100gという数値は、真に必要な最低量ではないと明記している。脂肪の項には、高脂質/低炭水化物食はインスリン抵抗性を改善すると書かれている
食事摂取基準2005では炭水化物の目標量の項に、「わが国よりも炭水化物摂取比率が低い欧米諸国では、脂質摂取過剰による健康障害の問題から、炭水化物の摂取比率を増加させることによって脂質摂取比率を制限することの重要性が指摘されている」との記載があったが、2010年版では削除された。】
昨日に続いて、京大病院・疾患栄養治療部・幣 憲一郎氏の著述への批判です。
Diabetes Strategy 2013年8月 号において、幣 憲一郎氏は
「国民健康・栄養調査(2010年)によれば、炭水化物の摂取量は減少し、脂質の摂取量が増加、炭水化物と脂質のエネルギー比率はそれぞれ59.4%、25.9%とされ脂質栄養の過剰摂取が日本人における肥満、そして糖尿病の増加に大きく関与、・・・」
と述べておられます。
しかし、精神科医師Aさんのご指摘のように、平成22年国民健康・栄養調査報告年次別結果によれば、2000年から2010年にかけて、脂質摂取総量は、57.4g → 53.7g/日 と減少しており、幣 憲一郎氏は事実誤認です。
また同様に脂質摂取比率も2000年から2010年で、26.5% → 25.9% と減少しています。
すなわち真実は、
「脂質の摂取量、摂取比率ともに減少しているのに、肥満・糖尿病は増加した」
のが日本の現状なのです。
そして、糖質の摂取比率は、2000年から2010年にかけて、57.5% → 59.4% と増加しているのです。
要するに、脂質が減って糖質が増えて、糖尿病・肥満が増えたのです。
「近年は脂質摂取量・動物性食品総量エネ比が減り、穀類エネ比率が上昇している。その結果、糖尿病が増加している」
統計をしっかり検証すれば、まさに、精神科医師Aさんの仰る通りなのです。
このように初歩的な数字を、幣 憲一郎氏は誤解されたのか意図的なのかは不明ですが、いずれにせよ根幹を間違っておられます。
『また食事摂取基準2010には、炭水化物の目標量50%以上70%未満を設定しているが、これには大きな根拠はないとしている。また糖新生がおこなわれるため、100gという数値は、真に必要な最低量ではないと明記している。脂肪の項には、高脂質/低炭水化物食はインスリン抵抗性を改善すると書かれている。
食事摂取基準2005では炭水化物の目標量の項に、
「わが国よりも炭水化物摂取比率が低い欧米諸国では、脂質摂取過剰による健康障害の問題から、炭水化物の摂取比率を増加させることによって脂質摂取比率を制限することの重要性が指摘されている」
との記載があったが、2010年版では削除された。』
こちらも精神科医師Aさんのご指摘どおりであり、厚生労働省食事摂取基準2010版は、2005年版に比べて、糖新生のこととか、インスリン抵抗性改善とか、低炭水化物・高脂肪食に対する一定の理解が認められますね。(^^)
江部康二
【13/09/08 精神科医師A
京大病院・疾患栄養治療部(7)
[7]Diabetes Strategy 3(3)132-133, 2013年8月
『わが国における栄養素摂取量の現況と極端な糖質制限の考え方への疑問』
P132
国民健康・栄養調査(2010年)によれば、炭水化物の摂取量は減少し、脂質の摂取量が増加、炭水化物と脂質のエネルギー比率はそれぞれ59.4%、25.9%とされ[1]、脂質栄養の過剰摂取が日本人における肥満、そして糖尿病の増加に大きく関与しており、栄養学的にも大きな課題とされています。
また、「日本人の食事摂取基準(2010年版)」[2]では、推定エネルギー必要量を基礎代謝量kca1/日×身体活動レベルとし、炭水化物摂取量はおおむねエネルギー比50~70%、炭水化物の最低必要量をおよそ100g/日と推計しており…
1) 厚生労働省: 6. 栄養素等摂取量。平成22年国民健康・栄養調査結果の概要、19-21, 2010
2) 厚生労働省: 日本人の食事摂取基準2010年版、第一出版、東京、2010
<批判>
1) 平成22年国民健康・栄養調査報告年次別結果(H24年5月)
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/eiyou/dl/h22-houkoku-10.pdf
174頁106表 栄養素等摂取量の年次推移
‐‐‐‐‐‐‐‐2000‐‐‐‐2010
脂質総量‐‐‐‐57.4g‐‐‐‐53.7g
穀類エネ比率‐‐41.4%‐‐‐42.5%
176頁108表 食品群別摂取エネルギー比率の年次推移
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐2000‐‐‐‐2010
穀類総量エネ比‐‐‐‐41.4%‐‐‐42.5%
動物性食品総量エネ比‐25.0%‐‐‐23.5%
このように、近年は脂質摂取量・動物性食品総量エネ比が減り、穀類エネ比率が上昇している。その結果、糖尿病が増加している
2) また食事摂取基準2010には、炭水化物の目標量50%以上70%未満を設定しているが、これには大きな根拠はないとしている。また糖新生がおこなわれるため、100gという数値は、真に必要な最低量ではないと明記している。脂肪の項には、高脂質/低炭水化物食はインスリン抵抗性を改善すると書かれている
食事摂取基準2005では炭水化物の目標量の項に、「わが国よりも炭水化物摂取比率が低い欧米諸国では、脂質摂取過剰による健康障害の問題から、炭水化物の摂取比率を増加させることによって脂質摂取比率を制限することの重要性が指摘されている」との記載があったが、2010年版では削除された。】
30年来の糖尿人 さん
クレアチニンの悪化がなくて、
糖質制限食でHbA1c:6.6%なら、続けられて大丈夫と思います。
高蛋白食が腎不全を悪化させる可能性はあり得ますが、
高血糖のほうがもっと悪化させます。
30年来の糖尿人 さん の場合は、上手く折り合いがついているのだと思います。
クレアチニンの悪化がなくて、
糖質制限食でHbA1c:6.6%なら、続けられて大丈夫と思います。
高蛋白食が腎不全を悪化させる可能性はあり得ますが、
高血糖のほうがもっと悪化させます。
30年来の糖尿人 さん の場合は、上手く折り合いがついているのだと思います。
2013/09/14(Sat) 17:53 | URL | ドクター江部 | 【編集】
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