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肥満妊婦の子は成人後の死亡リスクが約1.4倍
おはようございます。

日経メディカルオンラインに、2013. 8. 30、興味深い記事が載りました。

BMJ誌(ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル誌)に

「肥満妊婦の子は成人後の死亡リスクが約1.4倍」

という論文が掲載されました。

論文はBMJ誌電子版に2013年8月13日に掲載。

<BMJ論文の要約>英国で行われたコホート研究の結果

1950~1976年に単胎児を妊娠37週超で出生し、初回の妊婦健診の際にBMIが記録されていた2万8540人の母親の子供3万7709人が分析対象。

主要転帰評価指標は、子の年齢が34~61歳になった2012年1月1日までの全死因死亡と心血管イベントによる入院に設定。

母親が妊娠中に正常体重(BMI18.5~24.9)だった集団を参照として、低体重(18.5未満)群、過体重(25~29.9)群、肥満(30以上)群の間で比較。

全死因死亡は6551人に発生。

主な死因は心血管疾患(男性の24%、女性の13%)と癌(男性の26%、女性の42%)

死亡のハザード比は、過体重妊婦の子が1.11、肥満妊婦の子では1.35で、低体重妊婦の子は0.98。

55歳未満で死亡した子集団を対象に同様に分析したところ、過体重妊婦の子の死亡の調整ハザード比は1.19、肥満妊婦の子では1.40で、若年死亡リスクの上昇。


妊娠糖尿病に、糖質制限食が極めて有用であることは、2013年1月13日(日)国立京都国際会館で開催された
第16回日本病態栄養学会年次学術集会で宗田マタニティークリニックの宗田 哲男先生、永井クリニッックの永井泰先生らのグループが発表されました。

宗田先生、永井先生のご発表では、糖質制限食で血糖は勿論のこと、体重コントロールも大変楽にできたそうです。

今回の、BMJのコホート研究は、肥満妊婦の子供においては、将来の心血管疾患や癌のリスクが増加することが示されました。

また妊婦の肥満は、生まれた子の成人後の若年死亡と心血管イベントによる入院のリスク上昇に関係していました。

英国では現在、妊婦の5人に1人が肥満だそうです。

妊娠前の体重を適正に保つことが重要と著者らは述べています。

妊娠前の体重を適正に保つには糖質制限食が最適の食事療法ですし、妊娠後の体重コンントロールも糖質制限食なら容易です。

日本では妊婦の5人に1人が肥満というようなことはありませんが、肥満のある女性は注意が必要ですね。


江部康二



以下、日経メディカルオンラインから転載

海外論文ピックアップ BMJ誌より
2013. 8. 30
BMJ誌から
肥満妊婦の子は成人後の死亡リスクが約1.4倍
正常体重の妊婦の子との比較、英国で行われたコホート研究の結果
大西 淳子=医学ジャーナリスト


初回の妊婦健診の際に測定されたBMI値に基づき、過体重または肥満と判定された女性から生まれた子は、成人後の全死因死亡と心血管イベントによる入院のリスク上昇に直面する可能性が示された。英Edinburgh大学のRebecca M Reynolds氏らが行ったレコードリンケージによるコホート研究の結果で、論文はBMJ誌電子版に2013年8月13日に掲載された。

これまで、低出生体重児のその後の心血管死亡リスクは高いこと、肥満の母親から生まれた子が肥満になるリスクは高いこと、妊娠前の母親の肥満と青少年期にある子のアテローム性動脈硬化症マーカー(高血圧、脂質異常症など)値の間に関係があることなどは報告されていた。しかし、妊婦の肥満が、生まれた子が成人した後の死亡や心血管イベントのリスク上昇と関係するかどうかは明らかではなかった。

著者らは、1950年から出生記録を収集してきたスコットランドのAberdeen Maternity and Neonatal Databank(AMND)と、スコットランドの死亡登録、Scottish Morbidity record systems(SMR01)の情報を関連づけ、50~76年に単胎児を妊娠37週超で出生し、初回の妊婦健診の際にBMIが記録されていた2万8540人の母親の子供3万7709人を分析対象にした。

主要転帰評価指標は、子の年齢が34~61歳になった2012年1月1日までの全死因死亡と心血管イベントによる入院に設定。母親が妊娠中に正常体重(BMI18.5~24.9)だった集団を参照として、低体重(18.5未満)群、過体重(25~29.9)群、肥満(30以上)群の間で比較を行った。

低体重妊婦の子は1195人(出産時の母親の年齢は24.9歳、BMI測定時の妊娠週数は13.7週、出生体重は3132g、全て平均値)、正常体重妊婦の子は2万7051人(25.2歳、16.8週、3299g)、過体重妊婦の子は7913人(26.7歳、19.5週、3436g)、肥満妊婦の子は1550人(27.9歳、20.7週、3536g)で、子の男女比はほぼ1対1だった。

全死因死亡は6551人に発生。主な死因は心血管疾患(男性の24%、女性の13%)と癌(男性の26%、女性の42%)だった。

Cox比例ハザード回帰モデルを用いてtime-to-event解析したところ、全死因死亡は過体重妊婦、肥満妊婦の子の集団で有意に高かった。分娩時の母親の年齢、社会経済的地位、子の性別、出生体重、出生時の妊娠週数、BMI測定時の妊娠週数などで調整した死亡のハザード比は、過体重妊婦の子が1.11(95%信頼区間1.03-1.19)、肥満妊婦の子では1.35(1.17-1.55)で、低体重妊婦の子は0.98(0.84-1.14)だった。

55歳未満で死亡した子集団を対象に同様に分析したところ、過体重妊婦の子の死亡の調整ハザード比は1.19(1.09-1.30)、肥満妊婦の子では1.40(1.17-1.68)で、若年死亡リスクの上昇が示された。

子の集団の7.6%が心血管イベント(狭心症、心筋梗塞、脳卒中、その他の脳血管疾患、その他の心血管疾患、末梢動脈疾患のいずれか)により入院していた。肥満妊婦の子は、心血管イベントによる入院のリスクも有意に高かった(調整ハザード比は1.29、1.06-1.57)。過体重妊婦の子のハザード比も1.15(1.04-1.26)と有意なリスク上昇を示した。

妊婦の肥満は、生まれた子の成人後の若年死亡と心血管イベントによる入院のリスク上昇に関係していた。英国では現在、妊婦の5人に1人が肥満であることから、成人後の子の集団に及ぶ影響は公衆衛生上深刻なものになると予想され、妊娠前に体重を適切なレベルにしておく戦略が必要だと著者らは述べている。

原題は「Maternal obesity during pregnancy and premature mortality from cardiovascular event in adult offspring:follow-up of 1 323 275 person years」、全文はBMJ誌のウェブサイトで閲覧できる。



テーマ:糖尿病
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
先生こんにちは!休憩中にのんびり書いています。

質問なのですが、最近の糖尿病の判断にHbA1cの方を重視していると聞きました。
(その時の医者の態度が最悪でした…)

どうすればHbA1cを改善できるでしょうか?
また、それに断食療法等も効果があるのでしょうか?
2013/09/04(Wed) 12:58 | URL | けいと | 【編集
Re: タイトルなし
けいと さん

血糖コントロール評価の優先順位
1)平均血糖変動幅 → 平均血糖変動幅増大が最大の酸化ストレスリスク →変動幅が小さいほどいい
2)食後血糖値 → 食後高血糖が2番目の酸化ストレスリスク →食後血糖上昇が小さいほどいい
  食後2時間血糖値180mg/dl未満を目指す → さらには140mg/dl未満をめざす
3)空腹時血糖値 → 130mg/dl未満を目指す → さらには110mg/dl未満を目指す。

☆1)2)3)が達成されればHbA1cはおのずとコントロール良好となる。
 合併症予防のためには、7.0%未満を目指す。→ さらには6.0%未満をめざす。
 スーパー糖質制限食なら、1)2)はリアルタイムに改善。3)も徐々に改善。
★酸化ストレス
 人体は酸化反応と抗酸化反応がバランスをとって成り立っているが酸化反応が亢進した状態を酸化ストレスという。酸化ストレスが増強すると、動脈硬化・癌・老化・アルツハイマー病・パーキンソン病などのリスクとなる。

*断食をする必要はないと思います。
2013/09/04(Wed) 14:02 | URL | ドクター江部 | 【編集
度々質問に答えていただきありがとうございます!

この調子で糖質制限や有酸素運動を続けようと思います。
2013/09/04(Wed) 15:06 | URL | けいと | 【編集
日本酒の件、情報有難うございました。
酒屋さん良く分かっていないんですね!
気をつけます。
今回の記事で英国の話ですが、仕事で先々月行っておりまして、肥満はかなり問題です。
冗談ではなく30過ぎの女性の10人に9人は肥満だと思います。
しかも50を過ぎると超肥満です。
太りすぎて機械で動く車椅子に乗っている人が沢山いて、まるでウォーリーの世界です。
仕事で良く行くのですが、10年前はこんなでなかった気がします。
皆アメリカのせいだとか言ってましたが男はそんなに太っていないので違うでしょう?
そんな中、パブ(向こうの居酒屋)で現地の人と話していて、糖尿でビールがあまり飲めないんだと話していたところ、最近週に2日1日600カロリーに抑えて生活すると癌になるリスクが下がるし、健康になるんだと言ってる人がいて、周りの人も「知ってるぜ」と話に乗ってきました。
なんでもBBCのリポーターが世界中の医者にインタビューして理由を紹介している本が流行っているそうです。
多分サーチュインをアクティブにすると言う内容だと思います。
あの国は主食が無いのにあれだけ太るのは、ケーキとジュースの食べすぎ飲みすぎでしょうか?
炭水化物怖いですね!
2013/09/04(Wed) 18:01 | URL | けい | 【編集
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