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糖質摂取とインスリン追加分泌
こんばんは。

糖質摂取とインスリン分泌について考えてみます。

インスリン分泌能は個人差が大きいです。

インスリン分泌能が正常型の人は、摂取した糖質の量に応じてリアルタイムにインスリンを追加分泌して、血糖値の上昇を抑えて、血糖値があるていど下がってきたらインスリン追加分泌は停止します。

20才くらいで、家族歴に糖尿病のない人なら、糖質を100g摂取しても食後血糖値が140mgを超えることはありません。

40才くらいになると、正常型でも160~170mgくらいまで食後血糖値が上昇する人がでてきます。

20才くらいでも、家族歴に糖尿病がある人は、正常型でも食後血糖値が160~170mgになることがあります。

糖尿病の人は、このインスリン作用が上手く働いていないので、糖質摂取後の血糖値が200mgを超える高値となります。

この時インスリン分泌不足とインスリン抵抗性(インスリンの効きが悪い)の2つの要素が重なって糖尿病となりますが、日本人の場合はインスリン分泌不足が主です。

また、糖尿人ではインスリン追加分泌が出遅れて遷延することも多いです。

さて、インスリン分泌能正常型で考察してみます。

糖質量5g以下なら、インスリン追加分泌はごく少量で済みます。

糖質量が10gくらいで、基礎分泌の2~3倍インスリン追加分泌がでます。

5g以下ならもっと追加分泌は少ないです。

糖質量が50gくらいだと、基礎分泌の10~30倍くらいの追加分泌がでます。

いずれにせよ、血糖値の上昇は、「摂取した糖質量とその人のインスリン作用」の兼ね合いで決まります。

従いまして、「血糖値の上昇が何mgなら、インスリン追加分泌は何μU分泌された。」ということではありません。

以下のデータは、2008年5月~7月、東海大学医学部と高雄病院で行った共同研究からの引用です。

<糖質制限食>VS<従来食(糖質たっぷりカロリー制限食)>

インスリンには24時間、少量常に分泌されている基礎分泌と、血糖値が上昇したときに大量に出る追加分泌があります。

糖質、脂質、タンパク質のうち糖質だけが血糖値を上昇させます。

従って、糖質を摂取した時には、インスリンが大量に追加分泌されます。

脂質は血糖値を上昇させず、インスリンも分泌させません。

タンパク質は少量のインスリンを分泌させますがグルカゴンも分泌させますので、血糖値の上昇はありません。

つまり、人(糖尿人も正常人も)において、インスリンの追加分泌が多量に必要となるのは、糖質を摂取した時だけです。

これらは、論争の余地のない、生理学的事実です。

以下は、2型糖尿病Aさんのデータです。従来食は糖質ありです。

従来食  350kcal、糖質60%で約52.5g、脂質20%、タンパク質20%
糖質制限食  350kcal、糖質10%で約8.75g、脂質60%、タンパク質30%

従来食と糖質制限食は、いずれも350kcalで、勿論、同一人のデータです。

糖質制限食だと血糖値の上昇は極めて少なく、インスリンの追加分泌もごく少量ですね。

             食前    30分後    60分後   90分後    120分後
従来食血糖値     121     206     304     250      198
従来食IRI         2.2      6.2     19.1     23.1     21.6

糖質制限食血糖値   124     140    142     129     135
糖質制限食IRI       3.5      4.6     6.7     6.9     5.2


同様に元2型糖尿人Bさんのデータです。
2年前初診時糖尿病型でしたが、2年後本検査時は、正常型です。

             食前    30分後    60分後   90分後    120分後
従来食血糖値     108     148     189     142      126
従来食IRI        3.8      35.2     58.5     55.1     24.9

糖質制限食血糖値   113     115    116     108     107
糖質制限食IRI       4.1      10.1    11.7     10.6    13.5


Bさんの場合、2年間の糖質制限食で、糖質を負荷しても血糖値は正常パターンに回復しています。

このとき基礎分泌3.8→追加分泌ピーク58.8まで多量のインスリンがでています。

実に基礎分泌の15倍強のインスリンが追加分泌されています。

糖質制限食でも、約8.75gほど野菜分の糖質が含まれているので、一応基礎分泌の2~3倍のインスリン追加分泌がありますが、通常食に比べれば微々たるものですね。

正常人が通常の食事をすれば、おおむねBさんのデータのようなインスリンの大量追加分泌が一日に最低3回、間食をすれば5回以上起こっているわけです。

このようなインスリンの大量追加分泌が40年、50年と続けば、遂には膵臓が疲弊して分泌能力が低下して糖尿病を発症するのは想像に難くないですね。

結論です。

カロリーをいくら制限しても、糖質を摂取してしまえば、食後高血糖と多量のインスリン追加分泌を生じます。

糖質制限食なら食後高血糖は生じず、インスリン追加分泌も少量ですみます。



江部康二



テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
いつも興味深く拝読しております。

糖質制限食では高脂肪・高タンパク食になります。
日常的に高脂肪食を続けるとインスリン抵抗性が増悪するのではと思うのですが、2年間糖質制限食を続けたBさんのHOMA-R値は全く正常ですね。

高脂肪食がインスリン抵抗性を悪化させるということが、そもそも間違いなのでしょうか。
2013/08/20(Tue) 07:45 | URL | たま | 【編集
日本人の食事摂取基準(2010)
脂肪(p79)にこのような記載があります
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/05/dl/s0529-4g.pdf

 高脂質食/低炭水化物食は 低脂質食/高炭水化物食に比べて、インスリン抵抗性の強い肥満者(空腹時インスリン値が 15 µU/mL以上)やインスリン分泌量の多い肥満者(ぶどう糖負荷試験30分値のインスリン値が 57. 5 µU/mL以上)で強い体重低下作用が認められている
2013/08/20(Tue) 08:48 | URL | 精神科医師A | 【編集
江部先生、はじめまして。
最近こちらにたどり着きました。uenoです。


今日の話題関連で教えていただきたいのですが、
「インスリンの基礎分泌」は、何のために、
どんな働き・作用をしているのですか。


既に書かれていることであれば、
その記事を教えてください。

膨大な知識量が蓄えられたブログで
ーーー先生のご努力には頭が下がりますーーー
目当てのモノにたどり着けません。
2013/08/20(Tue) 11:41 | URL | ueno | 【編集
Re: 受診について
kadonoさん

瀬尾先生は、泌尿器科がご専門ですが、内科も診ておられ、糖質制限食をご自身も実践されて
精通しておられます。
糖尿病患者さんも沢山診ておられます。
倉敷と福山なら近いですね。
まずは電話で相談されては如何でしょう。


広島県福山市今津町5-2-2
瀬尾クリニック 泌尿器科・内科
瀬尾一史先生
084-934-2233
2013/08/20(Tue) 11:45 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: 日本人の食事摂取基準(2010)
精神科医師A さん。

ありがとうございます。

厚生労働省:「日本人の食事摂取基準」(2010年版)

糖尿病学会より、ニュートラルで、いいですね。
2013/08/20(Tue) 11:54 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: タイトルなし
ueno さん

インスリン基礎分泌がないと人は生命活動を維持できないので、死に至ります。

1型糖尿病で、内因性インスリンゼロ(基礎分泌も追加分泌もゼロ)の場合、
診断後平均半年で亡くなっていました。

1921年にインスリンが発見されて、生存が可能となりました。
基礎分泌インスリンの役割の詳細は記事にしたいと思います。
2013/08/20(Tue) 12:03 | URL | ドクター江部 | 【編集
日本人の食事摂取基準(2010)-続き
 日本人の食事摂取基準(2005)では、炭水化物の目標量の記事に、以下の記載がありました。

『わが国よりも炭水化物摂取比率が低い欧米諸国では、脂質摂取過剰による健康障害の問題から、炭水化物の摂取比率を増加させることによって 脂質摂取比率を制限することの重要性が指摘されている』

 ところが2010年版では、この文章表現がまるごと削除されています
2013/08/20(Tue) 14:29 | URL | 精神科医師A | 【編集
佐久地方の前向きコホート研究からの解析
やはり! 日本人の糖尿病発症の最大要因はインスリン分泌不全

佐久地方の前向きコホート研究からの解析

研究の背景:これまでの報告はいずれも横断研究

 2型糖尿病の発症背景には,インスリン分泌不全とインスリン抵抗性とがあり,個々の患者において,それぞれは異なる寄与の度合いを持つといわれる。これまでにも日本人の2型糖尿病発症には,インスリン抵抗性が主体の欧米人に比べてインスリン分泌の低下(Diabetes Res Clin Pract 2004; 66: S37-43)あるいは遅延(Diabetes Care 1998; 21: 1133-1137)が関与する度合いが高いことが報告されていたが,いずれも横断研究であり,大規模な前向きコホート研究での成績は示されていなかった。

 このたび,長野県佐久地方の前向きコホート研究のデータから,やはり日本人の2型糖尿病発症には(インスリン抵抗性よりも)インスリン分泌不全が関与していることが示されたので,ご紹介したい(Diabetologia 2013; 56: 1671-1679)。
mtpro
2013/08/20(Tue) 15:54 | URL | A | 【編集
はじめてコメントさせていただきます。
専門的な意見交換がされる中恐縮ですが、
私は江部先生の糖質制限の本をよ読んで
ダイエットしている主婦です。

6月から今日までで約5kg減ったんですが
最近まったく変わりません。

糖質量はだいたい頭に入ったので
毎食計算はしていませんが、一食20gというのは
守れています。

最近は、量を食べると翌日ほとんどそのまま
体重が増加することが多く、
お通じが全くないわけではないのに、
夜の体重が、朝より+800gとかになり、
翌朝、そこから200gくらいしか減らないことがあります。

食べる量を減らし、夜の体重が増えないようにかなり
気をつかうことに疲れてきました。

運動は、食事開始30分後から筋トレと有酸素運動を、毎食後しています。
これはすごく頑張っていると自負しますが・・・

食べたまんま体重が変わらないって、何故でしょうか・・??

身長165cm、現在体重53kgです。

もしよろしければ助けてください。
2013/08/20(Tue) 16:56 | URL | ブルー | 【編集
Re: タイトルなし
ブルー さん

「身長165cm、現在体重53kg」 → BMI:19.47 です。これ以上は減る必要がないです。

ブルーさんの適正体重ですが、BMI:20 は欲しいところですので、
54.45kgくらいはあったほうがいいと思います。
BMI20以上から25未満が、総死亡率やがんのリスクが一番低いと思います。


2013/08/20(Tue) 17:07 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: 日本人の食事摂取基準(2010)-続き
精神科医師A さん

米国では、国策で
脂質摂取比率が減って糖質摂取比率が増えて肥満倍増ですね。
肥満率 1971年 14.5% → 2000年 30.9%

2010年の統計では、米国の肥満率は、35.9%とさらに増えて世界一の肥満国です。

日本人の食事摂取基準(2010)も、米国の失敗に学ぶ姿勢なら一番いいですね。
2013/08/20(Tue) 17:19 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: 佐久地方の前向きコホート研究からの解析
A さん

情報をありがとうございます。

「日本人の糖尿病発症の最大要因はインスリン分泌不全」
この常識は、どうやら大丈夫なようですね。
MTProで、山田悟先生が解説しておられたと思います。
2013/08/20(Tue) 17:22 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: タイトルなし
たま さん

精神科医師Aさんにもコメントいただきましたように
高脂質食/低炭水化物食は 低脂質食/高炭水化物食に比べて、肥満改善効果があります。
肥満はインスリン抵抗性の元凶の一つです。
従いまして、高脂質食/低炭水化物食において、インスリン抵抗性が改善します。

メタボリック・シンドロームの指標も全てが糖質制限食で改善します。

高糖質食の頻回・過剰摂取こそが、メタボやインスリン抵抗生の元凶と考えられます。
2013/08/20(Tue) 18:59 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: 質・量変わらない糖質制限食でa1c上昇とは?
a.m さん

まれですが、ゼチーアにより空腹時血糖値が上昇することがあるようです。
中止して様子をみては如何でしょう。

コレステロール値に関しては、190mgまでは薬の必要なしという意見もあります。
本ブログのカテゴリーのコレステロールの項をご参照ください。

食事内容はOKですし、血糖値やHbA1cも、正常値ですので問題ないです。
2013/08/21(Wed) 11:19 | URL | ドクター江部 | 【編集
コレステロール
糖質制限を2か月ほど実行し
現在、体重も少し減ったおかげか、普通に食べていても、HbA1cに動きはありません。

糖尿病は体重の5%が減るだけで、かなり改善されるという話を耳にしたことがあります。まさに、私はこの5%の差が引き金になるようです。

それからストレスです。
妊娠糖尿病で入院中、全く食事を採れない状態でしたのに、血糖値がはね上がってしまったことがありました。ブドウ糖を含んだ点滴はあったと思いますが医師によるとストレスとのことでした。

今また糖質制限に再チャレンジして「優」から「良」にしたいと考えてます。中性脂肪もだいぶ下がりました。コレステロールが高めではあります。先生のカテゴリも目を通しましたが、最近の研究で、中性脂肪が悪玉コレステロールを増やしているとか。
糖質制限で中性脂肪を下げコレステロールもよくなればいいです。
2013/08/21(Wed) 15:34 | URL | 椛 | 【編集
初めまして。範武と申します。
去年9月に境界型と診断され、先生のブログを参考に糖質制限(昼、夜)を続けてきました。
その半年後、再び糖負荷試験をやった時の結果です。



       空腹時  30分  60分  120分

血糖     93 146 216 162
尿糖     (-) (-) (±) (3+)
インスリン 0.0 2.6 9.7 7.2


そして半年後

      空腹時  30分  60分  120分

血糖    91 170 240 212
尿糖    (-) (-) (+) (3+)
インスリン 0.0 4.9 12.9 9.6

私は42歳で身長186センチです。HbA1cは低い時で5.3。高いと5.8です。
糖質制限前は体重77キロ。標準的な体型に思われがちですが、かなりの痩せ形です。お腹だけが異常に出てて完全メタボでした。服を着る事により隠せてました。
すると体重が現在57キロまで減ってしまい、ガリガリな体型です。先生のブログにもありましたが、間食でアーモンド等を食べてますがなかなか体重が戻りません
炭水化物を食べたときは、食後30分~60分ぐらいに筋トレ(腹筋、スクワット)しても血糖値がほとんど変わりません。
2回目の糖負荷で結果として血糖値が上がってしまいました。
インスリン値は多少よくなったのに何故血糖値
が上がってしまったのでしょうか?
そもそも私のインスリン値は低すぎでしょうか?
基準値が分からないので・・・・・
先生、お忙しいと思いますが時間が出来ましたらでよいのでお聞かせ下さい。





2016/04/09(Sat) 12:14 | URL |  | 【編集
Re: タイトルなし
範武 さん

186cm 77kg
BMIが16.5ですので、痩せすぎです。
摂取エネルギー不足がありますので、脂質、タンパク質は充分量摂取して、
体重を増やしましょう。

75g経口ブドウ糖負荷試験の前は、3日間、1日150g以上の糖質を摂取するとされています。
そううでないと正確な耐糖能が検査できないとされています。

空腹時のインスリンが0.0というのは、不思議なデータです。
全体にインスリン分泌はやや少なめです。
主治医とよくご相談ください。
2016/04/09(Sat) 14:24 | URL | ドクター江部 | 【編集
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