FC2ブログ
糖尿病網膜症と従来の糖尿病治療、予防は可能か?
こんにちは。

眼科医koruneさんから、埼玉の眼科医さみぃさんとは異なる見解をコメントいただきました。

【13/08/15 眼科医 korune

埼玉の眼科医さみぃ さんの投稿は一般的な眼科医の認識とはかなり異なる印象です。
非常に不思議な内容です。

「異常高値からのコントロールで網膜症ナシ…という例」は逆に多いです、というかそれが一般的です。

急性発症のHbA1c超高値の方は、合併症は無いです、短期間で生じません。

診断確定後に真面目に内科治療を継続して助かります。 (真面目に治療受けない方もいますけど)

網膜症の酷い方は、HbA1c8%台で自覚症状なく長年放置していた方が殆どです。

また、食後血糖値高値の肥満型の患者さんには網膜症重症化する事は少ないですね。

空腹時血糖高値の痩せ型の患者さんが網膜症重症化することが多いです。】


眼科医koruneさん。
ご意見ありがとうございます。

いろんな意見を出し合って議論するのは、知識の発展においてとても建設的なことと思います。

ご指摘通り、HbA1cが高値でも、罹病期間が短ければ、合併症はまだ生じていないと思います。

糖尿病網膜症は、通常は罹病後5年以降に始まるとされています。

日本眼科医会の平成17年の報道資料によれば、網膜症を発症する率は、糖尿病の罹病期間が長くなるにつれて高くなり、罹病期間が15年で40%、20年を超えると80%以上とされています。

網膜症が重症化し失明にいたる例は、年間3000人以上とされ、成人の中途失明の原因の第2位です。

次いで、やはり日本眼科医会の平成17年の報道資料によれば、

厚生労働省班研究
〔糖尿病における血管合併症の発症予防と進展抑制に関する調査(JDCStudy)〕によると、糖尿病にかかって約8年間で、網膜症が約28%発症するというデータが明らかになりました。つまり、糖尿病患者では 1 年に 3~4%ずつ網膜症が発症していくことになります。しかし、日本人に多い 2 型糖尿病は、診断された時にすでに発症から数年経過している場合が多いため、実際には糖尿病診断時に網膜症を発症している患者もいます。


さて、少なくとも厚生労働省班研究のデータは、糖尿病と診断されて、内科医と眼科医に受診している患者さんのものです。

このデータをみる限り、内科医と眼科医に受診して糖尿病の従来治療をきっちり受けていても、年間3~4%ずつ、糖尿病網膜症を発症していくということは明白です。

これでは「糖尿病の従来治療では、糖尿病網膜症の予防はできない」という明確なエビデンスがあるとしか言いようがありません。

糖尿病の従来治療で何故、糖尿病網膜症の予防ができないかは、従来の糖尿病食(高糖質食)を摂取していれば、たとえ薬物療法をしても、「食後高血糖」と「平均血糖変動幅増大」という酸化ストレスリスクが必ず生じるからと考えられます。

このようにエビデンスも含めて理論的に考察してみると、糖尿病合併症の予防には、糖質制限食以外の選択肢はないと考えられます。


江部康二


テーマ:糖尿病
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
ネットの効用
専門化が進み隣が見えなくなっている中で、いや、人間の身体はまだまだ不明なところがある中で、こういうやりとりができるのはすごいですね。
一患者なのに、学会の会場に参加しているような気分、そして、江部先生の切れのいい判定の小気味よさ。たまりません。
2013/08/15(Thu) 17:59 | URL | 北九州 三島 | 【編集
Re: ネットの効用
北九州 三島 さん

私も、糖尿病網膜症を調べてみて、日本眼科医会の報道資料を見たときは
網膜症の発症率の高さに、さすがにびっくりしました。
2013/08/15(Thu) 18:31 | URL | ドクター江部 | 【編集
これで終わりにします
これで終わりにします

> 内科医と眼科医に受診して糖尿病の従来治療をきっちり受けていても、
> 年間3~4%ずつ、糖尿病網膜症を発症していくということは明白です。
糖尿病の治療をきっちり受けている患者さんは96~97%もおりません
せいぜい半分くらいではないでしょうか?

また、発症時から良好なHbA1cを保っている方は、治療を要する重篤な網膜症にはなりません
網膜症が重症化して治療を要するのは、
 1.発症後長い間放置していた方
 2.真面目に内科治療を受けていない方
 3.DM自体が重篤で様々な問題があり、BSコントロールが難しい方
です
1.が一番多いです
それを防ぐために国を挙げて検診に努めている現状です
治療を擁する重症網膜症は、上記1.2.3.でほぼ全てです

発覚時HbA1c超高値の急性発症肥満型の患者さんは、眼科予後は一番良いです
内科治療で痩せれば、もう問題生じません

当たり前ですが、早期発見と真面目な治療、これが大事です
2013/08/15(Thu) 19:11 | URL | 眼科医 korune | 【編集
Re: これで終わりにします
眼科医 korune さん

コメント、ありがとうございます。

わが国において2型糖尿病患者を対象に行われた、
代表的な無作為割り付け試験の一つにあげられるのがJapan Diabetes Complications Study(JDCS)です。

●デザイン コホート。
●試験期間 追跡期間は8年。試験期間は1996年3月~2003年3月。
●対象患者 1631例:JDCSの参加者(40~70歳の日本人の2型糖尿病患者2033例)のうち,ベースラインに糖尿病網膜症を認めない患者1221例と,ベースラインに軽度非増殖性糖尿病網膜症を認める患者410例。

JDCSに参加した患者さんは、全員医療機関に登録されて、
基本的に全員きっちり治療を受けておられます。
そして約8年間で、網膜症が約28%発症するというデータが明らかになりました。
ただし、これは重症化ということではなく、網膜症の発症です。

重症の網膜症は、多くの場合 korune さんの仰る通りと思います。
しかしながら私は一糖尿人として、軽症でも網膜症の発症は予防したいと思います。
それから、HbA1cがコントロール良好でも
「食後高血糖」と「平均血糖変動幅増大」が見過ごされている場合があり、
この場合は網膜症の進行のリスクとなります。


2013/08/15(Thu) 22:57 | URL | ドクター江部 | 【編集
一医師の見解と研究
今回のコメントのやり取り、とても参考になりました。
これがいつも言われている、一医師の見解と信頼性の高い研究の対比ですね。
また、データの読み方にも明確に精度の違いがありました。
2013/08/17(Sat) 00:16 | URL | しん | 【編集
Re: 一医師の見解と研究
しん さん

かつては、東大教授や京大教授など、所謂権威がある人達が
寄り集まって、治療方針や診断指針を決めたりするのが普通でした。
これをコンセンサスによる決定というのですが、
EBMに基づくときは、「コンセンサス=根拠なし」となるのですね。
EBM的には、一位はRCT研究論文、二位がコホート研究で、
あとは根拠とはいいがたくなります。

日本糖尿病学会編「科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン」の食事療法の項目、
エネルギー制限食をランクAで推奨ですが、根拠はコンセンサスであり、
ブラック・ジョークかとビックリしました。
いやはや糖尿病学会さん、困ったものです。

私はEBMが全てとは、思っていませんが、無視もしてません。
2013/08/17(Sat) 18:15 | URL | ドクター江部 | 【編集
コメントを投稿
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可