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2013. 7. 23の日経メディカルの能登氏の記事への反論
こんにちは。

2013. 7. 23の日経メディカルのHP

http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/series/noto/201307/531703.html

「炭水化物制限の方が総カロリー制限より減量効果が大きい。○か×か?」

という能登氏執筆の記事において

イスラエルのIris Shai先生の論文(ニューイングランド・ジャーナル掲載)

DIRECT(Dietary Intervention Randomized Controlled Trial)4)について、

問題点を指摘しておられます。


DIRECTの結論は、

イスラエルの322人(男性86%)

(1)低脂肪食(カロリー制限あり)女性1500kcal、男性1800kcal

(2)オリーブ油の地中海食(カロリー制限あり)女性1500kcal、男性1800kcal

(3)低炭水化物食(カロリー制限なし)

3群の食事法を2年間実施。

低炭水化物食が、最も体重減少し、HDL-Cも増加。

36名の糖尿病患者において低炭水化物食群だけがHbA1cが有意差をもって改善。

です。


糖質制限群は、最初の2ヶ月は20g/日に糖質を制限、

その後3ヶ月目からは徐々に緩めて120g/日までOKと設定しています。

しかしながら、6ヶ月後、12ヶ月後、24ヶ月後、

40~41%の糖質を摂取しています。


つまり、このDIRECT論文も、

糖質40%の糖質制限食群(中糖質群)と

糖質約50%の低脂肪食群、地中海食群(高糖質群)を

比べた研究ということになります。

それで女性1500kcal、男性1800calのカロリー制限ありの他の2群に摂取カロリーを合わせてみると糖質制限食群でも、女性で150g/日、男性で180g/日の炭水化物を摂取していたことになります。

高雄病院のスーパー糖質制限食とは、3ヶ月以降の糖質摂取量が異なる研究です。


それでは、能登氏のいうDIRECTの問題点を検証してみます。


能登氏

『まず、炭水化物制限食を1年以上継続できた人が約80%しかいなかった点である。』


この点に関しては、以下の精神科医医師Aさんのコメント(13/07/26)があります。

「原文のFig.1をよく読んでみよう


-----低脂肪食-地中海食-低炭水化物食

開始時---104---109----109名

06か月---104---107----105

12か月---100---105----102

18か月---096---096----089

24か月---094---093----085

http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa0708681#t=article

ごらんのように、炭水化物制限食を1年間継続できた人が約93.5%、

1年6ヶ月継続できた人が約81.7%、2年間継続できた人が約78.0%であった。

能登氏の文章表現は疑問である。」



精神科医師Aさん、ありがとうございます。

ご指摘通りと思います。


能登氏

『3食群間で総カロリーが異なっており,糖質制限食の総カロリーが最も低かったため,減量効果が糖質制限によるものなのか総カロリー制限によるものなのか結論づけることができない。』


これは、不思議です。論文をきっちり読まれたのでしょうか?

まずベースラインの総摂取カロリーや、タンパク質・脂質・糖質摂取組成は、無作為割り付け試験ですので基本的に同一で、それが出発点です。

原著の論文には、試験開始後3群とも、出発点のベースラインからは、日々の摂取カロリーが、6ヶ月後、12ヶ月後、24ヶ月後と全て、有意に減少しています。

そして、ベースラインからのカロリー減少幅に3群で有意差はないということが明記してあります。

つまり、原著において、著者が総摂取カロリーに有意差がないと明記しているのを無視して「3食群間で総カロリーが異なっており,糖質制限食の総カロリーが最も低かった」と能登先生が述べておられるのは、いくら何でも著者のShai先生に失礼だと思います。

それから、低脂肪食と地中海食は女性1500kcal、男性1800kcalというカロリー制限があったのに対して、糖質制限はカロリー無制限というハンディキャップがありました。

それにも関わらず、糖質制限食群の場合も他の2群と同等の摂取カロリー減が認められたのは一見不思議です。

理由があるとすれば、満足感の高い食事であったので多くのカロリーを摂取する必然性がなかったということでしょうか。

これは、あくまでも仮説ですが、糖質制限食の一つの利点と言えるかもしれません。

能登氏

『その後発表された報告では,6年後には3食群ともほぼベースラインの体重に戻っていた。』


これも、結論をねじ曲げた表現でフェアではありません。

「DIRECT 後の4年間のフォローアップ研究」が実施され、

6年後も、体重減少の幅は小さくなりましたが、糖質制限食と地中海食では体重減少に関してまだ統計的有意差を保っていました。

統計的有意差があるのを無視して、3群とも一緒くたにするのは、能登先生、如何なものでしょう。

唯一脂質制限食だけが、6年後には体重減少の有意差が無くなっていました。

ただ有意差はあったのですが、一旦減った体重が一定リバウンドしたのは、スーパー糖質制限食のように、糖質12%で継続せずに、40%くらい摂取したためと思われます。スーパー糖質制限食ならリバウンドしません。

同じ論文を読んで、能登先生がこのような歪曲した解釈を、医事新報という定評ある医学雑誌や日経メディカルに載せられたことは、極めて残念です。

能登氏

『総カロリーは同じだが、炭水化物、蛋白質、脂質の構成比率が異なる食事による減量効果の比較試験が09年に米国から発表された。その結果は、高炭水化物摂取群と炭水化物制限群では2年後の減量効果に有意差を認めなかったというものだった(図4)8)。』


この引用論文が、昨日(2013.7.31)の本ブログ記事で批判したものです。



江部康二


☆☆☆以下は

2013. 7. 23の日経メディカルのHP

http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/series/noto/201307/531703.html

「炭水化物制限の方が総カロリー制限より減量効果が大きい。○か×か?」

という能登氏執筆の記事からの抜粋です。



・・・前略

<減量に“効く”のは、カロリー制限>

 では具体的に、どのような減量法が効果的なのだろうか。

減量は、摂取カロリー制限や栄養指導、運動、行動変容、
精神状態の改善などをトータルに行うことが重要である。

中でも今回は、第2回連載の“続編”として「食事療法」に関するエビデンスをレビューしてみたい。

 前回解説した通り、炭水化物(糖質)制限を行えば、短期間で顕著に減量する。

では、炭水化物制限の方が総カロリー制限より減量効果は大きいのだろうか。

 レベルの高いエビデンスでは、現時点で両者の効果に有意な差はない。

冒頭の問題の答えは「×」である。

2008年、「炭水化物制限食」「脂質制限食」「地中海式食」の3群による減量効果の比較試験の結果がイスラエルから発表され、2年間の追跡期間で炭水化物制限食による減量効果が最も大きいことが実証され4)、注目を集めた(図2)。

しかし、この研究にはいくつか問題点が存在する。

まず、炭水化物制限食を1年以上継続できた人が約80%しかいなかった点である。

また,3群の中で炭水化物制限食群の総カロリーが最も低かったため(論文発表後に指摘されたため別報にて開示5)、減量効果が炭水化物制限によるものなのか総カロリー制限によるものなのか結論づけることができない問題がある。

さらに、その後発表された続報では、6年後には3群共ほぼベースラインの体重に戻っていたのである(図3)6)。

06年に発表されたメタアナリシスでは、脂質制限食と比較して炭水化物制限食は開始後6カ月までは有意な体重減少をもたらすが、継続率は50~70%で、1年後には有意差は消失することが報告された7)。

一方、総カロリーは同じだが、炭水化物、蛋白質、脂質の構成比率が異なる食事による減量効果の比較試験が09年に米国から発表された。その結果は、高炭水化物摂取群と炭水化物制限群では2年後の減量効果に有意差を認めなかったというものだった(図4)8)。


・・・後略



著者プロフィール

能登洋(国立国際医療研究センター病院 糖尿病・代謝・内分泌科 医長)

●東大医学部卒。同大附属病院、ベス・イスラエル医療センター(米国)、東京厚生年金病院、テキサス大サウスウェスタン医療センター(同)などを経て、2009年から現職。10年から東京医科歯科大臨床教授。



<参考文献>

1)Wing RR. Long-term effects of a lifestyle intervention on weight and cardiovascular risk factors in individuals with type 2 diabetes mellitus: four-year results of the Look AHEAD trial. Arch Intern Med. 2010;170:1566-75.

2)Rejeski WJ, Ip EH, Bertoni AG, et al. Lifestyle change and mobility in obese adults with type 2 diabetes. N Engl J Med. 2012;366:1209-17.

3)国立国際医療研究センター病院 糖尿病標準診療マニュアル(一般診療所・クリニック向け)

4)Shai I, Schwarzfuchs D, Henkin Y, et al. Weight loss with a low-carbohydrate, Mediterranean, or low-fat diet. N Engl J Med. 2008;359:229-41.

5)Moller K, Krogh-Madsen R. Weight loss with a low-carbohydrate, Mediterranean, or low-fat diet. N Engl J Med. 2008;359:2170; author reply 1-2.

6)Schwarzfuchs D, Golan R, Shai I. Four-year follow-up after two-year dietary interventions. N Engl J Med. 2012;367:1373-4.

7)Nordmann AJ, Nordmann A, Briel M, et al. Effects of low-carbohydrate vs low-fat diets on weight loss and cardiovascular risk factors: a meta-analysis of randomized controlled trials. Arch Intern Med. 2006;166:285-93.

8)Sacks FM, Bray GA, Carey VJ, et al. Comparison of weight-loss diets with different compositions of fat, protein, and carbohydrates. N Engl J Med. 2009;360:859-73.

9)Foster GD, Wyatt HR, Hill JO, et al. Weight and metabolic outcomes after 2 years on a low-carbohydrate versus low-fat diet: a randomized trial. Ann Intern Med. 2010;153:147-57.

10)Dansinger ML, Gleason JA, Griffith JL, Selker HP, Schaefer EJ. Comparison of the Atkins, Ornish, Weight Watchers, and Zone diets for weight loss and heart disease risk reduction: a randomized trial. JAMA. 2005;293:43-53.

11)Wadden TA, Volger S, Sarwer DB, et al. A two-year randomized trial of obesity treatment in primary care practice. N Engl J Med. 2011;365:1969-79.

12)Appel LJ, Clark JM, Yeh HC, et al. Comparative effectiveness of weight-loss interventions in clinical practice.N Engl J Med. 2011;365:1959-68.

13)Maggard-Gibbons M, Maglione M, Livhits M, et al. Bariatric surgery for weight loss and glycemic control in nonmorbidly obese adults with diabetes: a systematic review. JAMA. 2013;309:2250-61.

14)Schauer PR, Kashyap SR, Wolski K, Brethauer SA, Kirwan JP, Pothier CE, Thomas S, Abood B, Nissen SE, Bhatt DL. Bariatric surgery versus intensive medical therapy in obese patients with diabetes. N Engl J Med. 2012;366:1567-76.

15)kramuddin S, Korner J, Lee WJ, et al. Roux-en-Y gastric bypass vs intensive medical management for the control of type 2 diabetes, hypertension, and hyperlipidemia: the Diabetes Surgery Study randomized clinical trial. JAMA. 2013;309:2240-9.
テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
栄養士による食事指導
連日のコメント投稿恐れいります。

本日、妊娠糖尿病の為の食事指導を受けてきました。
2週間ほど前から糖質制限をしている事、現在の食事内容(スーパー糖質制限)等の話をしてみました。

栄養士からは、野菜は十分摂れていて良いが、たんぱく質が多すぎ、ご飯を一切食べていないのはバランスが悪いと指摘されました。
今の状態は炭水化物を抜いている事で大分体がこたえている状態と思われるし、低血糖を起こしてしまうと言われました。

栄養士の話を聞いて、では三食の内、朝と昼位は少しのご飯を取り入れて見ようと思うと言うと、それなら夕食にご飯をしっかり摂るようにしなさいと指導を受けました。

栄養士の話では、夜寝ている内に糖質が分解されるわけで、夕食の炭水化物を抜くと元々体に蓄えられている糖を壊して分解される事によって低血糖を起こしてしまうし痩せる一方だと…。

炭水化物抜きダイエットとかリンゴダイエットとか色々な本も出ているけど、バランスよく食事するようにと言われました。

今のままの糖質制限で大丈夫と思いながらも、色々な事を勉強したり言われたりすることで、やっぱり混乱したり不安になったりします。


2013/08/01(Thu) 17:06 | URL | まるまんまる | 【編集
Re: 栄養士による食事指導
まるまんまる さん。

人類は、チンパンジーと分かれた700万年前から、
穀物無しの、狩猟・採集で糖質制限食でした。
700万年間、糖質制限食で、妊娠・出産・子育て・日常生活を送ってきたのです。

「農耕-穀物」摂取開始は、わずか1万年であることをお忘れ無く。
糖質制限食に適合した人類の消化・生理・栄養・代謝システムに、
穀物で50~60%をエネルギー摂取することは、大変バランスの悪い食事なのです。
生活習慣病と呼ばれる病気の本質は、糖質頻回過剰摂取病です。
糖尿病、妊娠糖尿病もその一つです。

糖質制限食で高血糖は改善しますが、肝臓で糖新生してブドウ糖をつくるので
低血糖にはなりません。
2013/08/01(Thu) 22:46 | URL | ドクター江部 | 【編集
日本の医療村レベルはその程度でしょ
こんばんわ!!
新聞などでも降圧剤のデータ改ざんが報道されていますが、本当に恥ずべき事です。
日本の医学教育は英語で医学・科学を教えないので、かなり頓珍漢な事が普通にまかり通っている現実があります。

江部先生のように医学・科学に真摯であり本当の事を発言している医師は、残念ですが本当に少ないのが日本医療の現実であり恥ずべき事だと考えます。
既得権益だらけの医療村は原発村と同じく腐りきっています。
日本に本物の医学・科学が根付くには膨大な時間と教育が必要そうです。
2013/08/01(Thu) 23:12 | URL | 針立酔候 | 【編集
Re: 過去の常識は今の非常識
ふじのさくら さん

応援そして、「社団法人・日本糖質制限医療推進協会」へのご参加、ありがとうございます。
2013/08/02(Fri) 21:39 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: 日本の医療村レベルはその程度でしょ
針立酔候 さん

応援ありがとうございます。
科学的な真実をどんどん情報発信していきます。
2013/08/02(Fri) 21:55 | URL | ドクター江部 | 【編集
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