2013年07月24日 (水)
こんにちは。
「糖質制限食」という言葉は日本において、大分浸透してきました。
特に2012年以降は、知っている人がかなり増えたと思います。
その中で、
1)スーパー糖質制限食(1回の食事の糖質量20g以下)
2)山田悟先生の緩い糖質制限食(1回の食事の糖質量30~40g)
3)釜池豊秋先生の糖質ゼロ食(1日1食で、夕食、糖質は5g以下)
などがあり、1回の糖質摂取量設定に違いがあります。
さて、それでは糖質はどこまで減らせるのでしょう?
まず、理論的に考察すると、人体内で合成できない必須アミノ酸、必須脂肪酸、必須ビタミン、必須ミネラルは食事から摂る必要があります。
一方、必須糖質と呼ばれる物質は存在しません。
糖質摂取ゼロでも、肝臓で糖新生してブドウ糖を確保できるからです。
実際、国際食事エネルギーコンサルテーショングループの報告では、
「炭水化物(この場合は糖質とほぼ同義)の理論的な最小必要量はゼロである」(*)
と明記されています。
すなわち、理論的には、ヒトは糖質摂取ゼロで生きていけることになります。
しかしながら、哺乳類の中でヒトとサルとモルモットだけが、ビタミンCを作れません。
従って、食事からビタミンCを摂取しなくてはなりません。
進化の過程の食生活を通して、そのような身体を獲得したと考えられます。
それでは年間を通して、食べることができるビタミンC源にはどのようなものがあるでしょう。
チンパンジーと分岐して以降約700万年間、人類は狩猟・採集を生業としており、日常的な食料は、魚貝類、小動物や動物の肉・内臓・骨・骨髄、野草、野菜、キノコ、海藻、昆虫などです。
ときどき食べることができたのは、ナッツ類(種実類)、果物、山芋・百合根などの根茎類でしょうか。
上記のなかで、ビタミンCが豊富なのは、野草、野菜、果物です。
果物は、実りの秋といいますが、実は年間通して旬の物があります。
ただ野生種で小さいし、木になる果物は、サルやチンパンジーなどと競合しており、樹上生活者の猿のおこぼれくらいが人類の手に入ったのでしょうが、日常的なビタミンC補充には、足らなかったと思います。
野イチゴなどが、人類の先祖のほうが手に入れやすかったと思いますが、少量でしょう。
野草は年間通して、確実に獲得できるビタミンC供給源だった可能性があります。
せり、つくし、のびる、ふき・ふきのとうなどには、ビタミンCが豊富に含まれています。
他の野草にもビタミンCはあると思いますし、野草なら年間を通して何か常に摂取することが可能です。
種子類のなかでシイ、ギンナン、クリなどにはビタミンCが豊富に含まれています。
ともあれ、農耕前の人類は野草、果物などから、年間を通してビタミンCを補充していたのでしょう。
サルも基本的には、ヒトと同じような食物からビタミンCを摂取していたのだとと思いますが、果物獲得に関してはヒトより有利ですね。
次はモルモットです。
モルモットは完全な草食性動物で、野生では、野草や草の実、穀類などを食べています。
モルモットの場合は、ビタミンCの供給源は、ほとんど野草だったと考えられます。
このように考えてくると、ヒトにおいても、野草がビタミンC補給には、一番頼りになっていた気がします。
結論としては、ビタミンCを補充するための食材には、少量ながらも必ず糖質が含まれているということになります。
従って、理論的に糖質ゼロでOKでも、人類700万年間の進化の過程で、現実には充分量のビタミンCを得るためには糖質(野草、野菜、果物)も必然的に摂取していたこととなります。
高雄病院で推奨する「スーパー糖質制限食」ですが、給食のメニューにおいて、葉野菜などを中心に約10gくらいの糖質が含まれています。
その野菜分でビタミンCも補充できるので、サプリは要らないのです。
糖質が約10gなのは、食後高血糖予防や平均血糖変動幅増大予防、そしてインスリン追加分泌を抑えるためです。
釜池豊秋先生の糖質ゼロ食は、ビタミンC確保に留意して、つらくなくできる人はいいと思います。
山田悟先生の緩い糖質制限食は、食後高血糖予防や平均血糖変動幅増大にどのように対処するかですが、個人差もあると思います。
ちなみに、生肉・生魚が主食のころのイヌイットは、ビタミンC不足であり、イヌイットの血中ビタミンC濃度は、
壊血病危険ラインの0.2mg/dl未満の場合も多く、歯肉出血が高率に見られたそうです。
イヌイットの場合は、血中ビタミンC濃度が低値であることは、壊血病と新生児高チロシン血症のリスクを高めていました。(**)
(*)
Eur J Clin Nutr. 1999 Apr;53 Suppl 1:S177-8.
Report of the IDECG Working Group on lower and upper limits of carbohydrate and fat intake. International Dietary Energy Consultative Group.
Bier DM, Brosnan JT, Flatt JP, Hanson RW, Heird W, Hellerstein MK, Jéquier E, Kalhan S, Koletzko B, Macdonald I, Owen O, Uauy R.
(**)
Neonatal hypertyrosinemia and evidence of deficiency of ascorbic acid
in Arctic and subarctic peoples
624-626 CMA JOURNAL/OCTOBER 4,1975/VOL.113
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1956727/pdf/canmedaj01544-0034.pdf
江部康二
「糖質制限食」という言葉は日本において、大分浸透してきました。
特に2012年以降は、知っている人がかなり増えたと思います。
その中で、
1)スーパー糖質制限食(1回の食事の糖質量20g以下)
2)山田悟先生の緩い糖質制限食(1回の食事の糖質量30~40g)
3)釜池豊秋先生の糖質ゼロ食(1日1食で、夕食、糖質は5g以下)
などがあり、1回の糖質摂取量設定に違いがあります。
さて、それでは糖質はどこまで減らせるのでしょう?
まず、理論的に考察すると、人体内で合成できない必須アミノ酸、必須脂肪酸、必須ビタミン、必須ミネラルは食事から摂る必要があります。
一方、必須糖質と呼ばれる物質は存在しません。
糖質摂取ゼロでも、肝臓で糖新生してブドウ糖を確保できるからです。
実際、国際食事エネルギーコンサルテーショングループの報告では、
「炭水化物(この場合は糖質とほぼ同義)の理論的な最小必要量はゼロである」(*)
と明記されています。
すなわち、理論的には、ヒトは糖質摂取ゼロで生きていけることになります。
しかしながら、哺乳類の中でヒトとサルとモルモットだけが、ビタミンCを作れません。
従って、食事からビタミンCを摂取しなくてはなりません。
進化の過程の食生活を通して、そのような身体を獲得したと考えられます。
それでは年間を通して、食べることができるビタミンC源にはどのようなものがあるでしょう。
チンパンジーと分岐して以降約700万年間、人類は狩猟・採集を生業としており、日常的な食料は、魚貝類、小動物や動物の肉・内臓・骨・骨髄、野草、野菜、キノコ、海藻、昆虫などです。
ときどき食べることができたのは、ナッツ類(種実類)、果物、山芋・百合根などの根茎類でしょうか。
上記のなかで、ビタミンCが豊富なのは、野草、野菜、果物です。
果物は、実りの秋といいますが、実は年間通して旬の物があります。
ただ野生種で小さいし、木になる果物は、サルやチンパンジーなどと競合しており、樹上生活者の猿のおこぼれくらいが人類の手に入ったのでしょうが、日常的なビタミンC補充には、足らなかったと思います。
野イチゴなどが、人類の先祖のほうが手に入れやすかったと思いますが、少量でしょう。
野草は年間通して、確実に獲得できるビタミンC供給源だった可能性があります。
せり、つくし、のびる、ふき・ふきのとうなどには、ビタミンCが豊富に含まれています。
他の野草にもビタミンCはあると思いますし、野草なら年間を通して何か常に摂取することが可能です。
種子類のなかでシイ、ギンナン、クリなどにはビタミンCが豊富に含まれています。
ともあれ、農耕前の人類は野草、果物などから、年間を通してビタミンCを補充していたのでしょう。
サルも基本的には、ヒトと同じような食物からビタミンCを摂取していたのだとと思いますが、果物獲得に関してはヒトより有利ですね。
次はモルモットです。
モルモットは完全な草食性動物で、野生では、野草や草の実、穀類などを食べています。
モルモットの場合は、ビタミンCの供給源は、ほとんど野草だったと考えられます。
このように考えてくると、ヒトにおいても、野草がビタミンC補給には、一番頼りになっていた気がします。
結論としては、ビタミンCを補充するための食材には、少量ながらも必ず糖質が含まれているということになります。
従って、理論的に糖質ゼロでOKでも、人類700万年間の進化の過程で、現実には充分量のビタミンCを得るためには糖質(野草、野菜、果物)も必然的に摂取していたこととなります。
高雄病院で推奨する「スーパー糖質制限食」ですが、給食のメニューにおいて、葉野菜などを中心に約10gくらいの糖質が含まれています。
その野菜分でビタミンCも補充できるので、サプリは要らないのです。
糖質が約10gなのは、食後高血糖予防や平均血糖変動幅増大予防、そしてインスリン追加分泌を抑えるためです。
釜池豊秋先生の糖質ゼロ食は、ビタミンC確保に留意して、つらくなくできる人はいいと思います。
山田悟先生の緩い糖質制限食は、食後高血糖予防や平均血糖変動幅増大にどのように対処するかですが、個人差もあると思います。
ちなみに、生肉・生魚が主食のころのイヌイットは、ビタミンC不足であり、イヌイットの血中ビタミンC濃度は、
壊血病危険ラインの0.2mg/dl未満の場合も多く、歯肉出血が高率に見られたそうです。
イヌイットの場合は、血中ビタミンC濃度が低値であることは、壊血病と新生児高チロシン血症のリスクを高めていました。(**)
(*)
Eur J Clin Nutr. 1999 Apr;53 Suppl 1:S177-8.
Report of the IDECG Working Group on lower and upper limits of carbohydrate and fat intake. International Dietary Energy Consultative Group.
Bier DM, Brosnan JT, Flatt JP, Hanson RW, Heird W, Hellerstein MK, Jéquier E, Kalhan S, Koletzko B, Macdonald I, Owen O, Uauy R.
(**)
Neonatal hypertyrosinemia and evidence of deficiency of ascorbic acid
in Arctic and subarctic peoples
624-626 CMA JOURNAL/OCTOBER 4,1975/VOL.113
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1956727/pdf/canmedaj01544-0034.pdf
江部康二
初めまして。
現在双子を妊娠中なのですが、一週間前の検診で尿糖+、それから食後2時間の血糖値が112と言われました。
妊娠糖尿病の疑いがあるとの事で 次回の検診で糖尿病の検査を受けます。
そこでネットで妊娠糖尿病の事を調べていたところ、江部先生の糖質制限を知り、早速主食抜き・糖質制限を試してみたところ、早くも一週間で1キロ減っていました。
私の場合、双子妊娠7ヵ月でまだ3キロ程度(妊娠前52キロです)しか増えていないので、とりあえず次回の検診の糖尿病検査に引っ掛からないように糖質制限をしてみたのですが、体重が減っている事が赤ちゃんにとって大丈夫なのかと心配になってきました。
次回の検診まであと一週間あるのですが、このまま続けてみていいのか不安になっています。
糖質制限を始めて一週間で体重が1キロ程減るのは普通の事でしょうか?
過度の制限はしていないつもりです。
ちなみに妊娠初期の血液検査では食後2時間の血糖値は84でしたし、妊娠前にも一度検査をしたことがありますが、異常なしでした。
ただ、親族に糖尿病はいいますが…。
現在双子を妊娠中なのですが、一週間前の検診で尿糖+、それから食後2時間の血糖値が112と言われました。
妊娠糖尿病の疑いがあるとの事で 次回の検診で糖尿病の検査を受けます。
そこでネットで妊娠糖尿病の事を調べていたところ、江部先生の糖質制限を知り、早速主食抜き・糖質制限を試してみたところ、早くも一週間で1キロ減っていました。
私の場合、双子妊娠7ヵ月でまだ3キロ程度(妊娠前52キロです)しか増えていないので、とりあえず次回の検診の糖尿病検査に引っ掛からないように糖質制限をしてみたのですが、体重が減っている事が赤ちゃんにとって大丈夫なのかと心配になってきました。
次回の検診まであと一週間あるのですが、このまま続けてみていいのか不安になっています。
糖質制限を始めて一週間で体重が1キロ程減るのは普通の事でしょうか?
過度の制限はしていないつもりです。
ちなみに妊娠初期の血液検査では食後2時間の血糖値は84でしたし、妊娠前にも一度検査をしたことがありますが、異常なしでした。
ただ、親族に糖尿病はいいますが…。
2013/07/24(Wed) 22:24 | URL | まるまんまる | 【編集】
まつなかともこ さん
アトピーの改善、良かったです。
糖尿病ではないので、プチとか緩やかな糖質制限とか
つらくない範囲で実践されたら、よいと思います。
アトピーの改善、良かったです。
糖尿病ではないので、プチとか緩やかな糖質制限とか
つらくない範囲で実践されたら、よいと思います。
2013/07/24(Wed) 22:45 | URL | ドクター江部 | 【編集】
まるまんまる さん
一週間で体重が1キロ程減るのは普通の事です。
この場合、水分の移動が半分です。
妊娠糖尿病といってもごく軽症ですので、緩やかな糖質制限でもいけそうですね。
緩やかな糖質制限で、インスリンなしで、乗りきれると思います。
一週間で体重が1キロ程減るのは普通の事です。
この場合、水分の移動が半分です。
妊娠糖尿病といってもごく軽症ですので、緩やかな糖質制限でもいけそうですね。
緩やかな糖質制限で、インスリンなしで、乗りきれると思います。
2013/07/24(Wed) 22:49 | URL | ドクター江部 | 【編集】
はじめまして。
ダイエットのためにスーパー糖質制限を始めて1ヶ月になる27歳女です。
体重は大幅な減りは無かったのですが、今まで微動だにしなかった数字が少しだけ減り、これから!!という時に、異変が起きました。
数日前の夕飯後、突然赤い斑点が手足に広がっていったのです。
今は薬を飲んでおり、斑点は無くなりました。
蕁麻疹は今まで出来た事がなかったので、思い当たる変化は糖質制限しかありませんでした。
糖質制限をすると、どうしてもたんぱく質に偏ってしまいますよね。
食事は江部先生のメニューを参考にしていたのですが。。
ちなみにカロリーも一日1500はとっていたと思います。
ダイエットのためにスーパー糖質制限を始めて1ヶ月になる27歳女です。
体重は大幅な減りは無かったのですが、今まで微動だにしなかった数字が少しだけ減り、これから!!という時に、異変が起きました。
数日前の夕飯後、突然赤い斑点が手足に広がっていったのです。
今は薬を飲んでおり、斑点は無くなりました。
蕁麻疹は今まで出来た事がなかったので、思い当たる変化は糖質制限しかありませんでした。
糖質制限をすると、どうしてもたんぱく質に偏ってしまいますよね。
食事は江部先生のメニューを参考にしていたのですが。。
ちなみにカロリーも一日1500はとっていたと思います。
2013/07/25(Thu) 09:24 | URL | アリエッタ | 【編集】
アリエッタ さん
「色素性痒疹」というのが、断食のときとか、ダイエットででることがあります。
上背部、胸部を中心に痒みの強い皮疹がでます。
ケトン体が高値のときでやすいとされていますが、ほとんどは低カロリー過ぎる場合です。
1500kcal/日なら大丈夫と思うのですが、医師の診断はどうでしたでしょう?
「色素性痒疹」というのが、断食のときとか、ダイエットででることがあります。
上背部、胸部を中心に痒みの強い皮疹がでます。
ケトン体が高値のときでやすいとされていますが、ほとんどは低カロリー過ぎる場合です。
1500kcal/日なら大丈夫と思うのですが、医師の診断はどうでしたでしょう?
2013/07/25(Thu) 19:19 | URL | ドクター江部 | 【編集】
お返事ありがとうございます。
病院に行ったら、蕁麻疹は原因がわからないと言われました。
医者に糖質制限をしていると言ったら、食事がたんぱく質に偏っている事が原因となっている可能性があるとのこと。
他の皆さんは蕁麻疹が出ることはないのでしょうか?
ちなみに、私は手足にだけ蕁麻疹が出ました。
病院に行ったら、蕁麻疹は原因がわからないと言われました。
医者に糖質制限をしていると言ったら、食事がたんぱく質に偏っている事が原因となっている可能性があるとのこと。
他の皆さんは蕁麻疹が出ることはないのでしょうか?
ちなみに、私は手足にだけ蕁麻疹が出ました。
2013/07/28(Sun) 10:18 | URL | アリエッタ | 【編集】
アリエッタ さん
色素性痒疹はまれにあるようですが、
じんましんは、あまり聞いたことがありません。
しかし、糖質制限食実践という食生活の急速な変化ということがありますので、
いろんな症状が、一時的にでる可能性はありえると思います。
色素性痒疹はまれにあるようですが、
じんましんは、あまり聞いたことがありません。
しかし、糖質制限食実践という食生活の急速な変化ということがありますので、
いろんな症状が、一時的にでる可能性はありえると思います。
2013/07/29(Mon) 15:42 | URL | ドクター江部 | 【編集】
「色素性痒疹」で画像検索してみますと、たくさんでてきます。この写真に似ていないでしょうか?
2013/07/29(Mon) 21:37 | URL | 精神科医師A | 【編集】
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