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摂取エネルギーと消費エネルギー、基礎代謝量、食事誘発熱産生
こんにちは。

2013年07月12日 (金)の本ブログ記事
「2013年7月・糖質制限食による体重減少効果」

が、やや難しいとのコメントがありましたので、もう一度わかりやすく説明してみます。

摂取エネルギーと消費エネルギー、基礎代謝量、身体活動量、食事誘発熱産生


1)摂取エネルギー > 消費エネルギー   → 体重増加
   摂取エネルギー = 消費エネルギー   → 体重不変
   摂取エネルギー < 消費エネルギー   → 体重減少

2)通常のカロリー制限食(高糖質食)なら
   「消費エネルギー=基礎代謝量+身体活動量(運動や家事)+食事誘発熱産生(DIT)」

3)糖質制限食なら、高糖質食の時には無い
 「肝臓の糖新生でエネルギーを消費」→基礎代謝の増加
 「高蛋白食摂取」→食事誘発熱産生(DIT)の増加 」
 が認められる。

1)は生理学的事実です。

2)3)を比較すると糖質制限食の方が高糖質食に比し、体重が減少しやすいことは明白です。


基礎代謝量(☆)は、目が覚めた状態で、空腹で安静にしているときに、生命維持のために消費される必要最小限のエネルギー代謝量です。睡眠中のことではありません。

睡眠中は基礎代謝量より、約10%くらい代謝が下がるとされています。

身体活動量は、スポーツや家事で身体を動かしたときのエネルギー消費量です。

食事誘発熱産生(☆☆)

食事をした後は安静にしていても代謝量が増えます。

これを食事誘発熱産生(DIT)といいます。

体内に吸収された栄養素が分解され、その一部が体熱となって消費されるからです。

DITによる消費エネルギーは、実質吸収エネルギーの、糖質では6%、脂質では4%、タンパク質で30%であり、蛋白質が多いです。

*食事誘発熱産生(DIT)を、簡単に説明すると、
100キロカロリーの糖質を摂取した時は、6キロカロリーが、
100キロカロリーの脂質を摂取した時は、4キロカロリーが、
100キロカロリーのタンパク質を摂取した時は、30キロカロリーが
熱に変わり、消費エネルギーとしてカウントされます。


江部康二


(☆)基礎代謝量
厚生労働省のe-ヘルスネットから転載
http://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/metabolic/ym-019.html
基礎代謝量(きそたいしゃりょう)
basal metabolism BM
基礎代謝

心身ともに安静な状態の時、生命維持のために消費される必要最小限のエネルギー代謝量。

何もせずじっとしている時でも、体は生命活動を維持するために、心拍や呼吸、体温の維持などを行っていますが、基礎代謝量(単に基礎代謝ともいいます)はこれらの活動で消費される必要最小限のエネルギー量のことです。

基礎代謝量は年齢・性別が同じであれば体の表面積にほぼ比例しますが、体表面積を測定することは難しいため、近似値として、体重当たりの基準値が広く用いられています。

基礎代謝量は通常、10代をピークに加齢とともに低下します。また、体の組成、すなわち筋肉と脂肪の比率も基礎代謝量に大きく影響します。基礎代謝量を臓器別に見ると、筋肉、心臓、脳がほぼ2割ずつを消費しており、筋肉の少ない人は基礎代謝量が低くなります。一般に、男性に比べ女性の基礎代謝量が低いのはこのためです。

運動不足の肥満者では、筋肉量が少なく、基礎代謝が低下しているため、減量がうまく進まない人がいます。筋肉が増えれば基礎代謝量が増えますので、肥満の改善にはよく筋トレがすすめられます。また、ウオーキング、水泳などの有酸素運動を続けることも基礎代謝を高める効果があります。

一方、急激な減量を行うと、脂肪量が減るとともに筋肉量も減り、リバウンドするとますます基礎代謝量が低下して減量しにくくなりますので、無理な減量はつつしみましょう。


(☆☆)食事誘発性熱産生

厚生労働省のe-ヘルスネットから転載
http://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/exercise/ys-030.html
食事誘発性熱産生(しょくじゆうはつせいねつさんせい)
Diet Induced Thermogenesis DIT
特異動的作用 Specific Dynamic Action SDA

食事をした後、安静にしていても代謝量が増大すること。

食事を摂ると体内に吸収された栄養素が分解され、その一部が体熱となって消費されます。このため、食事をした後は安静にしていても代謝量が増えます。この代謝の増加を食事誘発性熱産生または特異動的作用といいます。

食事誘発性熱産生でどれくらいエネルギーを消費するかは栄養素の種類によって異なります。たんぱく質のみを摂取したときは摂取エネルギーの約30%、糖質のみの場合は約6%、脂質のみの場合は約4%で、通常の食事はこれらの混合なので約10%程度になります。食事をした後、身体が暖かくなるのはこの食事誘発性熱産生によるものです。

加齢や運動不足で筋肉が衰えると、基礎代謝が低下するだけでなく食事誘発性熱産生も低下します。逆にトレーニングで筋肉を増やすと食事誘発性熱産生は高くなるとされています。

また、食事の摂り方としてよく噛まずに飲み込んだり、流動食だけを摂る場合に比べると、よく噛んで食べる方が食事誘発性熱産生は高くなるといわれています。



テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
スロージョギングと血糖値
江部先生とみなさんにご報告です。

2型糖尿人なため、日ごろ、スーパー糖質制限をしているのですが、どうしてもラーメンを食べたいとき、麺2分の1で食べてます。
ただ、血糖値が心配なため、食後2時間以内に1時間のスロージョギングをすることを条件にして。

すると2時間後の血糖値は135~145.
試しにジョギングをしないと185でアウト。
ジョギングと同じ距離で1時間20分のウオーキングだと165でした。

ちなみに食パン1枚で、1時間のジョギングを挟むと2時間後、135。

スロージョギング程度の運動強度でこのような結果です。

どうしても、炭水化物を摂りたいときのご参考までに。
2013/07/14(Sun) 12:44 | URL | 天城静男 | 【編集
ヒトはなぜ太るのか?
ヒトはなぜ太るのか?三回読みました。 江部先生の文章がいかに一般人に解りやすく書かれているかよくわかりました。忙しいなかありがとうございます。
2013/07/14(Sun) 17:01 | URL | 奈良県吉野けんさん | 【編集
はじめまして。すでにどなたか言及されているかもしれませんが、脳が酢酸をエネルギー源にできるという論文です↓(原論文へのリンクあります)

恐怖のアルコール その1 (酢を昼間から飲んでいた酒豪のクラスメートの謎がようやく解けた)
http://blog.livedoor.jp/beziehungswahn/archives/28140763.html

これは大酒飲みの人のデータですが、脳のブドウ糖利用が減るという意味では、スーパー糖質制限食やケトン食の人は、もしかしたら脳が酢酸を利用しやすくなっているかもしれませんね。だとすると、お酢だけでなく、アルコール代謝物としての酢酸を求めてお酒が好きになるという可能性もあるかもしれませんが。
2013/07/14(Sun) 17:42 | URL | deepseafish | 【編集
Re: スロージョギングと血糖値
天城静男 さん

貴重な情報をありがとうございます。

とても参考になります。

ちなみに、身長・体重をご教示頂けば幸いです。
以前、東海大学の大櫛先生と、共同研究したとき、BMI25以上の人は
運動効果が出にくかった経験があります。
2013/07/14(Sun) 18:29 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: ヒトはなぜ太るのか?
奈良県吉野けんさん

「ヒトはなぜ太るのか?」
いい本なのですが、確かに難解ですね。
2013/07/14(Sun) 18:30 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: タイトルなし
deepseafish さん

貴重な情報をありがとうございます。

脳が、酢酸をエネルギー源にできるとは知りませんでした。
とても参考になります。
2013/07/14(Sun) 18:33 | URL | ドクター江部 | 【編集
身長は170センチ、体重は69キロですね。ちなみに最大体重は10年前、95キロでした。普通にダイエットして85キロでしたが、糖質制限食との出会いでここまで下がりました。江部先生さまさまです。
2013/07/14(Sun) 18:43 | URL | 天城静男 | 【編集
Re: タイトルなし
天城静男 様

95kg → 85kg → 69kg

順調ですね。
良かったです。
BMI25未満なら、運動によって血糖が下がりやすいです。
2013/07/15(Mon) 13:55 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: 教えて下さい
匿名の咲子 さん。

肝臓の糖新生は、糖質を食べている人においても、空腹時や睡眠時は、日常的に行われており、
ごく普通の営みです。

農耕前の人類においては、700万年間、飢餓との戦いの歴史ですので、
肝臓の糖新生は、農耕開始後(穀物・糖質たっぷり)に比べると、
24時間/日近く、かなりしっかり行われていたと考えられます。
そして、700万年間は、しっかり毎日糖新生することが、当たり前でした。

糖質制限食での糖新生は、700万年間の人類の日常に戻るだけなので、肝臓の負担はないと思います。

一方、膵臓に関しては、700万年間、β細胞は基礎分泌インスリンは兎も角として、
追加分泌インスリンに関しては、時々しか働いていなかったと考えられます。
その膵臓のβ細胞が農耕後の1万年間、精製炭水化物後の200-300年間は、
毎日毎日、1日3~5回、追加分泌インスリンを、基礎分泌の数倍~30倍レベル
出し続けているわけですから、過酷な強制労働に疲れ果てて、疲弊して糖尿病になるのも
宜なるかなですね。

2013/07/15(Mon) 15:14 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: コメントレスは無しで
匿名希望A さん

いやはや、びっくりです。
2013/07/15(Mon) 17:21 | URL | ドクター江部 | 【編集
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