<糖質制限食に関するお知らせ・お願いなど>
【糖質制限食とは】

米国糖尿病協会(ADA)によれば、食べ物が消化・吸収されたあと、糖質は100%血糖に変わりますが、タンパク質・脂質は血糖に変わりません。 

また糖質は、摂取直後から急峻に血糖値を高く速く上昇させ、2時間以内にほとんどすべてが吸収されます。

これらは含有エネルギーとは無関係な三大栄養素の生理学的特質です。 
 
1997年版のLife With Diabetes(ADA)では、

「タンパク質は約半分が血糖に変わり、脂質は10%未満が血糖に変わる」

という記載がありましたが、2004年版では変更されています。

このように糖質、脂質、タンパク質のうち糖質だけが血糖値を上昇させます。

従って、糖質を摂取した時にはインスリンが大量に追加分泌されます。

脂質を摂取しても、インスリンの追加分泌はありません。

タンパク質はごく少量のインスリンを追加分泌させます。

現在糖尿病において、食後の急激な高血糖(グルコーススパイク)が大きな問題として注目されています。

食後高血糖が、心筋梗塞や脳梗塞などの合併症を起こす危険因子として確立されたからです。

また一日における、食前・食後・空腹時など血糖値の変動幅(平均血糖変動幅)が大きいほど、酸化ストレスが増強し動脈硬化のリスクとなることがわかってきました。

そして、食後高血糖と平均血糖変動幅増大を起こすのは、三大栄養素のなかで糖質だけなのです。

1gの糖質が、体重64kgの2型糖尿病の人の血糖値を約3mg上昇させます。

炊いた白ご飯茶碗1杯150g(252kcal)には、55.3gの糖質が含まれており、血糖値を166mg上昇させます。

一方、牛サーロインステーキを200g(約1000キロカロリー)食べても、糖質含有量は1gもないので、食後血糖は3mg未満の上昇しかないのです。 

なお、1gの糖質が体重64kgの1型糖尿病の人の血糖値を5mg上昇させます。

糖質制限食の基本的な考え方は、上述のような生理学的事実をベースに、できるだけ糖質の摂取を低く抑えて、食後高血糖を防ぐというものです。

簡単に言えば、主食を抜いておかずばかり食べるというイメージになります。

抜く必要がある主食とは米飯・めん類・パンなどの米・麦製品や芋類など糖質が主成分のものです。
 
3食主食抜きのスーパー糖質制限食(糖質12%、タンパク質32%、脂質56%)なら、薬に頼ることなく速やかにリアルタイムで良好な血糖コントロールが可能です。

一方、上述の白ご飯とステーキの例でも明らかなように、カロリー計算に基づいて血糖値をコントロールすることは理論的に不可能です。

従って、現行の日本糖尿病学会推薦の糖尿病食(糖質60%、タンパク質20%、脂質20%)を実践する限りは、一日の摂取カロリーを1200キロカロリーと低く抑えたとしても、食後高血糖が必ず生じるのです。

糖尿病の改善には、カロリー制限より糖質制限ということがおわかりいただけたと思います。

なお糖質制限食は、カロリー無制限ということではありません。

日本糖尿病学会「食品交換表」の

男性1400~1800kcal
女性1200~1600kcal

ほど厳しいカロリー制限は必要ありませんが、

国立健康・栄養研究所の「日本人の食事摂取基準」(2010年)への解説に示す推定エネルギー必要量の範囲、すなわち18才以上の成人で身体活動レベルが普通なら

 男性:2200~2650キロカロリー 
 女性:1700~1950キロカロリー

身体活動レベルが低い人は

 男性:1850~2250キロカロリー  
  女性:1450~1700キロカロリー

くらいが目安です。


【糖質制限食を実践される時のご注意】

本にも書いてありますが、 糖質制限食によりリアルタイムに血糖値が改善します。このため既に、経口血糖降下剤(オイグルコン、アマリールなど)の内服やインスリン注射をしておられる糖尿人は、低血糖の心配がありますので必ず主治医と相談して頂きたいと思います。

一方、薬を使用してない糖尿人やメタボ人は、低血糖の心配はほとんどないので、自力で 糖質制限食を実践して糖尿病やメタボ改善を目指していただけば幸いです。

内服薬やインスリン注射なしの糖尿人が糖質制限食を実践すると食後高血糖は改善しますが、低血糖にはなりません。血糖値が正常範囲であるていど下がると、肝臓でアミノ酸・乳酸・グリセロール(脂肪の分解物)などから、ブドウ糖をつくるからです。これを糖新生といいます。

血液検査で血清クレアチニン値が高値で腎障害がある場合と、活動性の膵炎がある場合、肝硬変の場合、そして長鎖脂肪酸代謝異常症は、糖質制限食は適応となりませんのでご注意ください。

糖質制限食は相対的に高タンパク・高脂肪食になるので、腎不全と活動性膵炎には適応とならないのです。

肝硬変では、糖新生能力が低下しているため適応となりません。

長鎖脂肪酸代謝異常症では、脂肪酸が上手く利用できないので、適応となりません。

なお、機能性低血糖症の場合、炭水化物依存症レベルが重症のとき、糖新生能力が低下していることがあり、まれに低血糖症を生じますので注意が必要です。

また、どのような食事療法でも合う合わないがあります。

糖質制限食もその一つですので、合わないとご自分で判断されたら中止していただけば幸いです。


<参考図書>

理論
「主食を抜けば糖尿病は良くなる!糖質制限食のすすめ」2005年
「主食を抜けば糖尿病は良くなる!実践編」2008年
「我ら糖尿人、元気なのには理由がある。」2009年
「やせる食べ方」2010年
「うちの母は糖尿人」2010年 監修:江部康二 著:伊藤きのと
(東洋経済新報社)
「糖尿病がどんどんよくなる糖質制限食」2010年(ナツメ社)
腹いっぱい食べて楽々痩せる『満腹ダイエット』 (ソフトバンク新書) 2011年
「主食をやめると健康になる」(ダイヤモンド社)2011年
「血糖コントロールの新常識! 糖質制限 完全ガイド」 (別冊宝島)2012年
「糖質オフ!健康法」(PHP文庫)2012年
「主食を抜けば糖尿病はよくなる!糖質制限食のすすめ」(文春文庫)2012年
「主食を抜けば糖尿病は良くなる!実践編」(文春文庫)2012年
女性のための糖質制限ダイエットハンドブック2013年(洋泉社)



レシピ
「糖尿病が良くなるごちそうレシピ」2006年(東洋経済新報社)
「糖質オフ」ごちそうごはん2009年(アスペクト)
dancyuプレジデントムック 「満腹ダイエット 」 2009年(プレジデント社)
「血糖値を上げない!健康おつまみ109」2010年(東洋経済新報社)
「やせる食べ方レシピ集」 2010年(東洋経済新報社)
「糖質オフダイエット 」2011年(レタスクラブ、角川マーケティング)
「誰もがストレスなくやせられる!糖質制限ダイエット」 2011年(講談社)
「主食を抜けば糖尿病はよくなる」レシピ集2011年(東洋経済新報社)
高雄病院の「糖質制限」給食2012年(講談社)
糖尿病がどんどんよくなる「糖質制限食」おすすめレシピ集2012年(ナツメ社)
糖質制限の「主食もどき」レシピ2013年(東洋経済新報社)
高雄病院Dr江部が食べている「糖質制限」ダイエット2013年(講談社)
糖質オフのダイエット弁当2013年(家の光協会)

DVD「糖質制限食を語る」http://www.yaserutabekata.com/shop/dvd.php 2011年
テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
糖質制限とAGE増加の可能性について
表題の件について、さんざんお世話になっている糖質制限を否定するようなことはしたくなかったので、書こうかどうか迷いましたがどうしても気になりましたので失礼とは思いましたが書き込みさせていただきます。誰も想定してないような話なので正確な判断は難しいかもわかりませんが、良かったら先生のお考えをお聞かせください。
さて私、先日の検診で主治医からA1cの迅速測定の値が9.8だったのに対し、委託測定を行っている検査機関の結果は8.7だったとのお知らせを受けました。先生によると原因は不明だがたまにそういう患者がいるとのこと。
気になったので測定原理を調べましたが、迅速測定では「ラテックス免疫凝集阻害法」なる測定法を実施するのに対し検査機関はラテックス凝集法(LA法)を行ってるそうです。まったくの私見ですがLA法を行う際の赤血球の溶血過程でA1c分隔のブドウ糖結合部位の抗体との反応性が増していることが今回の測定誤差の原因ではないかと考えました。もし私の考えが正しければ私のA1cは通常の糖尿病患者に比べて抗体との結合性に乏しくターゲッティングされなければマクロファージ等によって処分されることもなくいつまでも滞留して血管内を閉塞させてしまうことになります。すなわち他の患者に比べて合併症を起こしやすくなるわけですね。そしてここからが重要なのですが、A1cの反応性が低下している原因はケトン体生成の亢進による血液pHの低下ではないのか? などと推論してしまいました。私としては糖質制限をこれからも続けていきたいと考えておりますのでどうぞ私の考えを専門家の立場から否定してはいただけませんでしょうか。お忙しいところ恐縮でございますがよろしくお願いいたします。
2013/07/06(Sat) 23:56 | URL | げんさん | 【編集
糖質制限食で母乳育児順調です!
先生、お久しぶりです
同じ境遇で母乳育児中に糖質制限していいか
悩まれたり迷われたりしている方がいるかもしれないと思い、
アクセスの多い先生のブログにコメントさせて頂くことをお許しくださいm(__)m

私が糖尿病を発症していなかった三年前の長男出産後、
母乳の分泌が悪く、
周りから、母乳をだすためには
「ごはん、炭水化物をたくさん食べると良い」「餅を食べると良い」「菜食がいい」「動物性食品で血がドロドロになるから母乳が詰まる」などと教えられました…
真に受けた私は、せっせと炭水化物をたくさん食べましたが
母乳が増える気配もなく、しょっちゅう母乳が詰まり
白斑ができたり、乳腺炎になりかけたり、
助産師さんの母乳マッサージに、生後数ヵ月のあいだ
3、4回、お世話になりました
炭水化物過多になっていたからか、
油っこいもの、厚揚げを食べただけでも白斑ができることもありました。

そんなトラブルまみれだった母乳育児だったので
次男を妊娠中に妊娠糖尿病になり
産後は境界型糖尿病になっていて
母乳育児中の食生活で脂質が増えたら母乳がまた詰まってしまうのではないかと不安がありました。

ところが、糖質制限食にしていたら
炭水化物過多になっていた長男授乳中より
一度もトラブルなく、生後五ヶ月がたちました!

長男授乳中は、お肉も厚揚げも食べられないくらい
油もので、すぐに白斑や乳腺炎など起こしていたのに、
次男授乳中は、脂質をエネルギー源にしてるくらい
肉も食べるようになったのですが、
糖質制限食で授乳していたら、
一度も白斑にも乳腺炎トラブルも起こしていません(*´∇`*)

私のように乳腺が細く白斑を起こしやすいかたなど、
授乳中に、マクロビや菜食に目覚めるかたが結構いらっしゃるのですが、
私の実体験では、炭水化物、糖質を減らした
スーパー糖質制限食のほうが、
脂質が増えても、白斑、乳腺炎は一度も起こらなかったです!

嬉しくなり、先生のブログにご報告させて頂きました!
授乳中の糖質制限に不安があるかたの参考になれば幸いですm(__)m
2013/07/07(Sun) 05:38 | URL | 母親が糖尿病 | 【編集
Re: 糖質制限とAGE増加の可能性について
げんさん

HbA1cの測定原理に関しては、私は知識がありませんので、よくわかりません。

ただ糖質制限食によるケトン体上昇は、インスリン作用が保たれていて生理的なものです。
ごく初期は兎も角として、継続していれば血液のpHも、緩衝作用により基準値内となります。

例えば数年間スーパー糖質制限食を実践中の江部康二のpHは、7.45でした。
2013/07/07(Sun) 08:47 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: 糖質制限食で母乳育児順調です!
母親が糖尿病 さん

糖質制限食で、乳腺炎トラブルなし。
良かったですね。
とても参考になります。
2013/07/07(Sun) 08:50 | URL | ドクター江部 | 【編集
ありがとうございました
わざわざご返答ありがとうございました。
pHが原因ではないのかもしれませんね。もっと検討して出直してきます。
2013/07/07(Sun) 08:58 | URL | げんさん | 【編集
食後血糖値
1型糖尿病です。
スーパー糖質制限を行っています。
基本血糖値は70~100以内です。
食前・食中・食後一切高血糖はありませんし、上記血糖値内になるようにしてます。
ただ気にかかっているのが、食後2時間低血糖(60台、又はそれ以下)でもたんぱく質でどうせ上がるからと放置し、実際たんぱく質の上がりで、上記血糖値以内になりますが、
血管・身体の負担的にはどうなのでしょうか?
精神的には対して負担がないのですが;;
生きる限りインスリンを使うしかないので、低血糖にはある程度慣れているの
で、50切らない限り耐えられますが、たまに不安になります。
2013/07/09(Tue) 23:17 | URL | えあ | 【編集
Re: 食後血糖値
えあ さん

1型ですので、インスリンは必要です。
スーパーなら少量のインスリンで血糖コントロール可能です。

基本血糖値は70~100以内です。

これは凄いです。コントロール優秀です。
低血糖は注意してください。
60mg/dl以上は必ず確保、できれば70mg/dl以上確保ですね。
食後血糖値は、1時間値180mg、2時間値140mg/dl未満なら、合併症予防として
大丈夫と思いますので、是非、低血糖予防を重視してください。
低血糖が、総死亡率を上昇させる大きなリスクということが判っています。
2013/07/10(Wed) 11:52 | URL | ドクター江部 | 【編集
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