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「カロリー制限と運動療法が心血管リスク低下に無効」 NEJM
こんばんは。

精神科医師Aさんから「カロリー制限と運動療法が心血管リスク低下に無効」という、N Engl J medの論文について、コメントいただきました。

精神科医師Aさん、ありがとうございます。

米・Look AHEAD試験
N Engl J med 2013年6月24日オンライン版の結論

「過体重または肥満の2型糖尿病患者において、カロリー制限と運動療法で、体重を減らして、その体重を長期間維持できてHbA1cが有意に改善しても心血管リスクの低下は得られない」

これは、興味深い、エビデンスがでたものですね。

ほとんど全ての参加者が、経口血糖降下剤を使用しています。

インスリン注射をしている参加者は30%以下です。

いずれにせよ、ライフスタイル強化療法群と対照群は、同様に経口血糖降下剤を内服して、インスリンも打つ人は打っています。

強化療法群は、カロリー制限〔1,200~1,800 kcal/日(総カロリーから30%以上の脂肪摂取減,15%以上の蛋白質摂取増),食事交替製品の使用〕ですので、糖質摂取がベースラインから約15%増えた計算ですね。

対照群は、普通に糖質を摂取していますが、強化療法群のように、糖質摂取比率がベースラインから増えているわけではありません。

両群とも、薬を内服したり一部インスリン注射をしながら、糖質を普通の割合あるいは普通以上(15%増)に摂取しているのですから、「食後高血糖」と「平均血糖変動幅増大」が必ず生じています。

ライフスタイル強化療法群は総カロリーに対する糖質摂取比率が約15%増えているので、糖質摂取の絶対量は対照群と変わらないか少し多いくらいになります。

A)
「食後高血糖」と「平均血糖変動幅増大」が最大の酸化ストレスであり、心血管リスクの元凶となることには、エビデンスがあります。

強化療法群は体重減少と運動という利点があっても、「食後高血糖」と「平均血糖変動幅増大」という酸化ストレスという欠点に相殺された可能性があります。

強化療法群のHbA1cの改善も「食後高血糖」と「平均血糖変動幅増大」があるわけで、質の悪いHbA1cと言えます。

B)
また両群とも、心血管リスクの最大の元凶である「食後高血糖」と「平均血糖変動幅増大」が、毎日生じているので、少々の体重減少や少々の運動では全く役に立たなかったので有意差なしと考えることも可能ですね。

以下の研究グループによる解釈1)2)3)4)よりは、上記A)B)のほうが理論的に説得力があるのではないでしょうか。

1)検出パワーに欠けていた

2)
両群間における体重減少率の差は,最終的にわずか2.5ポイントであり,1次評価項目を達成するには,ライフスタイル強化療法群でさらなる体重減少が求められた

3)
対照群における教育やスタチンの使用量による効果が影響した可能性があり,両群間におけるリスク減少率の差を少なくした

4)ルーチンな日常診療において,両群間の心血管危険因子の管理強化は,生活習慣の是正による有効性の評価を困難にさせた。




江部康二



以下、MT Pro記事から転載

http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/1306/1306072.html

2013年6月26日

2型糖尿病患者の肥満是正強化はのれんに腕押し?

長期の心血管リスクを評価,米・Look AHEAD試験

生活習慣の是正は2型糖尿病治療の基本だが,過体重または肥満の同患者が食事・運動療法の強化によって減量し,その体重を長期間維持できても,心血管リスクの低下は得られないというLook AHEAD試験の結果が,N Engl J med 2013年6月24日オンライン版に掲載された。

同研究グループは,ネガティブな結果に終わった同試験の原因を分析。体重減少の強化不足や対照群における教育やスタチン薬の使用量による効果が影響した可能性を挙げている。同試験の結果は,第73回米国糖尿病学会年次学術集会(ADA 2013;6月21~25日,シカゴ)でも発表された。

強化療法群では7%の体重減少率とその維持が目標

現在,過体重または肥満の2型糖尿病に推奨されている減量は,血糖コントロール,心血管危険因子,患者QOL,肥満による合併症などの改善のエビデンスに基づいている。

しかし,いずれのエビデンスも短期の研究であり,長期における減量の有効性や2型糖尿病の危険因子である心血管リスクおよび心血管死の減少は明らかではなかった。

そこで,米国内16施設に登録された過体重または肥満を有する2型糖尿病患者を,ライフスタイル強化療法群(2,570例,平均年齢58.6歳,女性59.4%,平均体重101kg,平均BMI 35.9)または患者をサポート・教育する対照群(2,575例,同58.9歳,59.7%,101kg,36.0)にランダムに割り付け,1次評価項目である心血管死,非致死性心筋梗塞(MI),非致死性脳卒中または狭心症による入院を最大13.5年追跡した。

ライフスタイル強化療法群は,カロリー制限〔1,200~1,800 kcal/日(総カロリーから30%以上の脂肪摂取減,15%以上の蛋白質摂取増),食事交替製品の使用〕および運動療法(最低175分間/週の中強度の身体活動)による7%の体重減少とその維持を目標に,講習会や個別のカウンセリングを毎週,開始から6カ月間実施した。

一方,対照群では,社会的支援,食事療法,運動療法に関するそれぞれの講習会を4年間毎年行った。

5%のリスク減少で有意差なし

ライフスタイル強化療法群における1年後の体重減少率は,対照群に比べて有意に大きく(8.6% vs. 0.7%,P<0.05),試験終了時ではその差は小さくなったが,依然として体重減少率に有意差があった(6.0% vs. 3.5%,P<0.05)。

試験終了時における両群間のHbA1c※,心血管危険因子を見たところ,対照群に比べてライフスタイル強化療法群ではHbA1cの有意な改善が認められた(ベースラインからの両群間の平均差-0.22%,95%CI -0.28~-0.16,P<0.001)。

しかし,血清脂質のうちLDLコレステロール(LDL-C)はライフスタイル強化療法群に比べて対照群で低く,試験終了時におけるLDL-C値の差は1.6mg/dLであった。その背景として,降圧薬,スタチン,インスリン製剤の使用は,ライフスタイル強化療法群に比べていずれも対照群で多かったという点が指摘されている。

1次評価項目である心血管死,非致死性MI,非致死性脳卒中または狭心症による入院の発生は,ライフスタイル強化療法群は403例,対照群は418例であり,両群間に差は認められなかった〔100人当たり1.83 vs. 1.92,対照群に対するライフスタイル強化療法群のハザード比(HR)0.95,95%CI 0.83~1.09,P=0.51〕。

さらに,2次評価項目である「心血管死,非致死性MIまたは非致死性脳卒中」のHRは0.93(95%CI 0.79~1.10,P=0.42),「全死亡,非致死性MIまたは非致死性脳卒中」は0.93(同0.82~1.05,P=0.23),「全死亡,非致死性MI,非致死性脳卒中,狭心症による入院,冠動脈バイパス術,経皮的冠動脈インターベンション,心不全による入院,頸動脈血管内膜切除術または末梢血管疾患」は0.94(同0.84~1.05,P=0.29)と,いずれも両群間に有意差は認められなかった。

生活習慣是正の重要性を再確認

実は,futility analysis(無益性の解析)の実施により,同試験は追跡期間中央値9.6年で中止となった。

同研究グループは,過体重または肥満の2型糖尿病患者に対する減量を目的としたライフスタイル強化療法群では,心血管イベントの減少は認められないと結論するとともに,なぜ統計学的有意差が得られなかったのか,その原因を探っている。

同研究グループによる解釈は次の4点。

検出パワーに欠けていた

両群間における体重減少率の差は,最終的にわずか2.5ポイントであり,1次評価項目を達成するには,ライフスタイル強化療法群でさらなる体重減少が求められた

対照群における教育やスタチンの使用量による効果が影響した可能性があり,両群間におけるリスク減少率の差を少なくした

ルーチンな日常診療において,両群間の心血管危険因子の管理強化は,生活習慣の是正による有効性の評価を困難にさせた

なお,同日のオンライン版でカナダ・McMaster大学人口健康研究所糖尿病研究部長のHertzel C. Gerstein氏が“Do Lifestyle Changes Reduce Serious Outcomes in Diabetes?”と題する短報を発表している。

同氏も両群間に有意差がなかったのは,スタチンやACE阻害薬などによる心保護作用が影響した可能性があることを挙げた。しかし,糖尿病患者において生活習慣の是正が重要であることに変わりはなく,そのことを再確認したとしている。

(田上 玲子)



テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
糖尿人2か月 おやつ?
こんばんは。
糖尿人2か月の息子をもつ親です。
先生のブログを見つけて毎日糖質制限に頑張っています。家族みんなで糖質制限中です。
今年 4/18 HbA1c 11.5  空腹時血糖 230 
   5/23     10.3         120   
   6/14      7.3         80
と、経過中です。食後血糖の測定のため血糖測定器を購入検討中です。
担当の医師もいいですねとは、言ってくれるのですが、従来の食事制限の考え方で、
この点は物足りなく思っています。
間食をどうしてもやめれないと、ナッツ、納豆、チョコレート・・・
など糖質オフといわれるものを夜間食しています。
夜中に、結構食べています。
心配で、注意するのですが、やまりません。
実際、どの程度間食はいいのでしょうか?
将来のことを考えると、不安です。
ご指導いただけたら、幸いです。


2013/06/27(Thu) 22:25 | URL | ma-. | 【編集
肥満になると肝がんの恐れ高まる がん研究所など解明
朝日の電子版の記事です。炭水化物を制限しているので、脂肪の摂取が多くなり心配です。体重はお陰様でBMI23位を維持できておりますので、肥満ではないと思います。
2013/06/28(Fri) 12:11 | URL | mmx | 【編集
無知は罪?
本日の記事の内容は、当サイトを見て血糖値をコントロールしている私達には、今更の話である。
しかしながら、従来のカロリー信者には残酷な事実です。
医師の指示を守れば守る程に、病状が悪化するとは、信じられない事実です。
一日も早く真実を共有できる日が来る事を、願って止みません。
2013/06/28(Fri) 12:27 | URL | daniel | 【編集
精神科医師A
 これは動物実験でして、ヒトにはそのままあてはまりません。2012年2月頃、トマトが糖尿病ラットのメタボを改善させたと報道され、トマトジュースが品切れになったことがありますが、それと同一です。

 ちなみに、マタビはネコ科動物を陶酔させますが、他の動物には作用しませんし、ヒトにもそのような作用はありません。このように動物実験の結果はヒトにはあてはまりません。

 次に示すように、人間での研究データを参考にしてください
2013/06/28(Fri) 17:35 | URL | Re: 肥満になると肝がんの恐れ高まる | 【編集
精神科医師A
[2013年6月27日(VOL.46 NO.26) p.40]

http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtnews/2013/M46260401/

〔ロンドン〕ナバラ大学(スペイン・パンプローナ)予防医学/公衆衛生学のMiguel A. Martinez-Gonzalez教授らは「血管リスクの高い集団に対して,エキストラバージンオリーブオイルかナッツ類のいずれかを加えた地中海食は,低脂肪食よりも認知機能の保護に効果的であった」とする研究結果をJournal of Neurology Neurosurgery and Psychiatry(2013; オンライン版)に発表した。

*2種の認知機能テストで良好な結果

 今回の対象はPREDIMED*試験の参加者のうち,心血管疾患(CVD)はないが基礎疾患の有無により血管リスクが高いとされた男女522例(平均年齢74.6±5.7歳)。2型糖尿病であるか,(1)高血圧(2)脂質異常症(3)過体重(4)早発性のCVDの家族歴(5)喫煙−のうち3項目以上に当てはまる者を血管リスクが高い者とした。

 Martinez-Gonzalez教授らは対象者を,地中海食に1L/週相当のエキストラバージンオリーブオイルを加えた食事(オリーブオイル+地中海食群),地中海食にウォルナッツ,アーモンド,ヘーゼルナッツを加えた食事(ナッツ+地中海食群),または低脂肪食(低脂肪食群)を推奨する群のいずれかにランダムに割り付けた。地中海食は料理用脂肪として主にオリーブオイルを使用し(1)果物やナッツ,野菜,豆類の高摂取(2)魚介類の中〜高摂取(3)乳製品や赤身肉の低摂取(4)赤ワインの中等度摂取−を特徴とする。

 いずれの群も主治医による健診を定期的に受け,3カ月に1回,栄養士によるフォローアップセッションが実施された。また,介入開始から平均6.5年後にMini-Mental State Examination(MMSE)と時計描画テスト(CDT)が実施され,認知機能が評価された。

 その結果,被験者のうち60例が軽度認知障害(MCI)を発症し,その内訳はオリーブオイル+地中海食群で18例,ナッツ+地中海食群で19例,低脂肪食群で23例であった。

 さらに35例が認知症を発症し,オリーブオイル+地中海食群で12例,ナッツ+地中海食群で6例,低脂肪食群で17例であった。

 両テストの平均スコアは,低脂肪食群と比べ,2つの地中海食群でより高かった。

 この結果は性,年齢,認知障害または認知症の家族歴,BMI,アルツハイマー病に関連するアポリポ蛋白(ApoE)の遺伝子型,教育レベル,運動レベル,血管危険因子,エネルギー摂取量などの因子とは無関係であった。

 同教授らは今回の研究の限界として,サンプルサイズが比較的小さいことや対象を血管リスクの高い高齢者に限定した点を挙げ,この結果が必ずしも一般集団には当てはまらないとしている。しかし,「地中海食が脳の活性化に及ぼす影響を調べた初の長期試験で,低脂肪食よりも地中海食の方が脳の認知機能保護に有益な可能性が示唆されたことは意義深い」と述べている。

*Prevención con Dieta Mediterránea
2013/06/28(Fri) 17:38 | URL | 低脂肪食より地中海食で高い認知機能保護効果 | 【編集
Re: 精神科医師A
精神科医師Aさん

情報、ありがとうございます。
2013/06/28(Fri) 20:14 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: 精神科医師A
精神科医師Aさん

コメント、ありがとうございます。
2013/06/28(Fri) 20:15 | URL | ドクター江部 | 【編集
LookAHEAD研究について
大阪府吹田市/清水Drのblogより

http://www.shimizu-clinic.biz/blog/2013/07/lookahead.html

LookAHEAD研究は、肥満あるいは過体重の2型糖尿病患者を対象にした生活習慣介入試験です。
昨年に中止されたばかりの研究で、今年6月の米国糖尿病学会で発表されました。
論文も発表(NEJM2013)されましたので、紹介します。

LookAHEAD研究の概要
  米国16施設で施行。
  5145人の肥満あるいは過体重の2型糖尿病患者が対象。
  少なくとも7%の減量を目指して、カロリー制限と運動で生活習慣に強く介入。
  一次評価項目は
    心血管系による死亡、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中、狭心症入院
  最長13.5年観察する計画でしたが、
  これ以上延長しても結果が変わらないと判断され、昨年に中止されました。
    →平均9.6年観察。

  体重減少は1年の段階で、8.6% 対 0.7% (介入群、コントロール群)
    終了時点で、6.0% 対 3.5% (同)であり、介入群のほうが減量しています。
  介入群は、HbA1cが低く、フィットネスが高くなっていました。
  介入群は、LDLコレステロール以外の心血管系リスクが全て減少していました。
  ここまでは良いことづくめですが、肝腎の
    脳心血管系イベントに差がありませんでした(HR:危険率、0.95)。

簡単に説明しますと、
食事カロリーを減らし、積極的に運動して体重を減らしても、
脳心血管系イベントが減らなかったという成績です。
  介入群の体重減少が途中で緩んでいること、
  スタチンなど血管保護作用のある薬がコントロール群にも使われて介入効果が薄れていること
  などが考察されています。

糖尿病における心血管系合併症の予防は、
血糖コントロールを厳しくしてもうまくいかないことが常識になってきています。
血圧やコレステロールなど、総合的な対応が求められ、なかなか手ごわい相手と思います。
  見方を変えると、高血圧や高脂血症の薬に良い薬ができていることを感じます。
  (久山町研究で高血圧が心筋梗塞のリスクでなくなったのも治療の進歩です)

いっぽうで、生活習慣への積極的介入は、
糖尿病の部分的寛解をもたらし、尿失禁、睡眠時無呼吸症候群、うつ病の減少、
生活の質、身体機能、運動能の改善をもたらしています(すべてLookAHEAD研究)。
「生活習慣の改善が無意味」ということでありませんので、間違いのないようにお願いします。

平成25年7月11日
2013/07/29(Mon) 22:18 | URL | 精神科医師A | 【編集
Re: LookAHEAD研究について
精神科医師A さん

情報をありがとうございます。
2013/07/30(Tue) 12:07 | URL | ドクター江部 | 【編集
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