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脳はケトン体を主たるエネルギー源として利用できる
こんにちは

糖質制限食さんから、ケトン体について、コメント・質問をいただきました。

糖質制限食さん、ご指摘通り、

『イラストレイテッド ハーパー・生化学 原書27版』p154

には、脳はそのエネルギー要求の20%をケトン体でまかなうことができると記載してあります。

2013年06月19日 (水)のブログ記事は、あくまでも

「脳がブドウ糖以外にケトン体をエネルギー源として利用できる」

ということの根拠として、医学書として一定の権威のあるハーパー・生化学を引用しました。

それで、脳はどの程度までケトン体をエネルギー源とできるかということなのですが、ハーパー生化学のいう約20%までということはありません。

例えば

ガイトン臨床生理学(米国の有名な医学の教科書です)
監訳・早川弘一、医学書院、1999年、870ページ

によれば、

「炭水化物がエネルギー源として使用できない時、生体のほとんどの細胞のエネルギー源は脂質の代謝により賄われる」

「エスキモー人種は時々完全な脂肪食をとるが・・・、・・・通常ブドウ糖しかエネルギー源として利用しない脳の細胞でさえ、数週間後には50~75%のエネルギ-を脂質(ケトン体)から得られるようになっている」

という記載があります。

さらに、糖輸送体(GLUT)1欠損症の場合は、「ケトン食」が唯一の治療法です。

細胞が血液中のブドウ糖を取り込むためには、糖輸送体が必要です。

現在までGLUT1~14までが発見されています。

脳・赤血球・網膜・生殖腺胚上皮の糖輸送体はGLUT1です。

GLUT1欠損症では、GLUT1に機能不全があるため、脳細胞が血液中のブドウ糖をほとんど利用できないので、通常の食事では意識不明やてんかんの発作を頻回に生じます。

ケトン食は、脂質摂取比率75~80%の、スーパー糖質制限食(56%)を上回る糖質制限食です。

ケトン食実践で血中ケトン体が高値(2000~4000μM/L)となり、ケトン体が脳のエネルギー源のほとんどを占めるようになれば、GLUT1欠損症の患者さんも健康な生活をおくれます。

つまりGLUT1欠損症では脳はブドウ糖が使えないので、ケトン体が脳の唯一のエネルギー源となるのです。

この場合、エスキモーのように50~75%より、さらに高い比率で脳はケトン体をエネルギー源としていると考えられます。

また私が34才で、本断食(カロリーゼロ、塩ゼロ、水のみ摂取)をしたとき、血糖は35mg/dlまで下がりました。

しかし普通に外来もしてましたので、この時私の脳は、ブドウ糖ではなくケトン体を主たるエネルギー源として利用していたと考えられます。

本断食でもケトン体は、2000~4000μM/Lになります。

ケトン体が基準値(26~122μM/L)しかなくて、血糖値が35mg/dlなら、脳はエネルギー源がないので、意識不明で昏睡になります。

糖新生(肝臓でアミノ酸などからブドウ糖を作る)は、脳ではなくて赤血球のために必要なのだと思います。

脳と違って、赤血球は35mg/dlくらいでも生きていけるようです。


江部康二


【13/06/22 糖質制限食

脳は、ケトン体のみのエネルギーで保てるか?

江部先生

お砂糖CMの流れで、ケトン体が話題になりましたので、 質問させて頂きたく、書き込みさせて頂きました。
※以前、私もそのCMを見てぎょっとし、本掲示板に書き込みしたような記憶があります。

この掲示板を通し、「脳がケトン体を利用できる」ことを学び、 「脳は、ケトン体のみのエネルギーで保てる」と勝手に思い込んでいました。

しかし、 『イラストレイテッド ハーパー・生化学 原書27版』p154には、

「赤血球はミトコンドリアを欠いており、それ故、つねに(嫌気性の)解糖とペントースリン酸回路に完全に依存している。

脳はそのエネルギー要求性の約20%をケトン体でまかなうことができるが、残りはグルコースから得なくてはならない。

絶食時および飢餓時の代謝の変化は、グルコースと肝臓および筋肉内の限られた貯蔵グリコーゲンを脳や赤血球のために残しておく必要性があるために生じる。

また、ほかの組織のためにも、グルコース以外の代替エネルギー源を供給するためにも必要である。」

とあるので、

1 脳は、ケトン体のみのエネルギーで保つことはできず、ブドウ糖から約80%のエネルギーを得なくては
  いけない。

2 よって、グリコーゲン分解や糖新生で血糖を維持し、他の組織は、脳・赤血球のためにブドウ糖を節約
  してケトン体・遊離脂肪酸でエネルギーをまかなおうとする。

と理解したのですが、

上記1・2の理解は正しいでしょうか? 】



テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
インスリンの量
江部先生

記事とは関係ない質問で恐縮すが,質問させて下さい.
昔から1日に6食ほど食べることや,低血糖の症状が出ていたことを上司に心配され,検査を受けてきたところ反応性低血糖症と診断されました.ちなみにBMIは22です.また,血圧は正常(60-110)と診断されるにも関わらす,時々脳貧血を起こします.(この間病院に運ばれ,点滴を受けました)

下記が私の二時間糖負荷試験の結果です
インスリンμU/ml   血糖値mg/dl
    6.1          86
   158.8          97
53.9          67
63.5         105

血糖値に対して,インスリンが結構高いそうです.このインスリンの量についてなのですが,他の反応性低血糖の方や,こちらブログの過去の質問にあった高インスリン血症の値を見てもここまでの値の人はいませんでした.そのため,他の病気なのでは?と疑念があります.

現在,主食(食パン,ごはん,パスタなど)を除いた糖質制限もどき(取りなさすぎると逆に低血糖をおこすので)を行っており,以前ほどは顕著に低血糖症状が起きなくなりました.

インスリンの量が私のように多く分泌されている人は少なからずいるのでしょうか?また,別の病気の可能性は無いのでしょうか?(26歳,女性)
2013/06/22(Sat) 19:01 | URL | ろーざ | 【編集
医学、栄養学は、果たして自然科学か?
江部先生

 御回答どうもありがとうございました。
 疑問について、理解できました。

 玄米菜食・マクロビだけでなく、
 断食(ファスティング)の経験もおありなのですね。

 このテーマで教えて頂いたことのうち、
  (私の中で)大きかったのは、
 『改訂を重ね信頼性の高い医学等の基本テキストにおいても、
   相互に内容が異なる記載が存在する事もある』
     ということです。


 論者によって、主張する内容が異なる、
  社会科学に近いような印象を受けました。


 自然科学で特徴的な「実験」が、
  医学、栄養学では、直接的には「人体実験」になってしまうため、
 人間の体の仕組みについて、何が正しいのかが、
  現在でも分かっていない部分があるのは、
   仕方ないのかもしれません。

 ※一般的には、自然科学は実験が容易、社会科学は実験が難しい。


 むしろ、非常に怖いのは、
  『医学、栄養学は自然科学だから、
    医師等の言う事、指導する事は、絶対正しい』
     と妄信することだと感じました。


 医師等の医療関係者の方々も、
  何が正しいかは完全には分からずに、

 エビデンスに基づき、確からしそうな方法を
  日々悩んでおられるのが想像できました。


 信用する気持ちは必要ですが、
  専門家に丸投げするのは、どの分野でも危険ですね。
2013/06/23(Sun) 01:10 | URL | 糖質制限食 | 【編集
Re: インスリンの量
ろーざ さん

確かにインスリンの分泌量が多いですね。
まあ、機能性低血糖で、75gブドウ糖負荷で、ピーク200μU/mlの人もおられました。

今の糖質制限食もどきで
症状が改善ならそれでいいと思います。

糖質制限食もどきなら、摂取する糖質量が少ないので、
インスリンも20~30くらいしかでないと思います。
それなら低血糖も起きにくいですね。
2013/06/23(Sun) 11:58 | URL | ドクター江部 | 【編集
糖質制限危険説の本
今日、本屋で「ほんとは恐ろしい糖質制限」っていう新書を読みました。地中海食がお奨めのようですが、江部先生は読まれましたか?
2013/06/23(Sun) 19:22 | URL | まっちゃん | 【編集
お礼
江部先生

回答ありがとうございます.
200の人もいたのですね.吃驚です!
この糖質制限もどきでいいかどうか,栄養士さんに指導されたわけではなかったので安心しました.
2013/06/24(Mon) 11:24 | URL | ろーざ | 【編集
Re: 糖質制限危険説の本
まっちゃん 様

この著者の本は

糖尿病最新療法―インスリン注射も食事制限もいらない (角川SSC新書) 岡本 卓 (2009/9)

を読みました。

無根拠な内容でした。今回の本も読むに値しないと思います。
2013/06/24(Mon) 15:45 | URL | ドクター江部 | 【編集
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