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「炭水化物を植物性脂肪に」で前立腺がん患者の死亡リスク3割減
こんばんは。

精神科医師Aさんから、興味深い論文についてコメントいただきました。

精神科医医師Aさん
論文情報、ありがとうございます。

「炭水化物を植物性脂肪に」で前立腺がん患者の死亡リスク3割減
 致死性前立腺がんが29%,全死亡が26%の減少
(JAMA Intern Med 2013年6月10日オンライン版)


総カロリーの10%が炭水化物から植物性脂肪に置き換わると、こうなるというのがこの論文の結論です。

この研究の対象の前立腺患者は、普通に炭水化物を総摂取カロリーの40~60%摂取している集団と考えられます。

要するに、普通に炭水化物を摂取している前立腺がん患者においては、炭水化物を10%減らして、その分、植物性脂肪を10%分増やせば死亡リスクが3割減るのですから、結構興味深い論文です。

一方、私のような糖質セイゲニスト(糖質摂取比率が12%程度)においては、この研究の結論を当てはめることはできないですね。

もっとも、生肉・生魚が主食(スーパー糖質制限食)だった頃のイヌイットには、そもそも、前立腺がんは、極めて少なかったので、糖質セイゲニストも前立腺がんにはなりにくいと推測できます。


江部康二



【13/06/13 精神科医師A
炭水化物を植物性脂肪に
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/1306/1306029.html

[2013年6月12日]
◇「炭水化物を植物性脂肪に」で前立腺がん患者の死亡リスク3割減
 致死性前立腺がんが29%,全死亡が26%の減少

 前立腺がん診断後の食事と,がんの進行や全死亡との関連について多くは分かっていない。米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)のErin L. Richman氏らは,男性医療従事者を対象とした疫学研究 Health Professionals Follow-up Study (HPFS)の参加者で,骨転移のない前立腺がんと診断された患者を前向きに追跡し,診断後の脂肪摂取と予後との関連を分析。総カロリーの10%が炭水化物から植物性脂肪に置き換わると,致死性前立腺がん(遠隔転移または前立腺がん死亡)のリスクが29%,全死亡のリスクが26%減少することを明らかにした (JAMA Intern Med 2013年6月10日オンライン版)。

*植物性脂肪以外の脂肪に置き換わっても致死性前立腺がんリスクは変動せず

 1986年に始まったHPFSは,40~75歳の男性医療従事者5万1,529人を含み,参加者はベースラインから2年置きに健康状態や生活習慣を報告。4年置きに食事摂取頻度質問票に回答した。Richman氏らは,1986~2010年に骨転移のない前立腺がんと診断された4,577人について,致死性前立腺がん,全死亡を追跡し,飽和脂肪酸,単価不飽和脂肪酸,多価不飽和脂肪酸,トランス脂肪酸,植物性脂肪,動物性脂肪の摂取との関連を調べた。

 中央値8.4年(四分位範囲4.6~12.5)の追跡期間中,致死性前立腺がんが315例,死亡が1,064例あった。死亡原因は心血管疾患が最も多く31.2%を占め,前立腺がん21.3%,その他のがん20.6%であった。診断時,動物性脂肪の高摂取群は低摂取群と比べてBMIが高く,活発な活動が少なく,現在の喫煙率が高かった。植物性脂肪の高摂取群は中分化型前立腺がんが多く,より多く前立腺全摘除術を受けていた。

 致死性前立腺がんの1,000人・年当たりの頻度について,各脂肪摂取の最高五分位群と最低五分位群を比較すると,飽和脂肪酸7.6対7.3,単価不飽和脂肪酸6.4対7.2,多価不飽和脂肪酸5.8対8.2,トンランス脂肪酸8.7対6.1,動物性脂肪8.3対5.7,植物性脂肪4.7対8.7であった。

 植物性脂肪の摂取は,致死性前立腺がんのリスク低下に関連していた。総カロリーの10%が炭水化物から植物性脂肪に置き換わると,致死性前立腺がんのハザード比(HR)※は0.71(95%CI 0.51~0.98,P=0.04)と大幅に低下すると推計された。動物性脂肪が植物性脂肪に置き換わった場合のHRは0.76(同0.62~1.10,P=0.14)だったが,有意差はなかった。炭水化物がその他の脂肪に置き換わった場合は,致死性前立腺がんのリスクに変動はなかった。

*炭水化物が飽和脂肪酸に置き換わると全死亡は上昇

 一方,全死亡の1,000人・年当たりの頻度については,最高五分位群と最低五分位群で,飽和脂肪酸28.4対21.4,単価不飽和脂肪酸20.0対23.7,多価不飽和脂肪酸17.1対29.4,トンランス脂肪酸32.4対17.1,動物性脂肪32.0対29.4,植物性脂肪15.4対32.7だった。

 総カロリーの10%が炭水化物から植物性脂肪に置き換わると,全死亡のHRも0.74(同0.61~0.88,P=0.001)と有意に低下すると推計された。動物性脂肪が植物性脂肪に置き換わった場合のHRは0.66(同0.54~0.81,P<0.001)で,さらに低下した。

 一方,総カロリーの5%が炭水化物から飽和脂肪酸に置き換わった場合はHR 1.30(同1.05~1.60,P=0.02),1%がトランス脂肪酸に置き換わった場合はHR 1.25(同1.05~1.49,P=0.01)で,リスクは上昇した。

*炭水化物,動物性脂肪を減らした“心血管系に良い食事”で全死亡は減らせる

 同研究では,植物性脂肪は,特に植物油やナッツから摂取されていた。Richman氏らによると,これらの食物の摂取により,血中の抗酸化物質が増加し,インスリン,LDLコレステロール,炎症マーカー,酸化ストレスが低下することが報告されており,前立腺がんの進行を抑制した可能性がある。ただし,植物性脂肪が前立腺がん特異的アウトカムを改善するのか,例えば他のフィトケミカルが関与しているのかなど,さらなる研究が必要だろうと指摘している。

 また,前立腺がん患者において,心血管系に良い食事,つまり炭水化物と動物性脂肪を植物性脂肪に置き換えることで全死亡は減らせると結論付けている。

(木下 愛美) 】


テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
私の膵臓は?
お邪魔することをお許しください。

先生のご活躍で私を含め、多くの糖尿人が救われているのは本当に有り難いことです。

糖質制限を始めて5年目です。56キロあった体重が51キロをキープしています。

甘味料はラカントS以外使っていません。以前は肥ると思い敬遠していたキューピーマヨネーズ(カロリーオフではないもの)を堂々と食べ、オイルはオリーブ油。

モリドルオリーブオイルは最高ですね。その昔糖尿病になったら、人生の楽しみが半減するものと思っていました。

でも、面倒なカロリー計算をすることもなく、糖質を気にかけるだけでこんなにも楽しく食事ができるなんて素晴らしいですね。

あらてつさんの努力のお陰で低糖質パンや市販のケーキよりも抜群に美味しいスイーツなど口にできるのですから幸せです。

ところで、糖質制限のスイーツは少しくらい多く食べても全く低血糖症状を起こすことはありませんが、頂き物などのお菓子を空腹時に食べると2時間半くらいして、必ずと言っていいほど、頭がボーッとするやら体に力が入らないいわゆる機能性低血糖j症状になります。

以前やむを得ず、おむすびだけの昼食を済まして
畑仕事をしたときにも同じく症状に見舞われました。正に恐怖を感じます。

先生にお尋ねしたいのですが、私の場合低血糖を起こすほど大量のインスリンが出てしまうということなのでしょうか。そうすると、まだ膵臓のβ細胞は元気で働いてくれているわけでしょうか。

基礎分泌量が少ないから食後すぐに高血糖を生じ、まだそこそこ膵臓も正常の域にあるから、遅ればせながら頑張ってインスリンを出し過ぎてしまうのでしょうか。

機能性低血糖症状というのは本格的糖尿病になる前段階ということでしょうか。

糖尿病を発症する前には、誰もが経験するものなのでしょうか。お忙しいと思いますが、コメント頂けたら有り難いです。


2013/06/14(Fri) 23:03 | URL | よよ | 【編集
Re:私の膵臓は?
インスリン分泌の能力がどの程度あるのか については情報がございませんので明確な回答は出来ませんが糖質制限食によって正常血糖を保てている糖尿人は基礎分泌がある程度残っているだけでなく、インスリンの食後の追加分泌もそれなりに多い場合があります。
内臓脂肪型 つまりインスリンの効き目が悪い方ではかなりのインスリンが出ている方もいらっしゃいます。
糖質制限食を継続して膵臓を休ませている場合は 糖質摂取後の分泌が以前より増える場合もあるでしょう。

>基礎分泌量が少ないから食後すぐに高血糖を生じ、まだそこそこ膵臓も正常の域にあるから、遅ればせながら頑張ってインスリンを出し過ぎてしまうのでしょうか。
食後の高血糖と2時間半後の低血糖はインスリン分泌の遅れ つまり血糖に対する反応が遅いために起きることが多いです。これは基礎分泌量の問題ではなく追加分泌の遅れの問題と考えたほうがよいと思います。

機能性低血糖症状というのは本格的糖尿病になる前段階ということでしょうか。
>ご指摘の通り 機能性低血糖症もインスリン分泌や血糖調節の異常です。
機能性低血糖症の中でもいろいろなパターンがありますが、食後に大きく血糖が上昇しその後に大きく下がるのは糖尿病にかなり近い状態(前段階)と言って良いと思います。糖尿人としてはむしろ回復段階と言ったほうがよいかもしれませんね

以上 ご参考になればと思い投稿しました。

2013/06/15(Sat) 11:31 | URL | TrueLife | 【編集
糖質制限の食事療法-糖尿病学会でシンポ 日本人の体質・食環境に合った導入を
産経新聞2013.6.11 07:22

http://sankei.jp.msn.com/life/news/130611/bdy13061107230001-n1.htm

 メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)などが原因で発症する糖尿病の患者の食事療法について、5月に熊本市で開催された日本糖尿病学会年次学術集会で興味深いシンポジウムがあった。「糖質制限食」「カーボカウント(炭水化物計算法)」という食事に含まれる糖質(炭水化物)をターゲットに血糖の量を制御する新たな方法について、生活や医療の現場での日本人にふさわしい導入のあり方の論議が交わされた。(坂口至徳)

 ◆和食を中心に

 このシンポは、5月17日に開かれた「糖尿病医療における食事療法の課題」。この中で杏林大学医学部の石田均教授が基調講演した。

 糖質は食事の総エネルギーの50~60%を占め、消化吸収が早く、食後の血糖の増加に大きく影響する。このため、糖尿病食事療法のための「食品交換表」によるカロリー制限のほか、食品に含まれる糖質など炭水化物の量をあらかじめ計算する「カーボカウント」という方法で血糖の上昇を予測したうえで適切な食品を選び、栄養指導に役立てることも考えられると説明した。

 一方で、糖質制限食について、注意点として「糖質摂取量の下限についてのコンセンサスが十分に得られておらず、極端な低糖質食に走ることがないように留意すべきだ」と指摘。心筋梗塞などのリスクの増加の可能性についても触れた。

 タンパク質や脂質については、「植物性」を中心に食べると、これらのリスクの増加が見られないことから、欧米人に比べて血糖を下げるインスリンの分泌量が少ないなどの特徴がある日本人は、和食に代表される食材のバランスを考えた食事が日常生活でも必要、とした。

 糖質制限食については、安田女子大学家政学部の村上文代教授が「炭水化物をひたすら減らすのではなく、取り過ぎた量を是正するという考え方が大切。食物繊維が多い野菜、次いで肉類、主食(ご飯やパン)の順で食べるなど食べ方の工夫でも急激な血糖値の上昇は防げる」と説明した。

 また、金沢大学医薬保健研究域の篁(たかむら)俊成准教授は糖質摂取量の下限について、筋肉などがエネルギー源として糖質の代わりに脂質を利用する際、その代謝物(ケトン体)によって体液が酸性化する「ケトアシドーシス」に着目。「このリスクが高まらない糖質の摂取量が下限の目安になる」と提案した。

 ◆得られる満足感

 欧米で盛んな「カーボカウント」についても論議があった。

 女子栄養大学の本田佳子教授は「カーボカウントは、炭水化物の量に絞って食後の血糖を管理する方法で理解しやすい。体重、血糖濃度、生活の質など目的に応じて食事を選択し、血糖の管理ができる」と説明した。

  岩手医科大学の高橋和眞准教授は「カーボカウントの利点は、現行の食事療法に取り組めない患者にとって食品の選択自由度が増すことや、自己管理できているという満足感が得られることだ」と指摘。そのうえで、「食事中の炭水化物量を量り、許容範囲内の炭水化物を規則正しく摂取することなどトレーニングを段階的に重ねて正しく理解し取り組む必要がある。欧米人とは嗜好(しこう)、体質が異なる日本人の食事療法にどのように取り込めるかが課題」と話した。

     ◇

 ■学会見解「今後の調査が必要」


 栄養素のうち糖質だけを減らす「糖質制限食」が、糖尿病患者だけでなく、ダイエットでメタボからの脱却を目指す人にも関心が高まっている。

 こうしたことについて、日本糖尿病学会は3月、「安全性などについての科学的な証拠が不足し、現時点では勧められない」と提言。糖尿病の食事療法には各栄養素のバランスを考えたカロリー(総エネルギー摂取量)制限が優先し、「糖質制限食」については今後の調査が必要との見解を明らかにした
2013/06/15(Sat) 14:47 | URL | 精神科医師A | 【編集
先日のお礼申し上げます。
江部先生へ
先日のコメントへのご回答のお礼を申し上げます。
その他のご相談もあり、書き込みに何度も挑戦するもうまく反映されません。
これもまた失敗でしょうか。。。
2013/06/15(Sat) 16:01 | URL | ろろまま | 【編集
先日のお礼です。
先日ご回答いただいて、スーパー糖質制限をすることに決心がついて頑張ってます。
ありがとうございました。
先生のブログにお礼申し上げたく、また相談もしたく、しかし投稿がうまくいかず何日も失敗してます。
どうしたら投稿できますでしょうか・・・。
禁止キーワードや、不正な投稿と出てしまい悲しいです。
2013/06/15(Sat) 16:09 | URL | ろろままです | 【編集
何度もすみません。
今度は一気に反映されてしまったようです。
江部先生、ブログご覧の皆様、見苦しい事態お許しください。
お詫び申し上げます。

原因がわからないので本当に申し訳ございません。
2013/06/15(Sat) 16:36 | URL | ろろまま | 【編集
Re: 糖質制限の食事療法-糖尿病学会でシンポ 日本人の体質・食環境に合った導入を
精神科医師Aさん

情報をありがとうございます。
2013/06/15(Sat) 18:13 | URL | ドクター江部 | 【編集
体脂肪と腹回り
はじめまして。
江部先生のブログを読み始めてまだ2ヶ月です。

私の父は糖尿病で、人工透析もしています。
私はまだ糖尿ではありませんが、
39歳から44歳現在の健診では、毎年血液検査で引っかかっています。

で、糖質制限をはじめました。
来年の血液検査が楽しみです。

体重は2ヶ月で2キロ程度減りました。
体重は、標準体重です。
しかし、体脂肪は33~32%で、若干肥満です。
メタボ健診も、90センチに近いです。

体脂肪と腹回りを減らすには、
糖質制限の他にはやはり筋肉を増やす運動でしょうか…。

見た目は相変わらずデブなので、
家族には糖質制限なんてしなくてもいいのでは、と言われてしまいます。

2013/06/18(Tue) 16:07 | URL | 糖尿人の娘 | 【編集
Re: 体脂肪と腹回り
糖尿人の娘 さん

運動はできたらしたほうがいいに決まっていますが、なかなか継続は難しいですね。
このままスーパー糖質制限食なら、適正まで体重減少すると思いますよ。
2013/06/19(Wed) 12:52 | URL | ドクター江部 | 【編集
ありがとうございます
このまま糖質制限続けます。
来月、献血して、血液検査の結果を確認してみます。
腹回りが痩せるまで頑張ります。
2013/06/19(Wed) 22:41 | URL | 糖尿人の娘 | 【編集
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