糖質制限食は、2年間のRCT研究論文のサブ解析で腎機能を改善
こんばんは。

2013年6月3日ネットの医療系サイトMT Proに

「糖質制限食による高蛋白質摂取は腎障害を進行させるのか?/DIRECT試験のサブ解析」

という、山田悟先生解説の記事が載りました。

医療関係者のかたは以下のURLで、グラフも見ることができます。
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/doctoreye/dr130601.html

イスラエルで実施されたランダム比較試験DIRECTにおいて、サブ解析として、今回eGFRと尿中アルブミン・クレアチニン比(ACR)が検討されました。

DIRECTは、322人(平均BMI 31,男性86%)を以下の3つの食事療法に割り付けての研究です。

(1)低脂肪・カロリー制限食(以下,低脂肪食):米国心臓協会(AHA)の当時のガイドラインに準じた
   低脂肪かつカロリー制限食
(2)地中海式カロリー制限食(以下,地中海食):オリーブ油を使用し,肉より魚を優先したカロリー制限食
(3)糖質制限食:初期2カ月は糖質を20g/日まで制限し,その後は最大120g/日まで許容するが,カロリー制限は
しない食事

2年間の介入の結果,糖質制限食の減量,脂質改善,HbA1c改善効果が最も大きいことが明らかにされ(N Engl J Med 2008; 359: 229-241),その減量,脂質改善効果がさらに4年間の観察期間を経て計6年経過しても維持されることも報告されました。(N Engl J Med 2012; 7: 1373-1374)。

今回のeGFRと尿中アルブミン・クレアチニン比(ACR)のサブ解析の結果は3つのどの食事療法でも、eGFR(腎機能)が改善していました。

eGFRの改善は、食事中の蛋白質摂取量の変化とは全く関連がありませんでした。

2年間での空腹時インスリンおよび収縮期血圧の低下がeGFRの改善と有意に相関していました。

尿中アルブミン・クレアチニン比(ACR)に関しても食事中の蛋白質摂取量の変化は全く関連がありませんでした。

2年間のDIRECT試験において、糖質制限食群でも腎機能は悪化するどころか改善が認められたのは、素晴らしいことです。

DIRECT試験は、糖質制限食群でも、2年後には糖質40%を摂取していますので、緩やかな糖質制限食の研究と言えます。

そして、「空腹時インスリンおよび収縮期血圧の低下(eGFRの改善と有意に相関)」は、スーパー糖質制限食なら、緩やかな糖質制限食に比べて更に低下・改善することは理論的には明白です。

なお、糖質制限食群において、蛋白質摂取エネルギー比率は、18.7%→21.8%と上昇していましたが、蛋白質摂取絶対量は、総摂取カロリーが試験開始時より減少したことにより、少し減少していました。


江部康二



以下MT Pro記事より、抜粋

糖質制限食による高蛋白質摂取は腎障害を進行させるのか?
DIRECT試験のサブ解析
北里研究所病院糖尿病センター 山田 悟
研究の背景:日本糖尿病学会の「提言」でも引用された糖質制限食の代表的エビデンス

 今年(2013年)3月,日本糖尿病学会が出した糖尿病食事療法に関する提言は,これまでのカロリー制限食をスタンダードな治療とする点ではこれまでと変わらないものの,患者の病態や嗜好に合わせて糖質量の設定をエネルギー比率50~60%から逸脱することを許容する,すなわち緩やかな糖質制限食に道を開く画期的なものであった(関連記事)。

 この提言でも引用されていたのがイスラエルで実施されたランダム比較試験DIRECT※1である。この試験についてはサブ解析も含めて当欄でも何回か取り上げているが(関連記事1,関連記事2,関連記事3),このたび,長期の腎機能に与える影響がDiabetes Care 2013年5月20日オンライン版に報告されたのでご紹介したい。

研究のポイント1: 3つの食事療法のeGFR対する影響を検討

 DIRECT試験は,40~65歳でBMI 27以上の人,2型糖尿病の人,もしくは冠動脈疾患の人を対象に実施された3群での食事介入試験である。625人をスクリーニングして386人が上記の条件に合致し,試験に同意した322人(平均BMI 31,男性86%)が以下の3つの食事療法に割り付けられた。

(1)低脂肪・カロリー制限食(以下,低脂肪食):米国心臓協会(AHA)の当時のガイドラインに準じた低脂肪かつカロリー制限食
(2)地中海式カロリー制限食(以下,地中海食):オリーブ油を使用し,肉より魚を優先したカロリー制限食
(3)糖質制限食:初期2カ月は糖質を20g/日まで制限し,その後は最大120g/日まで許容するが,カロリー制限はしない食事

 2年間の介入の結果,糖質制限食の減量,脂質改善,HbA1c改善効果が最も大きいことが明らかにされ(N Engl J Med 2008; 359: 229-241),その減量,脂質改善効果がさらに4年間の観察期間を経て計6年経過しても維持されることも報告された(N Engl J Med 2012; 7: 1373-1374)。今回は,推算糸球体濾過量(eGFR)に対する3つの食事療法の影響を検討したものである。

研究のポイント2:どの食事療法でもeGFRは改善していた

 ベースラインでのeGFRは平均70.5mL/分/1.73m2であり,尿中アルブミン・クレアチニン比(ACR)は12.12mg/g・Crであった。

 2年間の介入の結果,どの食事療法群でもeGFRは改善しており(図1),慢性腎臓病(CKD)ステージⅠ,Ⅱ(eGFR>60mL/分/1.73m2)あるいは同ステージⅢ(30<eGFR<60)で分類して解析しても同様であった(図2,図3)。また,このeGFRの改善は2型糖尿病の有無にかかわらず生じており,それはどの食事療法群でも同様であった。


 このeGFRの変化と関連する因子を多変量解析で求めたところ,食事中の蛋白質摂取量の変化は全く関連がなく,2年間での空腹時インスリンおよび収縮期血圧の低下がeGFRの改善と有意に相関していた。また,低脂肪食群や糖質制限食群では体重の部分的なリバウンドが生じていたが,リバウンドが生じてもeGFRの改善は同様に維持されており,これらの食事介入による腎機能への効果が体重の減量だけでは説明できないことが示唆された。

 また,ベースラインで微量アルブミン尿を呈していた(ACR>30mg/g・Cr)23人においては,ACRの有意な低下が認められた。地中海食群でのACRの低下はわずかであり(-0.2mg/g・Cr※2),低脂肪食群,糖質制限食群でのACRの低下が大きいようにも思えたが(順に-52.7mg/g・Cr,-37.9 mg/g・Cr),症例数が少なくなるためか,群別で解析するとどの群も有意な減少ではなくなっていた。このACRの変化に対しても食事中の蛋白質摂取量の変化は全く関係がなかった。


山田 悟(やまだ さとる)
テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
おはようございます
やはり、長いスパンが必要なのですね。
私も、当初は半年くらい・・と思っておりましたが、2年を目標にちょっと緩めの制限食を実践しております。
この暑さですから、一口だけのアイスをいただいてます。
2013/06/14(Fri) 09:16 | URL | クワトロ | 【編集
山田Drの記事
ここで詳しく読めます

http://kenko100.jp/news/13/06/06/01
2013/06/14(Fri) 16:38 | URL | 精神科医師A | 【編集
6月10日に発刊された、岡本卓氏の「本当は怖い『糖質制限』」を読みました。
結局はカロリー制限の反省も根拠もなく、糖質制限については無理解でした。
タイトルが衝撃的過ぎます。

現代人がどのくらい糖質摂取過多で、糖尿病予備軍が増加しているかについての考察はありませんでした。

地中海料理を推奨されているので、オリーブオイルをご紹介してあげてください。
2013/06/18(Tue) 01:23 | URL | 糖尿人M | 【編集
はじめまして

友人が糖質制限をしており、先生の「我ら糖尿人、元気なのには理由(ワケ)がある。」を読ませていただきこのホームページにたどりつきました。

私は3年前に母から腎臓をもらって腎臓移植をしました。現在はCre1.50、Bun15で半年ほど安定しています。腎臓病の原因はiga腎症です。

私の食事は糖質制限とは全く逆の食事で先生の理論をよんで戸惑っています。私の食事は朝抜き、昼は玄米ご飯、夜は生野採ジュースと玄米ご飯といも類です。平日はこのメニューで週末は家族とお肉やお魚をいただいております。

私の興味は母から頂いた腎臓をできる限り長持ちさせることです。そのためにどんな食事が良いのかと考えております。

今の私の食事内容と先生のお勧めする糖質制限食が全く逆なので食事内容を糖質制限食に変えるのに不安があります。

腎臓移植をした者でも糖質制限食がよいのでしょうか。

先生のご意見をお聞きしたいと思いメールさせていただきました。

よろしくお願いします


2013/10/22(Tue) 12:01 | URL | 三つ子星 | 【編集
Re: タイトルなし
三つ子星 さん

私の本やブログ記事にも記載してありますが、
腎不全の場合は糖質制限食の適応となりません。

三つ子星さんはクレアチニン:1.5mg/dl
で、軽症の腎不全ですので、残念ながら糖質制限食は適応となりません。

今の食事で安定しておられるので、それで良いと思います。
2013/10/22(Tue) 21:06 | URL | ドクター江部 | 【編集
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