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震災時の糖尿病医療を振り返る~Web講演~ ご報告
こんにちは。

東北大学 大学院医学系研究科 糖尿病代謝内科学分野
児玉慎二郎 先生が

m3.comで、2013.5.28 (火)
震災時の糖尿病医療を振り返る
災害時の糖尿病治療の問題点
~避難所巡回診療の経験から~

と題して、Web講演をされました。
医師向けの講演です。

児玉先生のご厚意により、講演のパワーポイントスライドをご送信いただきました。

児玉慎二郎先生は、糖尿病代謝内科の専門医ですが、糖質制限食にも造詣が深く、ニュートラルな立場で糖尿病診療を行っておられます。

ブログ公開OKとのことなので、パワーポイントスライド30枚の内容を文字で記載します。

実際に震災時の診療に携わった児玉医師(そしてチーム医療の医師、看護師、薬剤師)からの報告なので、大変貴重で重みのある情報です。

児玉先生、ありがとうございます。

私のパソコンの腕が悪くて、スライドをブログにアップできないのですいません。

それにしても、支援物資の定番

おにぎり カロリー193kcal 糖質量40.0g 塩分量2.0g
菓子パン カロリー486kcal 糖質量108.9g 塩分量0.8g
カップラーメン カロリー505kcal 糖質量76.3g 塩分量8.5g
カップ焼きそば カロリー727kcal 糖質量108.8g 塩分量6.0g

特に「菓子パン」「カップラーメン」「カップ焼きそば」の糖質量、半端じゃないです。

衝撃の糖質量とそしてカロリーも多いです。

「カップラーメン」「カップ焼きそば」の塩分も警戒警報ですね。


江部康二


児玉先生からのメールです。

「支援物資による糖質過剰摂取からの食後高血糖、それに対するSU薬投与やインスリン増量から引き起こる低血糖が非常に多く、大変困難な状況が続きました。

なお、震災後の状況につきましては、残念ながら食べ物を選んだり、残したり出来るような余裕はまったくありませんでした。送られてくる物資はおにぎり、菓子パン、カップラーメン、カップ焼きそばがほとんどで、ひよこや八つ橋などのお土産品(賞味期限ギリギリ)のものばかりですので、糖質制限したくても出来ないような状況が続きました。

しかもいつまた食べ物が来なくなるかわかりませんので、皆さん、来たものはすべて食べます。これは仕方ないことで、糖質をとらないように、などと言える状況ではありませんでし た。糖質制限用に食品を貯蓄していたとしても、津波で流されてしまったでしょうし・・・

東日本大震災から1ヶ月以上経過すると、食糧事情も少しずつ改善し、肉や魚、豆腐などが手に入るようになりましたが、沿岸部で避難所生活を強いられている方々は、それは不可能な状況でした。」



☆☆☆

以下、児玉慎二郎先生のPPTスライド30枚の内容です。

1)
震災時の糖尿病医療を振り返る
~Web講演~
2013.5.28 Tue
災害時の糖尿病治療の問題点
~避難所巡回診療の経験から~
東北大学 大学院医学系研究科 糖尿病代謝内科学分野
児玉慎二郎

2)
2011年3月11日14時46分18秒
東日本大震災生
死者・行方不明者 18,550名(全国:2013年3月11日時点)
宮城県 10,838名
岩手県 5,824名
福島県 1,817名
避難者数最大  38万6739 名  (全国)
避難所数最大  2,417 箇所 (全国)
避難・転居者数 31万6,353名 (全国:2013年1月時点)

ご存知の通り、2年前の3月11日に東日本大震災が発生しました。
死者行方不明者は1万8千人以上で、まさに未曾有の大災害となりました。


3)被災地の写真のスライド
目を覆いたくなるような光景ですが、特に宮城・岩手・福島の被害は甚大でした。

4)スライド写真
大学病院での食事例
(震災後約2週間)
ガスが2週間使用できない状況
朝食120kcal

5)スライド写真
昼食150kcal

6)スライド写真
夕食160kcal
合計 430kcal/日

7)
糖尿病避難所巡回診療
時期: 2011年3月下旬~7月中旬 ( 週に3回 )
巡回診療スタッフ: 医師、看護師、ボランティアの学生
移動: 自家用車にて避難所や被災者宅を巡回

我々東北大学糖尿病代謝科は、震災から10日間経過した頃から、被災した糖尿病患者さんを対象に、継続した避難所巡回診療を行ってきました。
時期は3月下旬から7月中旬で、スタッフはご覧の通りです。移動は自家用車で行いました。宮城県内はガソリンがなかったため、山形県に給油しに行き、巡回を行いました。


8)
糖尿病避難所巡回診療の目的
血圧、血糖値の測定
内服薬やインスリン量の調整
食事回数に応じた治療法の変更
インスリン、自己血糖測定器の提供
低血糖、持続する高血糖の予防

巡回診療の目的は、血圧や血糖値の測定、内服薬やインスリン量の調整、不規則な食事に合わせた治療法の変更、インスリンやブドウ糖、SMBG機器の提供です。
① 避難生活における低血糖、持続する高血糖の予防をこころがけて診察しました。


9)
巡回時に持参したもの
インスリン製剤(各種)
自己血糖測定器
インスリン注射針
ブドウ糖(特にゼリー)
低血糖の説明書
自動血圧計
聴診器
針入れ
地図、デジタルカメラ
スリッパ 、手袋、マスク
SMBG手帳

持参したものはこちらです。水の確保が難しい状況が続いておりましたので、
①ブドウ糖はゼリー状のものが重宝しました。また、1階は浸水している避難所も多く、泥だらけのため、
②スリッパが非常に役に立ちました。そのほか、
③各地域ではアルコール綿や自己血糖測定の穿刺針の不足が目立ち、アルコール綿を使用しないで注射することも指導しました。
④インスリンが不足している地域に巡回して届けることが出来たのはとてもよかったと思いますが、震災直後にヘリコプターなどを使用して各地域に輸送することが出来なかったのはとても残念でした。


10)
診療風景のスライド写真

11)
足壊疽や深部静脈血栓症を起こしてしまった被災者もいた。スライド写真。
避難生活では栄養状態や衛生面に問題があり、被災者の中には足壊疽や深部静脈血栓症になった方もいました。

12)
看護師との連携
◆ 自己注射手技や自己血糖測定の
  指導に長けた看護師と巡回する
◆ 医師がすぐに診察出来るように
  事前に問診やバイタルチェックを行う
◆ 医師に話しにくいことも、看護師には
  話せることがある

我々の巡回には、毎回看護師が帯同してくれました。
① 自己注射手技や自己血糖測定の指導に長けた看護師さんが同行し、
② 診察前に問診を行うことでスムーズな巡回が可能となりました。
③ また、医師に話にくいことでも看護師さんには話せるというケースもあり、チームで巡回することが大切だと感じました。


13)
医療支援の薬剤師との連携
◆震災時に需要が高い薬剤(低血糖や副作用が少ない)を揃える 
◆ 『食直前に内服する』 など、内服方法の説明書を作成

医療支援の薬剤師さんとも密に連絡を取り合い、低血糖や副作用が起こりにくい薬剤を揃えることに取り組みました。
内服方法を間違えないようにするため、患者さんに渡す説明書きを一緒に作成しました。


14)
◆ 前回通行可能な道路でも、余震や土砂崩れにより通行止めになっていることも多い
◆ 満潮になると道路が浸水してしまう地区もある

前回通れた道でも、余震や大雨による土砂崩れのため、通行止めになっていること前回通れた道でも、余震や大雨による土砂崩れのため、通行止めになっていることもありました。
① また、満潮になると通行出来なくなる道も多かったため、その情報を事前に教えて貰うことはとても大切でした。

 
15)
震災を通じて感じたこと
◆水がない → 急性腎障害
◆飲料水が届いても仮設トイレが汚いためあえて水分を摂取しない被災者が多数
◆特に高齢者は渇中枢の機能が低下しており、脱水から急性腎障害を引き起こしやすい
◆高齢者の糖尿病治療薬の基礎薬として何をおくべきか、検討する必要がある

水がないので、急性腎不全になりやすい状況が続く
① 支援物資として飲料水が届いてもトイレが不潔で使いたくないと、あえて水分を摂取しない被災者が多く存在しました。
② 特に高齢者は渇中枢の機能が低下しており、脱水から急性腎不全を引き起こしやすい
③ 後でお話させていただきますが、高齢者の糖尿病治療薬の基礎薬として何をおくべきか、検討する必要があると思いました。


16)
各時期により対応策が異なる
超急性期 震災直後~1週間
急性期 1週間~1ヶ月
亜急性期  1ヶ月~3ヶ月
慢性期 3ヶ月以降

継続して被災地を巡回する中で、その時期に合わせて治療方針などが変わってくるということがわかりました
今回は、特に医療機関受診が困難であった
① 超急性期、急性期の対応についてお話させていただきます。

17)
災害時に予防すべき糖尿病性代謝失調
糖尿病ケトアシドーシス(DKA)
高血糖高浸透圧性症候群(HHS)
低血糖症

平時と同様に、災害時に防ぐべき糖尿病性代謝失調は
①DKA、HHS、低血糖 です。

18)
超急性期(直後~1週間)
~震災直後に起こっていたこと~
高血糖昏睡
◆インスリン注射一式を津波で流され、治療を中断し
 高血糖昏睡となる
◆インスリンは所持していたが、食べ物がないために、
 すべてのインスリンを中断し、高血糖昏睡となる

震災後1週間以内の超急性期に実際に起こっていたことですが、
インスリン注射一式を津波で一式を流され、やむなく治療を中断し、高血糖昏睡となった方や、
インスリンは所持していたが、食べ物がない為に、すべてのインスリンを中断し、高血糖昏睡となった方がいました。


19)
超急性期(直後~1週間)
~震災直後に起こっていたこと~
低血糖
◆食べ物がないのに、平時と同量のインスリンをしたり
 血糖降下薬を内服
 → 低血糖性昏睡
◆食事の回数と合わないインスリン注射
→ 低血糖昏睡

また、超急性期には
① 食べ物がないのに、平時と同量のインスリン注射をしたり、血糖降下薬を内服し、低血糖昏睡となる症例や
② 1日2食の状況でも頻回注射を継続し、低血糖になったケースもありました。



20)
震災時超急性期の課題
・急性の代謝失調を予防する
(避けるべきはDKA、HHS、低血糖)
速やかにインスリン製剤を供給するシステム
◆1型糖尿病、インスリン依存状態の患者(膵性、2型糖尿病を含む)
 は常にインスリンを携帯しておかなければならない
◆患者自身がインスリン注射を中断しては危険だということを 
知らなければいけない
平時の患者へのインフォームドコンセントが大切

震災超急性期のまとめです。
この時期には急性の代謝失調を予防する必要があります。
そのためには、
① 速やかにインスリンやブドウ糖を供給出来るシステムが不可欠であり、ガソリンや移動手段の確保課題だと思います。
② また、1型糖尿病やインスリン依存状態の患者さんには常にインスリンを携帯して貰わなければなりませんし、
③ 患者自身がインスリンを中断しては危険だということを知らなければ対処できません。
④ 平時の患者へのインフォームドコンセントが大切だと感じました。

21)
- 震災1週間 ~1ヶ月-
支援物資が徐々に届き始める
食べ物を選んだり、残せる状況ではない
食事は炭水化物(糖質)や塩分の多いものがほとんど
(おにぎり、カップ麺、菓子パン、缶詰など・・・)
蛋白質摂取は少なく、 野菜はほとんど食べられない
※ 食事は1日2食の配給(10時と16時頃)が多い
18時間近く、絶食状態が続く環境

続いて震災後1週間から1か月のお話です。地区によりますが、
この頃になると、避難所に支援物資が届き始めます。勿論十分な食事ではなく、食べ物を選んだり残したり出来るような状況ではありませんでした。
沿岸部の避難所では、震災から1ケ月以上が経過してもコンビニおにぎり、カップ麺、菓子パンなど炭水化物が中心の食事であり、塩分量も多くなっていました。
① 1日2食がほとんどで、節電のため夕食も16時と早く、17時には消灯です。
② 2食と言っても18時間近く絶食となる環境でした。


22)
避難所での食事の1例 スライド写真
沿岸部の避難所では震災後1ヶ月以上、
1日2食の配給が続いた
◆ 午前10時頃  コンビニのおにぎり2個とカップラーメン
◆ 午後13時頃  菓子パン1個(おやつ)
◆ 夕方16時頃  おにぎり2個とカップ焼きそば
合計: ? kcal 糖質 ? g 塩分 ? g
合計:?kcal 糖質?g 塩分?g
避難所では炭水化物中心の食事
節電のため、夕食時間も早く、満足感がない

23)
避難所での食事の1例 スライド写真
沿岸部の避難所では震災後1ヶ月以上、
1日2食の配給が続いた
◆ 午前10時頃  コンビニのおにぎり2個とカップラーメン
 ⇒ 888kcal  糖質:145.4g  塩分:12.6g
◆ 午後13時頃  菓子パン1個(おやつ)
 ⇒ 486kcal  糖質:108.9g  塩分:0.8g
◆ 夕方16時頃  おにぎり2個とカップ焼きそば
 ⇒ 1093kcal  糖質:186.6g  塩分:8.0g
合計:2467kcal 糖質440.9g 塩分21.4g
日本人の1日の栄養平均摂取は 1867kcal 糖質275g 塩分11.5g 
(2008年の厚生労働省調査08年の厚生労働省調査)

先ほどのメニューを
① 実際に計算してみました。一日の総カロリーは2467kcalで、糖質は70%以上を占め、塩分も相当量含まれています。
② 日本人の平均摂取と比較してもかなり過剰に摂取していたことがわかります。

24)スライド写真
おにぎり カロリー193kcal 糖質量40.0g 塩分量2.0g
菓子パン カロリー486kcal 糖質量108.9g 塩分量0.8g
カップラーメン カロリー505kcal 糖質量76.3g 塩分量8.5g
カップ焼きそば カロリー727kcal 糖質量108.8g 塩分量6.0g

実際に出ていたものを写真にとりました。
① 菓子パンは1個だけで糖質が100g以上のものが出ていました
② カップラーメン、カップ焼きそばも糖質が多く、非常に高カロリーのものが多いです。


25)スライド写真
しょうゆ団子(3本) カロリー448kcal 糖質量106.2g 塩分量1.1g
桃の缶詰 カロリー340kcal 糖質量83.30g 塩分量0.05g
野菜ジュース(500ml) カロリー225kcal 糖質量50g 塩分量0.23g
栄養ドリンク1本 カロリー74kcal 糖質量20g 塩分量.0g

こちらはその他の支援物資です。野菜不足のために送られてきた野菜ジュースや栄養ドリンクにも多くの糖質が含まれています。


26)
支援物質による食後高血糖
・平時より食後の血糖値が高い患者が多い
・食後の血糖値が高いため、SU剤を開始、または増量の
 指示をされるケースが多かった
⇒ 食後の血糖値が350mg/dl以上でも、空腹時は70mg/dl以下まで血糖値が低下する患者もいた。SU薬の増量などにより低血糖症状が増悪したケースも多かった
・ DPP-4阻害薬が適切なケースが多い
・ SU薬を使用する際は極少量から開始

支援物資により、食後血糖値の高い患者が多く存在し、また、食後の血糖値が高いためにSU薬を開始、増量されるケースも多く存在しました。
① しかし実際には、食後2時間以内の血糖値が350mg/dl以上でも、空腹時は70mg/dl以下まで血糖値が低下している患者も多く、SU薬の増量などにより低血糖症状が増悪したケースも多く存在しました。
② もちろん症例にもよりますが、内服薬では低血糖の生じにくいDPP-4阻害薬が適切なケースが多いと感じました。
救急隊や医療スタッフの疲弊をさけるためにも、SU薬を使用する際は、極少量から開始するべきだと思いました。


27)
避難所の食事による血糖変動 スライドグラフ
混合製剤の2回注射による治療でも低血糖に注意が必要です。こちらは避難所の糖質過多な食生活で必要となるインスリン分泌を図示したものですが、
① 糖質の過剰摂取による一時的な血糖上昇に対し、
② インスリン増量を行うと、
③ その後低血糖となるケースも少なくありませんでした。


28)
避難所における作用プロファイル 混合型2回法 スライドグラフ
混合製剤の2回注射による治療でも低血糖に注意が必要です。こちらは避難所の糖質過多な食生活で必要となるインスリン分泌を図示したものですが、
① 糖質の過剰摂取による一時的な血糖上昇に対し、
② インスリン増量を行うと、
③ その後低血糖となるケースも少なくありませんでした。


29)スライド写真
おにぎり カロリー193kcal 糖質量40.0g 塩分量2.0g
菓子パン カロリー486kcal 糖質量108.9g 塩分量0.8g
カップラーメン カロリー505kcal 糖質量76.3g 塩分量8.5g
カップ焼きそば カロリー727kcal 糖質量108.8g 塩分量6.0g

また、支援物資には、塩分が多く含まれるものが存在しました。
缶詰やカップラーメンのスープも捨てると勿体ないことをするなという苦情がくるため、すべて飲み干す被災者も多くおりました。


30)
被災地の皆様に1日も早い復興を心よりお祈り申し上げます。

以上です。
ご静聴ありがとうございました。

テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
Re: 赤ワインの量を減らします
狸7 さん

拙著のご購入ありがとうございます。
産業医さん、糖質制限食推奨とは素晴らしいです。
スーパー糖質制限食、1年~2年で
全ての検査データが基準値になることが多いです。
2013/06/10(Mon) 18:36 | URL | ドクター江部 | 【編集
ほんとに大変!
糖尿病患者、、、、
食べ物選べないのはほんとに大変なことです、、、
2013/06/11(Tue) 09:32 | URL | 阿部洋子 | 【編集
私の非常食
震災に備えて私はマヨネーズと水だけを非常食として常備しております。
2013/06/11(Tue) 16:43 | URL | 消火器内科医 | 【編集
Re: 私の非常食
消火器内科医 さん。

まさに、究極の糖質制限食必需品ですね。
2013/06/11(Tue) 21:05 | URL | ドクター江部 | 【編集
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