2013年05月11日 (土)
おはようございます。
今回は復習を兼ねて、インスリンの作用と糖輸送体と基礎分泌・追加分泌などについて、考えてみます。
インスリンは、筋肉細胞に血糖を取り込ませ血糖値を下げます。
そして余剰の血糖値は脂肪細胞に取り込ませて中性脂肪として蓄えさせます。
また肝臓における糖新生を抑制し、グリコーゲンの合成を促進し、結果として、肝静脈へのブドウ糖放出を抑制し、血糖を下げます。
糖質を食べて血糖値が上昇したときは、インスリンが大量に追加分泌されて、筋肉細胞内の糖輸送体(Glut4)が細胞表面に移動するので血糖を取り込めます。
Glut4が筋肉細胞内にあるときは、血糖をほとんど取り込めません。
細胞が血糖を内部に取り込むためには糖輸送体が必要であり、現在まで、糖輸送体1~14までが発見されています。
筋肉細胞と脂肪細胞の糖輸送体は、Glut4で常は細胞内部に沈んでいます。
Glut4はインスリンが追加分泌されたとき、及び筋肉が収縮したときに細胞表面に移行して、血中の糖を細胞内に取り込みます。
筋肉の収縮時のGlut4の細胞表面への移動は、インスリン非依存的です。
インスリンは、人体で唯一血糖値を下げるホルモンで、膵臓のランゲルハンス島のβ細胞でつくられ分泌されます。
24時間少量持続的に出ている基礎分泌のインスリンと、糖質を摂取して食後血糖値が上昇したときに、その10~30倍の量が出る追加分泌のインスリンがあります。
追加分泌のインスリンには、即分泌される第1相と少し遅れて出る第2相があります。
正常人は、血糖値が上昇し始めたら即インスリンが追加分泌されます。
この第1相反応は、もともとプールされていたインスリンが5~10分間分泌されて、糖質摂取時の急激な食後高血糖を防いでいます。
その後、膵臓のベータ細胞は、第2相反応と呼ばれる持続するインスリン分泌を行います。
これは、食事における糖質の残りをカバーしています。
即ち、糖質を摂取している間は、第2相のインスリン分泌が持続します。
2型糖尿人は、通常、第1相反応が低下或いはなくなっていることが多いようです。
従って、糖質摂取時に血糖値の急激な上昇(グルコーススパイク)が起きてしまいます。
また、第2相も低下していることが多いので、糖質を摂取する限り、一旦上昇した血糖値はなかなか下がってきません。
糖質制限食ならば、野菜分のごく少量の糖質だけなので、2型糖尿人においても、食後高血糖はほとんど生じません。追加分泌インスリンも、ごく少量ですみます。
基礎分泌インスリンは、検査機関にもよりますが、基準値はIRI:3~15μU/mlくらいです。
しかし私は、現在「基礎分泌インスリンは低くて空腹時血糖値も正常というパターン」が一番いいと考えています。
例えば、IRIが3未満で、2.5とかでも、空腹時血糖値が110mg未満の正常値ならそれでいいと思います。
逆にIRIが15で基準値で血糖値も110mg未満というパターンより好ましいのです。
つまりインスリンは人体に絶対に必要なのですが、それ自体に発癌、老化、肥満などのリスクがあるので、インスリンが少なくてマッチングがいい人のほうが好ましいのです。
なお脳の糖輸送体は、Glut1であり、常に細胞表面に存在しているので、血流さえあればいつでも血糖を取り込めます。
ちなみに赤血球や網膜もGlut1を持っているので、インスリンに関係なく血糖を取り込めます。
江部康二
今回は復習を兼ねて、インスリンの作用と糖輸送体と基礎分泌・追加分泌などについて、考えてみます。
インスリンは、筋肉細胞に血糖を取り込ませ血糖値を下げます。
そして余剰の血糖値は脂肪細胞に取り込ませて中性脂肪として蓄えさせます。
また肝臓における糖新生を抑制し、グリコーゲンの合成を促進し、結果として、肝静脈へのブドウ糖放出を抑制し、血糖を下げます。
糖質を食べて血糖値が上昇したときは、インスリンが大量に追加分泌されて、筋肉細胞内の糖輸送体(Glut4)が細胞表面に移動するので血糖を取り込めます。
Glut4が筋肉細胞内にあるときは、血糖をほとんど取り込めません。
細胞が血糖を内部に取り込むためには糖輸送体が必要であり、現在まで、糖輸送体1~14までが発見されています。
筋肉細胞と脂肪細胞の糖輸送体は、Glut4で常は細胞内部に沈んでいます。
Glut4はインスリンが追加分泌されたとき、及び筋肉が収縮したときに細胞表面に移行して、血中の糖を細胞内に取り込みます。
筋肉の収縮時のGlut4の細胞表面への移動は、インスリン非依存的です。
インスリンは、人体で唯一血糖値を下げるホルモンで、膵臓のランゲルハンス島のβ細胞でつくられ分泌されます。
24時間少量持続的に出ている基礎分泌のインスリンと、糖質を摂取して食後血糖値が上昇したときに、その10~30倍の量が出る追加分泌のインスリンがあります。
追加分泌のインスリンには、即分泌される第1相と少し遅れて出る第2相があります。
正常人は、血糖値が上昇し始めたら即インスリンが追加分泌されます。
この第1相反応は、もともとプールされていたインスリンが5~10分間分泌されて、糖質摂取時の急激な食後高血糖を防いでいます。
その後、膵臓のベータ細胞は、第2相反応と呼ばれる持続するインスリン分泌を行います。
これは、食事における糖質の残りをカバーしています。
即ち、糖質を摂取している間は、第2相のインスリン分泌が持続します。
2型糖尿人は、通常、第1相反応が低下或いはなくなっていることが多いようです。
従って、糖質摂取時に血糖値の急激な上昇(グルコーススパイク)が起きてしまいます。
また、第2相も低下していることが多いので、糖質を摂取する限り、一旦上昇した血糖値はなかなか下がってきません。
糖質制限食ならば、野菜分のごく少量の糖質だけなので、2型糖尿人においても、食後高血糖はほとんど生じません。追加分泌インスリンも、ごく少量ですみます。
基礎分泌インスリンは、検査機関にもよりますが、基準値はIRI:3~15μU/mlくらいです。
しかし私は、現在「基礎分泌インスリンは低くて空腹時血糖値も正常というパターン」が一番いいと考えています。
例えば、IRIが3未満で、2.5とかでも、空腹時血糖値が110mg未満の正常値ならそれでいいと思います。
逆にIRIが15で基準値で血糖値も110mg未満というパターンより好ましいのです。
つまりインスリンは人体に絶対に必要なのですが、それ自体に発癌、老化、肥満などのリスクがあるので、インスリンが少なくてマッチングがいい人のほうが好ましいのです。
なお脳の糖輸送体は、Glut1であり、常に細胞表面に存在しているので、血流さえあればいつでも血糖を取り込めます。
ちなみに赤血球や網膜もGlut1を持っているので、インスリンに関係なく血糖を取り込めます。
江部康二
インスリン分泌力とその感受性が低下した我々糖尿者にとって、今回の記事は大変希望の持てるお話で、嬉しい限りです。貴院京都駅前診療所での、IRI(基礎分泌)検査結果に関する質問をさせて頂いた者です。
糖質制限を始めて18ヶ月、多少勉強もしましたので、今回の記事で一層理解がスッキリしました。早速の記事への取り上げ、誠に有難うございます。
私の食後4.5時間のIRIは2.6でした。最近になって、食前血糖≒100、食後血糖≒130の頻度が増えたし、この値になる食餌内容と量が体で分かるようになりました。
よって次のことが自信を持って言えます。『年齢67歳、糖尿暦15年以上の者ですら、糖質制限食で正常人の領域になりうる。更に、合併症などのリスクの大幅低減~回避が可能である』と。但し、薬は飲んでいます。
感謝の気持ちと他の人々にも知って欲しい思いでいっぱいです。
糖質制限を始めて18ヶ月、多少勉強もしましたので、今回の記事で一層理解がスッキリしました。早速の記事への取り上げ、誠に有難うございます。
私の食後4.5時間のIRIは2.6でした。最近になって、食前血糖≒100、食後血糖≒130の頻度が増えたし、この値になる食餌内容と量が体で分かるようになりました。
よって次のことが自信を持って言えます。『年齢67歳、糖尿暦15年以上の者ですら、糖質制限食で正常人の領域になりうる。更に、合併症などのリスクの大幅低減~回避が可能である』と。但し、薬は飲んでいます。
感謝の気持ちと他の人々にも知って欲しい思いでいっぱいです。
いつもブログで勉強させてもらっています
運動後、筋肉細胞表面にいたglut4は速やかに細胞内へ戻るのでしょうか。それとも、運動後数分間は細胞表面に留まっているのでしょうか。
運動後、筋肉細胞表面にいたglut4は速やかに細胞内へ戻るのでしょうか。それとも、運動後数分間は細胞表面に留まっているのでしょうか。
2013/05/11(Sat) 15:48 | URL | ちゃっぴ | 【編集】
とっさん
『年齢67歳、糖尿暦15年以上の者ですら、糖質制限食で正常人の領域になりうる。
更に、合併症などのリスクの大幅低減~回避が可能である』
仰る通りです。
このまま美味しく楽しく糖質制限食をお続けくださいね。
『年齢67歳、糖尿暦15年以上の者ですら、糖質制限食で正常人の領域になりうる。
更に、合併症などのリスクの大幅低減~回避が可能である』
仰る通りです。
このまま美味しく楽しく糖質制限食をお続けくださいね。
2013/05/11(Sat) 17:12 | URL | ドクター江部 | 【編集】
ちゃっぴ さん
運動の強度、運動した時間などにより差があります。
糖尿病専門医ガイドブック(2006年)の98ページに、
「肥満2型糖尿病患者で、低強度運動30分実施後、2時間にわたってインスリン感受性が改善した」という報告が記載されています。
しかし個人差があるようです。
この件に関しては、復習を兼ねて、一度ブログ記事にしようと思います。
運動の強度、運動した時間などにより差があります。
糖尿病専門医ガイドブック(2006年)の98ページに、
「肥満2型糖尿病患者で、低強度運動30分実施後、2時間にわたってインスリン感受性が改善した」という報告が記載されています。
しかし個人差があるようです。
この件に関しては、復習を兼ねて、一度ブログ記事にしようと思います。
2013/05/11(Sat) 17:21 | URL | ドクター江部 | 【編集】
今回もとても興味深く記事を読ませていただきました。ちょうど昨日GLUT1欠損症に対するケトン食治療についてのWebページを調べていたのでなんだかピンときてコメントしました。
脳はGLUT1を利用しているのですね。だから脳にエネルギーが供給されなくててんかん発作がおきるのか。。。
脳神経解剖学では、ニューロンの損傷はその栄養因子の断裂が原因という考えがありますので、先日の記事同様、アルツハイマー・認知症は3型糖尿病、うつ・パニック障害などの精神疾患は4型糖尿病という言い方をされる人がいるのも納得できるところです。
脳はGLUT1を利用しているのですね。だから脳にエネルギーが供給されなくててんかん発作がおきるのか。。。
脳神経解剖学では、ニューロンの損傷はその栄養因子の断裂が原因という考えがありますので、先日の記事同様、アルツハイマー・認知症は3型糖尿病、うつ・パニック障害などの精神疾患は4型糖尿病という言い方をされる人がいるのも納得できるところです。
2013/05/11(Sat) 20:03 | URL | ゆん | 【編集】
こんばんは。先日、かかりつけの病院で検査結果が出て医師から『腎症二期が消滅?しました。』と言われ驚きました。昨年7月では、空腹時血糖が120。ヘモグロビン(Jds )6.0。75㌘ブドウ糖負荷試験2時間値で190位でした。また、BMI は、36で肝機能、コレステロールも基準超えで血圧も基準超えでした。桐山先生の著書から先生の著書を購入してからスーパー糖質制限を始め、運動は通勤時に歩く程度でした。現在、BMI は26へ。(25キロ減)空腹時血糖が100前後、ヘモグロビンは、4.7となり肝機能、LDL コレステロール120、血圧も基準に入りました。腎症消滅と言われビックリしてしまいました。後は、尿酸値が7.5と高いのでこれを何とか改善できるようにしたいと思います。時に、脱線しながら?も結果が出て非常にうれしいです。医師からは、今までに診察した人で1000人位いるけど、ここまでの回復した人は、いない?なんて言われてさらに、ビックリしてしまいました。この勢いで薬も止めていいですか?と言うと『ダメ』です。との事でした。(トラゼンタ、クレストールを処方=糖尿病専門医です。)間もなく、スーパー糖質制限1年ですでに完全に自分には、定着しました。これも先生の著書とブログのお陰です。ありがとうございました。 自分は、運良く早期の段階で短期間で結果が出たのですがそれにしても長年の肥満症、高血糖状態がジワジワ合併症(腎症)を起こすのは、本当に恐ろしいですね。自覚症状ないのでなおさら恐ろしいです。周囲にも糖質制限で予防できる人がたくさんいると思います。自分も微力ながら周囲にも伝えていきたいと思います。
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