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医事新報『糖質制限食による長期的な影響』能登論文への反論(2)
こんにちは

精神科医師Aさんから

日本医事新報2013年4月6日号に載った『糖質制限食による長期的な影響』 という

国立国際医療研究センター病院糖尿病・代謝・内分泌科医長
東京医科歯科大学医学部臨床教授
能登 洋 先生

の論文情報をコメントいただきました。

精神科医師Aさん、ありがとうございます。

一つ一つ反論していきます。

今日の記事は、能登先生が引用しておられるSacksらのニューイングランド・ジャーナル掲載の論文への、批判です。

このSacksらの論文、デザイン的に途中から破綻しており、結論はかなり無理があります。


【能登氏の論文からの抜粋
3) Sacks FM, et al : N Engl J Med 360: 859, 2009.

*総カロリー制限食による減量効果

前述の研究に対し,総カロリーは同じだが糖質・蛋白質・脂質の構成比率が異なる食事による減量効果比較試験が2009年に米国から発表された.その結果は,高糖質摂取群と糖質制限群では2年後の減量効果に有意差を認めなかったというものだった(ベースライン平均体重約93kg,平均減量約3kg)[3].蛋白質・脂質に関してもそれぞれ高摂取群と制限群で有意差を認めなかった.興味深いことに,この研究では栄養指導回数に比例して減量効果が増加することが示唆され,頻回の個別化指導の効果が期待される.】



NEJM誌2009年2月26日号に掲載された米国Harvard公衆衛生大学院のFrank M. Sacks氏らの

「ダイエットの種類は減量の成否に影響しない。」
「3大栄養素の摂取割合よりも総熱量の制限が重要である。」

というカロリー神話肯定論文 (*)を検証してみます。

811人を4グループに分けて、2年間経過を追ったものです。

この研究では、高糖質食と中糖質食の比較検討が行われていたのですが、低糖質食(糖質制限食)のグループ(糖質12%)はありません。

この研究のデザインした

高糖質食(低脂肪/標準たんぱく食)は、糖質65%、
低糖質食(高脂肪/高たんぱく食)は、糖質35%、

であり高雄病院の糖質制限食の糖質12%に比べると、到底、低糖質食とは言えず、せいぜい中糖質食です。

また、研究の最初のデザインでは、糖質65%と糖質35%で、30%の差がありました。

しかし、6ヶ月経過した時点で、57.5%と43%で、はやくもその差は14.5%と半分以下に減っています。

しかも2年間経過した時点で、

高糖質食グループの糖質割合は53.2%とさらに減っており、
低糖質食グループの糖質割合は42.9%でした。

高糖質食グループと低糖質グループの糖質摂取比率の差は、僅か、10.3%と当初の1/3に減少しており、これでは体重減少に、有意差がでなくても当然です。

本来、当初の30%の差というデザインが、6ヶ月目で、14.5%の差しかなくなった時点でデザイン的には破綻しており、研究中止してもおかしくありません。

これに対して

DIRECT
1) Shai l, et al: N Engl J Med 359: 229,2008.では、糖質制限食VS脂肪制限食、2年間で総摂取カロリーは有意差なしですが、脂肪制限食に対し糖質制限食の方が、有意差をもって体重減少に成功しています。

糖質制限食群は、最初の2ヶ月は20g/日に糖質を厳しく制限(5%以下)、その後3ヶ月目からは徐々に緩めて120g/日(約32%)までOKと設定しています。

しかしながら、6ヶ月後、12ヶ月後、24ヶ月後、糖質制限食群も、既に40~41%の糖質を摂取しています。

つまり、このDIRECT論文も、試験開始6ヶ月後からは、

「糖質40%の糖質制限食群(中糖質群)と糖質約50%の低脂肪食群、地中海食群(高糖質群)を比べた研究」

ということになります。

しかし、DIRECTでは、当初の5ヶ月間の減量が、6ヶ月目から40%の糖質を摂取しても少しリバウンドしたものの、2年間は有意差をもって維持できており、さらに6年後(フォローアップ研究)も減少幅は少なくなったものの、有意差が維持できていました。

これらの2つのRCT研究論文を考察してみます。

まず、Sacksらの論文を検証すると、糖質制限食に減量効果がないということではなく、「同一摂取カロリーで、糖質53.2%と糖質42.9%くらいの差では2年後の体重減少に有意差は認められない。」となります。

やはり、私が足かけ12年間実践しているスーパー糖質制限食(糖質12%)がお奨めですね。(^^)   

Shaiらの論文を検証すると、

「当初の2ヶ月間~5ヶ月間のある程度厳しい糖質制限食で得られた体重減少効果は6ヶ月目から40%の糖質を摂取しても2年間~6年間は有効であった。」

となります。



江部康二


(*)
Sacks FM, et al:Comparison of Weight-Loss Diets with Different Compositions of Fat, Protein, and Carbohydrates: N Engl J Med Volume 360: 859-873 Feb.26,2009

NEJM誌2009年2月26日号、
米国Harvard公衆衛生大学院のFrank M. Sacks氏らの論文からの抜粋。

811人(51±9歳、男性が36%)の過体重または肥満の成人を4等分し、
無作為に以下の食事療法のいずれかに割り付けた:

エネルギーの摂取比率がそれぞれ
脂質、     たんぱく質、      炭水化物     
20%、     15%、         65%(低脂肪/標準たんぱく食)
20%、      25%、        55%(低脂肪/高たんぱく食)
40%、     15%、         45%(高脂肪/標準たんぱく食)
40%、      25%、         35%(高脂肪/高たんぱく食)

 低脂肪/標準たんぱく食群:
  1636kcal、26.2%、17.6%、57.5%(6カ月時)
  1531kcal、26.5%、19.6%、53.2%(2年時)

 低脂肪/高たんぱく質食群:
  1572kacl、25.9%、21.8%、53.4%(6カ月時)
  1560kcal、28.4%、20.8%、51.3%(2年時)

 高脂肪/標準たんぱく食群: 
  1607kcal、33.9%、18.4%、49.1%(6カ月時)
  1521kcal、33.3%、19.6%、48.6%(2年時)

 高脂肪/高たんぱく食群:
 1624kcal、 34.3%、22.6%、43%(6カ月時)
 1413kcal、 35.1%、21.2%、42.9%(2年時)

 摂取熱量と共に運動量も、4群間に差はなかった。





【13/04/17 精神科医師A
日本医事新報2013年4月6日号, pp72-73

『糖質制限食による長期的な影響』

国立国際医療研究センター病院糖尿病・代謝・内分泌科医長
東京医科歯科大学医学部臨床教授
能登 洋

近年,「糖質制限ダイエット」が人気を集めている.実際,糖質制限食は短期的(1~2年間)な体垂減少や動脈硬化リスクファクター改善に有効であることが示唆されている.本稿では,筆者らが発表したメタアナリシスの結果を中心に,糖質制限ダイエットの効果と危険性について解説する.

*糖質制限食による減量効果
 糖質制限食による減量効果を示す臨床研究は多くあるが,いずれも最長1年間程度の短期間のデータであった.2008年になり,糖質制限食・脂肪制限食・地中海式食の3食群による減量効果比較試験の結果がイスラエルから発表され,2年間の追跡期間で糖質制限食による効果が最も大きい (ベースライン平均体重約91kg,平均減量約5kg) ことが実証された[1].また,糖質制限食により心血管疾患リスクファクターが改善する報告も増加し,長期的予後改善の可能性も期待されるようになった.
 しかし,このイスラエルでの臨床研究には問題点がいくつか存在する.まず,他のダイエット介入研究と同様に1年以上糖質制限式を継続できた人は約80%であった.また,3食群間で総カロリーが異なっており,糖質制限食の総カロリーが最も低かったため,減量効果が糖質制限によるものなのか総カロリー制限によるものなのか結論づけることができない[1].さらに,その後発表された報告では,6年後には3食群ともほぼベースラインの体重に戻っていた[2].

*総カロリー制限食による減量効果
 前述の研究に対し,総カロリーは同じだが糖質・蛋白質・脂質の構成比率が異なる食事による減量効果比較試験が2009年に米国から発表された.その結果は,高糖質摂取群と糖質制限群では2年後の減量効果に有意差を認めなかったというものだった(ベースライン平均体重約93kg,平均減量約3kg)[3].蛋白質・脂質に関してもそれぞれ高摂取群と制限群で有意差を認めなかった.興味深いことに,この研究では栄養指導回数に比例して減量効果が増加することが示唆され,頻回の個別化指導の効果が期待される.


*糖質制限食による長期的な影響
一方,長期的なアウトカムや安全性は不明であった.前述のように糖質制限食は2年程度なら減量などの効果が示されているものの総カロリー制限のほうが影響が大きい可能性があること,長期的には減量効果が持続しないこと,継続が容易でないことを考慮すると,医学的利点は少ない可能性がある.肥満者の急増と糖質制限ダイエットの人気に鑑み,筆者らは糖質制限食による長期的な死亡・心血管疾患リスクの系統的検証を行った[4].
 まず,2012年9月付けの糖質制限食と死亡・心血管疾患に関する文献検索を行ったところ492報ヒットした.その中から適切な妥当性の高い全9件の論文がメタアナリシスに選択された.メタアナリシスの結果を以下にまとめる(表1).

表1 低糖質摂取者の死亡・心血管疾患リスク(メタアナリシス)
アウトカム-----文献数(報)---総対象者数(人)---リスク比---P値
総死亡-----------4---------272,216----------1.31----0.007
心血管疾患死------3---------249,272----------1.10-----0.12
心血管疾言罹患----4---------220,691-----------0.98----0.87

・解析対象として選抜されたのはいずれも欧米の研究で,30歳以上の健常人を5~26年間追跡した観察研究であった.介入研究や日本からの報告はなかった.
・全カロリーに占める糖質カロリーの割合を10段階に分け,最小糖質摂取率群(総カロリーの30~40%)と最大糖質摂取率群(総カロリーの60~70%)のリスクを統合比較した.
・27万2216人(女性66%,総死亡1万5981人)の全死亡リスクは,低糖質摂取群は高糖質摂取群よりも31%有意に高かった.
・24万9272人(女性67%,心血管疾患死3214人)の心血管疾患死リスクには低糖質食に伴う有意なリスクを認めなかった.
・22万691人(女性100%,心血管疾患罹患5081人の心血管疾患罹患リスクにも低糖質食に伴う有意なリスクを認めなかった.
以上より,低糖質食による長期的な効用は認めず,死亡リスクが有意に増加する可能性が示された.

*今後の研究課題
死亡リスク増加の原因が今後の究明課題であるが,糖質制限食では蛋白質・脂質の摂取量が増えることが報告されており,その結果,心血管疾患リスクが増加することが一因として想定されている.実際,筆者らの研究でも心血管疾患死リスクの増加傾向を認めた.また,介入研究が存在しなかったため,日本人や糖尿病患者も対象とした長期的な介入研究の必要性が改めて浮き彫りとなった.

*まとめ
 糖質ダイエットは2年程度の期間なら利点があり危険性は少ないと考えられる.しかし,今回の研究に基づいて「糖質制限ダイエット]の賛否について論じることはできないものの,長期間実施する場合はリスクの可能性を考えて慎重になったほうがよいであろう.


<文献>
1) Shai l, et al: N Engl J Med 359: 229,2008.
2) Schwarzfuchs D, et al : N Engl J Med 367: 1373,2012.
3) Sacks FM, et al : N Engl J Med 360: 859, 2009.
4) Noto H, et al: PLoS One 8: e55030, 2013. 】

テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
質問です!

一回の糖質摂取量が20g以下であれば
一日何食食べても大丈夫なのでしょうか⁇
例えば一日に糖質を105g摂ったとしても
15g×7食とかなら大丈夫なんですか(>_<)
2013/04/30(Tue) 22:32 | URL | みずきてぃー | 【編集
Re: タイトルなし
みずきてぃー さん。

1回の糖質摂取量が10~20g以下で、2~3回/日が、目安です。
つまり1日の糖質摂取量も、20~60g/日以内が目標です。
従って、15g×7=105g/日・・・駄目です。

2013/05/01(Wed) 00:05 | URL | ドクター江部 | 【編集
糖質1gの血糖値上昇値について
糖質制限食を目指す皆様のグループが、各地で活発に活動されたりブログで発信をしたりと大変盛り上がってきております。
おかげさまで色々な情報を得ることが出来て感謝しております。
また、賛否両論も有りますが自分で体験した限り、明らかに糖質制限食側に分があります。

今日から4連休となりましたが、普段通り午前5時に目が覚めてしいました。
そこで、糖質1g当たり何mgの血糖値が上がるのか?、糖質制限を開始後初めてテストしてみました。
糖質制限食開始から17ヶ月(スタンダード6ヶ月、スーパー11ヶ月)です。
最近の血糖値は、早朝空腹時100~130mg、食後2時間で130~160mg、直近のHbA1C7.0(NGSP)です。
食パン6枚切りを1枚(糖質約27g)でテストしたところ次のようになりました。
午前中の結果は、正に“糖質恐るべし”、20数年間カロリー制限食忠実にを続けても徐々に悪化したことがうなずけます。

開始時間 血糖値
午前5時 105 6枚切り1枚(糖質約27g)
  5時30分 154
  6時    231
  6時30分 242
  7時    217
  8時    130
  9時     79 強い空腹感、手先に若干の震え
ミックスナッツで計算上約糖質6gを摂取したが改善せず
追加でブドウ糖5gを摂取
 10時   135
 13時    120 昼食直前(計算上15gの糖質を摂取)
 14時30分 129 午前中は食後1.5Hで血糖値が最高だったので

午前中の結果では、私の場合糖質1g当たり5mg上昇してます。
血糖値の上昇は2型は糖質1gで3mg、1型は糖質1gで5mg、と言われているので
血糖値の上昇については1型ということになります。
しかし、昼食後は9mgの上昇にとどまっております。
ここで疑問が有りお尋ねします、糖質1gでも精製された糖質とそうで無い糖質でこれ程の差が出るのでしょうか?
または、私のβ細胞の働きが相当弱いのでしょうか?
2013/05/02(Thu) 17:29 | URL | 解決ZERO | 【編集
超低糖質食での高QOL長生きの可能性についてのしろうと考え
超低糖質食での高QOL長生きの可能性についてのしろうと考え
ミトコンドリアの活性化、活性酸素低減の可能性についてなど

今回の先生のコメントの内容とずれてしまいますが、
能登論文のとるにたらなさは理解してしまったのでお許しください。
(それにしても、こんな雑な論拠よく何度も恥ずかしくもなく
よく出せますね!逆にゆうと、科学的な根拠なく、どうしても、無理やりにでも
超低糖質食を否定しようと思っても、こんな論拠でしかできなくて、科学者研究者だったたら
とてもはづかしい姿をさらしてしまうのはあわれです!それをそのまま伝えてしむ
しまうメディアのレベルの低さも目を覆うばかりですが)
ところで先生はこのブログで超低糖質食でのがんリスクの低減の可能性を
がんの栄養源の見地から教授され、非常に参考になていますが、
以下はしろうとなりに、自分の今の知識で考えてみたことです。
生活習慣病や長寿研究の第一人者慶大の伊藤先生をはじめその世界では
よく言われてる、ミトコンドリアに関してですが、
伊藤先生は超低糖質食には直接ふれていませんが、
ミトコンドリアの活性化ががんリスクの低減につながる可能性を説いています。
学会でもがんの原因の主役といわれる活性酸素の発生を低減すると思われるからです。
いとう先生はミトコンドリアの活性化を多少負荷のある有酸素運動でとといていて、
超低糖質食には直接ふれていませんが、運動にがてなものとして考えたのは
ミトコンドリアのエネルギー代謝の夏井先生のブログなどを参考にしたしろうと知識で考えた
超低糖質食によるミトコンドリアの活性化の可能性です。
また、長寿とミトコンドリアの活性化の関係もいとう先生はじめ長寿研究の研究者がよくしてきしていることです。
いづれにしろ、糖質食の後向きな無理やりなアピールに対し、超低糖質食は
今後の研究に期待できることがめじろ押しです。
サーチュイン遺伝子に関しても、超低糖質食も細胞レベルでは一種の飢餓状態だと思いますので、
働く可能性にもしろうとなりに興味あります。
どちらにしろ、前向きに考えられた方が幸せですし、健康にもいいような気がします。
先生のブログではいつも勇気づけられます。今後も無理されぬようによろしくお願い申し上げます。

2013/05/03(Fri) 15:57 | URL | debuhei | 【編集
Re: 超低糖質食での高QOL長生きの可能性についてのしろうと考え
debuhei さん。

仰る通り、糖質制限食でミトコンドリアの活動が活性化されると思います。

また、血糖値の上昇と高インスリン血症が、酸化ストレスの元凶となります。
そして、糖質摂取だけが、食後高血糖と高インスリン血症を招きます。

酸化ストレスは、老化・動脈硬化・癌・アルツハイマー病・パーキンソン病・・・
様々な病気のリスクとなります。

糖質制限食で、酸化ストレスのリスクを予防することが期待できます。
2013/05/04(Sat) 13:20 | URL | ドクター江部 | 【編集
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