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人体の細胞のエネルギー源、小腸と大腸は特殊。
こんにちは。

細胞が活動するにはエネルギー源が必要です。

その中で、小腸と大腸は特殊なエネルギー源を利用しています。


A)小腸の細胞のエネルギー源はグルタミンが50~60%、ケトン体が15~20%、ブドウ糖は5~7%とごく少ない。
  グルタミンは血中に最も多く含まれている遊離アミノ酸です。

B)大腸の細胞のエネルギー源は、短鎖脂肪酸(*1)のみである。

A)B)に関して、私は浅学にして知りませんでした。

治療に活かす!
栄養療法
はじめの一歩
清水健一郎 著
羊土社 2011年2月


を読んで、初めて知りました。

臨床に即した栄養療法の本はほとんどないので、私にはとても参考になりました。



1)赤血球
 ミトコンドリア(*2)を持っていないので、ブドウ糖が唯一のエネルギー源。

2)脳
 ミトコンドリアを持っているが、血液脳関門(*3)のため、脂肪酸の大きさは通過で きない。 従って、ブドウ糖と大きさが小さいケトン体がエネルギー源。

3)赤血球以外の細胞は全てミトコンドリアを持っているので、骨格筋、心筋、内臓など の体細胞は、ブドウ糖・ケトン体・脂肪酸をエネルギー源とする。

4)肝細胞
 肝細胞は、そのミトコンドリア内でケトン体を産生するが、自身は利用せずに血中に放 出して他の細胞のエネルギー源に回す。従って肝細胞はブドウ糖と脂肪酸をエネルギー 源とする。


今まで、1)2)3)4)で人体の細胞のエネルギー源は、ほとんど説明できると思っていたので、大変勉強になりました。

清水健一郎先生、ありがとうございました。

また本書をご紹介頂きました
京都府立医科大学大学 総合医療・医学教育学教室
京都府立医科大学大学大学院 総合医療・医学教育学教室
助教 森 浩子 先生、ありがとうございました。

なおケトン体と総称される、βヒドロキシ酪酸、アセト酢酸、アセトンの内、βヒドロキシ酪酸は、ケトン基をもっていないので、厳密にはケトン体ではなく、短鎖脂肪酸です。


江部康二


(*1)
短鎖脂肪酸
ウィキペディア
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9F%AD%E9%8E%96%E8%84%82%E8%82%AA%E9%85%B8

短鎖脂肪酸(たんさしぼうさん、英: SCFA)は脂肪酸の一部で、炭素数6以下のものを指す。具体的には酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、酪酸、イソ吉草酸、吉草酸、カプロン酸、乳酸、コハク酸を指す。

反芻動物における役割

摂取した飼料が反芻胃内で微生物の発酵を受ける反芻動物においては、この発酵の際に生じる短鎖脂肪酸(主に酢酸、プロピオン酸、酪酸)が主なエネルギー源となる。 反すう胃内で生成した酪酸の多くは反すう胃粘膜でβ-ヒドロキシ酪酸に換されるため、肝門脈に現れるのはおよそ10分の1となる。このとき生成されるβ–ヒドロキシ酪酸も反すう家畜にとってはエネルギー源となる。 また、プロピオン酸の多くは肝臓で糖新生に利用され、反芻動物の糖要求の多くはプロピオン酸からの糖新生によってまかなわれる。


(*2)
ミトコンドリア
細胞内のエネルギー生産装置。ミトコンドリアがあるとケトン体と脂肪酸がエネルギー源として利用できる。


(*3)
血液脳関門
ウィキペディア
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A1%80%E6%B6%B2%E8%84%B3%E9%96%A2%E9%96%80

<血液脳関門>

血液脳関門(けつえきのうかんもん、英語: blood-brain barrier, BBB)とは、血液と脳(そして脊髄を含む中枢神経系)の組織液との間の物質交換を制限する機構である。これは実質的に「血液と脳脊髄液との間の物質交換を制限する機構」=血液髄液関門 (blood-CSF barrier) でもあることになる。ただし、血液脳関門は脳室周囲器官(松果体、脳下垂体、最後野など)には存在しない。これは、これらの組織が分泌するホルモンなどの物質を全身に運ぶ必要があるためである。

<構造>

血液脳関門は、毛細血管の内皮細胞の間隔が極めて狭いことによる物理的な障壁であるが、これに加え、中枢神経組織の毛細血管内皮細胞自体が有する特殊な生理的機能、すなわち、グルコースをはじめとする必須内因性物質の取り込みと異物を排出する積極的なメカニズムが関与している。脂肪酸は脳関門を通れないため、脳は通常、脳関門を通過できるグルコースをエネルギー源としている[1]。グルコースが枯渇した場合、アセチルCoAから生成されたケトン体も脳関門を通過でき[2]、脳関門通過後に再度アセチルCoAに戻されて脳細胞のミトコンドリアのTCAサイクルでエネルギーとして利用される[1]。血液脳関門の働きにより、中枢神経系の生化学的な恒常性は極めて高度に維持されている。

その一方で、アルコール、カフェイン、ニコチン、抗うつ薬は、脳内へ通過できる[3]。かつては分子量500を超える分子(多くの蛋白質など)や、脂溶性が低い荷電したイオンは脂質二重膜を透過できず、血液循環から中枢神経系の中に入ることができないとされていた(分子量閾値説)が[4]、近年の研究により、脳毛細血管内皮細胞の細胞膜に存在するタンパク質が、脳内から血管へ物質を積極的に排出していることが明らかにされている[5]。

こうした毛細血管内皮細胞の機能はリンパ球やマクロファージや神経膠細胞から放出されるサイトカインによってコントロールされ得る。このため、脳炎や髄膜炎のときは血液脳関門の機能は低下する。また、膿瘍その他の感染巣形成や腫瘍といった、よりマクロなレベルの破壊を起こす疾患の存在によっても、血液脳関門は破綻する。




テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
先日買い直したら…
江部先日こんにちは。
4月から職場が変わって、手持ちの医学書を大量処分したヘルミです。
ついでにiPadを購入し、電子書籍で朝倉内科学を買い直してみました。
最近の教科書にはどんなことが書いてあるかと思って。
早速糖尿病のところを見てみると、「脳のエネルギーはブトウ糖のみである」と、旧態依然とした事が…
今時の学生や研修医もこんなことを鵜呑みにしているのか、とがっかりしました。
高かったのに…
早く教科書が書き換わるといいですね。
2013/04/09(Tue) 17:38 | URL | ヘルミ | 【編集
江部先生から教えて頂いた、
「介護されたくないなら粗食はやめなさい」
という本を読ませていただきました。

その他でも、脂肪摂取に関する本とか、
現代の医療を批判する本とか、
面白くて幾つか読みました。

糖質制限とは矛盾する部分も有りますが非常に勉強になります。


だいたい全てに共通する点は・・・

①良質のタンパク質は身体の再生・病気の治癒に絶対に欠かせないということ。
②脂肪は悪いどころか良質な脂肪は健康に良くて、これも絶対必要だということです。

私は医療従事者ではありませんので勝手なことを言わせてもらいますが・・・
一般に言われる「低脂肪食・カロリー制限」は身体に悪いし病気になるので止めた方がよいのではないかという気がしてきました。
良質なタンパク質や良質な脂肪を充分摂取出来て、かつカロリーオーバーにならない方法・・・。

選択肢は一つしかないような気がするのですけども・・・。

2013/04/09(Tue) 21:44 | URL | マキマキ | 【編集
甘草の1日量とは?
江部先生 3/4以来、15年つきあった糖尿専門医O医師とバイバイして、腎臓専門医M医師に転院しました お薬手帳をチェックした際、今処方されている煎じ薬(養腎降濁湯)について、漢方薬については専門知識はないが、甘草1日8gは多すぎると思うので江部先生に配合理由を聞いてほしいと言いました=その際聞いた話ですが、一般的に甘草は1日3g(グリチルリチン120mg)と言われており、使用限度も1日5gであり、芍薬甘草湯は1日6g入っているので、高齢者の連用はダメと言われている 副作用と言われている代表的な偽アルドステロン症は体液バランスの異常であり、グリチルリチン1日300mg(甘草7.5g)以上で症状が出る ナトリウム貯留、カリウム排泄促進が起こり、尿量の減少=体重増加、浮腫、高血圧、四肢麻痺などが一般常識らしいのですが、よろしくお願いします
2013/04/09(Tue) 22:12 | URL | 柚木信也 | 【編集
朝日カルチャーセンター新宿
いつもお世話になっております。
昨日の朝日新聞の夕刊読んでおりましたら、朝日カルチャーセンター新宿で先生の講演が!さらにボタニカさんも!
ますます広まっています!
2013/04/09(Tue) 22:32 | URL | 菜の花 | 【編集
Re: 甘草の1日量とは?
柚木信也 さん

腎不全の場合、カリウムが高値となりやすいです。
腎臓専門医M医師のご指摘通り、甘草が多いと「偽アルドステロン症」になるリスクがあります。
また偽アルドステロン症、あるいはそうでなくても、甘草で低カリウム血症になることがあります。

養腎降濁湯は、
実はそれを逆手にとって、カリウムが高値になりがちな腎不全において、
あえて甘草を多くして、カリウムを低下させて基準値になるように意図しています。

従いまして、カリウムのデータを見ながら、調整が可能です。
2013/04/09(Tue) 23:27 | URL | ドクター江部 | 【編集
勉強になりました
いつも、嫁と義母に偏食だと毛嫌いされております(笑)
最近、納豆が食べられるようになり、食の幅が広がりました。
1日の食事内容ですが、
豆腐、1日1丁
納豆1パック
鶏むね肉、150g/日
キャベツ葉6枚
にんじん少々
ちくわ1本←ちょっと注意が必要でしょうか?
たまねぎ少々
スライスチーズ1枚
にぼし無塩6~9匹
かつお節少々
パン1/4
もやし1袋
後はサプリメントとして、
カロリーメイト1本
などを食しています。
いかがなものでしょう?
まぁ、普通の食事おかずも少しは食したりしてますが・・・。

2013/04/10(Wed) 09:40 | URL | クワトロ | 【編集
こんにちは。
先日、テレビ東京の番組「主治医が見つかる診療所」で、芸能人の方の様々な検査や食生活から、現在と将来の問題点と注意する疾患についてやってました。

食生活については主にひめのともみクリニックの姫野友美先生がチェックされていたので、例えばカレーライスなら「まずご飯が多い。ルーも小麦粉が多い。じゃがいもや人参も糖質が多いので、ルーに含まれるウコンなどの薬効も相殺されてほとんど期待出来ない」(のように)仰っていました。大きくうなずく私(笑)
「食べる順番が大事。野菜、たんぱく質、最後にご飯にして、ご飯が少なくても満足」と、白澤卓二先生も仰る食べ方をご教授。

スタジオの他の先生も「炭水化物をちゃんと摂りましょう」という発言はなかったです。
芸能人の方も、炭水化物控え目なメニューだったと思いますし、この番組は「健康の為には糖質は控え目に」が当たり前になっているように感じました。

アディポネクチンで有名な?岡部(正)先生も、以前は脂を控えてバランスよく、と唱えていましたが特に言及なく、相変わらず南雲先生はおもしろキャラで定着されているようです。とうもろこしの芯ごと食べる女芸人の小原さんに「それは素晴らしい。僕が全力で(小原さんを)守ります」と仰り、姫野先生に「異食症というのがありまして‥」と言われて、大笑いでした。
2013/04/10(Wed) 12:46 | URL | もんたろ | 【編集
Re: タイトルなし
マキマキ さん。

全く、同感です。
2013/04/10(Wed) 14:27 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: 勉強になりました
クワトロ さん。

タンパク質は足りているので、必須アミノ酸はOKです。

脂肪が少ないので必須脂肪酸不足とカロリー不足がやや心配です。
動物性脂肪を含む食品や、オリーブオイル、エゴマオイル、EPA・DHAなど積極的に
摂るとよいと思います。

2013/04/10(Wed) 14:30 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: こんにちは。
もんたろ さん。

少しずつですが、「健康の為には糖質は控え目に」が浸透しつつあるのですね。
とても嬉しいことです。
2013/04/10(Wed) 14:34 | URL | ドクター江部 | 【編集
ありがとうございました
お忙しいのに、ご丁寧にご回答、ありがとうございました。
糖質セイゲニストの半一員として自然の身体を作って行きたいと思います。
2013/04/10(Wed) 15:30 | URL | クワトロ | 【編集
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