インクレチン関連薬で急性膵炎リスク?
こんにちは。

少し前なのですが、MT Pro記事(☆☆☆)に

GLP‐1受容体作動薬エキセナチド(バイエッタ注)
DPP‐4阻害薬シタグリプチン(ジャヌビア、グラクティブ)

の使用で、急性膵炎入院が2倍超発症という研究論文報告の記載がありました。

日本では、ジャヌビア、グラクティブなどのDPP-4阻害剤が、第一選択剤となっていますので少し心配です。

欧米では、メトグルコが第一選択剤として定着していて、DPP-4阻害剤は第二、第三という位置づけです。


DPP-4阻害剤、私も使っているのですが、幸い急性膵炎の経験はありません。

ただ、比較的新しい薬なので、DPP-4阻害剤登場した頃の本ブログ記事(2010年09月10日 (金) )で、

『10年・20年・30年使ってどうなるかというのは誰にもわかりませんので、私達医師にも処方する責任がありますが、ここらは患者さんも自己判断・自己責任で、ということになります。

私自身は、今ある高血糖をコントロールすることを優先したいと思っていますので、糖質制限食がゆるくて血糖コントロールがいまいちの糖尿人には、DPP-4阻害剤のことを説明して、使用する方向で相談しています。』


と述べています。

今回の論文(JAMA Intern Med 2012年2月25日オンライン版)は、RCT研究論文ではないので、膵炎リスクが確定的に増加というよりは、懸念がある程度の位置付けです。

ともあれ、膵炎リスクのある糖尿人には使わないほうが無難なので、念のため処方している患者さんの見直しをしようと思います。

ところで、

「糖質制限食(食事療法)は長期的安全性のエビデンスがないので推奨できない。」

というのが日本糖尿病学会の見解です。

しかし、その日本糖尿病学会が、長期的安全性のエビデンスが全くないDPP-4阻害剤は、第一選択剤として推奨して
欧米よりはるかに多く使用しておられます。

これを論理矛盾と思うのは、私だけでしょうか?



江部康二


☆☆☆MT Pro記事

http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/1302/1302058.html
MT Pro記事
エキセナチド,シタグリプチンの使用で急性膵炎入院2倍超/米症例対照研究
[2013年2月26日]

エキセナチド,シタグリプチンの使用で急性膵炎入院2倍超

米症例対照研究

GLP‐1受容体作動薬エキセナチド, DPP‐4阻害薬シタグリプチンが急性膵炎を引き起こす可能性が指摘されている(関連記事1,関連記事2,関連記事3)。米ジョンズホプキンス医科大学のSonal Singh氏らは,同国の公的データベースを用いて,一般人口ベースの症例対照研究を実施し,これらのGLP-1関連薬(インクレチン関連薬)の使用は,急性膵炎による入院リスクの2倍以上の増加と関連していたことを明らかにした(JAMA Intern Med 2012年2月25日オンライン版)。

2年以内の使用でもリスク2倍

Singh氏らは,検証されたアルゴリズムを用いて,非営利の医療保険組合制度であるBlue Cross Blue Shield(BCBS)の7つの保険プランにおける2005~08年のデータから, 18~64歳で薬物治療中の2型糖尿病患者で,急性膵炎で入院した1,269人(症例群)を同定。それぞれに対して年齢,性,登録方式,糖尿病合併症が一致した1,269人(対照群)を選んだ。

平均年齢は52歳,57.45%は男性だった。症例群は対照群と比べて高トリグリセライド(TG)血症(12.92%対8.35%),飲酒(3.23%対0.24%),胆石(9.06%対1.34),タバコ依存(16.39%対5.52%),肥満(19.62%対9.77%),胆道および膵がん(2.84%対0%),嚢胞性繊維症(0.79%対0%),新生物(29.94%対18.05%)が有意に多かった。症例群と対照群におけるGLP-1関連薬使用歴は,シタグリプチン47人対31人,エキセナチド34人対24人だった。

そこで,高TG血症,飲酒,胆石症,タバコ依存,肥満,胆道および膵がん,嚢胞性繊維症と一般的な罹病率レベルの指標,メトホルミン使用を交絡因子として調整し,GLP-1関連薬の使用による急性膵炎入院のリスクを解析した。

その結果,GLP-1関連薬は急性膵炎入院のオッズ比(OR)上昇と関連しており,非使用者と比較して,現在(30日以内)の使用でOR 2.24(95%CI 1.36~3.69,P=0.01),最近(30日~2年以内)の使用で2.01(同1.37~3.18,P=0.01)と上昇した。使用歴ありでもORは2.07(同1.36~3.13,P=0.01)と上昇していた。

メトホルミンとシタグリプチンを併用していた者(9組)を除いた解析でも,結果はほぼ同様で,調整後ORは現在の使用2.01(同1.19~3.38,P=0.01),最近の使用1.95(同1.21~3.14,P=0.01),使用歴あり2.02(同1.31~3.01,P=0.01)だった。

同氏らは「急性膵炎は重大な罹患率,死亡率を持つ。米国の公的データベースを用いた本研究で,2型糖尿病患者におけるGLP-1関連薬シタグリプチン,エキセナチドの使用は,急性膵炎入院のリスク増加と有意に関連していた」とまとめ,「新規使用者を対象とした研究で,リスク上昇のタイミングを層別化するとともに,遺伝子変異がある場合や,肥満などの膵炎リスクがある場合にリスクが高まるのかどうかなどを特定すべきだ」と述べている。

(木下 愛美)



テーマ:糖尿病
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
カルピンチョ先生のブログにも書いてあったので、長期服薬は心配です。

http://低糖質.com/review/cat29/to.html
2013/03/25(Mon) 18:47 | URL | 長谷川 | 【編集
DPP-4阻害薬にも副作用あるのですね。薬は、薬効もあれば副作用があって当たり前。
 ・・・なのに、DPP-4阻害薬は第1選択ですか???

『糖質制限食だけは阻害する』強い意思

がはっきりありますね! > 日本糖尿病学会
2013/03/25(Mon) 19:20 | URL | 日本糖尿病学会は『とにかく糖質制限食だけは阻止する』意気込み | 【編集
MT Proの記事
2013.3.15
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/1303/1303041.html

インクレチン薬の膵炎・前がん病変リスクの評価開始,米FDA
未公表の報告受けて
 米食品医薬品局(FDA)は昨日(3月14日),インクレチン関連薬の膵炎および膵前がん病変リスクの評価を開始したことを明らかにした。少数の2型糖尿病患者を対象とした剖検の報告(未公表)からリスク上昇を示唆する結果が得られたためと説明している。ただし,現時点でリスクが増加するのか否かの結論は出ておらず,医療関係者は添付文書の内容にしたがって同薬を使用するよう呼びかけている。

2013.3.27
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/1303/1303073.html

欧州でもインクレチン関連薬と膵炎・前がん病変の関連を調査
欧州医薬品庁
 欧州医薬品庁(EMA)は3月26日,GLP-1受容体拮抗薬あるいはDPP-4阻害薬を使用する2型糖尿病患者で見られた膵炎および膵臓の前がん病変のリスク上昇について調査を開始すると発表した。今月,米食品医薬品局(FDA)が同様の調査を開始している。


2013/03/27(Wed) 17:06 | URL | わんわん | 【編集
ジャヌビア
始めてコメントさせていただきます。

ジャヌビア使ってます。

四ヶ月前からプチ糖質制限に挑戦しています。
二ヶ月でアマリールを辞め、
四ヶ月でベイスンを辞めることができました。

あとはジャヌビアだけ。

しかし、ジャヌビア、夢の新薬だったのに、、、、


実は私の主治医は糖質制限に反対派で、私は黙って制限しています。

来月診察なので、数値がどうなっているのかドキドキものです。

しかし、ジャヌビアがね、、、、
2013/03/27(Wed) 17:35 | URL | 阿部洋子 | 【編集
Re: MT Proの記事
わんわん さん。

情報、ありがとうございます。

現状では、DPP-4阻害薬を一定期間使用して、コントロール良好となれば
長期使用せずに休薬して、糖質制限食のみとするという方法もありますね。
2013/03/27(Wed) 23:12 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: ジャヌビア
阿部洋子 さん。

ジャヌビア、決して悪い薬ではないと思います。
私も今ある高血糖を下げるために、スーパー糖質制限が困難な糖尿人に処方しています。

阿部さんも、スーパー糖質制限食なら、ジャヌビアも中止できる可能性がありますよ。
確かにジャヌビアは、長期の安全性がわかりません。
しかし短期では大きな問題は少ないと思います。



2013/03/27(Wed) 23:23 | URL | ドクター江部 | 【編集
先般よりコメントさせて頂いているFALAです。

スーパー糖質制限食を開始して1ヶ月。

併せて、アマリール1mg1ヶ月間の摂取で数値が良くなり

現在アマリール5mgとジャヌビア50mgを服用しています。

先生からアマリールは0の方向で主治医と相談するようアドバイスを頂戴しましたが

今回の処方よりジャヌビア50を服用していることをお伝えしておりませんでした。

ここ2-3日、夜になると軽い立ち眩みがしたり、頭痛が朝まで治まらなかったりが続いております。

体格がこの一ヶ月で随分スリムになりましたので低血糖を起こしているのかと不安を少し感じています。

お薬の服用を含め、先生のお考えをお示し頂ければとても有難く存じます。

宜しくお願い致します。

2013/04/02(Tue) 06:03 | URL | FALF | 【編集
Re: タイトルなし
FALF さん

低血糖の可能性がありますので、アマリール0.5mgは中止して
ジャヌビアのみ内服のほうが安全です。

主治医と相談されるのは勿論ですが、低血糖の恐れありということで、
まず中止して、事後承諾でよいと思います。
2013/04/02(Tue) 08:35 | URL | ドクター江部 | 【編集
有難うございます。
先生、ご返事を賜り感謝申し上げます。


ジャヌビアのみの内服にさせて頂きます。

はじめはジャヌビアのほうが日本人の体質に合わないのかと素人判断しておりましたがこれで安心致しました。

ご多忙の中、ありがとうございました。
2013/04/02(Tue) 08:46 | URL | FALF | 【編集
インクレチン関連薬、膵炎リスクを増大しない/BMJ
江部先生

ネットで表題の記事を見つけたので記載します。

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https://www.carenet.com/news/journal/carenet/37920
提供元: ケアネット  公開日:2014/05/01

中国・四川大学のLing Li氏らが行ったメタ解析(60試験、被験者総数約35万例)の結果、インクレチン関連薬を服用している2型糖尿病患者における膵炎の発生率は低く、同薬は膵炎リスクを増大しないことが明らかにされた。これまで、インクレチン関連薬を服用する2型糖尿病患者の急性膵炎症例が数多く報告されているが、試験によって所見はさまざまだった。BMJ誌オンライン版2014年4月15日号掲載の報告より。

55件の無作為化試験の結果、インクレチン関連薬による膵炎リスク増大はなし
 研究グループは、インクレチン関連薬と膵炎リスクとの関連を明らかにするため、2型糖尿病の成人を対象に、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体作動薬またはジペプチジルペプチダーゼ4(DPP-4)阻害薬について行った、無作為・非無作為化比較試験、前向き・後ろ向きコホート試験、ケースコントロール試験について、システマティックレビューを行い、メタ解析を行った。

 分析に組み込まれたのは60試験、被験者総数は35万3,639例だった。そのうち、無作為化試験は55件、観察試験は5件だった。

 無作為化試験を基にした要約推定量では、インクレチン関連薬による膵炎リスクの増大は認められなかった(オッズ比:1.11、95%信頼区間:0.57~2.17)。

1件のケースコントロール試験でエキセナチド・シタグリプチンによる膵炎リスクが2.1倍
 インクレチン関連薬を種類別に検討しても、GLP-1受容体作動薬のコントロール群に対する膵炎発症に関するオッズ比は1.05(同:0.37~2.94)、DPP-4阻害薬の同オッズ比は1.06(同:0.46~2.45)と、いずれにおいても有意差はなかった。

 また3件の後ろ向きコホート試験と1件のケースコントロール試験において、エキセナチド(商品名:バイエッタ、ビデュリオン)またはシタグリプチン(同:ジャヌビア、グラクティブ)による膵炎リスクの増加は認められなかった。

 一方、もう1件のケースコントロール試験(ケース被験者数、対照被験者数ともに1,269例)では、エキセナチドまたはシタグリプチンの2年以内服用と急性膵炎リスク増大の有意な関連がみられた(補正後オッズ比:2.07、同:1.36~3.13)。

 著者は今回の結果について「入手可能なエビデンスとしては、インクレチン関連薬服用患者における膵炎の発生率は低く、同薬は膵炎リスクを増大しないことが示された。しかし、現状のエビデンスは決定的なものではない。リスク増大の有無について根拠となる、より厳密にデザインされ実行された観察試験が求められる」とまとめている。

(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

原著論文はこちら
Li L, et al. BMJ. 2014 Apr 15;348:g2366.

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2014/12/08(Mon) 17:25 | URL | 福助 | 【編集
Re: インクレチン関連薬、膵炎リスクを増大しない/BMJ
福助 さん

情報をありがとうございます。
2014/12/08(Mon) 21:58 | URL | ドクター江部 | 【編集
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