2013年03月19日 (火)
おはようございます。
わんわんさん、精神科医師Aさん。
日本人の糖尿病の食事療法に関する日本糖尿病学会の提言 2013年3月 日本糖尿病学会
に関して情報・コメントをありがとうございます。
以下は日本糖尿病学会のプレス リリースです。
PDFファイルで、全7ページです。
その内、「 糖尿病における炭水化物摂取について」を転載しました。
「【PRESS RELEASE】
日本人の糖尿病の食事療法に関する日本糖尿病学会の提言
2013年3月 日本糖尿病学会
4. 糖尿病における食事療法の在り方と課題
以上の現状認識を踏まえ、以下を提言としてまとめる。
1) 糖尿病における炭水化物摂取について
肥満の是正は、糖尿病の予防ならびに治療において重要な意義を有する。
体重の適正化を図るためには、運動療法とともに積極的な食事療法を指導すべきであり、総エネルギー摂取量の制限を最優先とする。
総エネルギー摂取量を制限せずに、炭水化物のみを極端に制限して減量を図ることは、その本来の効果のみならず、長期的な食事療法としての遵守性や安全性など重要な点についてこれを担保するエビデンスが不足しており、現時点では薦められない。
特に、インスリン作用が著しく不足した状態において想定される、体たんぱく異化亢進などの栄養学的問題は、これを避けなければならない。
一方で、先に述べたように、体重を効果的に減量させるための一つの手段として炭水化物摂取量について論議がなされている。
しかし、欧米の研究においては対象となるBMIは30~35以上のことが多く、肥満度の異なる日本人の糖尿病の病態に立脚した適正な炭水化物摂取量については、いまだ十分なエビデンスが揃っているとは言えない。
社会的なコンセンサスを得る上においても、今後日本糖尿病学会として積極的に調査・研究の対象とすべき課題である。」
突っ込みどころ満載の日本糖尿病学会提言ですが、一つ一つ、検証してみます。
「肥満の是正は、糖尿病の予防ならびに治療において重要な意義を有する。
体重の適正化を図るためには、運動療法とともに積極的な食事療法を指導すべきであり、総エネルギー摂取量の制限を最優先とする。」
「肥満の是正に・・・総エネルギー摂取量の制限を最優先とする。」というのは、EBMの観点からは、明白な間違いです。EBMではRCT研究論文が信頼度として最優先されます。
信頼度の高いRCT研究論文
1)DIRECT:Iris Shai et al. :NENGLJ MED , VOL359.NO.3 :229-241,2008
2)The A TO Z Weight Loss Study: A Randomized Trial ,JAMA297:969-977
上記2つの論文で、「体重減少において糖質制限食が最も有効」という結論です。
3)「体重減少、中性脂肪減少、HDL-C増加は低炭水化物食が低脂質・低カロリー食に比し有効。
13の電子データベースの2000年1月~2007年3月の低炭水化物食と低脂質食比較RCTをメタ解析。」
Obesity Reviews(国際肥満研究連合の公式ジャーナル) Volume 10, Issue 1, pages 36–50, January 2009
さらに国際肥満連合の公式ジャーナルのRCT研究論文メタ解析で、糖質制限食がカロリー制限食に比し有効と、明確に結論づけています。
4)「従来の脂肪制限・カロリー制限食は減量および心臓血管病のリスクの軽減に関して長期の研究では否定的である。」
1965年から2006年までの「脂肪制限・カロリー制限食」「低炭水化物食」「地中海食」に関する論文(PubMed)を網羅して検討したハーバード大グループのレビュー論文の結論です。
Popular weight-loss diets: from evidence to practice
Vasanti S Malik & Frank B Hu
Nat Clin Pract Cardiovasc Med. 2007 Jan;4(1):34-41.
世界心臓連合(WHF)公式誌
このレビュー論文でも、「脂肪制限・カロリー制限食は減量および心臓血管病のリスクの軽減に関して長期の研究では否定的」と、明確に結論づけています。
「肥満の是正は、糖尿病の予防ならびに治療において重要な意義を有する。」に関しては私も賛成です。
しかし、1)2)3)4)というカロリー制限食に否定的な信頼度の高いエビデンスに関して、糖尿病学会はいったいどのように反論されるのでしょうか?
<続く>
江部康二
わんわんさん、精神科医師Aさん。
日本人の糖尿病の食事療法に関する日本糖尿病学会の提言 2013年3月 日本糖尿病学会
に関して情報・コメントをありがとうございます。
以下は日本糖尿病学会のプレス リリースです。
PDFファイルで、全7ページです。
その内、「 糖尿病における炭水化物摂取について」を転載しました。
「【PRESS RELEASE】
日本人の糖尿病の食事療法に関する日本糖尿病学会の提言
2013年3月 日本糖尿病学会
4. 糖尿病における食事療法の在り方と課題
以上の現状認識を踏まえ、以下を提言としてまとめる。
1) 糖尿病における炭水化物摂取について
肥満の是正は、糖尿病の予防ならびに治療において重要な意義を有する。
体重の適正化を図るためには、運動療法とともに積極的な食事療法を指導すべきであり、総エネルギー摂取量の制限を最優先とする。
総エネルギー摂取量を制限せずに、炭水化物のみを極端に制限して減量を図ることは、その本来の効果のみならず、長期的な食事療法としての遵守性や安全性など重要な点についてこれを担保するエビデンスが不足しており、現時点では薦められない。
特に、インスリン作用が著しく不足した状態において想定される、体たんぱく異化亢進などの栄養学的問題は、これを避けなければならない。
一方で、先に述べたように、体重を効果的に減量させるための一つの手段として炭水化物摂取量について論議がなされている。
しかし、欧米の研究においては対象となるBMIは30~35以上のことが多く、肥満度の異なる日本人の糖尿病の病態に立脚した適正な炭水化物摂取量については、いまだ十分なエビデンスが揃っているとは言えない。
社会的なコンセンサスを得る上においても、今後日本糖尿病学会として積極的に調査・研究の対象とすべき課題である。」
突っ込みどころ満載の日本糖尿病学会提言ですが、一つ一つ、検証してみます。
「肥満の是正は、糖尿病の予防ならびに治療において重要な意義を有する。
体重の適正化を図るためには、運動療法とともに積極的な食事療法を指導すべきであり、総エネルギー摂取量の制限を最優先とする。」
「肥満の是正に・・・総エネルギー摂取量の制限を最優先とする。」というのは、EBMの観点からは、明白な間違いです。EBMではRCT研究論文が信頼度として最優先されます。
信頼度の高いRCT研究論文
1)DIRECT:Iris Shai et al. :NENGLJ MED , VOL359.NO.3 :229-241,2008
2)The A TO Z Weight Loss Study: A Randomized Trial ,JAMA297:969-977
上記2つの論文で、「体重減少において糖質制限食が最も有効」という結論です。
3)「体重減少、中性脂肪減少、HDL-C増加は低炭水化物食が低脂質・低カロリー食に比し有効。
13の電子データベースの2000年1月~2007年3月の低炭水化物食と低脂質食比較RCTをメタ解析。」
Obesity Reviews(国際肥満研究連合の公式ジャーナル) Volume 10, Issue 1, pages 36–50, January 2009
さらに国際肥満連合の公式ジャーナルのRCT研究論文メタ解析で、糖質制限食がカロリー制限食に比し有効と、明確に結論づけています。
4)「従来の脂肪制限・カロリー制限食は減量および心臓血管病のリスクの軽減に関して長期の研究では否定的である。」
1965年から2006年までの「脂肪制限・カロリー制限食」「低炭水化物食」「地中海食」に関する論文(PubMed)を網羅して検討したハーバード大グループのレビュー論文の結論です。
Popular weight-loss diets: from evidence to practice
Vasanti S Malik & Frank B Hu
Nat Clin Pract Cardiovasc Med. 2007 Jan;4(1):34-41.
世界心臓連合(WHF)公式誌
このレビュー論文でも、「脂肪制限・カロリー制限食は減量および心臓血管病のリスクの軽減に関して長期の研究では否定的」と、明確に結論づけています。
「肥満の是正は、糖尿病の予防ならびに治療において重要な意義を有する。」に関しては私も賛成です。
しかし、1)2)3)4)というカロリー制限食に否定的な信頼度の高いエビデンスに関して、糖尿病学会はいったいどのように反論されるのでしょうか?
<続く>
江部康二
わたしたち、糖質セイゲニストの集団が、糖質制限の有効性を信じて実践し続けることが最も重要ですよね。
せいぜい、一人一人は、一生涯のデータしか残せませんが、同じ志の人が少しずつ増えていけば、後の人類にとっても有益な財産を遺せます。
そんなデータバンクの蓄積こそが我々の仕事でしょうか。
まだわたしは5ヶ月未満の初心者ですが、今、劇的に痩せた姿に周囲が驚き、その理由を聞きたがり、それに答えると、また、驚いて
そんなことやってると、早死にするよ、
って、だいたい言われます(笑)
どうなるかは、実践し続けてのお楽しみというしかありません(笑)
せいぜい、一人一人は、一生涯のデータしか残せませんが、同じ志の人が少しずつ増えていけば、後の人類にとっても有益な財産を遺せます。
そんなデータバンクの蓄積こそが我々の仕事でしょうか。
まだわたしは5ヶ月未満の初心者ですが、今、劇的に痩せた姿に周囲が驚き、その理由を聞きたがり、それに答えると、また、驚いて
そんなことやってると、早死にするよ、
って、だいたい言われます(笑)
どうなるかは、実践し続けてのお楽しみというしかありません(笑)
2013/03/19(Tue) 13:04 | URL | to | 【編集】
まあ「選択肢の一つ」だとか中途半端なこと言われるよりスッキリしたような気がしますね。
実際に普通の病気に行っても全然ダメですから。
これで糖質制限が世に認められたときに
「学会では糖質制限の有効性は最初から分かっていた」
「実は学会ではかなり以前から糖質制限を取り入れていた」
とかインチキ言われないですみますからね。
わたし的には何も変わりません。ただ糖質制限を導入している医療関係の方は悔しいでしょうね。
やはりお米を食べない治療法、健康法は日本ではキツイかも知れませんね。
何が逆転満塁ホームラン的な出来事があれば変わるかも知れませんが…。
実際に普通の病気に行っても全然ダメですから。
これで糖質制限が世に認められたときに
「学会では糖質制限の有効性は最初から分かっていた」
「実は学会ではかなり以前から糖質制限を取り入れていた」
とかインチキ言われないですみますからね。
わたし的には何も変わりません。ただ糖質制限を導入している医療関係の方は悔しいでしょうね。
やはりお米を食べない治療法、健康法は日本ではキツイかも知れませんね。
何が逆転満塁ホームラン的な出来事があれば変わるかも知れませんが…。
2013/03/19(Tue) 14:11 | URL | マキマキ | 【編集】
「長期的な食事療法としての遵守性や安全性など重要な点についてこれを担保するエビデンスが不足しており、現時点では薦められない。」
ここがすごく疑問。それならば内服薬はどうなのか?アクトスやベイスンや、DPP-4や・・・・・・・長期的な安全性やさらに効果に関して担保するエビデンスは不足しているのではないかなあ?論理的に破綻していそうな気がするが・・・・?
ここがすごく疑問。それならば内服薬はどうなのか?アクトスやベイスンや、DPP-4や・・・・・・・長期的な安全性やさらに効果に関して担保するエビデンスは不足しているのではないかなあ?論理的に破綻していそうな気がするが・・・・?
yatuasagitarou さん
同感です。
1)
まず、カロリー制限食にも、長期の安全性や遵守性のエビデンスはありません。
2)
そして、DPP-4阻害剤、GLP1注射薬、アクトス、速効型インスリン分泌促進剤・・・
これらの新しい薬剤に関しては、長期的安全性・有効性などのエビデンスは
全く担保されていません。
3)
今回の糖尿病学会の提言、明らかに、論理的に破綻しています。
同感です。
1)
まず、カロリー制限食にも、長期の安全性や遵守性のエビデンスはありません。
2)
そして、DPP-4阻害剤、GLP1注射薬、アクトス、速効型インスリン分泌促進剤・・・
これらの新しい薬剤に関しては、長期的安全性・有効性などのエビデンスは
全く担保されていません。
3)
今回の糖尿病学会の提言、明らかに、論理的に破綻しています。
2013/03/21(Thu) 12:54 | URL | ドクター江部 | 【編集】
| ホーム |