さまざまな神経疾患に応用されるケトン食、ケトン体の効能。
おはようございます。

tagashuu@神経内科医さんから

「さまざまな神経疾患に応用されるケトン食」

という興味深いコメント・情報をいただきました。(☆)

2013年02月12日 (火)の本ブログ記事

「ケトン体が酸化ストレスの抑制に寄与する」



『βヒドロキシ酪酸(ケトン体の一つ)は内在性のヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤として酸化ストレスの抑制に寄与する』

という大変興味深いScience の論文を紹介しました。

酸化ストレスを抑制するということは、動脈硬化や老化やがん、パーキンソン病やアルツハイマー病や認知症にも好影響が期待できるということです。

今回、tagashuuさんのコメントの論文でも、

『ケトン食による神経保護作用 』

がキーワードとなっています。

この神経保護作用をベースに

てんかんとケトン食

加齢とケトン食

アルツハイマー病とケトン食

パーキンソン病とケトン食

ALSとケトン食

癌とケトン食

脳卒中とケトン食

ミトコンドリア疾患とケトン食

脳外傷とケトン食

神経疾患(うつ病)とケトン食

自閉症とケトン食

片頭痛とケトン食

について、解説していただいてます。

難しいところは飛ばして、わかるところだけ読んでも、大変有意義な情報と思います。

tagashuuさん、ありがとうございます。


江部康二

(☆)

13/03/11 tagashuu

さまざまな神経疾患に応用されるケトン食

tagashuu@神経内科医です.

ケトン食に関する論文を私が和訳しまとめたものを紹介します.てんかん以外にもいろいろな疾患へ応用されてきています.少し難しいですし,もしも誤訳があったら申し訳ないのですが,皆様の参考になれば幸甚です.

Stafstrom CE, Rho JM. The ketogenic diet as a treatment paradigm for diverse neurological disorders. Front Pharmacol. 2012;3:59. Epub 2012 Apr 9.

ケトン食(KD)は薬剤抵抗性てんかんに対してその効果が証明されている、総摂取カロリーの75~80%が脂質で構成される高脂質、低炭水化物の治療食である(Vining et al, 1998; Neal et al., 2008)。

そしてその抗てんかん効果の基礎となるメカニズムはいまだに完全には判明していないままであるが(Hartman et al., 2007; Bough and Stafstrom, 2010; Rho and Stafstrom, 2011)、その幅広い神経保護性質については経験的エビデンスが蓄積されつつあり、同様に多彩な神経疾患の状態に対しての使用を支持するデータが出てきている(Baranano and Hartman, 2008)。

この総括論文ではてんかん以外の神経疾患においてKDを用いる理論的根拠と関連する食事療法について詳しくみていく、そして最近までの臨床経験を要約する。

●ケトン食による神経保護作用

KD治療の二つの顕著な特徴は肝臓におけるケトン体産生の上昇と血糖値の減少である。

ケトンの上昇は主として脂肪酸酸化の結果である。アラキドン酸やドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸などの特定の多価飽和脂肪酸(PUFAs)はそれ自身が電位依存性ナトリウムおよびカルシウムチャネルをブロックすることによって神経細胞膜の興奮性を制御し(Voskuyl and Vreugdenhil, 2001)、ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体(PPARs;Cullingford, 2008; Jeong et al., 2011)の活性化を通して炎症反応を抑制し、また活性酸素の産生を減少させるミトコンドリア脱共役タンパク質を誘導する(Bough et al., 2006; Kim do and Rho, 2008)。

ケトン体そのものは高められたNADH酸化とミトコンドリア膜透過性遷移現象(mPT;Kim do et al., 2007)を通じてATP値を上昇させ活性酸素産生を減らすことによって神経保護作用を持つことが示されてきている。

生体エネルギー機構を改善する同様のラインを通して、KDはミトコンドリア発生を刺激し、結果としてシナプス機能を安定化させることが示されてきている(Bough et al., 2006)。

第二のKDの主要な生化学的な特徴は解糖系の流量の減少である。解糖の減少は痙攣を抑制する(Greene at al., 2001)だけでなく霊長類を含む多数の種において生存期間を延長させる(Kemnitz, 2011; Redman and Ravussin, 2011)ことが示されてきている。

他の重要なメカニズムとしてはミトコンドリア機能を改善させ酸化ストレス減少させること(ケトン体やPUFAsでみられる現象も同様)、アポトーシス促進因子の活性化を減少させること、インターロイキンや腫瘍壊死因子α(TNFα; Maalouf et al., 2009)のような炎症メディエーターを抑制することが挙げられている。

さらに細胞内ホメオスターシスや神経傷害や機能不全を防ぐことにも寄与しているかもしれずKDの神経保護に関するメカニズムは他にもたくさんありそうである。


●てんかんとケトン食

医学的に難治性てんかん患者(特に小児)のてんかん発作を改善する効果を持つことにはもはや疑いの余地はない(Vining, 1999; Neal et al., 2008; Freeman et al., 2009)。KDは今世界中のほぼ主要なてんかんセンターにおける装備の不可欠な部分となってきている。

●加齢とケトン食

KDが酸化ストレスとその下流での反応結果を減少させるという事実は、加齢による悪影響を遅らせるとみなすことに関する合理的な論理的根拠を提供している(Freemantle et al., 2009)。

●アルツハイマー病とケトン食

アルツハイマー病(AD)の患者において神経興奮性が上昇しているという認識が高まってきている(Noebels, 2011; Roberson et al., 2011)。MCTのKDでのランダム化二重盲検プラセボ対照試験ではADのAPOε4陰性患者での認知機能をかなり有意に改善する結果であった。

この重大な臨床的な改善は、ミトコンドリア機能の改善に引き続いて起こると考えられた。またKDはアミロイドβの蓄積量を実際に減少させるかもしれない(VanderAuwera et al., 2005)。

興味深いことに、地中海食のような他の食事もADでいくらかの有望性を示してきており(Gu et al., 2010)、おそらくは全身性炎症反応を抑制し、代謝プロフィールを改善することを通しているものと思われる。

●パーキンソン病とケトン食

PDと関連があるとされているミトコンドリア複合体Ⅰでの活動性の欠損をケトン体がバイパスするという認識に基づき、小さな臨床研究ではあるが7人の患者のうち5人が標準的なPD評価スケールのスコアに改善したということが実証された(Vanitallie et al., 2005)。

1-メチル-4-フェニル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン塩酸塩(MPTP)によって生み出されたPDの動物モデルでは、BHB注射によって通常その毒素によって引き起こされるミトコンドリア呼吸鎖の傷害が改善した(Kashiwaya et al., 2000)。

●ALSとケトン食

筋萎縮性側索硬化症(ALS)は他の神経変性疾患と同様に、エネルギー産生システムの関与が一定の役割を果たしており、おそらくミトコンドリア機能障害が疾患の病態生理に寄与しているであろう。

ALSのモデルマウスへKDを注射することでKDでない食事を与えられた動物に比べて組織学的にも(運動ニューロン数の増加)機能的にも(ロータロッド試験での運動機能の保持:※ゲッシ類における協調運動と運動学習を測定するテスト)改善をもたらした(Zhao et al., 2006)。ところが、KDは非KDの対照マウスに比べて生存期間を延長しなかった。

注意すべきことは、これは全ての神経変性疾患にあてはまることであるが、KD治療の保護効果に関して介入のタイミングが命運を左右するのかどうかを決める必要があるということがある。

●癌とケトン食

基本的に癌細胞はブドウ糖を通常の燃料供給として代謝回転が速いので、(KDや2DGを用いることによって)急速に分裂するのを防ぐことは治療になりうる(Aft et al., 2002; Pelicano et al., 2006; Otto et al., 2008)。ただ臓器系が異なれば腫瘍のタイプも区別されKDやその他の食事療法に異なった反応を示す可能性がある。

●脳卒中とケトン食

最近までに、脳卒中患者でKDの効果をみた臨床試験は実施されていないが、低酸素‐虚血の動物研究ではいくつか食事の有益な効果の潜在性が支持されている。そうした研究はエネルギー代謝を助ける生化学の変化が重症脳損傷の急性期に対して保護的に働くであろうことを暗に示唆している。

●ミトコンドリア疾患とケトン食

Kangら(2007)は14名のミトコンドリア欠損が複合体Ⅰ、Ⅱ、Ⅳにあり、全員が医学的に難治性てんかんを持つという小児患者たちにKDが安全かつ効果があるということを報告した。一しかしながらKD治療は原発性カルニチン欠損症(カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ(CPT)ⅠやⅡ、ミトコンドリア輸送体の変異を含む)や脂肪酸β酸化異常(例:中鎖アシルデヒドロゲナーゼ欠損症:Kossoff et al., 2009)の個人には勧められていない。

●脳外傷とケトン食

外傷後のてんかん原性の臨床的な問題およびKDが痙攣活動を減少させうるという事実の観点からみると、食事療法が脳外傷を、そしておそらくは長期のてんかんのような結果を改善するという考えが出てきている。

●神経疾患(うつ病)とケトン食

うつ病におけるKDの潜在的な役割はラットでの強制選択モデルで研究されてきており、伝統的な抗うつ薬にとってもたらされるのと同等の有益性があるとされている(Murphy et al., 2004; Murphy and Burnham, 2006)。

●自閉症とケトン食

現在、限られた臨床的エビデンスがKDが自閉症スペクトラムの疾患の子供でみられる異常行動のいくつかを和らげるかもしれないという興味深い可能性を提示している。

●片頭痛とケトン食

慢性的な片頭痛にはKDを考慮する理論的な理由があり、特に医学的に難治性の集団に対して考慮に入れる価値がある(Maggioni et al., 2011)。





テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
Ketogenic Diet in Advanced Cancer
こういう治験は副作用がなくて良いですね。
Ketogenic Diet in Advanced Cancer
http://clinicaltrials.gov/ct2/show/study/NCT01716468?term=NCT01716468&rank=1&view=record
2013/03/12(Tue) 16:59 | URL | まぬーか | 【編集
糖質制限で花粉症が改善?!
いつも拝見しております!

今回の記事とは関係がないのですが、すみません。


私は子供の頃からアレルギー体質があり、大人になってからはもちろん花粉症も発症。目や耳の痒みが強く内服薬が欠かせませんでした。

もうすぐ糖質制限をはじめて一年。糖質オフ食にして半年くらいたってから、目やにがなくなるなど、諸々のアレルギー症状が改善されている感覚がありました。

今年は、糖質オフにして初めての花粉症の季節。先生のブログでも、花粉症が改善される方が多いと読んでいたので、ほんの少し期待していました。


東京は先週から通常の6倍ほどの花粉が飛んでいるそうですが・・・・今のところ、花粉症の症状が全く無く、アレルギー薬を飲まずに済んでいます。

私のブログでも、糖質制限で花粉症が改善されたことを書いてみました。先生のブログでもリンクさせていただきました^^

http://ameblo.jp/lowcarblife2012/entry-11488470795.html#cbox


糖質オフにしてから、アレルギー症状が改善傾向にあるということは、過剰糖質摂取がアレルギーの原因だったと考えても良いのでしょうか?


とにかくあらゆる不定愁訴が糖質オフで改善されました!!!!


日曜日の糖質制限in埼玉に参加します♪講演をお聞きできることを楽しみにしております。
2013/03/12(Tue) 22:20 | URL | ひろせ | 【編集
Re: Ketogenic Diet in Advanced Cancer
まぬーか さん

進行癌と転移癌の、患者さんへのケトン食の効果をみようという研究ですね。

現在、参加者募集中なので、結果は、数年先となるでしょうか?
2013/03/13(Wed) 10:00 | URL | ドクター江部 | 【編集
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