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能登論文は、選択した文献が玉石混交、残念。
こんにちは。

2013年3月4日号のアエラに

「やってはいけないダイエット」

という記事(P26~29)が載り、私もコメントしました。

この記事でも、また能登先生が糖質制限食に否定的なコメントをしておられました。

それで、能登論文の本文が手には入ったので、検討してみました。

能登先生は、492の論文から、最終的に9論文に絞って、メタ解析をしておられます。

そしてこの9論文、私が既に読んでいるものがあり、わかっている範囲ですが、玉石混交です。

引用文献は1~39まであり、文献番号7.8.9.1011.12と29.30.31が選択された9論文です。→本記事の最後に記載。

文献9は、本ブログ記事で何回か取り上げた、信頼度ゼロの、

「低糖質・高蛋白質食、心血管イベント上昇」

というBMJの論文です。

•栄養分析が登録時の1992年1回、15年以上その食生活が継続という仮定。
•塩分摂取量での調節がなされていない。
•質問事項が食物の項目で、糖質量など各栄養素の算出方法が不明確。
•糖質摂取とタンパク質摂取の点数化が恣意的で歪曲されている。
•この論文の平均摂取カロリーは1561kcal。同時期のスエーデンの論文の平均摂取カロリー1999.5Kcalに比し過少申告。 
•BMJ には、本記事に対する専門家のコメントが12件よせられ、その全てがこの論文に対して否定的見解。→希有なこと



上記からこの論文は、極めて信頼度の低い論文です。

この信頼度のない論文を含めた時点で、能登論文の信頼度もまた地に落ちています。

文献11も同じ著者(Lagiou )の論文です。

一方、最も信頼度が高い文献は、7と30です。

症例数も追跡年数も申し分ありません。

20年間以上の追跡は、9論文の中で、この2つの文献だけです。

文献7は本ブログでも取り上げました。

文献7は<NHS85168名+HPFS44548名>がデータベースで、それぞれ26年間と20年間の追跡期間です。

植物性由来の蛋白質を摂取した場合には低糖質・高蛋白質になるほど心血管死が減少しています。

文献30は、NHSがデータベースで、82802名を20年間の追跡です。

低炭水化物・高脂肪・高タンパク食に冠動脈疾患のリスクなし
ニューイングランドジャーナルのコホート研究  82802人 2006年 ハーバード大学

•1980年、米国の女性看護師82,802人に食事調査を行い、研究を開始 。

•質問票を使った食事調査を、1980年から1998年までのあいだに、2-6年間隔で6回実施。

•低炭水化物食「得点」が上位10%のグループの冠動脈疾患の発生率は下位10%のグループの0.94倍で有意差なし。
2000年の時点で10グループを解析。炭水化物摂取比率36.8±6.1%グループと58.8±7.0%のグループの比較。

•即ち20年間の追跡で、脂肪と蛋白質が多く炭水化物が少ない食事をしているグループでも、心臓病のリスクは上昇しなかった。

•一方総炭水化物摂取量は冠動脈疾患リスクの中等度増加に関連していた。 高GLは冠動脈疾患リスク増加と強く関連していた。


最も信頼度が高い文献30の結論は、能登論文の結論とは正反対で「低炭水化物・高脂肪・高タンパク食に冠動脈疾患のリスクなし」であり、

「総炭水化物摂取量は冠動脈疾患リスクの中等度増加に関連していた。 高GLは冠動脈疾患リスク増加と強く関連していた。」

です。

すなわち高炭水化物食の危険性を指摘しています。

結局、能登論文、折角信頼度の高い、文献7、文献30をもってきたのに、信頼度ゼロの文献9などを加えたために、メタ解析結果が全く信頼のおけないものになってしまっています。

このような信頼度の低いメタ解析など不必要で、信頼度の高い文献30や文献7で必要充分と言えます。

さらに、文献31の論文は「高GL食・高GI食を食べている中年女性は、心血管リスクが上昇する。」という明確な結論であり、高炭水化物食の危険性を指摘しています。



江部康二



7. Fung TT, van Dam RM, Hankinson SE, Stampfer M, Willett WC, et al. (2010) Low-carbohydrate diets and all-cause and cause-specific mortality: two cohort studies. Ann Intern Med 153: 289–298. Find this article online
本ブログ記事で取り上げた論文。



8. Sjogren P, Becker W, Warensjo E, Olsson E, Byberg L, et al. (2010) Mediterranean and carbohydrate-restricted diets and mortality among elderly men: a cohort study in Sweden. Am J Clin Nutr 92: 967–974. doi: 10.3945/ajcn.2010.29345. Find this article online



9. Lagiou P, Sandin S, Lof M, Trichopoulos D, Adami HO, et al. (2012) Low carbohydrate-high protein diet and incidence of cardiovascular diseases in Swedish women: prospective cohort study. BMJ 344: e4026. doi: 10.1136/bmj.e4026. Find this article online

 例のBMJの信頼度の低い論文。



10.Nilsson LM, Winkvist A, Eliasson M, Jansson JH, Hallmans G, et al. (2012) Low-carbohydrate, high-protein score and mortality in a northern Swedish population-based cohort. Eur J Clin Nutr 66: 694–700. doi: 10.1038/ejcn.2012.9. Find this article online



11.Lagiou P, Sandin S, Weiderpass E, Lagiou A, Mucci L, et al. (2007) Low carbohydrate-high protein diet and mortality in a cohort of Swedish women. J Intern Med 261: 366–374. doi: 10.1111/j.1365-2796.2007.01774.x. Find this article online
例のBMJの信頼度の低い論文と同じ著者の論文。



12.Trichopoulou A, Psaltopoulou T, Orfanos P, Hsieh CC, Trichopoulos D (2007) Low-carbohydrate-high-protein diet and long-term survival in a general population cohort. Eur J Clin Nutr 61: 575–581. doi: 10.1038/sj.ejcn.1602557. Find this article online



29. Oh K, Hu FB, Cho E, Rexrode KM, Stampfer MJ, et al. (2005) Carbohydrate intake, glycemic index, glycemic load, and dietary fiber in relation to risk of stroke in women. Am J Epidemiol 161: 161–169. doi: 10.1093/aje/kwi026. Find this article online

30. Halton TL, Willett WC, Liu SM, Manson JE, Albert CM, et al. (2006) Low-carbohydrate-diet score and the risk of coronary heart disease in women. N Engl J Med 355: 1991–2002. doi: 10.1056/NEJMoa055317. Find this article online
本ブログ記事で取り上げた論文。


31.Beulens JW, de Bruijne LM, Stolk RP, Peeters PH, Bots ML, et al. (2007) High dietary glycemic load and glycemic index increase risk of cardiovascular disease among middle-aged women: a population-based follow-up study. J Am Coll Cardiol 50: 14–21. Find this article online



***能登論文
Low-Carbohydrate Diets and All-Cause Mortality: A Systematic Review and Meta-Analysis of Observational Studies
PLoS ONE, 8(1), e55030
25-Jan-2013
Hiroshi Noto
テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
糖尿病予防の保健指導
江部先生

久しぶりにコメントさせていただきます。
2011年10月ごろ(糖尿病ではないもののA1c値が少し高かったため)、江部先生の糖質制限を知り、それからしばらくはスーパーに近い制限をしていましたが、A1c 値 や体重も標準値に下がったことから今は、ゆるやかな糖質制限をしています。

先日、勤務先で加入している健保組合の保健師による健康指導があり(毎回参加)、その折、糖尿病予防の指導ということで、おおまかには

1.ゆっくりよく噛んで食べる
2.野菜(食物繊維)を先に食べる
3.GI値の低い食品を上手に選んで利用する

との指導がありました。

その時に保健師に「ゆるい糖質制限」をやっていると言うと、保健師は糖質制限のことは知っていて、「糖尿病学会で糖質制限は、あまりやると危険であると発表していたよ」と言われ、あまりいい顔はしませんでした。

このGI値の低い食品を選ぶということは、糖質制限とも関係ありますよね。

保健師の言われることには、なんか納得がいきませんでした。

以前、糖質制限のことを全く知らなかった時期、体重を落としたくて会社の昼休み、30分~40分ウォーキングをしていました。
昼食に「讃岐うどん」と「いなり寿司」をセットに食べた後・・・これではいくら頑張っても体重が落ちるはずがありませんよね。

今考えたら、馬鹿なことをしていたなと思います(汗)。

今、地元の駅弁会社が期間限定の駅弁を発売しているのですが、「肉うどん」と「巻き寿司(うどん等を具にして海苔で巻いたもの)」をセットにしたものです。(他の駅弁でも見られる温かくして食べられるお弁当です)

以前の私なら、飛びついて食べていたでしょうが、今はその駅弁発売の記事を新聞で見ても欲しいとは思いません。

自分の身体は自分で守らないといけないと思うので今後も江部先生やブログ読者のみなさんのご意見を参考にさせていただきながら、糖質制限を続けていこうと思っています。
2013/02/27(Wed) 15:39 | URL | さぬきうどん | 【編集
文献7、9、30の関連記事のまとめ
 復習がてら、関連する過去記事をまとめてみました。復習にお役立て下さい。

 まとめるだけでも大変で、途中で投げ出したくなりました。
 抜けていたりするかもしれませんが、そこはご容赦を。
 ※リンクは 先頭の「h」を抜いています。

7. Fung TT, van Dam RM, Hankinson SE, Stampfer M, Willett WC, et al. (2010) Low-carbohydrate diets and all-cause and cause-specific mortality: two cohort studies. Ann Intern Med 153: 289–298. Find this article online

 本ブログ記事で取り上げた論文。

文献7について関連する過去記事

ttp://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-1474.html
ttp://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-1716.html
ttp://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-1929.html
ttp://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-1970.html
ttp://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-2048.html
ttp://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-2402.html


9. Lagiou P, Sandin S, Lof M, Trichopoulos D, Adami HO, et al. (2012) Low carbohydrate-high protein diet and incidence of cardiovascular diseases in Swedish women: prospective cohort study. BMJ 344: e4026. doi: 10.1136/bmj.e4026. Find this article online

 例のBMJの信頼度の低い論文。

文献9について関連する過去記事

ttp://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-2141.html
ttp://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-2161.html
ttp://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-2236.html
ttp://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-2242.html


30. Halton TL, Willett WC, Liu SM, Manson JE, Albert CM, et al. (2006) Low-carbohydrate-diet score and the risk of coronary heart disease in women. N Engl J Med 355: 1991–2002. doi: 10.1056/NEJMoa055317. Find this article online

 本ブログ記事で取り上げた論文。

文献30について関連する過去記事

ttp://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-190.html
ttp://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-527.html
ttp://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-582.html
ttp://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-738.html
ttp://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-795.html
ttp://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-861.html
ttp://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-1084.html
ttp://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-1170.html
ttp://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-1231.html
ttp://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-1822.html
ttp://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-2221.html
ttp://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-2236.html
ttp://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-2381.html
2013/02/27(Wed) 17:40 | URL | 糖質制限食 | 【編集
Re: 文献7、9、30の関連記事のまとめ
糖質制限食 さん

まとめて頂いて、ありがとうございます。
とても助かります。
2013/02/27(Wed) 22:06 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: 本文中の誤記について
糖質制限食 さん

文献9→30

ご指摘ありがとうございます。
早速直しました。
2013/02/27(Wed) 22:09 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: もう1点誤記を見つけました。
糖質制限食 さん

またまたありがとうございます。
直します。
2013/02/27(Wed) 22:09 | URL | ドクター江部 | 【編集
第9回 糖質セイゲニストin北九州のご報告
①前回の大豆粉使用低糖質餃子の失敗を反省し、大豆粉50%のタコスの皮を作ったところ、大好評でした。ソースも、3日寝かして、気合を入れたものです。
②月例会の開催を固定しました。第二日曜です。塾の保護者会を第三日曜に固定し、ここでも子供の食事について考えていきたいと思っています。
③なんと、18歳の看護大学の女子大生もメンバーに加わりました。マドンナ籔田さんに対し、なでしこ佐藤とよぶことにしました。美人です。汗;
④八幡西区・もりぞの内科の栄養士さんが参加されました。森園医師は、昨年7月以来、自ら糖質制限を行い、15KGの減量。メンバー数人の主治医でもあります。
⑤申し遅れてはいないか、念のため。メンバーの岡さんから、看板の差し入れがありました。写真は、ブログ・三島塾に掲載しました。
2013/02/27(Wed) 22:36 | URL | 北九州 三島 | 【編集
Re: タイトルなし
なつ さん。

左人差し指の腫れ、とりあえず、近くの医師に診察して貰ったほうが無難と思います。
2013/02/28(Thu) 08:15 | URL | ドクター江部 | 【編集
週刊文春最新号に、
江部先生、お疲れ様です。
毎日楽しみにブログを拝見させていただいております。
まだ中身を読んでいないのですが、本日発売の週刊文春に「糖質制限ダイエット」に批判的な記事が掲載されているようです。
2013/02/28(Thu) 09:42 | URL | maru | 【編集
Re: 週刊文春最新号に、
maru さん

週刊文春、私も取材を受けたので、コメントが載ると思います。

糖質制限食賛成派と批判派の意見が、両方載ると思います。
2013/02/28(Thu) 10:35 | URL | ドクター江部 | 【編集
先生ありがとうございます。早速見てもらいに行ってきたした。皮膚科も内科もいまいちわからないとの事でした。
2013/02/28(Thu) 14:48 | URL | なつ | 【編集
週刊文春の記事
週刊文春は二十年以上欠かさず購入しています。
今週号も先ほど購入して当該記事を確認しましたが江部先生のブログの読者なら「何をいまさら。週刊文春もこの程度か」と思うような内容と思います。
全体的には糖質制限に反対というわけではなく、能登論文→江部先生のコメント(実体験)→山田先生のコメント(著書の通り)→江部先生のコメント(猿のカロリー制限)→「結局、長期間続けて問題があるかどうかは、未知数であるということが現状のようだ」

糖質制限が流行っているので、とりあえず取り上げておくか、というスタンスのようで歯切れが悪く週刊文春と江部先生のブログの愛読者としては大変がっかりした次第です。
2013/02/28(Thu) 23:57 | URL | かんな | 【編集
Re: 週刊文春の記事
かんな さん

「結局、長期間続けて問題があるかどうかは、未知数であるということが現状のようだ」

まだしも、ニュートラルな立場と言えるでしょう。
現状では、カロリー制限食も糖質制限食も、長期的安全性・有効性に関するエビデンスはないのです。
短期的には、糖質制限食の圧勝で、カロリー制限食(高糖質食)には「食後高血糖」「平均血糖変動幅増大」という多大なリスクがあります。

以前の読売新聞や日本経済新聞のように、危険と断定する間違いを犯していないだけ、ましと思います。

2013/03/01(Fri) 07:41 | URL | ドクター江部 | 【編集
能登Drへの反論
能登Drの論文の原文はこれです
www.plosone.org/article/info%3Adoi%2F10.1371%2Fjournal.pone.0055030
(2010 journal impact factor: 4.411)
能登Drの論文は、2012年11月7日に投稿されたとあります。ところがその前月の10月に、以下の2論文がオンライン公開されています

http://ajcn.nutrition.org/content/96/6/1281.abstract
Am J Clin Nutr. 2012 Dec;96(6):1281-98
Effects of energy-restricted high-protein, low-fat compared with standard-protein, low-fat diets: a meta-analysis of randomized controlled trials
(オンライン公開2012/10/24) 2011 IMPACT FACTOR: 6.7
論文メタ解析の結果、同一calの低脂肪食では、高蛋白食が、標準蛋白食よりすぐれていた


http://aje.oxfordjournals.org/content/176/suppl_7/S44.abstract
Am J Epidemiol. 2012 Oct 1 ;176 Suppl 7:S44-54
Effects of low-carbohydrate diets versus low-fat diets on metabolic risk factors: a meta-analysis of randomized controlled clinical trials
(オンライン公開日不明) Impact factor: 5.216
低炭水化物食(45%以下)と低脂肪食(30%以下)とを比較したRCT論文をメタ解析した。低炭水化物食の長期間の安全性は確認できた


 能登Drは投稿前に、上記2論文の存在を気付かなかったとしたら、不勉強といえます。後で気付いたとしても、1月の学会や、マスコミの取材に対して、この論文の内容に対し説明責任があります。学問上のpriorityは、先に発表した方にあります。Impact factor はドングリのせいくらべですが…
2013/03/01(Fri) 09:02 | URL | 精神科医師A | 【編集
Re: 能登Drへの反論
精神科医師Aさん

情報をありがとうございます。
いずれもRCT研究論文のメタ解析ですので、
能登論文(コホート研究のメタ解析)より信頼度は高いです。

Am J Epidemiol. 2012 Oct 1の論文は、
RCTですので、観察期間は6ヶ月~24ヶ月ですね。
2013/03/03(Sun) 19:22 | URL | ドクター江部 | 【編集
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