2013年02月12日 (火)
おはようございます。
精神科医師Aさんから
「βヒドロキシ酪酸は内在性のヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤として酸化ストレスの抑制に寄与する」
という大変興味深いScience の論文の情報をコメントいただきました。
精神科医師Aさん、ありがとうございます。
サイエンスですから、インパクトファクター30前後と高いです。
興味がある人は、著者による日本語訳
http://first.lifesciencedb.jp/archives/6286
を見ていただけばいいですが、難しいです。
専門的過ぎて、私にもよくわからない部分が多いです。
ともあれ、マウスの実験ではありますが、「ケトン体が酸化ストレスの抑制に寄与する」という糖質セイゲニストにとって、大変ありがたい結論であることは確認できました。
酸化ストレスは、動脈硬化や老化やがん、パーキンソン病やアルツハイマー病や認知症にも深く関わっています。
酸化ストレスが抑制できればこれらの病気のリスクが減ることにつながります。
さてケトンとは、ケトン基をもつ化合物のことをいいます。
過去、医学・生化学の世界において、βヒドロキシ酪酸、アセト酢酸、アセトンの3者を、ケトン体として総称してきました。
このうちβヒドロキシ酪酸はケトン基がないので、化学構造上は実はケトンではないのですが、ケトンであるアセト酢酸に可逆的に変換されるので、過去習慣的にケトン体の範疇に含まれて扱われてきました。
そして、人体で日常的にエネルギー源として利用されている主たるものは、ケトン体のうちβヒドロキシ酪酸なのです。
そして今回のサイエンスの論文の主役がβヒドロキシ酪酸です。
医学界においては、ほとんどの医師が「ケトン体は人体において悪者である」という大きな誤解・先入観を持っています。
しかし「ケトン体は、本当はとってもいい奴で超優れもの」なのです。
βヒドロキシ酪酸は、ケトン基はもっていないけど、ケトン体に分類されていて脳を始め赤血球以外の全ての細胞のエネルギー源です。
ケトン体は、インスリン作用が保たれている限り、安全で優れたエネルギー源であるばかりか酸化ストレスを減らして、動脈硬化や老化やがん、パーキンソン病やアルツハイマー病や認知症・・・など、様々な病気のリスクを減らしてくれている可能性が高いのですね。
江部康二
【13/02/11 精神科医師A
Science の論文
βヒドロキシ酪酸は内在性のヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤として酸化ストレスの抑制に寄与する
島津忠広・Eric Verdin
Suppression of oxidative stress by β-hydroxybutyrate, an endogenous histone deacetylase inhibitor.
Tadahiro Shimazu, Matthew D. Hirschey, John Newman, Wenjuan He, Kotaro Shirakawa, Natacha Le Moan, Carrie A. Grueter, Hyungwook Lim, Laura R. Saunders, Robert D. Stevens, Christopher B. Newgard, Robert V. Farese Jr., Rafael de Cabo, Scott Ulrich, Katerina Akassoglou, Eric Verdin
Science, 339, 211-214 (2013)
著者による日本語訳
http://first.lifesciencedb.jp/archives/6286
論文の原文
http://www.sciencemag.org/content/339/6116/211.abstract 】
☆☆☆
βヒドロキシ酪酸は内在性のヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤として酸化ストレスの抑制に寄与する
2012年12月20日
島津忠広・Eric Verdin
(米国California大学San Francisco校Gladstone Institute of Virology and Immunology)
email:島津忠広
Suppression of oxidative stress by β-hydroxybutyrate, an endogenous histone deacetylase inhibitor.
Tadahiro Shimazu, Matthew D. Hirschey, John Newman, Wenjuan He, Kotaro Shirakawa, Natacha Le Moan, Carrie A. Grueter, Hyungwook Lim, Laura R. Saunders, Robert D. Stevens, Christopher B. Newgard, Robert V. Farese Jr., Rafael de Cabo, Scott Ulrich, Katerina Akassoglou, Eric Verdin
Science, 339, 211-214 (2013)
要 約
アセチルCoAおよびNAD+の濃度はヒストンのアセチル化の状態に影響を及ぼすため,その生体における代謝の状態は遺伝子の転写制御と関連する.
この論文において,筆者らは,生体における代謝産物であるβヒドロキシ酪酸がクラスIヒストン脱アセチル化酵素を特異的に阻害することを明らかにした.
βヒドロキシ酪酸をマウスへ投与するとヒストンのアセチル化のレベルが上昇したのにくわえ,βヒドロキシ酪酸の蓄積する飢餓状態あるいはカロリーを制限したマウスの組織においてもヒストンのアセチル化のレベルは上昇していた.
さらに,βヒドロキシ酪酸によるクラスIヒストン脱アセチル化酵素の阻害は転写状態のグローバルな変化をともない,このなかには,酸化ストレス耐性遺伝子であるFoxo3a遺伝子やMt2遺伝子の発現の上昇も含まれた.
βヒドロキシ酪酸の処理によりFoxo3a遺伝子およびMt2のプロモーター領域におけるヒストンのアセチル化が亢進すること,さらに,クラスIヒストン脱アセチル化酵素であるHDAC1あるいはHDAC2のノックダウンはこれらの遺伝子の発現を亢進することが見い出された.
以上の現象と一致して,マウスにβヒドロキシ酪酸を投与すると酸化ストレスに対し耐性を示すようになることが明らかになった.
精神科医師Aさんから
「βヒドロキシ酪酸は内在性のヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤として酸化ストレスの抑制に寄与する」
という大変興味深いScience の論文の情報をコメントいただきました。
精神科医師Aさん、ありがとうございます。
サイエンスですから、インパクトファクター30前後と高いです。
興味がある人は、著者による日本語訳
http://first.lifesciencedb.jp/archives/6286
を見ていただけばいいですが、難しいです。
専門的過ぎて、私にもよくわからない部分が多いです。
ともあれ、マウスの実験ではありますが、「ケトン体が酸化ストレスの抑制に寄与する」という糖質セイゲニストにとって、大変ありがたい結論であることは確認できました。
酸化ストレスは、動脈硬化や老化やがん、パーキンソン病やアルツハイマー病や認知症にも深く関わっています。
酸化ストレスが抑制できればこれらの病気のリスクが減ることにつながります。
さてケトンとは、ケトン基をもつ化合物のことをいいます。
過去、医学・生化学の世界において、βヒドロキシ酪酸、アセト酢酸、アセトンの3者を、ケトン体として総称してきました。
このうちβヒドロキシ酪酸はケトン基がないので、化学構造上は実はケトンではないのですが、ケトンであるアセト酢酸に可逆的に変換されるので、過去習慣的にケトン体の範疇に含まれて扱われてきました。
そして、人体で日常的にエネルギー源として利用されている主たるものは、ケトン体のうちβヒドロキシ酪酸なのです。
そして今回のサイエンスの論文の主役がβヒドロキシ酪酸です。
医学界においては、ほとんどの医師が「ケトン体は人体において悪者である」という大きな誤解・先入観を持っています。
しかし「ケトン体は、本当はとってもいい奴で超優れもの」なのです。
βヒドロキシ酪酸は、ケトン基はもっていないけど、ケトン体に分類されていて脳を始め赤血球以外の全ての細胞のエネルギー源です。
ケトン体は、インスリン作用が保たれている限り、安全で優れたエネルギー源であるばかりか酸化ストレスを減らして、動脈硬化や老化やがん、パーキンソン病やアルツハイマー病や認知症・・・など、様々な病気のリスクを減らしてくれている可能性が高いのですね。
江部康二
【13/02/11 精神科医師A
Science の論文
βヒドロキシ酪酸は内在性のヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤として酸化ストレスの抑制に寄与する
島津忠広・Eric Verdin
Suppression of oxidative stress by β-hydroxybutyrate, an endogenous histone deacetylase inhibitor.
Tadahiro Shimazu, Matthew D. Hirschey, John Newman, Wenjuan He, Kotaro Shirakawa, Natacha Le Moan, Carrie A. Grueter, Hyungwook Lim, Laura R. Saunders, Robert D. Stevens, Christopher B. Newgard, Robert V. Farese Jr., Rafael de Cabo, Scott Ulrich, Katerina Akassoglou, Eric Verdin
Science, 339, 211-214 (2013)
著者による日本語訳
http://first.lifesciencedb.jp/archives/6286
論文の原文
http://www.sciencemag.org/content/339/6116/211.abstract 】
☆☆☆
βヒドロキシ酪酸は内在性のヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤として酸化ストレスの抑制に寄与する
2012年12月20日
島津忠広・Eric Verdin
(米国California大学San Francisco校Gladstone Institute of Virology and Immunology)
email:島津忠広
Suppression of oxidative stress by β-hydroxybutyrate, an endogenous histone deacetylase inhibitor.
Tadahiro Shimazu, Matthew D. Hirschey, John Newman, Wenjuan He, Kotaro Shirakawa, Natacha Le Moan, Carrie A. Grueter, Hyungwook Lim, Laura R. Saunders, Robert D. Stevens, Christopher B. Newgard, Robert V. Farese Jr., Rafael de Cabo, Scott Ulrich, Katerina Akassoglou, Eric Verdin
Science, 339, 211-214 (2013)
要 約
アセチルCoAおよびNAD+の濃度はヒストンのアセチル化の状態に影響を及ぼすため,その生体における代謝の状態は遺伝子の転写制御と関連する.
この論文において,筆者らは,生体における代謝産物であるβヒドロキシ酪酸がクラスIヒストン脱アセチル化酵素を特異的に阻害することを明らかにした.
βヒドロキシ酪酸をマウスへ投与するとヒストンのアセチル化のレベルが上昇したのにくわえ,βヒドロキシ酪酸の蓄積する飢餓状態あるいはカロリーを制限したマウスの組織においてもヒストンのアセチル化のレベルは上昇していた.
さらに,βヒドロキシ酪酸によるクラスIヒストン脱アセチル化酵素の阻害は転写状態のグローバルな変化をともない,このなかには,酸化ストレス耐性遺伝子であるFoxo3a遺伝子やMt2遺伝子の発現の上昇も含まれた.
βヒドロキシ酪酸の処理によりFoxo3a遺伝子およびMt2のプロモーター領域におけるヒストンのアセチル化が亢進すること,さらに,クラスIヒストン脱アセチル化酵素であるHDAC1あるいはHDAC2のノックダウンはこれらの遺伝子の発現を亢進することが見い出された.
以上の現象と一致して,マウスにβヒドロキシ酪酸を投与すると酸化ストレスに対し耐性を示すようになることが明らかになった.
はじめまして、「主食をやめると健康になる」を本屋で購入し、スーパー糖質制限食に励んでおりますディーオーアイと申します。まだ3週間でありますが(汗)
一つ質問がありまして書き込みをさせてもらいました。お忙しいとは思いますが、答えて頂ければ幸いです。
以前、私は朝食にパンを食べていましたが、現在は朝食抜き、主食抜きの1日2食にしいます。おかげさまで体重が減少傾向(マイナス3キロ減)にあります。
しかし、現在のほうが食べる量が少なくなっているにもかかわらず食欲が以前より少なくなったように感じます(でも体調はかなり良いです)。これって血糖値と何か関係があるのでしょうか?炭水化物を食べると炭水化物を余計に食べたくなるような気がするんですが、江部先生はどう思われますか?よろしくお願い致します。
一つ質問がありまして書き込みをさせてもらいました。お忙しいとは思いますが、答えて頂ければ幸いです。
以前、私は朝食にパンを食べていましたが、現在は朝食抜き、主食抜きの1日2食にしいます。おかげさまで体重が減少傾向(マイナス3キロ減)にあります。
しかし、現在のほうが食べる量が少なくなっているにもかかわらず食欲が以前より少なくなったように感じます(でも体調はかなり良いです)。これって血糖値と何か関係があるのでしょうか?炭水化物を食べると炭水化物を余計に食べたくなるような気がするんですが、江部先生はどう思われますか?よろしくお願い致します。
ディーオーアイ さん
拙著のご購入、ありがとうございます。
食欲ですが、仰有るとおりと思います。
糖質摂取による、血糖値の変動が(特に急速に血糖が下がるとき)
空腹感がつのるように思います。
私も、糖質摂取していた頃に比べて、食べる量は少なくても満足感があるようになりました。
拙著のご購入、ありがとうございます。
食欲ですが、仰有るとおりと思います。
糖質摂取による、血糖値の変動が(特に急速に血糖が下がるとき)
空腹感がつのるように思います。
私も、糖質摂取していた頃に比べて、食べる量は少なくても満足感があるようになりました。
2013/02/12(Tue) 14:20 | URL | ドクター江部 | 【編集】
江部先生、こんにちわ、初めまして。
当方30代後半女性です。
A1C7.0という結果を受け、糖質制限を初めて10日経ちました。
(食事は野菜類+糖質制限のものの通信販売を利用しています)
朝の空腹時が110~130ですが、他は比較的安定した血糖になっています。
体重も順調に落ちています。
そこで質問なのですが、糖質制限を始めてから吐き気が頻繁におこります。
この吐き気以外は、特に何の問題はありません。
ただ、吐き気がひどくなってくるとストレスからか耳鳴りや片頭痛もおきてきます。(糖がでる以前(10代)から、ストレスの強いときにおきています)
こういう症状が通常なのか、また、しばらくすれば体がなれて吐き気がおきなくなるのか
サプリメントなどで改善できるのか、それとも何かほかに原因の可能性があるのかなど知りたいです。
検査した病院では、カロリー制限と運動という指導で改善できるという判断でした。
なので現在薬の服用はありません。
お忙しいとは思いますが、ご指導よろしくお願い致します。
当方30代後半女性です。
A1C7.0という結果を受け、糖質制限を初めて10日経ちました。
(食事は野菜類+糖質制限のものの通信販売を利用しています)
朝の空腹時が110~130ですが、他は比較的安定した血糖になっています。
体重も順調に落ちています。
そこで質問なのですが、糖質制限を始めてから吐き気が頻繁におこります。
この吐き気以外は、特に何の問題はありません。
ただ、吐き気がひどくなってくるとストレスからか耳鳴りや片頭痛もおきてきます。(糖がでる以前(10代)から、ストレスの強いときにおきています)
こういう症状が通常なのか、また、しばらくすれば体がなれて吐き気がおきなくなるのか
サプリメントなどで改善できるのか、それとも何かほかに原因の可能性があるのかなど知りたいです。
検査した病院では、カロリー制限と運動という指導で改善できるという判断でした。
なので現在薬の服用はありません。
お忙しいとは思いますが、ご指導よろしくお願い致します。
2013/02/12(Tue) 15:16 | URL | 猫 | 【編集】
はじめまして。先生のブログや本などで糖質制限を知り、糖質制限を始めた初心者です。
「活動性膵炎は適応とならない」とのことですが、膵炎の既往がある場合はどうなのでしょうか。11年前に鳩尾の不快感・痛みで受診、血液検査・尿検査・エコー等で慢性膵炎と診断され数ヶ月服薬後、再発はありません。ただ、一部石灰化しています。
「活動性」の定義がわからず、お手数をおかけいたしますがご回答いただければ幸いです。
「活動性膵炎は適応とならない」とのことですが、膵炎の既往がある場合はどうなのでしょうか。11年前に鳩尾の不快感・痛みで受診、血液検査・尿検査・エコー等で慢性膵炎と診断され数ヶ月服薬後、再発はありません。ただ、一部石灰化しています。
「活動性」の定義がわからず、お手数をおかけいたしますがご回答いただければ幸いです。
2013/02/12(Tue) 16:29 | URL | 悩める初心者 | 【編集】
猫 さん
糖質制限食を実践して、吐き気というのは聞いたことがありません。
続くようなら、胃の検査をしたほうがいいかもしれません。
糖質制限食を実践して、吐き気というのは聞いたことがありません。
続くようなら、胃の検査をしたほうがいいかもしれません。
2013/02/12(Tue) 16:43 | URL | ドクター江部 | 【編集】
悩める初心者 さん
拙著のご購入、ありがとうございます。
膵炎の既往は問題ありません。
活動性膵炎というのは、今現在、腹痛・発熱・白血球上昇・CRP陽性・アミラーゼ高値などが
ある場合です。
拙著のご購入、ありがとうございます。
膵炎の既往は問題ありません。
活動性膵炎というのは、今現在、腹痛・発熱・白血球上昇・CRP陽性・アミラーゼ高値などが
ある場合です。
2013/02/12(Tue) 16:45 | URL | ドクター江部 | 【編集】
なるほど、血糖値と空腹感はやはり関係がありそうですね。ご回答ありがとうございます。
私は糖尿病ではありませんが、来週の京都カルチャーセンターの講演に参加予定です。江部先生のお話を非常に楽しみにしております。ありがとうございました。
私は糖尿病ではありませんが、来週の京都カルチャーセンターの講演に参加予定です。江部先生のお話を非常に楽しみにしております。ありがとうございました。
糖質制限を始めて二・三ヶ月でしょうか。
順調にJDSもさがりました!
6.2から5.9へ
今月は5.3まで下がりました!
医師は糖質制限理解者ですが
「何をしたの?」と不思議そうにしていました。
食事内容を説明して
「なるほど・・・」と何か思ったところがあったようです。
糖質制限を始めてしばらく経ち、
あまり体重が下がらなくなってしまいました。これが適正なのかな?と
痩せたいので悩んでおります。
そとれ・・・
糖質制限を始めてからなのですが
炭水化物を取ったときに必要なインスリン量が増えました。これは誰でもそうなのでしょうか?
書き加えますと、1型糖尿病患者です。
御返事よろしくお願いいたします。
順調にJDSもさがりました!
6.2から5.9へ
今月は5.3まで下がりました!
医師は糖質制限理解者ですが
「何をしたの?」と不思議そうにしていました。
食事内容を説明して
「なるほど・・・」と何か思ったところがあったようです。
糖質制限を始めてしばらく経ち、
あまり体重が下がらなくなってしまいました。これが適正なのかな?と
痩せたいので悩んでおります。
そとれ・・・
糖質制限を始めてからなのですが
炭水化物を取ったときに必要なインスリン量が増えました。これは誰でもそうなのでしょうか?
書き加えますと、1型糖尿病患者です。
御返事よろしくお願いいたします。
2013/02/12(Tue) 22:46 | URL | 百花 | 【編集】
◇インスリン抵抗性の規定因子:食塩感受性の違いにより異なる?
www.carenet.com/news/cnn/cnn/33324
インスリン抵抗性の規定因子は食塩感受性の違いにより異なることが、米国・Vanderbilt University School of MedicineのCheryl L. Laffer氏らによる検討の結果、示された。食塩感受性例では、平均動脈圧、エピネフリン値、ノルエピネフリン値がインスリン抵抗性の規定因子であったが、食塩非感受性例では、BMI、アルドステロン値が規定因子であった。著者は、「食塩感受性例に対する塩分制限は有益であるが、食塩非感受性例に対しては有害であることが示唆された」と結論している。
*被験者を食塩感受性により分類、食塩負荷・喪失試験でインスリン感受性を分析
研究グループは、正常血圧者19名と高血圧症25名を対象に、食塩感受性試験を行い、被験者を食塩感受性群と食塩非感受性群に分類した。その後、食塩負荷や食塩喪失(salt-depletion)試験を行いインスリン感受性などについて分析した。おもな結果は以下のとおり。
●被験者の平均年齢は42.6±1.4歳、女性が81%であり、黒人が38%であった。高血圧症の被験者のほうが正常血圧の被験者に比べて、より高齢、肥満で、血中クレアチニン値、脂質値、アルドステロン値がいずれも高かった。
●また被験者のうち、高血圧症例は正常血圧者に比べ、血糖値、インスリン値が高く、インスリン感受性を示すHOMA2-S値は低かった。
●被験者を食塩感受性群と食塩非感受性群に分けて解析した結果、血糖値、インスリン値においては有意な差は認められなかったが、HOMA2-S値は食塩感受性群で食塩非感受性群に比べ有意に低かった(p<0.02)。
●食塩負荷試験を実施したところ、食塩感受性群、食塩非感受性群ともにHOMA2-S値に変化は見られなかった。
●一方、食塩非感受性群に対し、グルコースとインスリン値が有意に増加するまでの食塩喪失試験を実施したところ、食塩感受性群で観察された値までHOMA2-S値が減少した。
●食塩非感受性群におけるインスリン抵抗性の規定因子は、年齢、トリグリセリド値、BMI、平均動脈圧、アルドステロン値、エピネフリン値であったが、多変量解析後に有意な因子として残ったのは、BMIとアルドステロン値のみであった。
●食塩感受性群におけるインスリン抵抗性の規定因子は、平均動脈圧、エピネフリン値、ノルエピネフリン値で、多変量解析後も全て有意な因子であった。
監修者のコメント
本研究は、インスリン抵抗性の規定因子が、食塩感受性群と非感受性群で異なることを示した臨床研究である。
これまで、肥満はインスリン抵抗性を増大させ、食塩感受性を亢進させることが報告されていたが、食塩感受性群と非感受性群で、インスリン抵抗性の規定因子が異なることが初めて示された。
食塩感受性群においては、交感神経が独立したインスリン抵抗性の規定因子であった。一方、食塩非感受性群においては、肥満と血中アルドステロンがインスリン抵抗性の有意な独立規定因子であった。
食塩感受性群の方が、食塩非感受性群よりも、インスリン抵抗性が強く、このインスリン抵抗性のカテコールアミンとの関連も、より強かった。食塩感受性群のノルエピネフリンとインスリン抵抗性の独立した関連は、末梢血管収縮による骨格筋のグルコース取り込みの低下が主要因であることを示している。
一方、食塩非感受性群においては、食塩制限によりインスリン抵抗性が食塩感受性群と同程度にまで増大している。したがって、本試験からは、食塩非感受性群において、食塩制限を実施した場合、インスリン抵抗性を増悪し、糖代謝異常が引き起こされる可能性が示唆される。
元論文
Hypertension. 2013 Jan 2. [Epub ahead of print]
Differential Predictors of Insulin Resistance in Nondiabetic Salt-Resistant and Salt-Sensitive Subjects.
Laffer CL, Elijovich F.
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23283360
この論文の特徴は、食塩非感受性のヒトでは、食塩制限すると、かえってインスリン抵抗性が増加し、糖尿病が悪化するとの事にあります。2013/2/3のblog-commentに、食塩をへらすとかえって調子が悪くなったとの書き込みがありましたが、この論文で裏付けがとれました。
また日本人の食事摂取基準2010年191頁には「QOL(生活の質)を悪化させたり、他の栄養素摂取量に好ましくない影響を及ぼしたりするような無理な減塩には注意すべきである」とある
www.carenet.com/news/cnn/cnn/33324
インスリン抵抗性の規定因子は食塩感受性の違いにより異なることが、米国・Vanderbilt University School of MedicineのCheryl L. Laffer氏らによる検討の結果、示された。食塩感受性例では、平均動脈圧、エピネフリン値、ノルエピネフリン値がインスリン抵抗性の規定因子であったが、食塩非感受性例では、BMI、アルドステロン値が規定因子であった。著者は、「食塩感受性例に対する塩分制限は有益であるが、食塩非感受性例に対しては有害であることが示唆された」と結論している。
*被験者を食塩感受性により分類、食塩負荷・喪失試験でインスリン感受性を分析
研究グループは、正常血圧者19名と高血圧症25名を対象に、食塩感受性試験を行い、被験者を食塩感受性群と食塩非感受性群に分類した。その後、食塩負荷や食塩喪失(salt-depletion)試験を行いインスリン感受性などについて分析した。おもな結果は以下のとおり。
●被験者の平均年齢は42.6±1.4歳、女性が81%であり、黒人が38%であった。高血圧症の被験者のほうが正常血圧の被験者に比べて、より高齢、肥満で、血中クレアチニン値、脂質値、アルドステロン値がいずれも高かった。
●また被験者のうち、高血圧症例は正常血圧者に比べ、血糖値、インスリン値が高く、インスリン感受性を示すHOMA2-S値は低かった。
●被験者を食塩感受性群と食塩非感受性群に分けて解析した結果、血糖値、インスリン値においては有意な差は認められなかったが、HOMA2-S値は食塩感受性群で食塩非感受性群に比べ有意に低かった(p<0.02)。
●食塩負荷試験を実施したところ、食塩感受性群、食塩非感受性群ともにHOMA2-S値に変化は見られなかった。
●一方、食塩非感受性群に対し、グルコースとインスリン値が有意に増加するまでの食塩喪失試験を実施したところ、食塩感受性群で観察された値までHOMA2-S値が減少した。
●食塩非感受性群におけるインスリン抵抗性の規定因子は、年齢、トリグリセリド値、BMI、平均動脈圧、アルドステロン値、エピネフリン値であったが、多変量解析後に有意な因子として残ったのは、BMIとアルドステロン値のみであった。
●食塩感受性群におけるインスリン抵抗性の規定因子は、平均動脈圧、エピネフリン値、ノルエピネフリン値で、多変量解析後も全て有意な因子であった。
監修者のコメント
本研究は、インスリン抵抗性の規定因子が、食塩感受性群と非感受性群で異なることを示した臨床研究である。
これまで、肥満はインスリン抵抗性を増大させ、食塩感受性を亢進させることが報告されていたが、食塩感受性群と非感受性群で、インスリン抵抗性の規定因子が異なることが初めて示された。
食塩感受性群においては、交感神経が独立したインスリン抵抗性の規定因子であった。一方、食塩非感受性群においては、肥満と血中アルドステロンがインスリン抵抗性の有意な独立規定因子であった。
食塩感受性群の方が、食塩非感受性群よりも、インスリン抵抗性が強く、このインスリン抵抗性のカテコールアミンとの関連も、より強かった。食塩感受性群のノルエピネフリンとインスリン抵抗性の独立した関連は、末梢血管収縮による骨格筋のグルコース取り込みの低下が主要因であることを示している。
一方、食塩非感受性群においては、食塩制限によりインスリン抵抗性が食塩感受性群と同程度にまで増大している。したがって、本試験からは、食塩非感受性群において、食塩制限を実施した場合、インスリン抵抗性を増悪し、糖代謝異常が引き起こされる可能性が示唆される。
元論文
Hypertension. 2013 Jan 2. [Epub ahead of print]
Differential Predictors of Insulin Resistance in Nondiabetic Salt-Resistant and Salt-Sensitive Subjects.
Laffer CL, Elijovich F.
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23283360
この論文の特徴は、食塩非感受性のヒトでは、食塩制限すると、かえってインスリン抵抗性が増加し、糖尿病が悪化するとの事にあります。2013/2/3のblog-commentに、食塩をへらすとかえって調子が悪くなったとの書き込みがありましたが、この論文で裏付けがとれました。
また日本人の食事摂取基準2010年191頁には「QOL(生活の質)を悪化させたり、他の栄養素摂取量に好ましくない影響を及ぼしたりするような無理な減塩には注意すべきである」とある
2013/02/12(Tue) 23:22 | URL | 精神科医師A | 【編集】
>医学界においては、ほとんどの医師が「ケトン体は人体において悪者である」という大きな誤解・先入観を持っています。
そして脂肪を分解してエネルギーを取り出す結果、体内にケトン体という有害物質が多量に作り出されます。この状態(ケトーシス)は糖尿病でなくても、正常に食べ物から糖のエネルギーを摂取できない状態になると起こります【注1】。ケトーシスが発生すると血糖コントロールがさらに悪化する悪循環がおこり、その結果ケトン体の量がさらに増え、血液のpHが酸性に傾いていきます【注2】
【注1】飢餓がもっともわかりやすい例ですが、実はもっと身近に、おなかをこわして食べ物を受け付けないときや、極端なダイエットをしたときなどでも発生します
京都大学糖尿病・栄養内科
http://metab-kyoto-u.jp/to_patient/online/a005.html
そして脂肪を分解してエネルギーを取り出す結果、体内にケトン体という有害物質が多量に作り出されます。この状態(ケトーシス)は糖尿病でなくても、正常に食べ物から糖のエネルギーを摂取できない状態になると起こります【注1】。ケトーシスが発生すると血糖コントロールがさらに悪化する悪循環がおこり、その結果ケトン体の量がさらに増え、血液のpHが酸性に傾いていきます【注2】
【注1】飢餓がもっともわかりやすい例ですが、実はもっと身近に、おなかをこわして食べ物を受け付けないときや、極端なダイエットをしたときなどでも発生します
京都大学糖尿病・栄養内科
http://metab-kyoto-u.jp/to_patient/online/a005.html
2013/02/13(Wed) 00:02 | URL | 精神科医師A | 【編集】
独立行政法人 農畜産業振興機構
「砂糖]-炭水化物との上手な付き合い方~適量摂取で肥満・やせを予防~
女子栄養大学短期部 教授 松田早苗
www.alic.go.jp/joho-s/joho07_000575.html
日本人の炭水化物の摂取量は、減少傾向にある一方で、脂質の摂取量増加傾向にあることから日本人の健康障害が危惧される。
摂取不足
ダイエットのために極端に炭水化物の摂取量を減らす方がいる。良いダイエットとは、体脂肪を燃焼させ、減らすことである。炭水化物の摂取量を減らすことで、体重減少は認めるが、それは体脂肪が減少しているのではなく、体たんぱく質の減少によって体重が減少しているのである。また、脂質の燃焼に支障をきたし、体に有害な成分(ケトン体)が生成され、血液が酸性化するケトアシドーシスを招く。脂肪の燃焼には炭水化物の燃焼が不可欠で、炭水化物を充分摂取することで、炭水化物が円滑に燃焼し、脂肪も円滑に燃焼するのである。
「砂糖]-炭水化物との上手な付き合い方~適量摂取で肥満・やせを予防~
女子栄養大学短期部 教授 松田早苗
www.alic.go.jp/joho-s/joho07_000575.html
日本人の炭水化物の摂取量は、減少傾向にある一方で、脂質の摂取量増加傾向にあることから日本人の健康障害が危惧される。
摂取不足
ダイエットのために極端に炭水化物の摂取量を減らす方がいる。良いダイエットとは、体脂肪を燃焼させ、減らすことである。炭水化物の摂取量を減らすことで、体重減少は認めるが、それは体脂肪が減少しているのではなく、体たんぱく質の減少によって体重が減少しているのである。また、脂質の燃焼に支障をきたし、体に有害な成分(ケトン体)が生成され、血液が酸性化するケトアシドーシスを招く。脂肪の燃焼には炭水化物の燃焼が不可欠で、炭水化物を充分摂取することで、炭水化物が円滑に燃焼し、脂肪も円滑に燃焼するのである。
2013/02/13(Wed) 00:13 | URL | 精神科医師A | 【編集】
公益社団法人 日本栄養士会
www.dietitian.or.jp/consultation/b_01.html
脳にとって唯一のエネルギー源はブドウ糖です
www.dietitian.or.jp/consultation/b_01.html
脳にとって唯一のエネルギー源はブドウ糖です
2013/02/13(Wed) 00:28 | URL | 精神科医師A | 【編集】
第20回女子栄養大学栄養科学研究所講演会(2010年11月6日)
「時間栄養学に基づく栄養素、機能性成分の摂取タイミング」
女子栄養大学副学長 香川靖雄
講演録が2011年の年報に掲載されました
〈女子栄養大学栄養科学研究所年報17巻17-30, 2011〉
P26
それでは、朝食を欠食するとどうして脳の働きが悪くなるのでしょうか。それは、血糖が下がるからです。肝臓に蓄えられている糖は、朝になったらほとんど使い切ってしまいます。朝ご飯を食べなかったら体の中にあるブドウ糖は脳に集まって代謝されます。間違ったことを言う人がいて、どんな根拠があるかわかりませんが、「脳はブドウ糖の他の栄養素も分解できる」とインターネットで堂々と言っています。それは間違いです、脳はブドウ糖しか利用できないのです
「時間栄養学に基づく栄養素、機能性成分の摂取タイミング」
女子栄養大学副学長 香川靖雄
講演録が2011年の年報に掲載されました
〈女子栄養大学栄養科学研究所年報17巻17-30, 2011〉
P26
それでは、朝食を欠食するとどうして脳の働きが悪くなるのでしょうか。それは、血糖が下がるからです。肝臓に蓄えられている糖は、朝になったらほとんど使い切ってしまいます。朝ご飯を食べなかったら体の中にあるブドウ糖は脳に集まって代謝されます。間違ったことを言う人がいて、どんな根拠があるかわかりませんが、「脳はブドウ糖の他の栄養素も分解できる」とインターネットで堂々と言っています。それは間違いです、脳はブドウ糖しか利用できないのです
2013/02/13(Wed) 08:17 | URL | 精神科医師A | 【編集】
「図説医化学」 香川靖雄 医歯薬出版(2001)
(P353)
脳に出入する動静脈の成分を分析してその差を求めると、脂質はほとんど利用されず、アミノ酸は分枝鎖アミノ酸がわずかに利用され、重い飢餓時にケトン体が少し利用されることがわかる
(P353)
脳に出入する動静脈の成分を分析してその差を求めると、脂質はほとんど利用されず、アミノ酸は分枝鎖アミノ酸がわずかに利用され、重い飢餓時にケトン体が少し利用されることがわかる
2013/02/13(Wed) 08:18 | URL | 精神科医師A | 【編集】
百花 さん
体重はその人の適正なところで落ち着きます。
ほとんどの人において、BMI20以上で25未満の範囲ならいいと思います。
「1gの糖質が、体重64kgの1型糖尿病の人の血糖値を約6mg上昇させる。」→個人差はあり。
1単位のインスリンが、血糖値を何mg下げるかもは、個人差があります。
糖質制限を始めてからなのですが
炭水化物を取ったときに必要なインスリン量が増えました。これは誰でもそうなのでしょうか?
これは、初めて聞きました。
1型の場合、このようなことも個人差が結構ありえると思います。
しかし、一般的には、スーパー糖質制限食なら、インスリンの量も、高糖質食の時に比べて
1/3以下になります。
体重はその人の適正なところで落ち着きます。
ほとんどの人において、BMI20以上で25未満の範囲ならいいと思います。
「1gの糖質が、体重64kgの1型糖尿病の人の血糖値を約6mg上昇させる。」→個人差はあり。
1単位のインスリンが、血糖値を何mg下げるかもは、個人差があります。
糖質制限を始めてからなのですが
炭水化物を取ったときに必要なインスリン量が増えました。これは誰でもそうなのでしょうか?
これは、初めて聞きました。
1型の場合、このようなことも個人差が結構ありえると思います。
しかし、一般的には、スーパー糖質制限食なら、インスリンの量も、高糖質食の時に比べて
1/3以下になります。
2013/02/13(Wed) 14:13 | URL | ドクター江部 | 【編集】
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