2013年01月20日 (日)
おはようございます。
第47回日本成人病(生活習慣病)学会で発表された発表に関する日経メディカルの記事が、下記の青字の文章です。
4コホート研究(6サブグループ)のメタアナリシス。
糖質の割合を高い(60~70%)群に対する低い(30~40%)群のリスク比。
メタアナリシスの、対象者は27万2216人(女性66%、追跡期間5~26年)。
総死亡数は1万5981人。
糖質の割合が低い(30~40%)群と高い(60~70%)群を比較した結果、
総死亡リスクは低糖質群で31%、有意に増加した。
結局、このメタアナリシスは、高糖質群(60~70%)と中糖質群(30~40%)の比較であり、糖質制限食(糖質10~20%)の群はどこにも登場しません。
中糖質群で、例えば2000kcal/日摂取したら、糖質は150~200g/日
1回の食事の糖質量は50~66gであり、追加インスリンの大量分泌が生じます。食後高血糖も生じます。
インスリンの過剰分泌に発ガンリスクがあることには、多くのエビデンスがあります。
そして食後高血糖にも発ガンリスクのエビデンスがあります。
すなわち中糖質食では、発ガンリスクは減らせないということが言えます。
糖質制限食(糖質10~20%)なら、インスリン過剰分泌と食後高血糖という明確な発ガンリスクが、ほとんど生じないという大きな利点があります。
結論としては中糖質群(30~40%)は高糖質群(60~70%)と比べて、相死亡率が優位に増加したという研究です。
糖質制限食には無関係の研究です。
江部康二
【2013. 1. 15
http://medical.nikkeibp.co.jp/inc/mem/pub/hotnews/int/201301/528564.html
第47回日本成人病(生活習慣病)学会より
糖質制限食の長期的効用は認められず
メタ解析の結果、総死亡リスク増加の懸念も
井田恭子=日経メディカル
関連ジャンル: 食事・栄養 糖尿病
糖質制限食について長期的な効用は認めず、むしろ死亡リスクが有意に増加する。こんなメタアナリシスの結果を1月12日、国立国際医療研究センター病院糖尿病・代謝・内分泌科医長の能登洋氏が第47回日本成人病(生活習慣病)学会で発表した。
近年、減量法や糖尿病治療として炭水化物の摂取量を減らす糖質制限食が注目されている。数週間~数年間の減量や動脈硬化リスクファクター改善の有効性が示唆されているものの、長期的なアウトカムや安全性については明らかになっていない。能登氏らは、MedLine、EMBASEなどの検索エンジンを用いて、“low-carbohydrate diet”や“carbohydrate-restricted diet”などのキーワードで関連する研究を選択し、メタアナリシスを行った。
図1 低糖質群の総死亡リスク (能登氏発表資料より) 4コホート研究(6サブグループ)のメタアナリシスの結果。糖質の割合をLCスコアでスコア化し、高い(60~70%)群に対する低い(30~40%)群のリスク比を求めた。*画像クリックで拡大します。
メタアナリシスの対象として選択された論文は全9件で、対象者は27万2216人(女性66%、追跡期間5~26年)。総死亡数は1万5981人だった。
総カロリーに占める糖質の割合をスコア化し(low-carbohydrate score;LCスコア)、糖質の割合が低い(30~40%)群と高い(60~70%)群を比較した結果、総死亡リスクは低糖質群で31%、有意に増加した(調整リスク比の95%信頼区間は1.07-1.59、図1)。「低糖質・高蛋白質」群と「高糖質・低蛋白質」群を比較した結果(LC/HPスコア)でも、前者で総死亡リスクは22%、有意に増加(同1.02-1.46)。糖質制限食による長期的な効用は認めなかった。
心血管疾患死については低糖質群で10%増加したが、有意差は認めなかった(同0.98-1.24)。また、心血管疾患発症リスクはLCスコアでの検討では有意差はなく、LC/HPスコアで検討していた1文献では有意差を認めていた。
結果について能登氏は、「糖質制限食をし好する人は、脂肪や動物性蛋白質の摂取量が高値となる傾向にあり、総死亡の増加への関与が想定される」と話した。ただし、「今回の検討では糖質の特徴や蛋白質源などの影響は加味されていない。これらの解析を含む長期介入研究が必要だ」とした。
今回検討した論文は、いずれも一般人や医療者を対象にした試験であり、糖尿病患者への影響は不明だ。糖尿病患者の中には医師に告げずに糖質制限食を実践し、血糖コントロールに影響を及ぼしているケースもある。能登氏は「今回の検討結果から糖質制限食に対して賛成・反対は言い切れない。しかし、薬物治療を行っている患者では低血糖リスクも鑑み、バランスよく食事を摂取することの大切さを伝える必要があるのではないか」と話している。】
第47回日本成人病(生活習慣病)学会で発表された発表に関する日経メディカルの記事が、下記の青字の文章です。
4コホート研究(6サブグループ)のメタアナリシス。
糖質の割合を高い(60~70%)群に対する低い(30~40%)群のリスク比。
メタアナリシスの、対象者は27万2216人(女性66%、追跡期間5~26年)。
総死亡数は1万5981人。
糖質の割合が低い(30~40%)群と高い(60~70%)群を比較した結果、
総死亡リスクは低糖質群で31%、有意に増加した。
結局、このメタアナリシスは、高糖質群(60~70%)と中糖質群(30~40%)の比較であり、糖質制限食(糖質10~20%)の群はどこにも登場しません。
中糖質群で、例えば2000kcal/日摂取したら、糖質は150~200g/日
1回の食事の糖質量は50~66gであり、追加インスリンの大量分泌が生じます。食後高血糖も生じます。
インスリンの過剰分泌に発ガンリスクがあることには、多くのエビデンスがあります。
そして食後高血糖にも発ガンリスクのエビデンスがあります。
すなわち中糖質食では、発ガンリスクは減らせないということが言えます。
糖質制限食(糖質10~20%)なら、インスリン過剰分泌と食後高血糖という明確な発ガンリスクが、ほとんど生じないという大きな利点があります。
結論としては中糖質群(30~40%)は高糖質群(60~70%)と比べて、相死亡率が優位に増加したという研究です。
糖質制限食には無関係の研究です。
江部康二
【2013. 1. 15
http://medical.nikkeibp.co.jp/inc/mem/pub/hotnews/int/201301/528564.html
第47回日本成人病(生活習慣病)学会より
糖質制限食の長期的効用は認められず
メタ解析の結果、総死亡リスク増加の懸念も
井田恭子=日経メディカル
関連ジャンル: 食事・栄養 糖尿病
糖質制限食について長期的な効用は認めず、むしろ死亡リスクが有意に増加する。こんなメタアナリシスの結果を1月12日、国立国際医療研究センター病院糖尿病・代謝・内分泌科医長の能登洋氏が第47回日本成人病(生活習慣病)学会で発表した。
近年、減量法や糖尿病治療として炭水化物の摂取量を減らす糖質制限食が注目されている。数週間~数年間の減量や動脈硬化リスクファクター改善の有効性が示唆されているものの、長期的なアウトカムや安全性については明らかになっていない。能登氏らは、MedLine、EMBASEなどの検索エンジンを用いて、“low-carbohydrate diet”や“carbohydrate-restricted diet”などのキーワードで関連する研究を選択し、メタアナリシスを行った。
図1 低糖質群の総死亡リスク (能登氏発表資料より) 4コホート研究(6サブグループ)のメタアナリシスの結果。糖質の割合をLCスコアでスコア化し、高い(60~70%)群に対する低い(30~40%)群のリスク比を求めた。*画像クリックで拡大します。
メタアナリシスの対象として選択された論文は全9件で、対象者は27万2216人(女性66%、追跡期間5~26年)。総死亡数は1万5981人だった。
総カロリーに占める糖質の割合をスコア化し(low-carbohydrate score;LCスコア)、糖質の割合が低い(30~40%)群と高い(60~70%)群を比較した結果、総死亡リスクは低糖質群で31%、有意に増加した(調整リスク比の95%信頼区間は1.07-1.59、図1)。「低糖質・高蛋白質」群と「高糖質・低蛋白質」群を比較した結果(LC/HPスコア)でも、前者で総死亡リスクは22%、有意に増加(同1.02-1.46)。糖質制限食による長期的な効用は認めなかった。
心血管疾患死については低糖質群で10%増加したが、有意差は認めなかった(同0.98-1.24)。また、心血管疾患発症リスクはLCスコアでの検討では有意差はなく、LC/HPスコアで検討していた1文献では有意差を認めていた。
結果について能登氏は、「糖質制限食をし好する人は、脂肪や動物性蛋白質の摂取量が高値となる傾向にあり、総死亡の増加への関与が想定される」と話した。ただし、「今回の検討では糖質の特徴や蛋白質源などの影響は加味されていない。これらの解析を含む長期介入研究が必要だ」とした。
今回検討した論文は、いずれも一般人や医療者を対象にした試験であり、糖尿病患者への影響は不明だ。糖尿病患者の中には医師に告げずに糖質制限食を実践し、血糖コントロールに影響を及ぼしているケースもある。能登氏は「今回の検討結果から糖質制限食に対して賛成・反対は言い切れない。しかし、薬物治療を行っている患者では低血糖リスクも鑑み、バランスよく食事を摂取することの大切さを伝える必要があるのではないか」と話している。】
江部先生、いつもありがとうございます。
私もこれらのコホート研究には注目しています。
「Low-carbohydrate diet scores and risk of type 2 diabetes in men」
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3057550/
などの論文を読んでみると
1)アメリカでは高血糖の人に対する糖質制限は当たり前になっている。
2)しかし、糖質制限をした結果「赤肉」(牛と豚の赤身部分)や「加工肉」が多くなると死亡率が上がる。
3)その時、血液検査で(血糖値など)は特に問題は出ていない。
ということのようです。
そして論文の「結語」で「Low-carbohydrate diets should obtain protein and fat from foods other than red and processed meat.」のように述べられています。
この研究はアメリカで行われているので、人種や食生活の異なる日本にすぐに適用出来るかはわかりません。
しかしいずれにせよ、糖質制限に対する議論は糖質の摂取量に加えて、このように食全体を検討する必要があると思います。
恐らく糖質制限をしながらの食事は植物性タンパク質、魚、野菜を増やせば良いのではないかと思います。
私もこれらのコホート研究には注目しています。
「Low-carbohydrate diet scores and risk of type 2 diabetes in men」
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3057550/
などの論文を読んでみると
1)アメリカでは高血糖の人に対する糖質制限は当たり前になっている。
2)しかし、糖質制限をした結果「赤肉」(牛と豚の赤身部分)や「加工肉」が多くなると死亡率が上がる。
3)その時、血液検査で(血糖値など)は特に問題は出ていない。
ということのようです。
そして論文の「結語」で「Low-carbohydrate diets should obtain protein and fat from foods other than red and processed meat.」のように述べられています。
この研究はアメリカで行われているので、人種や食生活の異なる日本にすぐに適用出来るかはわかりません。
しかしいずれにせよ、糖質制限に対する議論は糖質の摂取量に加えて、このように食全体を検討する必要があると思います。
恐らく糖質制限をしながらの食事は植物性タンパク質、魚、野菜を増やせば良いのではないかと思います。
いつも先生の本とブログを読んで勉強させていただき、楽しく糖質制限しています。遺伝的に糖尿病の要素があり、また以前はよく日本酒を飲み、食べ・・・でしたので、ここ1年は糖質制限を自分なりに実践して気を付けております。適度に運動もしており、ずっと156センチ、48キロです。ところが、今回の人間ドックで、空腹時血糖が128、A1Cが5.4でした。朝、自分で測ったとき(フリースタイルフラッシュ)は105でした。念のため翌日別の病院で検査してもらったら、自己測定が93のところ、病院の結果が115、A1Cが5.2でした。。。ほぼ毎日自己測定しており、80~105の間なので安心していたのですが、やはり病院の結果を信じるべきなんでしょうか。一般に、自己測定より静脈血のほうが低く出ると思っていたので、とてもショックです。高く出ると嫌だな・・・なんてストレスであがったりしませんよね?もう糖尿人と思ったほうがいいのでしょうか。お忙しいところ申し訳ありませんが、先生のご意見お聞かせいただけると幸いです。
2013/01/20(Sun) 14:18 | URL | しじみ | 【編集】
モン吉 さん
良かったです。
良かったです。
2013/01/20(Sun) 17:45 | URL | ドクター江部 | 【編集】
モカ さん
情報、ありがとうございます。
【低炭水化物食と全死亡率および死因別死亡率:二つのコホート研究
「Annals of Internal medicine
September 7 2010 vol.153 Issue5 p289-298
Low-Carbohydrate Diets and All-Cause and Cause-Specific Mortality:Two Cohort Studies
Teresa T. Fung, Rob M. van Dam, Susan E. Hankinson, Meir Stampfer, Walter C. Willett, and Frank B. Hu」
この論文も同様の結論ですが、やはり中糖質食と高糖質食の比較で
糖質制限食の研究ではありません。
モカさんに提示していただいた論文も、中糖質食と高糖質食の比較です。
情報、ありがとうございます。
【低炭水化物食と全死亡率および死因別死亡率:二つのコホート研究
「Annals of Internal medicine
September 7 2010 vol.153 Issue5 p289-298
Low-Carbohydrate Diets and All-Cause and Cause-Specific Mortality:Two Cohort Studies
Teresa T. Fung, Rob M. van Dam, Susan E. Hankinson, Meir Stampfer, Walter C. Willett, and Frank B. Hu」
この論文も同様の結論ですが、やはり中糖質食と高糖質食の比較で
糖質制限食の研究ではありません。
モカさんに提示していただいた論文も、中糖質食と高糖質食の比較です。
2013/01/20(Sun) 17:55 | URL | ドクター江部 | 【編集】
しじみ さん
病院の結果だと境界型レベルのように思います。
しかしストレスで血糖があがることはあります。
糖質制限食を実践しておられるなら、将来糖尿病になるリスクはほとんどないと思います。
病院の結果だと境界型レベルのように思います。
しかしストレスで血糖があがることはあります。
糖質制限食を実践しておられるなら、将来糖尿病になるリスクはほとんどないと思います。
2013/01/20(Sun) 18:00 | URL | ドクター江部 | 【編集】
江部先生
ご返事ありがとうございます!
この研究のレベルだと中程度の糖質食になるのですね。
糖尿病の人を対象とした研究や、スーパー糖質制限の研究も行われたらいいなと思いました。
いつもありがとうございます!
ご返事ありがとうございます!
この研究のレベルだと中程度の糖質食になるのですね。
糖尿病の人を対象とした研究や、スーパー糖質制限の研究も行われたらいいなと思いました。
いつもありがとうございます!
モカさん
男性は
Health Professionals (Follow-Up) Study
女性は
Nurses' Health Study
米国発の大規模コホート研究は、ほとんどこの2つのデータベースが使われています。
これらの研究では、一番糖質が低い群でも、30~40%の糖質摂取で、
正確には中糖質食となります。
男性は
Health Professionals (Follow-Up) Study
女性は
Nurses' Health Study
米国発の大規模コホート研究は、ほとんどこの2つのデータベースが使われています。
これらの研究では、一番糖質が低い群でも、30~40%の糖質摂取で、
正確には中糖質食となります。
2013/01/20(Sun) 19:08 | URL | ドクター江部 | 【編集】
江部先生
何度もご返事ありがとうございます。(感激!)
教えて頂きましたアメリカのコホート研究のサイトを見てみました。
あまりにもデータが多くて太刀打ち出来ませんが、ちょっとずつ見てみたいと思います。
コホート研究の結果は大切ですが、条件の設定が大切だと思いました。
江部先生の臨床現場でのこれからのデータの蓄積をとても期待しています。
何度もご返事ありがとうございます。(感激!)
教えて頂きましたアメリカのコホート研究のサイトを見てみました。
あまりにもデータが多くて太刀打ち出来ませんが、ちょっとずつ見てみたいと思います。
コホート研究の結果は大切ですが、条件の設定が大切だと思いました。
江部先生の臨床現場でのこれからのデータの蓄積をとても期待しています。
江部先生
お忙しい中、ご回答いただきありがとうございます。
「高糖質食と中糖質食の比較」とのこと、大変わかりやすいご説明ありがとうございます。
それにしても「糖質制限食」に対する正しい知識が無いにもかかわらず、こういったデータを出してくるとは、医療者としてどういう神経を持っているのでしょうか?
本当の糖質制限食と糖質食を比較した研究が、いつの日か発表されることを期待しています。
お忙しい中、ご回答いただきありがとうございます。
「高糖質食と中糖質食の比較」とのこと、大変わかりやすいご説明ありがとうございます。
それにしても「糖質制限食」に対する正しい知識が無いにもかかわらず、こういったデータを出してくるとは、医療者としてどういう神経を持っているのでしょうか?
本当の糖質制限食と糖質食を比較した研究が、いつの日か発表されることを期待しています。
江部先生
この発表に関する論文について朝日新聞が掲載していましたので、それを考察する記事を書きました。
その中で江部先生のこの記事内容を一部引用、掲載させていただきました、事後承諾で申し訳ありませんが、ご了承いただけましたら幸いです。
記事は以下の二つです。
朝日新聞に糖質制限を5年続けると命が危ないって出てたよ(笑)。
http://xn--oqqx32i2ck.com/review/cat31/5.html
マイルドな(中等度の)糖質制限で脂肪摂取が増えるとかえって危険かもしれない
http://xn--oqqx32i2ck.com/review/cat31/post_150.html
この発表に関する論文について朝日新聞が掲載していましたので、それを考察する記事を書きました。
その中で江部先生のこの記事内容を一部引用、掲載させていただきました、事後承諾で申し訳ありませんが、ご了承いただけましたら幸いです。
記事は以下の二つです。
朝日新聞に糖質制限を5年続けると命が危ないって出てたよ(笑)。
http://xn--oqqx32i2ck.com/review/cat31/5.html
マイルドな(中等度の)糖質制限で脂肪摂取が増えるとかえって危険かもしれない
http://xn--oqqx32i2ck.com/review/cat31/post_150.html
Dr.カルピンチョ さん
了解です。
先生のブログ、とても参考になります。
了解です。
先生のブログ、とても参考になります。
2013/01/27(Sun) 18:12 | URL | ドクター江部 | 【編集】
変な記事を読んでしまいましたが、何かの間違いですね(笑)
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