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健康への脅威は飢餓よりも肥満 肥満率は過去20年で8割増
おはようございます。

「健康への脅威は飢餓よりも肥満 肥満率は過去20年で8割増」

CNNのニュースを、ヤフーニュースが伝えてます。

50カ国の研究者約500人が、1990年から2010年までの健診データを比較したものが、英国の医学雑誌「ランセット」に掲載された研究レポートですから、信頼度も高いです。


「伝染病で命を落とす子どもの数が予防接種のおかげで激減したため死亡率には大きな変化が見えたが、その一方で、肥満が世界的に増加」

感染症が激減して、生活習慣病である肥満が増加です。

肥満及び、肥満が関連する糖尿病、脳卒中、心疾患、腰痛などが人生の晩年の14年間の生活の質を低下させているそうです。

医療技術の進歩で平均寿命は、男性は10.7年、女性は12.6年長生きしているのですが、健康寿命が延びたのではないようです。

「サハラ以南のアフリカ諸国を除く全ての国で肥満率は驚くほど高くなっている。」

サハラ以南のアフリカは、まだ飢餓があるのでしょうね。

それ以外の、一定の食料が確保できている国では肥満率が上昇です。

「いわゆる『欧米型ライフスタイル』が世界中に行き渡りつつあり、どこにおいても同じ影響をもたらしている」

これは例によって、残念な結論ですね。

アラブ諸国だけは別格として、OECD加盟国においては貧困層の肥満が大きな問題となっています。

米国では脂肪摂取比率は減り続けて、糖質摂取比率が増え続け、肥満倍増です。
 
貧困層が摂取できるエネルギー源は、糖質・脂質・たんぱく質のうち、最も安価な糖質が中心となります。

貧困層は、比較的高価な脂質・たんぱく質は、あまり摂取できません。

<貧困層→糖質摂取→肥満>

この基本構造を医師や政治家がしっかり認識しないと、いつまでたっても肥満は減少しないでしょう。

農耕前の700万年間は、糖質は時々手に入るラッキー食材(果物、根茎など)であり、中性脂肪に変わって人体に蓄えられ、飢餓に対する唯一のセーフティーネット(体脂肪)の基本を担っていました。

本来、ラッキー食材でたまに手に入っていた糖質を、穀物・芋を中心に、日常的に頻回に過剰に摂取する現代の食生活は、運動不足も含めて、まさに肥満製造のためのシステムと言えます。


江部康二



以下、ヤフーニュースから転載です。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130102-35026162-cnn-int


健康への脅威は飢餓よりも肥満 肥満率は過去20年で8割増
CNN.co.jp 1月2日(水)9時43分配信

(CNN) 肥満は今や世界中で、飢えよりも深刻な健康上の大きな問題となっており、身体的な障害を引き起こす最大の原因にもなっている――。
英国の医学雑誌「ランセット」にこのほどそんな研究リポートが掲載された。

50カ国の研究者約500人が、「世界における疾病がもたらす負担」と題された研究リポートのために、1990年から2010年までの健診データを比較し、世界の人々の健康状態の傾向に大きな変化があることを発見した。

リポートの共著者で、この共同研究を主導した米ワシントン大学のアリー・モクダッド教授によると、伝染病で命を落とす子どもの数が予防接種のおかげで激減したため死亡率には大きな変化が見えたが、その一方で、肥満が世界的に増加しており、その影響が表れ始めているという。

サハラ以南のアフリカ諸国を除く全ての国で肥満率は驚くほど高くなっている。肥満は、世界全体では調査期間の20年間で82%増加し、中東諸国では倍増して過去最高水準になった。

いわゆる「欧米型ライフスタイル」が世界中に行き渡りつつあり、どこにおいても同じ影響をもたらしているとモクダッド教授は指摘する。
また、肥満による健康への悪影響は飢えによるものを上回っている。今回の研究で明らかになったのは、糖尿病や脳卒中、心疾患などの非伝染性疾患が初めて、長期的な疾患やけがの主要な原因となったということだ。

モグダッド教授は、肥満が多くの人々の腰痛の原因にもなっており、肥満率が下がれば、非伝染性疾患や腰痛に苦しむ人も減少するとの見通しを示す。

平均寿命では1990年の予測よりも、男性は10.7年、女性は12.6年長生きしており、医療技術の進歩がその要因だと考えられている。しかし、人生を終える時まで平均14年間を病気や痛みを抱えて過ごしており、延びた分の人生における生活の質は決して高くはないこともこの研究で明らかになった。

脳卒中に襲われた人の命を救えるようにはなったが、命を救われた人は、その後何年も障害を抱えて生きることになり、生活の質は大きく低下することになる。

欧米諸国では、心疾患で死亡する人は70%減少したが、心疾患と診断される人の数は驚異的ペースで増加している。
世界保健機関(WHO)のマーガレット・チャン事務局長によると、非伝染性疾患は世界に蔓延(まんえん)する重大な脅威だ。2011年の国連総会での演説で同氏は、非伝染性疾患を「やがて堤防を決壊させるかもしれないスローモーションの大災害」に例えている。

同じ年には、国連総会でハイレベル会合が開かれ、肥満などの非伝染性疾患の蔓延を防ぐための「政治宣言」が採択された。疾病問題のための特別会合開催は、約10年前のエイズ対策会合の開催に次ぎ2度目のことだった。

非伝染性疾患の治療よりも、その予防に力を入れる方が経済的メリットは大きい可能性がある。

世界経済フォーラムと米ハーバード大学の2011年の共同研究リポートによると、今後20年間で非伝染性疾患により30兆ドル(約2500兆円)の費用負担が生じ、これと精神疾患による負担の16兆ドル(約1300兆円)とが重なって、何百万人もの人を貧困に追いやりかねないことが懸念されている。

政治家らがこれらの数字に注目し、この悪い流れを変えるために取れる対策を見出すことが望まれるとモクダッド教授は指摘した。



テーマ:糖尿病
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
実は太りにくいチョコレートの健康的な成分と効果的な食べ方
 白澤卓二氏は1958年生まれ。順天堂大学大学院医学研究科・加齢制御医学講座教授。アンチエイジングの第一人者として著書やテレビ出演も多い白澤氏が、健康によいチョコレートの食べ方について解説する。

 * * *
 元来、チョコレートは太りやすいと思われているが、茨城キリスト教大学の板倉弘重名誉教授は、「カカオバターの主成分ステアリン酸は吸収率が低く、低カロリーなので意外にも健康的な食材」である点を強調する。このステアリン酸には血中コレステロール値を下げる効果、カカオ成分には虫歯を抑制してくれる効果もある。

 さらに私が注目しているのは、東京薬科大学の井上英史教授らの研究結果だ。カカオ豆から抽出した「プロシアニジン」という成分を線虫が摂取するエサに混ぜて与えたところ、酸化ストレスが抑えられ、線虫の平均寿命が延びたのだ。酸化ストレスは、動脈硬化、糖尿病、がんなど多くの病気の引き金になる。

 実際、スウェーデンのカロリンスカ研究所のラーソン博士らが、45~79歳のスウェーデン人男性3万7103人を約10年間追跡調査した結果、チョコレートの消費量が最も多かった群の男性は、全く消費していなかった群の男性に比べて、脳卒中の危険度が17%も低下していることが明らかになった。さらに解析を進めると、チョコレートの消費量が50グラム増えるごとに脳卒中危険度が14%低下したのだ。

 ただし、砂糖がたっぷりの甘いチョコレートを沢山食べると確実に体重が増し、糖尿病が悪化する危険もある。食べるなら「カカオ70%のビターチョコレート50グラムを食事の20分前にゆっくり食べる」という食べ方がお勧めだ。

※週刊ポスト2013年1月1・11日号
2013/01/03(Thu) 10:19 | URL | mmx | 【編集
先生、皆様、
明けましておめでとうございます。
重ねて、
主食を抜けば糖尿病は良くなる!
実践編
糖質制限食の応用法
(文春文庫 健 10-2) [文庫]
の発刊(2013.1.4)、
おめでとうございます。
2013/01/03(Thu) 13:16 | URL | 北九州 三島 | 【編集
この論文ですね
www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(12)61690-0/abstract
2013/01/03(Thu) 13:54 | URL | 精神科医師A | 【編集
Re: 実は太りにくいチョコレートの健康的な成分と効果的な食べ方
mmx さん

耐糖能正常の人なら、
「カカオ70%のビターチョコレート50グラムを食事の20分前にゆっくり食べる」
カカオマス由来の糖質が少々入っていますが、なかなか良いと思います。

しかしながら、私の様な糖尿人には、
世界初のエリスリトールチョコレート
シュクリーベチョコが、一番安全です。
2013/01/03(Thu) 14:46 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: タイトルなし
北九州 三島  さん

明けましておめでとうございます。
本年もよろしくお願い申し上げます。

主食を抜けば糖尿病は良くなる!
が文春文庫から刊行されたのに
続いて

主食を抜けば糖尿病は良くなる!
実践編
糖質制限食の応用法
(文春文庫 健 10-2) [文庫]

が上梓されました。

ありがとうございます。
2013/01/03(Thu) 14:56 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: タイトルなし
精神科医師A さん

情報を、ありがとうございます。
2013/01/03(Thu) 14:57 | URL | ドクター江部 | 【編集
中国人研究者・腸内細菌・肥満のニュース記事について
 江部先生、皆様

 中国での研究のニュースの件、言及どうもありがとうございました。


 私も、仕事では先生と呼ばれており、他の分野の専門家
 (法律家・以前江部先生がお悩みだった、知的財産分野が専門)
 なのですが、

 他分野である医療に関するニュースの見方・スタンス・付き合い方が、
 少しずつ分かってまいりました。


 精神科医師A先生も、いつも出所・ソースの紹介、どうもありがとうございます。
 

 たった1例の患者だけの研究reportであっても、革新的な発見であるかのようにニュースを配信することができる現状は、恐さを感じました。

 ※記事では、『今回の趙教授の研究から、腸内細菌が肥満の原因であることが明らかになった。』等と記載
2013/01/04(Fri) 10:14 | URL | 糖質制限食 | 【編集
Re: 中国人研究者・腸内細菌・肥満のニュース記事について
糖質制限食 さん

仰る通りです。

名の通った学会発表でも、その後論文かされて、医学雑誌に掲載されなかったら、
没同然です。

従って、学会発表段階で、マスコミがはしゃぐのは、如何なものかということです。

その点、森口尚史氏のiPS関連学会発表を読売新聞がセンセーショナルに掲載して、
山中教授にコメントを求めたとき
「論文になっていないので評価不能でコメントできない」と仰ったのは、当然とはいえ
冷静で素晴らしいですね。
2013/01/04(Fri) 11:42 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: 中国人研究者・腸内細菌・肥満のニュース記事について
 江部先生

 コメントどうもありがとうございます。

>名の通った学会発表でも、その後論文かされて、医学雑誌に掲載されなかったら、
>没同然です。
>従って、学会発表段階で、マスコミがはしゃぐのは、如何なものかということです。

 我々は難しい試験の勉強や、実務で鍛えられますが、
 社会科学でもあるため、学者・研究者の論文・学説には、それほどの重みはありません。
 
 例えると、実務上の重要な判例(最高裁判例等)の内容が、
 自然科学でいう「著名な医学雑誌に掲載された論文」に該当するのでしょうね。


>その点、森口尚史氏のiPS関連学会発表を読売新聞がセンセーショナルに掲載して、
>山中教授にコメントを求めたとき
>「論文になっていないので評価不能でコメントできない」と仰ったのは、当然とはいえ
>冷静で素晴らしいですね。

 おっしゃるとおりです。
 山中教授のエピソード、沢山ございますが、
 最近の所では、この話が教授の知性・人格を表していて、好きです。

 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20121214-00000005-jct-soci
 
 山中教授はにこやかな笑顔で「そういうことはできません。貴重なものなので」。

 きっぱり断った後、「ノーベル賞はこれで私にとって過去のことになりました。大切な場所に保管してもう見ることもないと思います。

 一科学者としてこれから、すべきことを粛々とやっていきたい」と語った。
2013/01/04(Fri) 12:06 | URL | 糖質制限食 | 【編集
糖質制限食と人口維持
江部先生、

日頃このブログを参考に糖質制限を行なっており、感謝しております。

以前なにかの記事で、炭水化物メインの食生活は60億の人口を維持するのに必要と目にしたのですが、素人ながら疑問を抱いたので質問させていただきます。

現代の食生活と糖質制限食の違いはタンパク質・ビタミン・ミネラルの量とは独立に単に糖質と脂質のバランスの問題だと理解している(間違っていたらご教示頂ければ幸いです)のですが、そうすると必ずしも家畜など生産しにくい食材の量は増やす必要はなく、単に穀物を植物油で置き換えればよく、現時点で両者のエネルギー単価はほぼ同じなので、原理的には可能なのではないでしょうか。
植物油をただ飲むのは嫌なので、美味しく食べれるよう食文化が発展する必要はありますが、それはともかく、
現代の(十分なタンパク質・ビタミン・ミネラルを伴う)穀物メインの食生活の穀物の部分を全て植物油に置き換えるのは医学上あるいは栄養上なにか問題がありますでしょうか。
問題なければ全人類が(徐々に)糖質制限食に切り替えても問題なさそうに思います。
2013/01/06(Sun) 09:57 | URL | poyo | 【編集
Re: 糖質制限食と人口維持
poyo さん

植物油の主成分は、オリーブオイル以外は、ほぼリノール酸です。
リノール酸は必須脂肪酸で、人体に絶対に必要です。
しかし、現時点の日本で、1~2g/日必要なところを、10g以上過剰に摂取しています。

リノール酸の過剰摂取は、アレルギー、動脈硬化、ガンなどのリスクとされています。
医学的には、リノール酸の取り過ぎを減らすことが急務なのです。
2013/01/06(Sun) 14:20 | URL | ドクター江部 | 【編集
貧しい人々のための糖質制限レシピ
江部先生のご著書を拝読し、日々(3食自炊で)糖質制限食をいただいております。おかげさまで身体の調子もよく、感謝しております。本当にありがとうございます。ところで、不躾な質問で恐縮ですが、「現在日本で暮らしている貧しい人々のための糖質制限レシピの開発」というのは可能でしょうか?
2013/03/25(Mon) 14:40 | URL | ふくろくじゅ | 【編集
Re: 貧しい人々のための糖質制限レシピ
ふくろくじゅ さん。

鶏肉、豚肉、豆腐、卵・・・
物価的には優等生で比較的安価で、糖質制限OK食材だと思います。

野菜がときに値上がりしてますが、工夫次第で自炊なら、案外安く
スーパー糖質制限食が可能と思いますよ。
2013/03/25(Mon) 16:32 | URL | ドクター江部 | 【編集
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