fc2ブログ
山田悟先生がバーンスタイン医師をインタビュー③。 MT Pro 。
こんばんは。

バーンスタイン医師への山田悟センター長のインタビュー記事の第3弾です。

<血糖の日内変動は臨床家の基本知識>

インスリン作用の不足で糖尿病を発症します。

「インスリン分泌不足+インスリン抵抗性」を合わせてインスリン作用不足となります。

一般に、日本人は、インスリン分泌不足が主の糖尿病で、欧米人は、インスリン抵抗性が主の糖尿病とされています。

現実に、日本人の2型糖尿病新患の平均BMIが24で、欧米人の2型糖尿病新患の平均BMIが32です。

インスリンには空腹時の基礎分泌と、食後の追加分泌があります。

追加分泌には、第一相(前もって貯蔵されている)と第二相(高血糖があれば、第一相のあと分泌される)があります。

2型糖尿病において、追加分泌第一相が、欠落あるいは、大きく不足するタイプがありますが、バーンスタイン医師はこのことを述べておられるのかと思います。


<運動,ストレス,感染症なども血糖コントロールを左右>

「ストレスそのものが血糖値を変動させるという科学的な根拠は今のところありません。」

とバーンスタイン医師は述べておられます。

ケンカしたり怒ったりのストレスで血糖は上昇しますが、そのストレスでアドレナリンが分泌されて血糖が上昇するのだと思います。

これを、ストレス→アドレナリン分泌→血糖値上昇ということで、直接ではないと述べておられるのでしょう。


<多くの糖尿病患者に認められる甲状腺機能の低下>

糖尿病患者さんにおける甲状腺機能低下症は、時に見られます。

私も甲状腺機能検査は、半年毎くらいには実施しています。

「私の診ている糖尿病患者さんの85%は,私が最初に診た時点では甲状腺機能が低下していました。」

とバーンスタイン医師は述べておられます。

しかし私の糖尿病患者さんで、甲状腺機能低下症は数%以下です。

欧米人と日本人で差があるのでしょうか?

なお、血糖コントロールが悪いと、甲状腺機能が低下しやすいです。


江部康二


☆☆☆

http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtnews/2012/M45510231/
以下MT Pro から 一部を転載

2012年12月20日
シリーズ糖尿病 vol.3 食事療法としての糖質制限食

糖質制限食の生みの親 R. K. Bernstein 氏に聞く

血糖コントロールに影響する他の因子とは

R. K. Bernstein 氏
ママロネックのクリニックにて


山田 悟 氏

Richard K. Bernstein氏の唱える糖質制限食の根幹にあるのは「小さな数の法則」(小紙12月6日号22ページ連載vol. 1参照)。食事療法による血糖コントロールは目標とする栄養素の摂取量以外の要因によっても影響を受け,その影響は栄養素の摂取量を多く設定するほど予測困難で制御しにくいものになる。したがって,食事療法による血糖コントロールをできるだけ予測可能で容易なものにするためには,糖質の摂取量は必要最小限に設定する方がよいとする考え方だ。では,具体的にはどのような要因が食事療法による血糖コントロールに影響を与えるのか。シリーズ3回目では,この点に関し,北里研究所病院糖尿病センター(東京都)の山田悟センター長が質問した。


血糖の日内変動は臨床家の基本知識

山田 先生は『バーンスタイン医師の糖尿病の解決』* の中で,血糖コントロールに影響を及ぼす種々の因子について解説しておられますね。

Bernstein 糖尿病患者さんが食後に高血糖を示すのは,食後におけるインスリン追加分泌が欠如しているか減弱しているからです。これはもちろん正しいのですが,追加分泌が減弱している機序を詳細に検討すると,膵β細胞のインスリン産生能そのものが低下しているケースもあれば,産生能は保たれているのに貯蔵ができていないというケースもあります。後者では,血糖値は既に低い状態にもかかわらず,不適切なインスリン分泌により血糖値がさらに低下するという事態が起こりえます。また,多くの糖尿病患者さんが血糖自己測定に慣れてくると,夜中に間食などしていないにもかかわらず,就寝時よりも起床時の血糖値が高いことに気付くようになります。これは,夜中に肝臓による糖新生が亢進していたり,早朝に肝臓によるインスリン不活化が高まったりする(暁現象)ためです。

このように,血糖値というものは食事あるいは治療とは関係なく変動する部分もあるということを,まず,全ての臨床家に基本的知識として知っておいてほしいと思います。

運動,ストレス,感染症なども血糖コントロールを左右

Bernstein 食事療法による血糖コントロールに影響を及ぼす因子の中で,比較的多くの患者さんに当てはまるものとしては運動,ストレス,感染症などが挙げられます。よく運動している患者さんが運動していない患者さんより血糖値が下がりやすいのは当然です。ストレスも血糖値に影響を及ぼしますが,これは,ストレスにさらされた患者さんは過食になったり,好きな食べ物ばかり食べるようになったりして,結局は食事療法そのものがうまくいかなくなるという二次的なものではないかと思っています。少なくともストレスそのものが血糖値を変動させるという科学的な根拠は今のところありません。ストレスというのは便利な言葉で,これまで血糖コントロールがうまくいかない患者さんに対し「ストレスのせいです」とごまかしてきた臨床家は少なくないと思います。大いに自省していただきたいですね。感染症も血糖に対するインスリンの効果を大きく減弱させる重要な要因です。感冒や外傷に伴う感染症なら気付きやすいのですが,その他,歯槽膿漏など慢性感染およびその急性悪化による影響などにも気を配っておく必要があります。

多くの糖尿病患者に認められる甲状腺機能の低下

山田 糖尿病患者さんでは甲状腺機能に異常があり,これは血糖コントロールというよりも,糖尿病の病態そのものにも関連することが指摘されています。

Bernstein 私の診ている糖尿病患者さんの85%は,私が最初に診た時点では甲状腺機能が低下していました。そうした患者さんは易疲労感などを訴えてクリニックを受診するのですが,検査してみるとかなり進行した糖尿病で,かつ甲状腺機能の低下が認められます。活性型の甲状腺ホルモン(トリヨードサイロニン:T3)と非活性型の甲状腺ホルモン(サイロキシン:T4)では,特に前者の低下が顕著です。T4の分子中にはヨードが4分子存在し,肝臓や腎臓でそのうちの1個が外れてT3になるのですが,糖尿病に伴い甲状腺機能の低下している人では,このT4からT3への変換がうまくいっていないわけです。また,通常の甲状腺機能低下症では,T3が低下するとその代償として甲状腺ホルモン分泌刺激ホルモン(TSH)が上昇しますが,糖尿病に伴う甲状腺機能の低下ではTSHは上昇しません。

糖尿病では,なぜ甲状腺機能の低下が起こるのでしょうか。その機序は不明ですが,これは人類が長い歴史の中で,飢餓に対する防御機構の一環として獲得してきたものだろうと考えています。甲状腺ホルモンには全身の細胞に作用し代謝率を高めるという働きがありますが,飢餓状態においては,代謝率は高いよりも低い方が生き延びるために好都合です。おそらく糖尿病になりやすい遺伝的素因の人は,甲状腺機能が低下しやすい遺伝的素因を持つ可能性も高いのだろうと思います。

実は私自身も若いころは甲状腺機能の低下に悩まされ,易疲労感や認知症のような頭がぼうっとした症状のために学業にも支障が出るほどでした。大学に入学した当初は物理学を専攻したのですが,同じクラスには,後にニュートリノに関する研究で高名な物理学者になる優秀な友人もいました。彼と競って物理学で功績を挙げるつもりでしたが,そのうち私の健康状態では彼に伍して学業を続けていくことは無理だと悟らざるをえませんでした。もちろん,自分で悟る以前に周囲や医師から,物理学者として生きていくことは諦めるよう勧められていたのですが。

私自身の甲状腺機能低下による症状は,その後,合成T3製剤のリオチロニンを補充することで劇的に改善しました。多くの内分泌科学者が,この治療はTSH抑制につながり,心疾患や骨粗鬆症を誘発するのでよくないといいます。しかし,その科学的エビデンスは現在に至るまでありません。また,私の経験ではT3およびT4を正常範囲の半ばを超えない程度にコントロールできている限り,TSH抑制が起こるということもありません。

もう1つ,あまりよく知られていない病態ですが,多嚢胞性卵巣症候群(polycystic ovarian syndrome;PCOS)にも注意していただきたいと思います。これは若い女性で男性ホルモンが増加しているときに起こるもので,月経異常や不妊などの症状を伴うとともにインスリン抵抗性を来します。血糖コントロール自体が困難というわけではありませんが,食事療法によっても減量効果が現れにくいのが特徴です。症状に対する治療法としては利尿薬のスピロノラクトンが有効とされてきましたが,私の経験ではメトホルミンも有効です。


*Bernstein氏の著書で1997年の初版発刊後,英語版は第4版まで版を重ねている。米国をはじめ世界的なベストセラーとなり,糖質制限食が一般にも知られるきっかけとなった。日本語版は小社より2005年に刊行され(国内初),現在「第3版日本語版」が最新刊となっている。
メディカルトリビューン発行 税別3,800円,販売:金芳堂



Profile of Dr. R. K. Bernstein/世界を旅して日蝕・月蝕を撮影
本編でも述べられているように,Bernstein氏は若かりしころ物理学者を志したほど物理学を愛好しており,現在でも宇宙・天文関係を中心に,その知識は専門家に引けを取らない。「もし物理学の道を歩んでいたら,糖質制限食を見いだす前に糖尿病で倒れていただろう」とはご本人の弁だが,糖質制限食を見いだすに至るまでの同氏の飽くなき探求心は,一時は物理学を究めようと決心していた科学者魂のたまものと考えられなくもない。

同氏の現在の趣味の1つは写真撮影で,日蝕や月蝕など,やはり宇宙・天文がらみの写真がクリニックの至る所に掲示されている。日蝕や月蝕を追っていると必然的に世界中を旅することになるが,糖尿病患者にとってやっかいなのが,時差に合わせてインスリン注射のタイミングを調節すること。同氏はこれに関しても身をもって最も適切な方法を考え出し,著書*の中で紹介している。



テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
オレンジページ最新号
www.orangepage.net/book/orp/new/130117_orp.html

「糖質オフのコツとレシピ」
2012/12/28(Fri) 18:01 | URL | 精神科医師A | 【編集
Re: オレンジページ最新号
精神科医師A さん

ますます、糖質制限食、広がってますね。
2012/12/28(Fri) 19:19 | URL | ドクター江部 | 【編集
検診日
こんばんは

江部先生のご提案で今回大福もち2個食べての検診でした。糖質は2個で約70グラムです。
結果は90分後の血糖値149mgでした。
糖質制限食を始めて現在5年9か月ですが、始めて2年~2年半位はご飯1膳食べての1時間後の血糖値は軽く200越えでしたが、3年位過ぎた頃から200以内に治まるようになってきました。
今回の結果はかなりβ細胞が元気になってきたようです。

平成19年3月に発覚した時の数値と、今回の数値を比較してみました。

       平成19年3月   平成24年12月
体重      68㌔        57㌔
血圧      95-156      60-126
HbA1c(JDS)   10.7 5.2
食後血糖値   389mg 149mg
尿糖      4+         -
尿タンパク    -          -
GOT 23 13
GPT     40          17
γ-GT      49         15
LDL     130         119
HDL     42          82
クレアチニン 0.82         0.77
シスタチンC             0.71
尿中アルブミン(補正値)       5.4

インスリン注射も薬もなしでしたから、改めて糖質制限食の効果をとても実感しています。
一般的なカロリー制限食して、注射か薬を飲んでいたらと思うとゾッとします。
8年前に亡くなった父は一生懸命カロリー制限食をやっていて、合併症が出ていましたので。
もう少し早く知っていれば教えられたのにと心残りです。

江部先生には大変感謝しております。
益々、糖質制限食が広がっていますし、一人でも多くの方が助かって欲しいですね。
2012/12/28(Fri) 21:52 | URL | モン吉 | 【編集
Re: 検診日
モン吉さん

素晴らしい成果ですね。

糖質70g食べても、食後90分血糖値が149mgとは、明らかに耐糖能が改善してます。
おめでとうございます。

HbA1c(JDS)   10.7 →  5.2 %
LDL    130 →  119mg/dl
HDL    42 →   82mg/dl

も見事です。
天晴れです。
2012/12/29(Sat) 10:17 | URL | ドクター江部 | 【編集
コメントを投稿
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可