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スエーデンのLCHF食事療法(糖質制限食)の情報、追加
こんばんは。

スエーデンの雪ん子さんから、スエーデンのLCHF食事療法(糖質制限食)の情報を再びコメントいただきました。

雪ん子さん、ありがとうございます。

カールスハムン・スタディー、スエーデン語ではなくて英文なので、何とか目を通してみます。

アニカ・ダールクヴィスト先生のお考えは、私達高雄病院の糖質制限食と基本的に同一ですね。心強いです。


カールスハムン・スタディー、6ヶ月目の要約を見てみましたが

糖質制限食(炭水化物20%、蛋白質30%、脂質50%)VS高炭水化物食(およそ炭水化物60%、蛋白質15%、脂質25%)

「糖質制限食は、2型糖尿病の肥満患者に効果的な方法である」

との結論でした。


江部康二


【2/12/14 雪ん子

LCHFとカールスハムン・スタディー

スウェーデンのLCHF食事療法を取り上げてくださってありがとうございます。少しでもお役に立てて嬉しいです。

長期的な臨床実験の事例が少ないと言われる糖質制限食ですが、スウェーデンでは『カールスハムン・スタディー(Karlshamns studien)』と呼ばれる臨床実験が有名で、これまでに何度も引用されています。

スウェーデン最南部に位置する人口31185人の港町、カールスハムン市が独自に研究者(ヨルゲン・ヴェスティ・ニールセンなど)に依頼する形で、糖質制限食(炭水化物20%、蛋白質30%、脂質50%)と高炭水化物食(およそ炭水化物60%、蛋白質15%、脂質25%)の2型糖尿病患者への効果を6ヶ月間調査しました。Lasting Improvement of Hyperglycaemia and Bodyweight: Low-carbohydrate Diet in Type 2 Diabetes. – A Brief Reportというタイトルの論文で2005年に結果が発表されています。

そして、22ヶ月後のフォローアップが2006年に、44ヶ月後のフォローアップが2008年に発表されました。その間に、最初のグループ分けで高炭水化物食を摂取していた人の半分以上が、糖質制限食に自主的に切り替えて成果を上げていたり、それぞれのグループでその後発症した疾病や死亡者についても報告されているようです。もうご存知かもしれませんが、下に論文のリンクを添付いたします(英語)。

Jørgen Vesti Nielsen, Eva Jönsson, Anna-Karin Nilsson, Lasting Improvement of Hyperglycaemia and Bodyweight: Low-carbohydrate Diet in Type 2 Diabetes. – A Brief Report, 2005.
http://fhskola.ltblekinge.se/download/18.483745d1110dfd532008000736/Lasting_Improvement.pdf

Jørgen Vesti Nielsen and Eva Joensson, Low-carbohydrate diet in type 2 diabetes. Stable improvement of bodyweight and glycemic control during 22 months follow-up, 2006.
http://www.biomedcentral.com/content/pdf/1743-7075-3-22.pdf

Jörgen V Nielsen and Eva A Joensson, Low-carbohydrate diet in type 2 diabetes: stable improvement of bodyweight and glycemic control during 44 months follow-up, 2008.
http://www.nutritionandmetabolism.com/content/5/1/14

ダールクヴィスト医師(おっしゃる通り、女性です)のブログで公開されている、カールスハムン・スタディーでの一日の平均的な栄養の内容です。この表でみると 体重60kgの女性の場合、体重1kgあたり2g近い蛋白質を摂取している計算だと、ブログには書かれていました。(スウェーデン語のままですみません。)

Genomsnitt per dag.

Kcal 1670

Protein 111g 27%

Fett 100g 53%(脂質)

Kolhydrater 80g 20%(炭水化物)

Fiber 25g

C-vitamin 135mg

Järn 12mg(鉄分)

Kalcium 835mg

tiamin 1,4mg
riboflavin 1,9mg

Rekv 3,34mg

d-vit 15,35 ug

e-vit 16mg

Niekv 46,3mg

B6 2,7mg

B12 10ug

Magn 302mg

Zink 10,8mg

Fola 409,9 ug

Sele 100,4ug


ダールクヴィストのLCHF食事療法では、糖尿病患者は一日の炭水化物摂取量を20g、そうでない人も30 - 40%に留めることを目安にしています。(バーンスタイン医師のメソッドも参照にしていました。)LCHFのモットーは、1、低炭水化物、2、自然の油分/脂肪分をもっと摂取、3、添加物や有害物質の入っていない食品(できるだけ有機栽培のオーガニック製品)を摂取だそうです。蛋白質は握りこぶし大の量を目安に、1日1、2度食べることを奨めていて、炭水化物に代わるエネルギー源には、江部先生と同じようにいい油をとるように指導しています。

ダールクヴィストも現代人のomega-6の過剰摂取を問題視しており、先日のコメントで少し書きましたが、コールドプレスのエクストラヴァージンオリーブオイルと、同じ方法で搾油したオーガニックの菜種(キャノーラ)油(スウェーデンの特産)を使うようにいっています。ただ、従来のセイヨウアブラナは有害なエルカ酸を含むので、長期的な健康への影響は不明だということです。また、オリーブオイルは体にいいとはいえ、産地が主に地中海周辺に限定されるので、 輸送にかかる二酸化炭素の排出量・フードマイル(Food Miles)を考慮すると、環境への配慮から多少消極的な奨め方になっています。

牧草や干し草を食べて育った乳牛や、自然の放し飼いで草を食べる鶏の卵は、ダールクヴィストの本によるとomega-3が豊富だそうです。(天然の魚はもちろんomega-3が豊富なのですが、養殖では穀物が飼料のベースなので、omega-6の割合が多いと、この本で知りました。) 同じ本では、ナチュラルチーズとバターは乳糖を含まないので、牛乳やヨーグルトに比べて減量に効果的だと書いてありました。(もちろん、一日の必要摂取カロリー内ですが。)

マーガリンは第二次世界大戦中に広まったバターの代用品で、化学的に生産されたものです。しかも減量のパーム油は成長が早く低コストなので多くの食品に使われていますが、熱帯雨林を大量に伐採して栽培されています。コレステロール神話が崩された現代では、こういう背景のマーガリンでなく積極的にバターを選ぶべきだとダールクヴィストは主張しています。牛乳や生クリームも高脂肪の製品を選び、肉を食べるときは周りの脂も一緒に食べるそうです。

公共放送のLCHF特集番組で調理指導をしていた人の話では、脂肪分は味が濃厚なので砂糖がなくても気持ちが満足しやすく、一度に大量に食べられないことも利点だそうです。

スウェーデンは冷凍食品や缶詰などを利用する人がとても多いのですが、LCHFでは添加物(特に旨味調味料)を避けることも重視されています。料理にかけるとろっとしたソースやドレッシングを家庭で作ることが奨められているので、生クリーム、サワークリーム、クリームチーズやブルーチーズを上手に利用するといいみたいです。(日本の家庭料理でも、バリエーションが広がるかと思います。)出来合いの食品といえば、こちらのソーセージは原料の半分近くが片栗粉で、添加物が何種類も入っています。そういう事情なので、肉類の加工品も中身に気をつけた方がいいそうです。

日本の糖質制限食とスウェーデンのLCHFでは食べるものが少し違うので、 また長くなりましたが、こちらに書き込みました。食材選びの幅が少しでも広がればと思います。】


テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
日本の有機野菜通販各社キャンペーン中
雪ん子さんのスウェーデン事情、またまた参考になりました。詳細なレポートに感謝いたします。

>体重1kgあたり2g近い蛋白質を摂取している計算

ここ興味深いです。犬の蛋白質の理想値が体重1kgにつき2〜3gと、各種犬の手作り食の本で読んでいました。スウェーデン式を参考にすると、犬に近い2gで大丈夫そうなんですね(人間より体重が軽いことにも関係があるのかもしれないですが)。

やっぱり犬と人間が共同生活をはじめたのは、肉食の犬(人間に合わせて犬は雑食にも適応してきましたが)と人間の食傾向が、そもそも古代にフィットしていた、つまり、元々人間が肉食であることの証拠の1つなのではないかな〜と私は常々感じています。

有機野菜のほうが、単一即席栽培の野菜より栄養価も高くて良さそうです。

日本では今、有機系野菜の通販が流行っていて、キャンペーンによる顧客争奪戦が激しい様子です。平飼い卵や放牧家畜など、こだわりの動物性蛋白質の取り扱いも豊富なようです。

大地を守る会、ビオ・マルシェ、らでぃっしゅぼーや、ミレー、オイシックス、生協のパルシステムの有機セットなどなど(まだ他にもあると思います)、どこも初回セットは1000円ほどでお試しできるとのことで、この機会に上手く利用法を模索してみようと思っています。

江部先生はビタミンやミネラルのサプリメントを使用せずとも、(激しいスポーツをするなどの特殊なケース以外では)食事のみで栄養をまかなえるという方法論でいらっしゃいますし、私ももう少し食材に凝ってみようと考え中です。

そうすると素材も高くなりますし・・・調理法も栄養価をなるべく落とさない方法にしなくてはと、例えば、丸元 淑生さんが著作で提案されていたビタクラフトを最近購入し、調理面を工夫してみなくちゃと模索中です。

それから、私は過去、好みで和風の味付けが多く、脂肪控えめな傾向へ繋がっていたかもしれないと思いました。西洋風の味付けも覚えると自然とこってりして良さそうです。
2012/12/14(Fri) 19:15 | URL | ロバート・ダウっ子 | 【編集
おもしろキャラ
江部先生、皆様、こんばんは、お疲れ様です。

先日テレビ東京の健康バラエティー番組「主治医が見つかる診療所」で、糖質制限食をやってました。
南雲ドクターもレギュラーのお一人ですので、以前も糖質制限の内容をやってます(そういえば、お二人共糖質制限的な本を出されていますよね。読んでいないので内容はわかりませんが)

今回は中村医師(すみません、フルネームやご専門を忘れました)が確か10年来糖質制限を実践して、体脂肪率8%を保っているということでした。
朝は水のみ。昼は愛妻弁当。野菜中心でアボカドやお惣菜で糖質30g位。夜(撮影では居酒屋)は焼酎と、醤油をかけない冷や奴、ステーキなど。
塩分をとても控えてる、ちょっとカロリー少なそう?、昼に野菜ドッサリ以外は、中村医師の仰る言葉もスーパー糖質制限でした。

ただ、番組では南雲ドクターも中村医師も「おもしろキャラ」扱いで意気統合(ストイックすぎと思われるのかも)、糖質制限食も糖尿病ではなくダイエットやメタボ予防の為であり、他の出演医師はやはり「食事はバランスよく」が基本、という内容です。

おもしろキャラでも、糖質制限の理解が広まるのはいいですけど。
まだまだ一般的には「ダイエット・メタボ予防」のひとつの選択肢、でしょうか。
江部先生にビデオインタビューでいいから出演して欲しかったです(笑)
「おもしろキャラ」はどうかと思いますが。
(^。^;)
2012/12/14(Fri) 19:55 | URL | もんたろ | 【編集
Re: 追記で・・
ロバート・ダウっ子 さん。

副腎皮質ステロイドホルモン注射薬でも、
まれに、それに含まれている防腐剤や添加物で、アレルギーを起こすことがあります。

ステロイドそのものは人体に普通にあるものですので、アレルギーを起こすことはありませんので
犯人は添加物ということになります。
2012/12/14(Fri) 20:02 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: おもしろキャラ
もんたろ さん

きっと私の友人の「中村巧」先生と思います。

整形外科の先生です。

1000人以上のメタボ人に糖質制限食を指導され、画期的な効果をあげておられます。
2012/12/14(Fri) 20:05 | URL | ドクター江部 | 【編集
CNNニュースから
“給食から消えた「不健康」メニュー、生徒の要望で復活 米”

学校給食のカロリー制限や野菜などの摂取を義務付けた米政府の新規定に対し、好物を食べられなくなった児童や生徒から不満が噴出している。
こうした声に押されて政府はこのほど、規定の一部改定に踏み切った。
今年度から導入された学校給食規定では、スパゲティとミートボールにガーリックブレッドといった組み合わせは穀物類が多すぎるという理由で禁止される。グリルチキンサンドにセロリスティック、ディップソースとなるピーナツバターを添える献立も、タンパク質の摂取過剰になるとして認められない。

この規定に反発してカンザス州の生徒が制作した「ウィ・アー・ハングリー(お腹が空いた)」という動画は、空腹で倒れてみせる生徒たちの演技が話題になり、動画共有サイトで100万回以上再生されている。

今回の改訂により、ガーリックブレッドやピーナツバターなどが給食のプレートに戻ってきそうだ。

フロリダ州マナティ郡の栄養責任者サンドラ・フォード氏も、ピーナツバターとジャムのサンドイッチについて、これまでの規定では政府が定めた穀物摂取の許容量をパンが超えてしまうため中止しなければならなかったと語る。
子どもたちが食べたがって「泣いたこともあった」と話した。
ただし、改訂後の規定でも、カロリー制限には従う必要があり、野菜や果物を出すことも義務付けられる。

(´⌒`)
日本でも子どもたちの好みに合わせたりして給食が偏っているみたいですね(もちろん糖質過多)。
子どもの頃から食育したら、ほとんどの健康問題(精神・神経からくる社会問題も)が解決しそうです。
厚生労働省が理解してくれたらなぁ。
江部先生が厚労省参謀になってくだされば(笑)。
2012/12/14(Fri) 20:26 | URL | もんたろ | 【編集
添加物・・、、、
江部先生 お返事ありがとうございました。

そうだったんですね・・きっと分る方にはピンと来る話なのですね。ちなみにアレルギー科では夏で体力が落ち、ナマモノにあたったのだろうと結論付けられていました。

添加物・・今後もあまり神経質になるつもりはないのですが、やっかいなものみたいですね、、、

これを機に少し気をつけてみようと思います・・(きっとそもそも気をつけているべきことだったようにも思います、、雪ん子さんの記載にもありますが、そもそも糖質制限10箇条にも入っていますよね・・)

自分に実害が出てびっくりした事件でした。
2012/12/14(Fri) 20:35 | URL | ロバート・ダウっ子 | 【編集
学校給食の実際
小学校の教師です。糖質セイゲニストとしては新参ですが、約1ヶ月実践しています。その中で給食を改めて振り返ると、何と給食は炭水化物に偏っているかわかります。例えば、焼きそばにデニッシュとかうどんにパンとかが平気で出ます。成分分析表でみると、糖質の合計が100g簡単にいきます。そして食育とかいうわけですから呆れてしまいます。先日、市の給食担当者会議に行ってきました。そこで担当の管理栄養士に献立について質問しましたが、答えは給食センターの施設の問題だとしかいいません。僕が質問したらやっぱり他の学校でもこの炭水化物づくしはおかしいと思っているようでその後いろいろ意見が出ていました。糖質過剰摂取の時代にさらに追い打ちをかける学校給食のあり方はこれからさらに問題になるのではないかと思います。分掌で担当者になりましたが、これからも自分の糖質制限だけではなく、給食の糖質制限についても考えていきたいと思います。
2012/12/15(Sat) 07:00 | URL | denzoumorizou | 【編集
Re: おもしろキャラ
「兵庫県川西市にある、中村整形外科リハビリクリニック院長、中村巧医師」

www.tv-tokyo.co.jp/shujii/backnumber/121210/index.html
2012/12/15(Sat) 08:53 | URL | 精神科医師A | 【編集
>denzoumorizouさん、現場の先生方ががんばってくださるとうれしいです。保護者も糖質の問題に気づいていくといいですね。応援します。

給食が気になっていたので、おもわず、こめんとしました。
2012/12/15(Sat) 09:36 | URL | hikidashi | 【編集
Re: 学校給食の実際
 学校給食は食事摂取基準(2010)にもとづいてます。2012年7月5日~6日のblogをご覧ください

 炭水化物の目標量は50%E以上70%E未満とありますが、「十分な根拠はない」と明記されています

 つまり必要なcal/dayを求め、蛋白質と脂肪の摂取量を決め、残りの不足calを炭水化物で補うというやり方です

 そして、炭水化物の摂取量が100g/day以下になっても糖新生が行われると明記されています

 必須アミノ酸と必須脂肪酸は摂取しなければならないが、糖質は必須でないという前提にたっています。
2012/12/15(Sat) 11:44 | URL | 精神科医師A | 【編集
Re: Re: 学校給食の実際
精神科医師A さん。

コメントありがとうございます。
2012/12/15(Sat) 15:47 | URL | ドクター江部 | 【編集
選挙に行こう
江部先生、精神科医A様、中村先生を教えてくださりありがとうございます。
中村先生、失礼な物言い、申し訳ございません;
視聴者として、楽しい内容でした!

給食については、以前テレビで特集していて、その中ではあまりにヒドいメニューで驚いた事があります。
炭水化物on炭水化物+デザートのみ、とかのオンパレード。
メニューを作った管理栄養士さんにインタビューしたら「こうしないと食べてくれない。必要なカロリーをとるためには仕方ない」とか言ってました。

そう言えば、今は小学生の女の子も「痩せたい」と、家族とは違うメニュー(たんぱく質や脂肪も減らす)を食べていたりして、家族も黙認してたりするんですね。
私も子供の頃から小太りで、食事を減らしたりしていましたが、まず良いことは無いです(悲)
2012/12/16(Sun) 01:19 | URL | もんたろ | 【編集
Re: 学校給食の実際
denzoumorizou さん

ご指摘通り
学校給食の炭水化物過剰は、おおいに問題ですね。
簡単には変わらないと思いますが、
現場の地道な声が行政を動かすことを願います。
2012/12/16(Sun) 09:46 | URL | ドクター江部 | 【編集
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