2012年12月10日 (月)
こんばんは。
医師のための情報専門サイト MT Pro で興味深い連載が始まりました。
北里研究所病院糖尿病センターの山田悟センター長が、バーンスタイン医師(1型糖尿病)にインタビューした記事が連載で載る予定です。
今回は連載開始の第一回目です。
バーンスタイン医師は、本ブログでも何回か紹介しました。
12才で1型糖尿病を発症されて、インスリン注射を開始。
氏の内因性インスリン分泌はゼロです。
1970年代から朝6g、昼12g、夕12gの糖質制限食を開始され、
糖尿病腎症第3期Aから回復し、データは全て正常化。
2012年現在まで続けてこられて、健康を保っておられます。
江部康二
thttp://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtnews/2012/M45490221/
以下MT Pro から 一部を転載
[2012年12月6日(VOL.45 NO.49) p.22]
シリーズ糖尿病 vol.1 食事療法としての糖質制限食
糖質制限食の生みの親 R.K.Bernstein 氏に聞く
「糖質制限食」の定義と誕生の背景
R.K.Bernstein 氏
ママロネックのクリニックにて
糖尿病の食事療法として糖質制限食1) が注目されている。これまでの主流であったカロリー制限食に比べて,糖質制限食は減量効果において遜色なく,血糖コントロール効果においては優れるとされる。こうしたエビデンスの蓄積に伴い,米国糖尿病学会(ADA)では2008年の“Nutrition Position Statement”で初めて,カロリー制限食とともに糖質制限食を食事療法の選択肢として承認した2) 。わが国でも糖質制限食を高く評価する専門家は少なくなく,正式な食事療法として採択すべきか否かの議論が始まっている。そこで,4回連載企画として,糖質制限食の生みの親であり,その有効性を説いた書『糖尿病の解決(Diabetes Solution)』(日本語版:小社刊)がロングセラーになっている米国のRichard K. Bernstein氏にインタビューし,糖質制限食の実際について聞いた。聞き手は,食事療法に造詣が深く,糖質制限食にも強い関心を寄せている北里研究所病院(東京都)糖尿病センターの山田悟センター長にお願いした。
最も厳格には朝食6g,昼食12g,夕食12g,計1日30gを提唱
山田 糖質制限食の有効性について議論する際に,いつも問題だと考えているのは,その定義が明確でなく,研究者により異なることです。本シリーズの初めに,Bernstein先生ご自身は糖質制限食をどう定義されておられるのか,お聞きしたいと思います。
Bernstein 『糖尿病の解決』の中で私は,糖質の摂取量を朝食で6g,昼食で12g,夕食で12g,計1日30gを糖質制限食の指針として提示しています。小児の場合は,これよりもさらに少なくなります。成人で1日30gの摂取量というのは,これまでに提唱されている指針の中では最も少なく,厳しいものだと思います。
この指針は研究としてではなく,1型糖尿病患者としての私自身の経験から導き出したものです。私は1970年代から血糖自己測定を繰り返し,血糖値とインスリン注射量の相関を詳細に記録しつつ,どうしたら最も効果的かつ安全に血糖値を正常範囲まで下げられるかを模索していました。そして,たどり着いた結論が,上記の糖質摂取量だったのです。もちろん,摂取量をもっと多くしても,インスリン注射量を増やせば,血糖値を正常に保つことは可能ですが,血糖値の変動が大きくなり,インスリン注射量が多過ぎて低血糖を起こすなど,安定して血糖値を正常範囲に保つのは難しくなります。血糖値を安定して正常範囲に保つためには,血糖値の予測が容易でなければならず,そのためには糖質摂取量を可能な限り低く抑えることが最良の方法と考えています。私はこれを「小さな数の法則」と名付け,私の患者さんに,まず,知ってもらうようにしています。
私の糖質制限食の指針は1型糖尿病患者としての自分の経験から導き出したものですから,2型糖尿病患者さんの場合は,もう少し考慮すべきことがあるかもしれません。しかし,この指針は原則的には2型糖尿病患者さんにも適応してよいと考えていますので,私の患者さんには治療の初めから推奨しています。
糖質の最小摂取量というものはない
山田 そこまで糖質の摂取量を制限すると,逆にそのことによる健康被害は出ないのだろうかと考える人が多いのではないかと思うのですが。
Bernstein 確かに懸念を口にする人はいますが,私がそうした人たちにいつも言うのは,私たちの先祖の食生活を想像してみようということです。人類が農耕生活を開始したのは人類史的には比較的最近の,わずか1万年ほど前です。それ以前の人類の食物といえば肉や魚や鳥,爬虫類,昆虫などで,後は木の根や葉といったものだったでしょう。つまり,蛋白質や脂肪が主で,炭水化物は非常に少なかった。野菜や果物もあったでしょうが,そうしたものの栽培はまだ始まっていませんから,大量に摂取することはない。つまり,糖質にはアクセスしようがないから,最小限にしか摂取できない。では,この時代の人たちに何か健康被害があったでしょうか。もちろん,当時は飢餓の時代でもありますから,栄養不足で死んでいく人たちはたくさんいたでしょうが,それは蛋白質不足のせいで糖質不足のせいではありません。この時代の人たちが最も怖れていたのは必須アミノ酸を含む蛋白質が摂取できなくなることで,糖質ではなかったのです。
山田 仮に食物から糖質を全く摂取しなかったとしても,ヒトには糖新生という機能がありますので,蛋白質などから糖質をつくり出します。ですから血糖値が全くゼロになるということはないので,健康維持ということだけでいえば,理論的には食物からの糖質摂取量はゼロでもいいということになりますね。
ジャングルの暮らしで糖尿病が治癒
Bernstein 南アフリカのジャングルに生まれた人たちに関する20年ほど前の研究があるのですが,ケープタウンに出稼ぎに来た彼らのほとんどが急速に肥満になり糖尿病を発症しました。しかし,彼らに生活の保障をしてやり,もう一度ジャングルへ戻ってもらったところ,1年もたたずに肥満は解消し,糖尿病も治癒しました。何が変わったか。観察者によると,ジャングルに戻ってからの彼らの食生活が元に戻ったそうです。つまり,ケープタウンではパンが主食になっていたのが,以前のように昆虫や亀などを採取し食べるようになった。もちろん,昆虫や亀などですから,大量に取って一時に食べるということもしない。おそらく,彼らが昆虫や亀などを食べた後に血糖値を測定してもほとんど上昇は認められなかったでしょう。それで,彼らに新しい健康被害が発生したかというと,そういうこともなかった。
翻って現代人の食事を考えてみますと,糖質摂取量の多さは異常です。例えば,主食になっている全粒粉パンを一切れ食べて咀嚼した後,尿糖値を測定するスリップに吐き出すと,一瞬にして黒く変色します。つまり,唾液中のアミラーゼによって,全粒粉パンは速やかに糖分に変換されているわけです。こうした食事は食後血糖値を非常に高めますので,それだけインスリン分泌も亢進します。この繰り返しが膵臓を疲弊させ,もともとは健康であった人を2型糖尿病の発症へと誘います。ですから,私は2型糖尿病の患者さんの場合も,少なくとも食後血糖値を上昇させないということを目安として,1型糖尿病患者さんに準じた糖質制限食による食事療法を実施すべきであると考えています。
1)糖質制限食は英語では“low-carbohydrate diet”。わが国では同じ意味で低炭水化物食という言葉がよく使われている。厳密には炭水化物は糖質と食物繊維を含んでいるので,低炭水化物食というと食物繊維も制限すべきという意味になってしまう
2)糖質制限食・カロリー制限食ともに体重減量についてその有効性が認められた
Profile of Dr. R.K.Bernstein/血糖自己測定が転機に
Bernstein氏は1934年に生まれ,12歳で1型糖尿病を発症し,当時の医学常識に従い低脂肪・高炭水化物食による食事療法とインスリン注射を中心の治療を続けていた。しかし,血糖コントロール状態は全く改善せず,20歳を過ぎるころからは腎結石,肩関節の拘縮,感覚鈍麻を伴う進行性の足の変形,高蛋白尿症など,さまざまな合併症も出現した。大学では工学を専攻したが,級友の1人から腎臓病の妹が亡くなる直前,浮腫により風船のように膨らんでいたという話を聞かされ,やがて自分もそうなるという悪夢に悩まされる日々であったという。
突然の転機が訪れたのは1969年。たまたま目にした検査機器メーカーの広報誌により,開発されたばかりの血糖自己測定器を知る。当時医師ではなかった同氏は医師として働いていた妻にその機器を購入してもらい,血糖自己測定を繰り返し,血糖値と食事内容,インスリン注射量との関連について検討を重ね,やがて,血糖コントロール状態を悪化させている元凶が低脂肪・高糖質食であることに思い至る。そして,同氏が最も効果的かつ安全に血糖コントロールが得られる方法として見いだしたのが,独自の糖質制限食であったという。しかし,同氏が考案した方法を医学界に伝える手段は限られ,わずかのチャンスも受け入れられることはなかった。
1979年,同氏は意を決しアルバート・アインシュタイン医科大学に入学。卒業後は医師の立場から,自らの糖質制限食の啓発を続けている。
医師のための情報専門サイト MT Pro で興味深い連載が始まりました。
北里研究所病院糖尿病センターの山田悟センター長が、バーンスタイン医師(1型糖尿病)にインタビューした記事が連載で載る予定です。
今回は連載開始の第一回目です。
バーンスタイン医師は、本ブログでも何回か紹介しました。
12才で1型糖尿病を発症されて、インスリン注射を開始。
氏の内因性インスリン分泌はゼロです。
1970年代から朝6g、昼12g、夕12gの糖質制限食を開始され、
糖尿病腎症第3期Aから回復し、データは全て正常化。
2012年現在まで続けてこられて、健康を保っておられます。
江部康二
thttp://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtnews/2012/M45490221/
以下MT Pro から 一部を転載
[2012年12月6日(VOL.45 NO.49) p.22]
シリーズ糖尿病 vol.1 食事療法としての糖質制限食
糖質制限食の生みの親 R.K.Bernstein 氏に聞く
「糖質制限食」の定義と誕生の背景
R.K.Bernstein 氏
ママロネックのクリニックにて
糖尿病の食事療法として糖質制限食1) が注目されている。これまでの主流であったカロリー制限食に比べて,糖質制限食は減量効果において遜色なく,血糖コントロール効果においては優れるとされる。こうしたエビデンスの蓄積に伴い,米国糖尿病学会(ADA)では2008年の“Nutrition Position Statement”で初めて,カロリー制限食とともに糖質制限食を食事療法の選択肢として承認した2) 。わが国でも糖質制限食を高く評価する専門家は少なくなく,正式な食事療法として採択すべきか否かの議論が始まっている。そこで,4回連載企画として,糖質制限食の生みの親であり,その有効性を説いた書『糖尿病の解決(Diabetes Solution)』(日本語版:小社刊)がロングセラーになっている米国のRichard K. Bernstein氏にインタビューし,糖質制限食の実際について聞いた。聞き手は,食事療法に造詣が深く,糖質制限食にも強い関心を寄せている北里研究所病院(東京都)糖尿病センターの山田悟センター長にお願いした。
最も厳格には朝食6g,昼食12g,夕食12g,計1日30gを提唱
山田 糖質制限食の有効性について議論する際に,いつも問題だと考えているのは,その定義が明確でなく,研究者により異なることです。本シリーズの初めに,Bernstein先生ご自身は糖質制限食をどう定義されておられるのか,お聞きしたいと思います。
Bernstein 『糖尿病の解決』の中で私は,糖質の摂取量を朝食で6g,昼食で12g,夕食で12g,計1日30gを糖質制限食の指針として提示しています。小児の場合は,これよりもさらに少なくなります。成人で1日30gの摂取量というのは,これまでに提唱されている指針の中では最も少なく,厳しいものだと思います。
この指針は研究としてではなく,1型糖尿病患者としての私自身の経験から導き出したものです。私は1970年代から血糖自己測定を繰り返し,血糖値とインスリン注射量の相関を詳細に記録しつつ,どうしたら最も効果的かつ安全に血糖値を正常範囲まで下げられるかを模索していました。そして,たどり着いた結論が,上記の糖質摂取量だったのです。もちろん,摂取量をもっと多くしても,インスリン注射量を増やせば,血糖値を正常に保つことは可能ですが,血糖値の変動が大きくなり,インスリン注射量が多過ぎて低血糖を起こすなど,安定して血糖値を正常範囲に保つのは難しくなります。血糖値を安定して正常範囲に保つためには,血糖値の予測が容易でなければならず,そのためには糖質摂取量を可能な限り低く抑えることが最良の方法と考えています。私はこれを「小さな数の法則」と名付け,私の患者さんに,まず,知ってもらうようにしています。
私の糖質制限食の指針は1型糖尿病患者としての自分の経験から導き出したものですから,2型糖尿病患者さんの場合は,もう少し考慮すべきことがあるかもしれません。しかし,この指針は原則的には2型糖尿病患者さんにも適応してよいと考えていますので,私の患者さんには治療の初めから推奨しています。
糖質の最小摂取量というものはない
山田 そこまで糖質の摂取量を制限すると,逆にそのことによる健康被害は出ないのだろうかと考える人が多いのではないかと思うのですが。
Bernstein 確かに懸念を口にする人はいますが,私がそうした人たちにいつも言うのは,私たちの先祖の食生活を想像してみようということです。人類が農耕生活を開始したのは人類史的には比較的最近の,わずか1万年ほど前です。それ以前の人類の食物といえば肉や魚や鳥,爬虫類,昆虫などで,後は木の根や葉といったものだったでしょう。つまり,蛋白質や脂肪が主で,炭水化物は非常に少なかった。野菜や果物もあったでしょうが,そうしたものの栽培はまだ始まっていませんから,大量に摂取することはない。つまり,糖質にはアクセスしようがないから,最小限にしか摂取できない。では,この時代の人たちに何か健康被害があったでしょうか。もちろん,当時は飢餓の時代でもありますから,栄養不足で死んでいく人たちはたくさんいたでしょうが,それは蛋白質不足のせいで糖質不足のせいではありません。この時代の人たちが最も怖れていたのは必須アミノ酸を含む蛋白質が摂取できなくなることで,糖質ではなかったのです。
山田 仮に食物から糖質を全く摂取しなかったとしても,ヒトには糖新生という機能がありますので,蛋白質などから糖質をつくり出します。ですから血糖値が全くゼロになるということはないので,健康維持ということだけでいえば,理論的には食物からの糖質摂取量はゼロでもいいということになりますね。
ジャングルの暮らしで糖尿病が治癒
Bernstein 南アフリカのジャングルに生まれた人たちに関する20年ほど前の研究があるのですが,ケープタウンに出稼ぎに来た彼らのほとんどが急速に肥満になり糖尿病を発症しました。しかし,彼らに生活の保障をしてやり,もう一度ジャングルへ戻ってもらったところ,1年もたたずに肥満は解消し,糖尿病も治癒しました。何が変わったか。観察者によると,ジャングルに戻ってからの彼らの食生活が元に戻ったそうです。つまり,ケープタウンではパンが主食になっていたのが,以前のように昆虫や亀などを採取し食べるようになった。もちろん,昆虫や亀などですから,大量に取って一時に食べるということもしない。おそらく,彼らが昆虫や亀などを食べた後に血糖値を測定してもほとんど上昇は認められなかったでしょう。それで,彼らに新しい健康被害が発生したかというと,そういうこともなかった。
翻って現代人の食事を考えてみますと,糖質摂取量の多さは異常です。例えば,主食になっている全粒粉パンを一切れ食べて咀嚼した後,尿糖値を測定するスリップに吐き出すと,一瞬にして黒く変色します。つまり,唾液中のアミラーゼによって,全粒粉パンは速やかに糖分に変換されているわけです。こうした食事は食後血糖値を非常に高めますので,それだけインスリン分泌も亢進します。この繰り返しが膵臓を疲弊させ,もともとは健康であった人を2型糖尿病の発症へと誘います。ですから,私は2型糖尿病の患者さんの場合も,少なくとも食後血糖値を上昇させないということを目安として,1型糖尿病患者さんに準じた糖質制限食による食事療法を実施すべきであると考えています。
1)糖質制限食は英語では“low-carbohydrate diet”。わが国では同じ意味で低炭水化物食という言葉がよく使われている。厳密には炭水化物は糖質と食物繊維を含んでいるので,低炭水化物食というと食物繊維も制限すべきという意味になってしまう
2)糖質制限食・カロリー制限食ともに体重減量についてその有効性が認められた
Profile of Dr. R.K.Bernstein/血糖自己測定が転機に
Bernstein氏は1934年に生まれ,12歳で1型糖尿病を発症し,当時の医学常識に従い低脂肪・高炭水化物食による食事療法とインスリン注射を中心の治療を続けていた。しかし,血糖コントロール状態は全く改善せず,20歳を過ぎるころからは腎結石,肩関節の拘縮,感覚鈍麻を伴う進行性の足の変形,高蛋白尿症など,さまざまな合併症も出現した。大学では工学を専攻したが,級友の1人から腎臓病の妹が亡くなる直前,浮腫により風船のように膨らんでいたという話を聞かされ,やがて自分もそうなるという悪夢に悩まされる日々であったという。
突然の転機が訪れたのは1969年。たまたま目にした検査機器メーカーの広報誌により,開発されたばかりの血糖自己測定器を知る。当時医師ではなかった同氏は医師として働いていた妻にその機器を購入してもらい,血糖自己測定を繰り返し,血糖値と食事内容,インスリン注射量との関連について検討を重ね,やがて,血糖コントロール状態を悪化させている元凶が低脂肪・高糖質食であることに思い至る。そして,同氏が最も効果的かつ安全に血糖コントロールが得られる方法として見いだしたのが,独自の糖質制限食であったという。しかし,同氏が考案した方法を医学界に伝える手段は限られ,わずかのチャンスも受け入れられることはなかった。
1979年,同氏は意を決しアルバート・アインシュタイン医科大学に入学。卒業後は医師の立場から,自らの糖質制限食の啓発を続けている。
私は、
朝:オリーブ油入りトマトジュースで、6g。
昼:豆腐、卵、…、6~10g。
夜:8~18g。
深夜:赤ワインで、3g、おつまみで、6~12g
上限を摂ると、ちょっとヤバイですね。
それにしても、緩やかな糖質制限の山田先生がインタビュア、ちょっと驚きです。
朝:オリーブ油入りトマトジュースで、6g。
昼:豆腐、卵、…、6~10g。
夜:8~18g。
深夜:赤ワインで、3g、おつまみで、6~12g
上限を摂ると、ちょっとヤバイですね。
それにしても、緩やかな糖質制限の山田先生がインタビュア、ちょっと驚きです。
2012/12/10(Mon) 18:05 | URL | 北九州 三島 | 【編集】
江部先生こんばんは。
大酒のみのリハ医、人体実験と称してスーパー糖質制限をしているヘルミです。
Bernstein先生のおっしゃっていることは、江部先生がずっとお書きになってきたことと同じですね、
文庫版の御著書、さっそく購入しました。
さて、最近経験した症例をご報告したいと思います。軽度の意識障害で錯乱した76歳の患者さんが運ばれてきました。血糖値45で、補正で改善しました。
近医からアクトス2T朝1回、オイグルコン2T朝・夕、ベイスン(0.3)3T各食前で処方されていました。本人が正気づいてから「夕べ何を召し上がりました?」と聞くと、魚の煮つけをつまみに焼酎を飲んで、主食は摂らなかった、とのお答え。
プチ糖質制限にオイグルコン・ベイスン併用では低血糖にもなるでしょう。せっかくの機会なのでご家族を呼んで、糖尿病のメカニズムと糖質制限について説明しました。結局、妻は「難しいことはわからないから」と夕飯に白米を食べさせることを選択し、オイグルコンを朝・昼で服用するよう変更しました(惜しい!でも低血糖の方がこわい・・・)。
しかし、一緒に聞いてもらった嫁の話では、息子さんがやはり糖尿病予備軍といわれているとのこと。是非糖尿病の治療を受ける前に糖質制限を試すように勧めました。76歳の患者さんの息子ですから、50歳台と思われます。人生これからです。ヘルミの人体実験が人様の役に立つかも知れないです。
ずっと以前、寝たきりの経管栄養患者の肥満対策に低糖質の経管栄養剤の相談をさせていただきましたが、そのとき選択したプルモケアは、どうにもこうにもインスリンで調節困難だった糖尿病もちの経管栄養患者複数名で著効しております(減量にはいまいちですが)。一例は経口血糖下降薬も不要となりました。同じ悩みを持つ医師の方にもお勧めします。現在脂肪肝にも有効か、患者さんに協力いただいてためしているところです。
最近は先生の御本をはじめ、糖質制限に関する本がどこでも手に入るようになり、心強く感じます。
しかし、これだけ糖質制限が普及してくると、「糖尿病の教育入院と称して入院させているのに、何だこの糖質だらけの給食は!!!」と怒り出す方がきっと出ますよね。でも給食で糖質制限をするとなると、コストがかかるでしょうね・・・豆腐だらけになりそう。
「高尾病院の糖質制限給食」購入して読ませていただきましたが、あんな豪華な給食のコストをいかがされているのでしょう?
日本糖尿病学会がなかなか糖質制限に良い顔をしないのも、そこらへんにあるのではないでしょうか。
できればそこのところのノウハウも教えていただけると、病院でも普及するのではないかと愚考します。
寒くなりましたが、お風邪など召されませんように(・・・って、糖質制限者は大丈夫そうですね)。
大酒のみのリハ医、人体実験と称してスーパー糖質制限をしているヘルミです。
Bernstein先生のおっしゃっていることは、江部先生がずっとお書きになってきたことと同じですね、
文庫版の御著書、さっそく購入しました。
さて、最近経験した症例をご報告したいと思います。軽度の意識障害で錯乱した76歳の患者さんが運ばれてきました。血糖値45で、補正で改善しました。
近医からアクトス2T朝1回、オイグルコン2T朝・夕、ベイスン(0.3)3T各食前で処方されていました。本人が正気づいてから「夕べ何を召し上がりました?」と聞くと、魚の煮つけをつまみに焼酎を飲んで、主食は摂らなかった、とのお答え。
プチ糖質制限にオイグルコン・ベイスン併用では低血糖にもなるでしょう。せっかくの機会なのでご家族を呼んで、糖尿病のメカニズムと糖質制限について説明しました。結局、妻は「難しいことはわからないから」と夕飯に白米を食べさせることを選択し、オイグルコンを朝・昼で服用するよう変更しました(惜しい!でも低血糖の方がこわい・・・)。
しかし、一緒に聞いてもらった嫁の話では、息子さんがやはり糖尿病予備軍といわれているとのこと。是非糖尿病の治療を受ける前に糖質制限を試すように勧めました。76歳の患者さんの息子ですから、50歳台と思われます。人生これからです。ヘルミの人体実験が人様の役に立つかも知れないです。
ずっと以前、寝たきりの経管栄養患者の肥満対策に低糖質の経管栄養剤の相談をさせていただきましたが、そのとき選択したプルモケアは、どうにもこうにもインスリンで調節困難だった糖尿病もちの経管栄養患者複数名で著効しております(減量にはいまいちですが)。一例は経口血糖下降薬も不要となりました。同じ悩みを持つ医師の方にもお勧めします。現在脂肪肝にも有効か、患者さんに協力いただいてためしているところです。
最近は先生の御本をはじめ、糖質制限に関する本がどこでも手に入るようになり、心強く感じます。
しかし、これだけ糖質制限が普及してくると、「糖尿病の教育入院と称して入院させているのに、何だこの糖質だらけの給食は!!!」と怒り出す方がきっと出ますよね。でも給食で糖質制限をするとなると、コストがかかるでしょうね・・・豆腐だらけになりそう。
「高尾病院の糖質制限給食」購入して読ませていただきましたが、あんな豪華な給食のコストをいかがされているのでしょう?
日本糖尿病学会がなかなか糖質制限に良い顔をしないのも、そこらへんにあるのではないでしょうか。
できればそこのところのノウハウも教えていただけると、病院でも普及するのではないかと愚考します。
寒くなりましたが、お風邪など召されませんように(・・・って、糖質制限者は大丈夫そうですね)。
2012/12/10(Mon) 18:31 | URL | ヘルミ | 【編集】
とても興味深い記事をありがとうございました。Bernstein氏は糖尿病性腎症から、糖質制限で回復されたのですね。私の母は、糖尿病ではありませんが、高血圧からくる慢性腎臓病と診断され、この夏からタンパク制限しています。一日40gのタンパク質では栄養不足にならないかと心配します。Bernstein氏はタンパク質も制限しながら、糖質制限食で回復したのでしょうか。糖質量は分かりましたが、具体的にどんな食事をしているのか、とても知りたいです。
(江部先生、先だっては名古屋の漢方の先生をご紹介下さりありがとうございました。頑張って通院しています。)
(江部先生、先だっては名古屋の漢方の先生をご紹介下さりありがとうございました。頑張って通院しています。)
はじめまして。
人づてに低糖質制限食を教わり、10月末より実践しています。私はスウェーデンに住んでおり、日本と同じような豆腐やおからの料理が出来ないので、こちらの食材で続けられるレシピをネットで検索していたところ、LCHF(Low Carb High Fat)と呼ばれる、スウェーデンのアニカ・ダールクヴィスト医師が提唱し始めた食事療法に行き当たりました。江部先生のように「低糖質」と細かく限定していませんが、砂糖と炭水化物を押さえて血糖値を上げないことで、2型糖尿病と肥満(およびメタボリックシンドローム)の解消を目指しています。
ダールクヴィストは1型糖尿病を患っており、スウェーデンでは一般的な保健所の医師として勤務していました。2004年に、医学部で学ぶ娘さんが学部の課題として2週間実践した低炭水化物食を知ったそうです。これまでご本人が全く減量できなかったのに見るまに痩せたことや、それにともなって長年不調だった腸の調子が良くなり(スウェーデン人に多いそうです)、関節炎や頭痛がなくなり精神的に上向きになるということを身をもって体験したことで、保健所の診察にやってくる2型糖尿病患者や肥満に悩む人に、このLCHF食事療法の指導を始めたそうです。
しかし、 これまで提唱されていたものとは正反対の食事療法なので、 日本の現状と同じようにこれを危惧する人がいて、社会庁( Socialstyrelsen)に栄養士2名がダールクヴィストを通報したそうです。食品衛生局(Livsmedelsverket) の目安では、炭水化物の摂取量は全体の食事の60%です。ダールクヴィストの食事指導が間違っていると判断された場合には医師免許の剥奪もあり得るという事態になり、社会庁がスウェーデンの糖尿病の権威クリスチャン・バーネ教授に調査を依頼しました。これが2005年のことでした。2007年12月に提出されたバーネ教授の調査報告で、長期的な結果がまだ科学的に出ていないものの、科学的な見解に基づいた実績の証明されたものであると結論づけられたことにより、LCHF食事療法に社会庁が青信号を灯しました。2008年1月のことです。
「数十年に渡るエビデンスが…」とおっしゃる方が日本にはいるようですが、プラグマティズムの国スウェーデンだからか、影響力の強い医学ジャーナルに掲載された論文でも低炭水化物食の効果が証明されているからか、社会庁に認められて以来、スウェーデンではLCHFブームが巻き起こったそうです。こちらでは現在4人に1人がLCHFを実践しているそうです。(カルピンチョ医師のブログにもスウェーデン式ダイエットが紹介されていましたね。http://低糖質.com/review/cat16/41.html)
ダールクヴィストの食事療法の場合、タンパク質摂取量はこれまでと変わらずに、エネルギーを天然の動物性脂肪(バター、生クリーム、サワークリーム、チーズなど)と、オーガニックのオリーブオイルと菜種油(どちらもエキストラバージンのコールドプレス)で摂取することを奨めています。日本と違って、動物性タンパク質の摂取量(肉や乳製品)はもともと多いです。
2011年には、公共放送でも、このLCHFについて賛成派/反対派のインタービューを交えながら、低炭水化物食療法に関するドキュメンタリーを放送しました。糖尿病患者がスーパーで食材選びの指導を受けて料理の講習会をすることで、この食事療法について学んだり、食後の血糖値を実際に計って違いを実感することで、患者さんの中には3ヶ月間この食事を実践した人たちがいて、その成果も紹介されていました。(江部先生のブログで読むみなさんの体験談と同じ傾向の結果です。)ただ、江部先生がブログに書いていらっしゃるように、スウェーデン人は肥満がある程度進んでから糖尿病にかかるようで、この番組を見る限り、糖尿病の治療と減量は二足のわらじのように捉えられているという印象でした。
マイナー言語の国なので、なかなか日本とスウェーデンではお互いの情報が伝わりにくいですが、こういうことがありましたというご紹介をと思い、長くなりましたが筆をとりました。別にわけて、バーネ教授の答申とその日本語訳や、公共放送のドキュメンタリーへのリンクを貼ります。何かのお役に立てれば幸いです。
人づてに低糖質制限食を教わり、10月末より実践しています。私はスウェーデンに住んでおり、日本と同じような豆腐やおからの料理が出来ないので、こちらの食材で続けられるレシピをネットで検索していたところ、LCHF(Low Carb High Fat)と呼ばれる、スウェーデンのアニカ・ダールクヴィスト医師が提唱し始めた食事療法に行き当たりました。江部先生のように「低糖質」と細かく限定していませんが、砂糖と炭水化物を押さえて血糖値を上げないことで、2型糖尿病と肥満(およびメタボリックシンドローム)の解消を目指しています。
ダールクヴィストは1型糖尿病を患っており、スウェーデンでは一般的な保健所の医師として勤務していました。2004年に、医学部で学ぶ娘さんが学部の課題として2週間実践した低炭水化物食を知ったそうです。これまでご本人が全く減量できなかったのに見るまに痩せたことや、それにともなって長年不調だった腸の調子が良くなり(スウェーデン人に多いそうです)、関節炎や頭痛がなくなり精神的に上向きになるということを身をもって体験したことで、保健所の診察にやってくる2型糖尿病患者や肥満に悩む人に、このLCHF食事療法の指導を始めたそうです。
しかし、 これまで提唱されていたものとは正反対の食事療法なので、 日本の現状と同じようにこれを危惧する人がいて、社会庁( Socialstyrelsen)に栄養士2名がダールクヴィストを通報したそうです。食品衛生局(Livsmedelsverket) の目安では、炭水化物の摂取量は全体の食事の60%です。ダールクヴィストの食事指導が間違っていると判断された場合には医師免許の剥奪もあり得るという事態になり、社会庁がスウェーデンの糖尿病の権威クリスチャン・バーネ教授に調査を依頼しました。これが2005年のことでした。2007年12月に提出されたバーネ教授の調査報告で、長期的な結果がまだ科学的に出ていないものの、科学的な見解に基づいた実績の証明されたものであると結論づけられたことにより、LCHF食事療法に社会庁が青信号を灯しました。2008年1月のことです。
「数十年に渡るエビデンスが…」とおっしゃる方が日本にはいるようですが、プラグマティズムの国スウェーデンだからか、影響力の強い医学ジャーナルに掲載された論文でも低炭水化物食の効果が証明されているからか、社会庁に認められて以来、スウェーデンではLCHFブームが巻き起こったそうです。こちらでは現在4人に1人がLCHFを実践しているそうです。(カルピンチョ医師のブログにもスウェーデン式ダイエットが紹介されていましたね。http://低糖質.com/review/cat16/41.html)
ダールクヴィストの食事療法の場合、タンパク質摂取量はこれまでと変わらずに、エネルギーを天然の動物性脂肪(バター、生クリーム、サワークリーム、チーズなど)と、オーガニックのオリーブオイルと菜種油(どちらもエキストラバージンのコールドプレス)で摂取することを奨めています。日本と違って、動物性タンパク質の摂取量(肉や乳製品)はもともと多いです。
2011年には、公共放送でも、このLCHFについて賛成派/反対派のインタービューを交えながら、低炭水化物食療法に関するドキュメンタリーを放送しました。糖尿病患者がスーパーで食材選びの指導を受けて料理の講習会をすることで、この食事療法について学んだり、食後の血糖値を実際に計って違いを実感することで、患者さんの中には3ヶ月間この食事を実践した人たちがいて、その成果も紹介されていました。(江部先生のブログで読むみなさんの体験談と同じ傾向の結果です。)ただ、江部先生がブログに書いていらっしゃるように、スウェーデン人は肥満がある程度進んでから糖尿病にかかるようで、この番組を見る限り、糖尿病の治療と減量は二足のわらじのように捉えられているという印象でした。
マイナー言語の国なので、なかなか日本とスウェーデンではお互いの情報が伝わりにくいですが、こういうことがありましたというご紹介をと思い、長くなりましたが筆をとりました。別にわけて、バーネ教授の答申とその日本語訳や、公共放送のドキュメンタリーへのリンクを貼ります。何かのお役に立てれば幸いです。
2012/12/11(Tue) 00:49 | URL | 雪ん子 | 【編集】
MatFrisk Blogg Christian Bernes utlåtande i "lågkolhydratärendet".
http://blogg.passagen.se/matfrisk/date/20080116
最初の記事が教授の答申、次のものが社会庁の結論です。
バーネ教授の答申については御興味があると思いましたので、私が日本語に訳したものをお送りします。医学用語に不慣れなので、おかしな部分があったらすみません。
Dahlqvist, Annika, Doktor Dahlqvists Guide till bättre hälsa och viktkontroll (2008)
http://media.pagina.se/produkter/bok/7241149X/7241149X.pdf
ダールクヴィストのLCHF本の最初の部分をPDFで見られます。(スウェーデン語)
クリスチャン・バーネ教授による『低炭水化物食』に関する報告
審議内容:低炭水化物食療法は、科学に基づき実績が証明されたものであるか
一年以上に渡るデータの蓄積および、高炭水化物食に関するデータの蓄積に比べ、無作為に抽出された被験者による管理された低炭水化物食療法のデータが少ないことを考慮に入れても、審議内容に対する答申は、 低炭水化物食療法が科学に基づき実績が証明されたとするものである。
ただし、上記の食事療法を実践する医師は、これまでデータの蓄積が少ないことに考慮して、職業任務上、患者の投薬の変更、食事や生活指導などによる日常生活の変化などを定期的にチェックすること、ならびに、患者の健康状態(体重や腹囲計測などを含む)や、患者が医師の指導をどのように理解、実践しているかについてカルテに記載すること。
2型糖尿病患者および/または肥満に関しては、脂質異常症や高血圧をともなう場合があるので、HbAIc、血中脂質、血圧、P-クレアチニン、微量アルブミン尿の調整が中心となる。低炭水化物療法の長期的な効果はまだ明らかではないので、全国糖尿病登録(Nationella Diabetes Registret)のような登録機関で、患者ごとに上記の数値を記録しフォローアップに利用することを推奨する。
この答申は、審議にあたって参照したエビデンスを列記するものではないが、特に参考にした論文については文末に記載する。これらの論文は、無作為に抽出した被験者の減量に関する実験、または実験数が少ないものの2型糖尿病患者の実験を扱っている。2003年に発表されたある研究概要では、低炭水化物療法を奨めるには根拠が不足としながらも、かといって、短期的には健康に有害ともいえないと結論づけている。減量にあたっては全体的なエネルギー摂取量の減少が大きな意味を持つため、その中で炭水化物摂取量の割合が減量にどれだけ影響するかを証明することは困難である。ただし、食事中、飽和脂肪を摂取する割合が高くなると、LDLコレステロール値の上昇が少なくなるので、長期的な観察ならびに患者の数値を検査、管理する責任について指摘したい。
スウェーデンで繰り広げられている食事療法/ダイエットについては、素人による議論やタブロイド紙の記事、ダイエット本などで流行の方法が次々と紹介されている。医学の分野においては、管理された無作為の被験者による研究や概要が、影響力の強い名だたる医学ジャーナル(下記参照)、New England Journal of Medicine, Diabetes, Annals of Internal Medicine, JAMA, American Journal of Clinical Nutritionに発表されている。現在推奨されている食事療法に比べ、これまでの論文数がまだ少ない(訳注:広域に渡る研究がまだなされていない)とはいえ、減量と2型糖尿病の治療としての低炭水化物食についての科学的な議論と評価が真剣に行われているといえる。
最後に結論として、長期にわたるエビデンスの蓄積および、心血管疾患や糖尿病の細小血管合併症などエンドポイントの効果についての評価がまだ少ないとはいえ、短期的な実践では効果を上げており、これまでの研究結果では危険性があがっていないので、肥満と2型糖尿病の減量対策として、低炭水化物食事療法は今日の科学的見解に基づき、実績が証明されたものであるといえる。1年以上に渡る食事療法についてはまだ科学的に証明されていないので、この食事療法を実践する医師が長期の食事指導の結果について十分に評価することを求める。
クリスチャン・バーネ 教授
糖尿病・内分泌科部長
ウプサラ大学アカデミー病院(Akademiska Sjukhuset)
Christian Berne, professor, överläkare
Sektionen för endokrinologi och diabetesvård
Specialmedicin
OTM-divisionen
Akademiska Sjukhuset
751 85 Uppsala
Systematiska och andra översikter
Nield L, Moore HJ, Hooper L, Cruickshank JK, Vyas A, Whittaker V, Summerbell CD.
Dietary advice for treatment of type 2 diabetes mellitus in adults. Cochrane Database Syst
Rev. 2007 Jul 18;(3): CD004097.
Westman EC et al. Low-carbohydrate nutrition and metabolism. Am J Clin Nutr
2007;86:276-84.
Nordmanis AJ et al. Effects of Low-Carbohydrate vs Low-Fat Diets on Weight Loss and
Cardiovascular Risk Factors A Meta-analysis of Randomized Controlled Trials. Arch Intern
Med. 2006;166:285-293.
Parikh P et al. Diets and Cardiovascular Disease. An Evidence-Based Assessment. J Am Coll
Cardiol 2005;45:1379-87
Kennedy RL et al. Nutrition in patients with Type 2 diabetes: are low carbohydrate diets
effective, safe or desirable? Diabet. Med. 22, 821-832 (2005).
Bravata DM. Efficacy and safety of low-carbohydrate diets. A systematic review. JAMA
2003;289:1837-1850.
Citat ur sammanfattning: "There is insufficient evidence to make recommendations for or
against the use of low-carbohydrate diets, particularly among participants older than age 50
years, for use longer than 90 days, or for diets of 20 g/d or less of carbohydrates."
http://blogg.passagen.se/matfrisk/date/20080116
最初の記事が教授の答申、次のものが社会庁の結論です。
バーネ教授の答申については御興味があると思いましたので、私が日本語に訳したものをお送りします。医学用語に不慣れなので、おかしな部分があったらすみません。
Dahlqvist, Annika, Doktor Dahlqvists Guide till bättre hälsa och viktkontroll (2008)
http://media.pagina.se/produkter/bok/7241149X/7241149X.pdf
ダールクヴィストのLCHF本の最初の部分をPDFで見られます。(スウェーデン語)
クリスチャン・バーネ教授による『低炭水化物食』に関する報告
審議内容:低炭水化物食療法は、科学に基づき実績が証明されたものであるか
一年以上に渡るデータの蓄積および、高炭水化物食に関するデータの蓄積に比べ、無作為に抽出された被験者による管理された低炭水化物食療法のデータが少ないことを考慮に入れても、審議内容に対する答申は、 低炭水化物食療法が科学に基づき実績が証明されたとするものである。
ただし、上記の食事療法を実践する医師は、これまでデータの蓄積が少ないことに考慮して、職業任務上、患者の投薬の変更、食事や生活指導などによる日常生活の変化などを定期的にチェックすること、ならびに、患者の健康状態(体重や腹囲計測などを含む)や、患者が医師の指導をどのように理解、実践しているかについてカルテに記載すること。
2型糖尿病患者および/または肥満に関しては、脂質異常症や高血圧をともなう場合があるので、HbAIc、血中脂質、血圧、P-クレアチニン、微量アルブミン尿の調整が中心となる。低炭水化物療法の長期的な効果はまだ明らかではないので、全国糖尿病登録(Nationella Diabetes Registret)のような登録機関で、患者ごとに上記の数値を記録しフォローアップに利用することを推奨する。
この答申は、審議にあたって参照したエビデンスを列記するものではないが、特に参考にした論文については文末に記載する。これらの論文は、無作為に抽出した被験者の減量に関する実験、または実験数が少ないものの2型糖尿病患者の実験を扱っている。2003年に発表されたある研究概要では、低炭水化物療法を奨めるには根拠が不足としながらも、かといって、短期的には健康に有害ともいえないと結論づけている。減量にあたっては全体的なエネルギー摂取量の減少が大きな意味を持つため、その中で炭水化物摂取量の割合が減量にどれだけ影響するかを証明することは困難である。ただし、食事中、飽和脂肪を摂取する割合が高くなると、LDLコレステロール値の上昇が少なくなるので、長期的な観察ならびに患者の数値を検査、管理する責任について指摘したい。
スウェーデンで繰り広げられている食事療法/ダイエットについては、素人による議論やタブロイド紙の記事、ダイエット本などで流行の方法が次々と紹介されている。医学の分野においては、管理された無作為の被験者による研究や概要が、影響力の強い名だたる医学ジャーナル(下記参照)、New England Journal of Medicine, Diabetes, Annals of Internal Medicine, JAMA, American Journal of Clinical Nutritionに発表されている。現在推奨されている食事療法に比べ、これまでの論文数がまだ少ない(訳注:広域に渡る研究がまだなされていない)とはいえ、減量と2型糖尿病の治療としての低炭水化物食についての科学的な議論と評価が真剣に行われているといえる。
最後に結論として、長期にわたるエビデンスの蓄積および、心血管疾患や糖尿病の細小血管合併症などエンドポイントの効果についての評価がまだ少ないとはいえ、短期的な実践では効果を上げており、これまでの研究結果では危険性があがっていないので、肥満と2型糖尿病の減量対策として、低炭水化物食事療法は今日の科学的見解に基づき、実績が証明されたものであるといえる。1年以上に渡る食事療法についてはまだ科学的に証明されていないので、この食事療法を実践する医師が長期の食事指導の結果について十分に評価することを求める。
クリスチャン・バーネ 教授
糖尿病・内分泌科部長
ウプサラ大学アカデミー病院(Akademiska Sjukhuset)
Christian Berne, professor, överläkare
Sektionen för endokrinologi och diabetesvård
Specialmedicin
OTM-divisionen
Akademiska Sjukhuset
751 85 Uppsala
Systematiska och andra översikter
Nield L, Moore HJ, Hooper L, Cruickshank JK, Vyas A, Whittaker V, Summerbell CD.
Dietary advice for treatment of type 2 diabetes mellitus in adults. Cochrane Database Syst
Rev. 2007 Jul 18;(3): CD004097.
Westman EC et al. Low-carbohydrate nutrition and metabolism. Am J Clin Nutr
2007;86:276-84.
Nordmanis AJ et al. Effects of Low-Carbohydrate vs Low-Fat Diets on Weight Loss and
Cardiovascular Risk Factors A Meta-analysis of Randomized Controlled Trials. Arch Intern
Med. 2006;166:285-293.
Parikh P et al. Diets and Cardiovascular Disease. An Evidence-Based Assessment. J Am Coll
Cardiol 2005;45:1379-87
Kennedy RL et al. Nutrition in patients with Type 2 diabetes: are low carbohydrate diets
effective, safe or desirable? Diabet. Med. 22, 821-832 (2005).
Bravata DM. Efficacy and safety of low-carbohydrate diets. A systematic review. JAMA
2003;289:1837-1850.
Citat ur sammanfattning: "There is insufficient evidence to make recommendations for or
against the use of low-carbohydrate diets, particularly among participants older than age 50
years, for use longer than 90 days, or for diets of 20 g/d or less of carbohydrates."
2012/12/11(Tue) 00:56 | URL | 雪ん子 | 【編集】
全編スウェーデン語ですが、公共放送でのLCHF特集です。高炭水化物や高食物繊維の食事については、製薬会社や製パン会社がスポンサーになって、大きな予算の研究をしているようですが、スウェーデンでも低炭水化物食の長期にわたる研究は、大々的な予算を(国家からも)もらえないらしいそうです。
Part 3の実践結果の部分では、専門家のコメントが聞けて、You Tubeのコメント欄に少しですが英訳が載っていました。
LCHF - Diabetes - Vetenskapen värld SVT2 Part1
http://www.youtube.com/watch?v=PUjK3uhvm_A
Part2
http://www.youtube.com/watch?v=KPI-AiSew_g
Part 3
http://www.youtube.com/watch?v=0NGDczq8d7s&list=UU5gg8tvqWIJP5rJqjY3K1Pw&index=11
長くなってしまいましたが、よかったら御参考ください。
Part 3の実践結果の部分では、専門家のコメントが聞けて、You Tubeのコメント欄に少しですが英訳が載っていました。
LCHF - Diabetes - Vetenskapen värld SVT2 Part1
http://www.youtube.com/watch?v=PUjK3uhvm_A
Part2
http://www.youtube.com/watch?v=KPI-AiSew_g
Part 3
http://www.youtube.com/watch?v=0NGDczq8d7s&list=UU5gg8tvqWIJP5rJqjY3K1Pw&index=11
長くなってしまいましたが、よかったら御参考ください。
2012/12/11(Tue) 01:00 | URL | 雪ん子 | 【編集】
すでにご存じかもしれませんが、
NHK Eテレ 名医がQ 「糖尿病 あなたの疑問に答えます!」で再び胃、腸切除術が取り上げられました。
さすがに最初に適応の説明をしましたが、時間が短く副作用については語られていません。
一方、糖質制限はほぼ全否定なコメントです。あきらかにおかしい内容です。
NHKさんはそんなに手術を推奨したいのでしょうか?
再放送があるので内容はご確認頂けると思います。
NHK Eテレ 12/14(金)13:05~13:50です。
HPでも近く内容が反映されるようです。
NHK Eテレ 名医がQ 「糖尿病 あなたの疑問に答えます!」で再び胃、腸切除術が取り上げられました。
さすがに最初に適応の説明をしましたが、時間が短く副作用については語られていません。
一方、糖質制限はほぼ全否定なコメントです。あきらかにおかしい内容です。
NHKさんはそんなに手術を推奨したいのでしょうか?
再放送があるので内容はご確認頂けると思います。
NHK Eテレ 12/14(金)13:05~13:50です。
HPでも近く内容が反映されるようです。
2012/12/11(Tue) 09:44 | URL | Schrodingers_Capybara | 【編集】
以前、間違えた糖質制限(カロリー不足)で痩せすぎてしまいた。なので脂質とたんぱく質をしっかり食べて48㎏から56㎏まで4ヶ月くらいで戻したのですが・・・・
Bun
32
CRE
0.57
GOT
43
GPT
46
と1ヶ月に一回の血液検査で毎回異常な数値が出ており気になります。
確かに体重を増やしたくて肉や魚、オリーブオイルを結構多めに食べてました。やはりそのせいでbun等の数値が異常なのでしょうか?
あと牛肉や豚肉を多めに食べると大腸ガンになりやすいと聞いたのですが魚を中心に食べた方が良いですか?
体重を増やすために毎食、肉も魚も沢山食べていたので心配です。
私は22歳一人暮らしでちゃんとした料理を作れないのでよく肉と魚をまとめて焼くか蒸して食べてます。
宜しくお願いします
Bun
32
CRE
0.57
GOT
43
GPT
46
と1ヶ月に一回の血液検査で毎回異常な数値が出ており気になります。
確かに体重を増やしたくて肉や魚、オリーブオイルを結構多めに食べてました。やはりそのせいでbun等の数値が異常なのでしょうか?
あと牛肉や豚肉を多めに食べると大腸ガンになりやすいと聞いたのですが魚を中心に食べた方が良いですか?
体重を増やすために毎食、肉も魚も沢山食べていたので心配です。
私は22歳一人暮らしでちゃんとした料理を作れないのでよく肉と魚をまとめて焼くか蒸して食べてます。
宜しくお願いします
2012/12/11(Tue) 09:56 | URL | ミア | 【編集】
北九州 三島 さん。
私達は2型ですので、1回10~20g以下くらいでいいと思います。
私も、山田先生、最終的に、バーンスタイン方式「6、12、12」(一日糖質摂取量30g)と
ご自分が推奨の120~130g/日と
どう折り合いをつけるのか注目ですね。
私達は2型ですので、1回10~20g以下くらいでいいと思います。
私も、山田先生、最終的に、バーンスタイン方式「6、12、12」(一日糖質摂取量30g)と
ご自分が推奨の120~130g/日と
どう折り合いをつけるのか注目ですね。
2012/12/11(Tue) 10:02 | URL | ドクター江部 | 【編集】
みみくく さん。
バーンスタイン医師は、血液検査における腎不全の段階ではないので、
脂質・たんぱく質は充分量摂取されて、糖尿病腎症第3期Aから回復されています。
「バーンスタイン医師の糖尿病の解決」金芳堂; 第3版
をご参照ください。
バーンスタイン医師は、血液検査における腎不全の段階ではないので、
脂質・たんぱく質は充分量摂取されて、糖尿病腎症第3期Aから回復されています。
「バーンスタイン医師の糖尿病の解決」金芳堂; 第3版
をご参照ください。
2012/12/11(Tue) 11:07 | URL | ドクター江部 | 【編集】
雪ん子 さん。
大変参考になります。
ありがとうございます。
大変参考になります。
ありがとうございます。
2012/12/11(Tue) 11:26 | URL | ドクター江部 | 【編集】
ミア さん。
魚:肉を1:1くらいが目安です。
Bun 32 CRE 0.57 →クレアチニンが正常ですので、BUNは生理的上昇で心配の無いものです。
卵製品、大豆製品、葉野菜・ゴーヤなど糖質の少ない野菜、きのこ、海藻なども満遍なく摂取するとよいです。
魚:肉を1:1くらいが目安です。
Bun 32 CRE 0.57 →クレアチニンが正常ですので、BUNは生理的上昇で心配の無いものです。
卵製品、大豆製品、葉野菜・ゴーヤなど糖質の少ない野菜、きのこ、海藻なども満遍なく摂取するとよいです。
2012/12/11(Tue) 11:37 | URL | ドクター江部 | 【編集】
2012年12月8日(土)放送
www.nhk.or.jp/kenko/drq/archives/2012/12/1208.html
”糖尿病を手術で治療する”方法を解説している
こういった治療法は「20年、30年後のエビデンスが出てから公衆に広めるべきではありませんか」
www.nhk.or.jp/kenko/drq/archives/2012/12/1208.html
”糖尿病を手術で治療する”方法を解説している
こういった治療法は「20年、30年後のエビデンスが出てから公衆に広めるべきではありませんか」
2012/12/11(Tue) 18:38 | URL | 精神科医師A | 【編集】
「名医にQ」12/8 放送分 HPアップされました
糖質制限食の部分ですが
『糖質制限食は肥満の改善につながると考えられる一方、極端な糖質制限でエネルギー不足に陥ったり健康を損なったりするケースも報告されています。また、動物性脂肪やたんぱく質をとりすぎた場合に糖尿病の合併症である動脈硬化や腎症を悪化させることも懸念されます。食事療法も自己判断せず医師と十分に相談して行うことが大切です』
番組の中で、順天堂大学の河盛医師が、「糖質制限食がブームになっているが・・糖質は1日に150g必要だ」と言っていましたね。根拠は説明なし。
糖尿病学会幹部の人たちは、「食後高血糖が危険」という問題意識が本当にないのでしょうか?
ということで、江部先生の考えも、山田悟先生の「1日130g以下、50g以上」という提言も否定されました。
私は、あきれてしまって・・。
「NHKが糖質制限食をきちんと紹介すれば、1000万人をこえた糖尿病患者に大きな影響を及ぼすのになあ・・」と思いながら、学会幹部が入れ替わらなければだめか・・。
冷静に科学的に検討できないのかな。21世紀だというのに・・ブツブツ。ぷんぷん。
糖質制限食の部分ですが
『糖質制限食は肥満の改善につながると考えられる一方、極端な糖質制限でエネルギー不足に陥ったり健康を損なったりするケースも報告されています。また、動物性脂肪やたんぱく質をとりすぎた場合に糖尿病の合併症である動脈硬化や腎症を悪化させることも懸念されます。食事療法も自己判断せず医師と十分に相談して行うことが大切です』
番組の中で、順天堂大学の河盛医師が、「糖質制限食がブームになっているが・・糖質は1日に150g必要だ」と言っていましたね。根拠は説明なし。
糖尿病学会幹部の人たちは、「食後高血糖が危険」という問題意識が本当にないのでしょうか?
ということで、江部先生の考えも、山田悟先生の「1日130g以下、50g以上」という提言も否定されました。
私は、あきれてしまって・・。
「NHKが糖質制限食をきちんと紹介すれば、1000万人をこえた糖尿病患者に大きな影響を及ぼすのになあ・・」と思いながら、学会幹部が入れ替わらなければだめか・・。
冷静に科学的に検討できないのかな。21世紀だというのに・・ブツブツ。ぷんぷん。
肝機能の数値も若干高いのでたんぱく質を控えめにしてくださいと通院先の先生に言われたのですがたんぱく質を抑えた方が良いでしょうか?
お忙しいと思いますが答えて頂けると有難いです。
よろしくお願いします。
お忙しいと思いますが答えて頂けると有難いです。
よろしくお願いします。
2012/12/11(Tue) 21:26 | URL | ミア | 【編集】
ミア さん
糖質制限食ですから、
肉:魚を1:1くらいで、動物蛋白もしっかり摂取してよいと思います。
糖質制限食ですから、
肉:魚を1:1くらいで、動物蛋白もしっかり摂取してよいと思います。
2012/12/11(Tue) 21:51 | URL | ドクター江部 | 【編集】
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