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糖質制限食に関するお知らせ・お願いなど、2012年9月
【糖質制限食とは】

米国糖尿病協会(ADA)によれば、食べ物が消化・吸収されたあと、糖質は100%血糖に変わりますが、タンパク質・脂質は血糖に変わりません。 

また糖質は、摂取直後から急峻に血糖値を高く速く上昇させ、2時間以内にほとんどすべてが吸収されます。

これらは含有エネルギーとは無関係な三大栄養素の生理学的特質です。 
 
1997年版のLife With Diabetes(ADA)では、

「タンパク質は約半分が血糖に変わり、脂質は10%未満が血糖に変わる」

という記載がありましたが、2004年版では変更されています。

このように糖質、脂質、タンパク質のうち糖質だけが血糖値を上昇させます。

従って、糖質を摂取した時にはインスリンが大量に追加分泌されます。

脂質を摂取しても、インスリンの追加分泌はありません。

タンパク質はごく少量のインスリンを追加分泌させます。

現在糖尿病において、食後の急激な高血糖(グルコーススパイク)が大きな問題として注目されています。

食後高血糖が、心筋梗塞や脳梗塞などの合併症を起こす危険因子として確立されたからです。

また一日における、食前・食後・空腹時など、血糖値の変動幅(平均血糖変動幅)が大きいほど、酸化ストレスが増強し動脈硬化のリスクとなることがわかってきました。

そして、食後高血糖と平均血糖変動幅増大を起こすのは、三大栄養素のなかで糖質だけなのです。


1gの糖質が、体重64kgの2型糖尿病の人の血糖値を約3mg上昇させます。

炊いた白ご飯茶碗1杯150g(252kcal)には、55.3gの糖質が含まれており、血糖値を166mg上昇させます。

一方、牛サーロインステーキを200g(約1000キロカロリー)食べても、糖質含有量は1gもないので、食後血糖は3mg未満の上昇しかないのです。 

なお、1gの糖質が体重64kgの1型糖尿病の人の血糖値を5mg上昇させます。

糖質制限食の基本的な考え方は、上述のような生理学的事実をベースに、できるだけ糖質の摂取を低く抑えて、食後高血糖を防ぐというものです。

簡単に言えば、主食を抜いておかずばかり食べるというイメージになります。

抜く必要がある主食とは米飯・めん類・パンなどの米・麦製品や芋類など糖質が主成分のものです。
 
3食主食抜きのスーパー糖質制限食(糖質12%、タンパク質32%、脂質56%)なら、薬に頼ることなく速やかにリアルタイムで良好な血糖コントロールが可能です。

一方、上述の白ご飯とステーキの例でも明らかなように、カロリー計算に基づいて血糖値をコントロールすることは理論的に不可能です。

従って、現行の日本糖尿病学会推薦の糖尿病食(糖質60%、タンパク質20%、脂質20%)を実践する限りは、一日の摂取カロリーを1200キロカロリーと低く抑えたとしても、食後高血糖が必ず生じるのです。

糖尿病の改善には、カロリー制限より糖質制限ということがおわかりいただけたと思います。

なお糖質制限食は、カロリー無制限ということではありません。

一般的な標準摂取カロリーの範囲、すなわち

男性なら1600~2400キロカロリー
女性なら1200~1800キロカロリー

くらいが目安です。



【糖質制限食を実践される時のご注意】


本にも書いてありますが、 糖質制限食によりリアルタイムに血糖値が改善します。

このため既に、経口血糖降下剤(オイグルコン、アマリールなど)の内服やインスリン注射をしておられる糖尿人は、低血糖の心配がありますので必ず主治医と相談して頂きたいと思います。

一方、薬を使用してない糖尿人やメタボ人は、低血糖の心配はほとんどないので、自力で 糖質制限食を実践して糖尿病やメタボ改善を目指していただけば幸いです。

血液検査で血清クレアチニン値が高値で腎障害がある場合と、活動性の膵炎がある場合、肝硬変の場合は、糖質制限食は適応とならない(してはならない)のでご注意ください。

糖質制限食は相対的に高タンパク・高脂肪食になるので、腎不全と活動性膵炎には適応とならないのです。

肝硬変では、糖新生能力が低下しているため適応となりません。

また長鎖脂肪酸代謝異常症(日本で毎年10-50人の新患が発生)の場合も脂肪の利用・代謝が上手くいかないので糖質制限食の適応となりません。

なお、機能性低血糖症の場合、炭水化物依存症レベルが重症のとき、糖新生能力が低下していることがあり、まれに低血糖症を生じますので注意が必要です。

また、どのような食事療法でも合う合わないがあります。

糖質制限食もその一つですので、合わないとご自分で判断されたら中止していただけば幸いです。


<参考図書>

理論
「主食を抜けば糖尿病は良くなる!」2005年
「主食を抜けば糖尿病は良くなる!実践編」2008年
「我ら糖尿人、元気なのには理由がある。」2009年
「やせる食べ方」2010年
「うちの母は糖尿人」2010年 監修:江部康二 著:伊藤きのと
(東洋経済新報社)
「糖尿病がどんどんよくなる糖質制限食」2010年(ナツメ社)
腹いっぱい食べて楽々痩せる『満腹ダイエット』 (ソフトバンク新書) 2011年
「主食をやめると健康になる」(ダイヤモンド社)2011年

レシピ
「糖尿病が良くなるごちそうレシピ」2006年
「糖質制限食 春のレシピ」2007年
「糖質制限食 夏のレシピ」2007年
「糖質制限食 秋のレシピ」2008年
「糖質制限食 冬のレシピ」2008年
「血糖値を上げない! 健康おつまみ109 」2010年
「やせる食べかたレシピ集」2010年
「主食を抜けば糖尿は良くなる!レシピ集」2011年
(東洋経済新報社)

「糖質オフ」ごちそうごはん
(アスペクト)2009年

dancyu プレジデントムック 「満腹ダイエット 」(プレジデント社)2009年
dancyu プレジデントムック 「酒飲みダイエット 」(プレジデント社)2010年
dancyu プレジデントムック 「美食家ダイエット 」(プレジデント社)2011年
dancyu プレジデントムック 「スイーツダイエット」 (プレジデン社)2012年

糖質オフダイエット (レタスクラブ、角川マーケティング)2011年
誰もがストレスなくやせられる! 糖質制限ダイエット(講談社)2011年
糖尿病・肥満を克服する高雄病院の「糖質制限」給食(講談社)2012年

DVD「糖質制限食を語る」http://www.yaserutabekata.com/shop/dvd.php 2011年





江部康二
テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
江部先生
糖質制限食始めて一か月立ちました。始めは低血糖みたいな眠気がしましたが、今は全くなく、良好です。爪がガタガタしていたり、もろかったのですが艶が出て爪がしっかり綺麗になり、手も肌も透明感があります。BMI18めざして日々美味しくいただいています。糖質制限食は人類の食の原点だと思います。食べている途中で代謝機能がすごくあがっているのが解ります。最近書店に糖質制限食の本が並んでいます。みんなが意識を持ってくるといいと思います。オリーブオイルを使っていますが、亜麻仁オイルは使用許容範囲でしょうか?
2012/09/09(Sun) 18:49 | URL | Tk | 【編集
江部先生のブログに到達できる人なら心配はないと思うのですが、「適応」という言葉がわからない人もいるのではないかと思います。

「適応ではありません」をよりわかりやすく「糖質制限が向きません」「糖質制限をすべきではありません」と書いたほうが、誤解がないかと思いますがいかがでしょうか。
2012/09/09(Sun) 21:44 | URL | anderson | 【編集
いつもありがとうございます
糖尿病の患者さんに「糖質制限食」を説明するために、江部先生のこのブログを紹介させていただいています。プリントして配布もしています。
2012/09/09(Sun) 22:40 | URL | 渡辺信幸 | 【編集
Re: タイトルなし
anderson さん。


アドバイス、ありがとうございます。
早速なおします。
2012/09/10(Mon) 07:30 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: タイトルなし
Tk さん。

爪が艶々、良かったですね。

亜麻仁オイルは、αリノレン酸が多く含まれていて、良いと思います。
2012/09/10(Mon) 07:39 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: いつもありがとうございます
渡辺信幸 先生。

ありがとうございます。

沖縄に糖質制限食をどんどん広めてくださいね。
2012/09/10(Mon) 07:45 | URL | ドクター江部 | 【編集
教えてください
小さな町で特定保健指導を担当しています。自分も糖尿病境界型で1年前より朝昼晩主食抜きの生活をしています。これまでどうしても越えきれなかった体重の壁をらくらくと突破でき体調もとても快調です。日々先生のブログをバイブルとして仕事に励んでいます。個別の訪問指導では糖質制限食の効果をつくづく実感しています。特定保健指導担当者の研修会等では参加者をつかまえては江部先生のブログにたどりつくよう話をしています。

さて、質問なのは先日特定保健指導の講座を開催した際のこと。講師は大学の非常勤講師を招いての講座だったのですが、この方は糖尿病の予防にはカロリー制限食では限界があるということをご存じの先生だったので糖質制限についてしっかりと話をして欲しい旨を伝えたところ実際にその旨の話はしてもらって良かったのですが、その話の中で1点ほど疑問がわいたのです。

それはその先生曰く「動物は人間より体温が高いので人間が食べると身体の中で脂肪が固まる。また脂をとると血糖が下がらなくなる。脂・油の摂り過ぎは上がった血糖を下がりにくくする」
どうしてそうなるのかは話されなかったのですがそのようなことがあるのでしょうか?

その旨の内容を以前ブログで書かれているのであればすみません。
2012/09/10(Mon) 13:09 | URL | M.S | 【編集
女子栄養大学栄養科学研究所講演会
2012年11月17日(土) 午後1時~4時45分

www.eiyo.ac.jp/bokin80/conference/forum121117.html
2012/09/10(Mon) 14:03 | URL | 精神科医師A | 【編集
糖質制限食との出会いは、宮本輝氏の「我ら糖尿人…」を読破し、すぐに江部先生の「主食を抜けば…」を読破し、その日のうちに実行に移りました。すでに1か月以上たちます。

少し気になっているのが、以前から手足指先がしびれる感覚があったのですが、いまだにその感覚がありますが、いずれは改善されるでしょうか。
現在、高血圧のお薬を飲んでおります。
2012/09/10(Mon) 15:24 | URL | h.s | 【編集
Re: 教えてください
M.S さん。

動物食物中の脂質(動物性脂肪のほとんどが中性脂肪)は、
グリセロールと脂肪酸に分解されて小腸上皮から吸収されますが、
そのなかで中性脂肪に再合成され集合します。
その後リンパ管の中に入って流れていき、鎖骨下静脈に合流します。

確かにバター、ラードなどは常温で固形で固まっていますが、
体内に吸収されるときは、グリセロールと脂肪酸に分解されて、固まっていません。
まして血中で固まることはありません。
そして油脂の摂りすぎが、血糖値を下がりにくくすることもありません。

2011年04月29日 (金)「脂質代謝」
をご参照いただけば幸いです。
2012/09/10(Mon) 17:11 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: 女子栄養大学栄養科学研究所講演会
精神科医師A さん。

香川栄養学園創立80周年記念事業・第22回女子栄養大学栄養科学研究所講演会ですね。
私も演者なので、糖質制限食のエビデンス・生理学的事実・症例など、
それなりにきっちりお話しするつもりです。

1.テーマ
  「糖尿病治療最前線-栄養食事療法を巡って-」
2.日 時
  平成24年11月17日(土) 午後1時~4時45分
3.会 場
  女子栄養大学駒込校舎小講堂 豊島区駒込3-24-3
4.定 員:150名
5.参加費:2千円

6.プログラム(敬称略)
13:00〜13:05 ◇開会の挨拶◇
                  女子栄養大学 学長 香川芳子

13:05〜13:35 ■糖尿病予防の遠隔成績とレガシー効果
                 栄養科学研究所 所長 香川靖雄

13:35〜14:25 ■低炭水化物食(糖質制限食)の有効性と安全性
              財団法人高雄病院 理事長 江部康二

14:25〜15:15 ■生活習慣病に対する新しい考え方
~若い女性のやせと低出生体重児をめぐって~
       京都大学大学院人間・環境学研究科 教授 津田謹輔

15:15〜15:30 休 憩
15:30〜16:40 総合討論
16:40〜16:45 ◇閉会の挨拶◇ 香川靖雄
2012/09/10(Mon) 17:16 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: タイトルなし
h.s さん。

拙著のご購入ありがとうございます。

糖尿病神経障害でも軽症なら、糖質制限食で血糖コントロール良好を保てば
シビレが改善することがあります。

糖尿病に関係ないシビレなら、原疾患が何かによるでしょう。

ともあれ、糖質制限食で全身の血流・代謝が良くなるので、
原因不明のシビレも良くなる可能性はありますが・・・。
2012/09/10(Mon) 17:20 | URL | ドクター江部 | 【編集
これが最後の・・・
江部先生、始めまして!

2型糖尿病歴25年、タイ在住の40歳女性モモピーと申します。

本当ならば、先生の病院を受診した際にすべき質問なのですが、遠方の為こちらでご相談させていただくご無礼、お許し下さい。

現在はノボミックス(アナログの混合30-70、紺色の帯です)朝30単位、夕30単位、メトフォルミン500mg×2を一日3回、その他ブロペストプラス8mg×1を朝、就寝前、

去年の8月に網膜症のレーザー治療を受けましたが、その後一切血統コントロールをせずに放置した結果、最近になって急に視力低下、慌てて眼科医を受信しました。
新たな新生血管発生、再度レーザーを受けました。

こんなことになるくらいなら、しっかりコントロールしておくべきだったと(というか、しっかり受診しておくべき)後悔しても始まりません(涙)

先生の糖質制限食の事を知ったのは、ちょうど1年ほど前です。
しかし、私は実践しなかったのです。

なぜかと言うと、腎症が発症している人には適応しない、という事だったので・・・
でも、これは主治医に相談したわけでもなく、勝手な自己判断でした。

腎臓はクレアチニン1,0、アルブミン尿100です。
最近読んだブログの中で、クレアチニン値が正常値ならば、糖質制限食を実施しても問題ないと書かれていたのを見て、始める決心がつきました。

2012/09/11(Tue) 16:02 | URL | モモピー | 【編集
Re: これが最後の・・・
モモピー さん。

スーパー糖質制限食なら、インスリンの単位は、1/3以下になります。
血糖自己測定器で測定して、低血糖にご注意ください。

クレアチニン1.0なら、糖質制限食可能です。
2012/09/11(Tue) 16:41 | URL | ドクター江部 | 【編集
続きです
江部先生

こんばんは
早速のお返事ありがとうございました。

長文の為、続きを書こうと思いきや投稿した記事を見失ってしまい、昨日は続きが書けませんでした。

では、本日改めて、はい。

去年、バンコクの紀伊国屋書店で先生の本に出会ったとき(もちろん、購入しました!)に
糖質制限食を始めていれば、この急激な視力低下に至らなかったと悔やんでも悔やみきれません

以前は1,5あった視力が今では裸眼でパソコンの字が読めません。
パソコンは200%に拡大して眼鏡使用です。

この次は失明だと思っていますので、これが最後の挑戦です。

実は、先週の金曜日からスーパーを開始して、なんとたったの4日で、体重が1,7kg減りました。(肥満なので体重がへりやすいのでしょうね)

炭水化物が大好きなので、正直3、4日目が辛かったのですが、思いのほか空腹感がないのでなんとか頑張っています。

そして、なんとなく体調が良いです。
こう、体が軽やかとでも言いましょうか(笑)

10月21日が次回の検診です。
そのときまでに主治医がびっくりする結果を出せたらいいなと思っています。

がんばります、先生ありがとうございました!




2012/09/12(Wed) 01:28 | URL | モモピー | 【編集
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