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糖質制限食で中性脂肪・HDLコレステロール・肥満改善とEBM
こんにちは。

昨日、糖質制限食で血中脂質改善というエビデンスがあると述べました。

現在の医学界では、特にディベートなどの場合、EBMが重視されます。

evidence based medhicine(根拠に基づいた医学)→略してEBM

EBMにおいて最も信頼度が高いとされているのが、RCT研究(無作為割り付け臨床試験)論文です。

EBMの視点からは、糖質制限食が、中性脂肪・HDLコレステロール・肥満改善効果があるとする信頼度の高いRCT研究論文が、少なくとも3つあります。

ちなみに、この件に関して、カロリー制限食に有利な信頼度の高いRCT研究論文は皆無です。

1)ニューイングランドジャーナル(DIRECTという論文)

•イスラエルの322人(男性86%)
•(1)低脂肪食(カロリー制限あり)
•(2)オリーブ油の地中海食(カロリー制限あり)
•(3)低炭水化物食(カロリー制限なし)
•3グループの食事法を2年間比較検討

糖質制限食が最も体重を減少させ、HDL-Cを増加させた。2年間の研究。

低脂肪・カロリー制限食に比し、糖質制限食が中性脂肪も低下させた。

LDLコレステロールは3者で優位差が出なかった。

Iris Shai,et all:Weight Loss with a Low-Carbohydrate,Mediterranean,or Low-Fat Diet. NENGLJ MED JULY17,2008、VOL359. NO.3 229-241



2)米国医師会雑誌、JAMA(AtoZ studyという論文)

•アトキンス、ゾーン、ラーン、オーニッシュダイエットのそれぞれの1年間の体重減少効果などをみた。
•311人の女性を上記4グループに分けて追跡。これら4種のダイエット法は、いずれも米国でポピュラーなもの。
•アトキンスは低炭水化物食、ラーンとオーニッシュは高炭水化物、低脂肪食、ゾーンは炭水化物40%

糖質制限食が最も体重を減少させ、HDL-Cを増加させ、中性脂肪を改善させた。1年間の研究。

Comparison of the Atkins, Zone, Ornish, and LEARN Diets for Change in Weight and Related Risk Factors Among Overweight Premenopausal Women
The A TO Z Weight Loss Study: A Randomized Trial ,JAMA297:969-977



3)「低炭水化物食」と「低脂質・低カロリー食」を比較したRCT論文のメタアナリシス

•体重減少、中性脂肪減少、HDL-C増加は低炭水化物食が低脂質・低カロリー食に比し有効。13の電子データベースの2000年1月~2007年3月の低炭水化物食と低脂質食比較RCTを解析。

Systematic review of randomized controlled trials of low-carbohydrate vs. low-fat/low-calorie diets in the management of obesity and its comorbidities M. Hession,et all
 Obesity Reviews Volume 10, Issue 1, pages 36–50, January 2009
(国際肥満研究連合の公式ジャーナル)



ニューイングランド・ジャーナルとJAMAは、インパクト・ファクターが最も高い医学雑誌です。

Obesity Reviews(国際肥満研究連合の公式ジャーナル)のインパクトファクターも高いです。

すなわち、信頼度が大変高い医学雑誌に掲載されたRCT研究論文において、糖質制限食が、低脂肪・カロリー制限食などに比べて優位差を持って、中性脂肪・HDLコレステロール・肥満改善効果があることが証明されました。


江部康二


☆☆☆

evidence based medhicine(証拠に基づく医学)→略してEBM

EBMが現在、医学界を席巻しています。

EBMだけに頼る医療には、明確に限界があります。

一方、EBMを無視する医療にも、明確に限界があります。

実際には、EBMと適宜折り合いをつけながら、臨床実践を行うこととなります。

医学界において、evidence(エビデンス、証拠、根拠)となるのは、基本的に医学雑誌に掲載された論文です。

ニューイングランド・ジャーナル、ランセット、米国医師会雑誌など、定評ある医学専門誌に掲載された論文であることも、evidence(エビデンス、証拠)の大きな要素となります。

その論文も

①無作為割り付け臨床試験
②前向きコホート研究
③コホート内症例割り付け研究
④後ろ向けコホート研究
⑤症例対照研究
⑥地域相関研究
⑦時系列研究
⑧症例報告
⑨実証的研究に基づかない権威者の意見

といった順番で、信頼度に差をつけられています。

これを研究デザインのヒエラルキーと呼ぶそうです。

一般にエビデンスレベルが高い研究論文と言うときは、

①無作為割り付け臨床試験(RCT)
②前向きコホート研究

に基づく論文のことをさします。

勿論、症例報告も大切な医学研究の一つなのですが、ことEBMというときは、割り切って、「無作為割り付け臨床試験(RCT)」と「前向きコホート研究」だけ考慮すればいいということになります。

特にディベートなどでは、RCT研究論文が圧倒的に威力を発揮します。




テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
アメーバニュースに
こんにちは。江部先生。
糖質制限に出会えて感謝の毎日です。

もうご存知かもしれませんがアメーバニュースに糖質制限の記事がありました。

食べながら痩せる「糖質制限食」ダイエット どう挑めばいいか - Ameba News [アメーバニュース] http://news.ameba.jp/20120907-561/

江部先生のお名前も。
ググってこのブログにたどり着く人が増えますように。
2012/09/08(Sat) 03:02 | URL | ゆい | 【編集
驚きました
昨晩書店で
『 薬が減らせて、血糖値にもしばられない 糖尿病最新療法2』岡本卓著 角川SSC新書
という本を立ち読みしました。

BMJ掲載の問題論文の解説が一切の疑問なく記載されていました。
http://koujiebe.blog95.fc2.com/category25-1.html(2012年7月13日)


更に驚いたのは、東大病院院長門脇氏の発言(読売新聞)について「エビデンスに基づいた立派な意見」との記載が。私はあの新聞記事には一切のエビデンスなど明示されていなかったと記憶していますが・・・。

別のところでは「HbA1Cは6.5以下に下げる必要なし」との記載も(この方が寿命が延びるらしい!)。
2012/09/08(Sat) 07:31 | URL | saty | 【編集
Re: タイトルなし
H さん。

今のデータで、糖尿病は全くないです。

今くらいの食生活でよいと思いますよ。
2012/09/08(Sat) 08:34 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: アメーバニュースに
ゆい さん。

情報をありがとうございます。
2012/09/08(Sat) 08:36 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: 驚きました
saty さん。

新聞報道、テレビ、本・・・

情報が氾濫していますので、取捨選択がいりますね。

読売新聞の記事、
仰る通り、門脇先生は一切エビデンスは示されず、私見を述べられただけでしたね。
2012/09/08(Sat) 08:42 | URL | ドクター江部 | 【編集
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