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読売新聞記事への反論①ケトン体について
こんにちは。

2012.8.26(日)読売新聞朝刊記事への反論①です。

2012.8.26(日)読売新聞記事

『・・・ところが06年、極端な糖質制限によって、脂肪が分解されてできるケトン体という物質が血中に増えすぎ、危険が状態に陥ったとする報告が海外で相次いだ・・・』


「Dr. Atkins Diet Revolution」が出版されたのは1970年代初頭です。

今が2012年です。

約40年にわたり世界中で、アトキンスダイエット(スーパー糖質制限食)が行われてきました。

アトキンスダイエットを実践した人は、世界中で数十万人以上、或いは100万人以上はいるでしょう。

アトキンスダイエット(スーパー糖質制限食)で生じるケトン体上昇は、インンスリン作用がある限り生理的なもので正常です。

この間、アトキンスダイエットでケトアシドーシスを生じたという論文は

2006年1月に、ニューイングランドジャーナルに1例報告
2006年7月に、ランセットに1例報告です。

40年間で、この2つだけです。

この2つだけの論文報告に対して「相次いだ」という表現は、新聞読者に誤解を生むもので、是非正確な表現で、訂正記事をだしてほしいと思います。

40年間で、わずか2例で、しかも2006年だけです。

極めてまれな事象であり、決して、相次いではいません。

上述のランセットの論文には

「アトキンスダイエットで健康な成人に生命の危険のあるケトアシドーシスを生じたという論文報告は今までない。」

という記載があります。

ランセットの論文は、アトキンスダイエットで生理的ケトーシスがあった人(40才白人女性・肥満)が、たまたま胃腸疾患で嘔吐を数日繰り返して食事摂取もできず、脱水となり、脱水のためにアシドーシスが生じたと考えられ、短期間で回復しています。

ニューイングランドジャーナルの論文は、同じ人(51才白人女性・肥満)が4回もケトアシドーシスを起こしており、何らかの代謝異常が背景にある可能性があります。

すなわち、ケトン体を上手く利用できない、極めてまれな特殊な体質であった可能性があります。

極めてまれではありますが、ケトン代謝に異常がある人があり、この場合はアトキンスダイエット(スーパー糖質制限食)の適応となりません。

このように、アトキンスダイエット(スーパー糖質制限食)実践中のケトアシドーシスの報告は、全世界で2例です。

しかも、私見ではありますが、脱水によるアシドーシスの例と特殊体質による例です。

これに対して、ペットボトル症候群(清涼飲料水ケトーシス)による糖尿病ケトアシドーシスは、相次いだどころではありません。年余にわたり多発しています。

今でも日本中でペットボトル症候群で救急車で運ばれる人は後を絶ちません。

ペットボトル症候群は、決してまれな病気ではなく、日常診療で遭遇する病気です。

日本だけでも少なくとも過去、数千人以上は報告されていて、中には死亡例もあります。

ペットボトル症候群の元凶は、ほとんどにおいて液体の糖質であり、タンパク質・脂質は無関係です。

すなわち糖質摂取以外では決して起こりえない重症な病態がペットボトル症候群です。

こちらは、病理的なケトン体上昇で、インスリン作用の欠落が必要条件です。

高糖質食と糖質制限食とどちらが危険なのか、火を見るよりも明らかですね。


(☆)
Ketoacidosis during a Low-Carbohydrate Diet.
N Engl J Med  2006; 354:97-98 January 5

(☆☆)
A life-threatening complication of Atkins diet
Lancet July 2006;367:958

江部康二

テーマ:糖尿病
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
Re: こんにちは
ジル さん。

食事と運動だけですので、低血糖を起こす可能性は低いです。

排卵期前後はいろいろな症状がでることがあります。
2012/08/29(Wed) 08:14 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re:読売新聞記事への反論①ケトン体について
>40年間で、わずか2例で、しかも2006年だけです。
>極めてまれな事象であり、決して、相次いではいません。

読売新聞の記載は,合理性を無視して、ただ修辞上の『対立』を,あたかも実在するかのようにみせかける詭弁ですね. どこかで聞いた話だなと思ったら,昔こんなJokeを聞いたのを思い出しました.
『月には空気もなく,したがって生命も存在しないというが,一方で月にはウサギが住んでいるという説もある以上、ここは公平に検討してみるべきではないか.』
2012/08/29(Wed) 19:20 | URL | しらねのぞるば | 【編集
Re: Re:読売新聞記事への反論①ケトン体について
しらねのぞるば さん。

同感です。

そもそも、
「ペットボトル症候群・日常的に毎年発生、累計数千例以上」  対  「40年間に2例」

月とスッポンですね。
2012/08/30(Thu) 14:31 | URL | ドクター江部 | 【編集
日本経済新聞の真意は??
9/2日の日経の記事は悪意に満ちたものでした。「極端な糖質制限・体調崩す元に」「臓器に負担かかる恐れ」等大見出しを読むと全面否定です。中味を読めば炭水化物は60~120g/日までとありますのでそこそこ認めているのでしょう。
まぁ相次いでマスコミが取り上げざるを得なくなったのは良いことです。
私事ですが、糖質制限すれば血糖値はリアルタイムで面白いように下がるのを実感しています。
江部康二先生これからが守旧派との勝負所ですね。
2012/09/02(Sun) 16:01 | URL | 千葉のピ-ナツ | 【編集
Re: 日本経済新聞の真意は??
千葉のピ-ナツ さん。

日経や読売の、極端な糖質制限・・・???

700万年間、穀物を食べたことがない、人類が
いきなり農耕以後は、糖質60%の、極端に偏った食生活になってますけどね・・・。

近いうちに、反論を記事にします。
2012/09/02(Sun) 19:06 | URL | ドクター江部 | 【編集
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