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「炭水化物」中心の食生活は認知症リスクを高める可能性あり
こんばんは。

精神科医Aさんから、興味深い情報をコメントいただきました。
ありがとうございます。

Carenetは医療関係者用のサイトです。

J Alzheimers Dis誌オンライン版2012年7月17日号の報告で、試験開始前に認知機能が正常であった937名のうち、200名が、軽度認知障害または認知症であると診断されました。

軽度認知障害または認知症のリスクは、炭水化物の摂取割合が高いと上昇し、脂質の摂取割合、タンパク質の摂取割合が高いと減少しました。

「炭水化物」中心の食生活は認知症リスクを高める可能性があるということですね。


「肉・卵・牛乳・油脂類をよく食べるグループ」は、『ご飯・味噌汁・漬け物をよく食べるグループ』『植物性食品をよく食べるグループ』に比べて、「知的能動性」が低下せずに保たれるという日本の報告もあります。(*)

知的能動性とは「探索」「創作」「余暇活動」などの知的活動能力です。

知的能動性が低下していけば認知症コースまっしぐらですね。

すなわち、ご飯・味噌汁・漬け物の炭水化物たっぷりパターンだと認知症になりやすいけれど、動物蛋白や油脂をしっかり食べるパターンは認知症になりにくいということで、J Alzheimers Dis誌の報告と同じ結論です。

炭水化物摂取のリスク、恐るべし!  (→ο←) 


(*)熊谷修ほか 「老年社会科学」1995;16:146-155.


江部康二

【12/08/02 精神科医師A

Carenet  公開日:2012/07/31 より

「炭水化物」中心の食生活は認知症リスクを高める可能性あり
www.carenet.com/news/risk/carenet/30280

食生活は生活習慣病の発症に関与するだけでなく、認知症の発症にも影響を及ぼすといわれている。では、どのような食生活が認知症リスクを高めるのか。Roberts氏らはカロリー摂取と認知症との関係を検討した。J Alzheimers Dis誌オンライン版2012年7月17日号の報告。

高齢者(年齢中央値:79.5歳)を対象とした集団ベースの前向きコホート研究により、毎日の総カロリーにおける主要な栄養素の割合と軽度認知障害(MCI)または認知症の発症との関係を調査した。

追跡期間の中央値は3.7年(四分位数間範囲:2.5-3.9)。認知機能はベースラインおよび15ヵ月ごとの臨床認知機能評価法(CDR)スケール、神経学的評価、神経心理学テストにより評価した。

カロリー摂取については、試験開始前に128項目に及ぶ食物に関するアンケートを実施し、1日の総カロリーや主栄養素摂取量を既成のデータベースを用い算出した。主栄養素摂取量は1日総カロリー当たりのタンパク質、炭水化物、総脂質の割合として計算された。

主な結果は以下のとおり。

・試験開始前に認知機能が正常であった937名のうち、200名はMCIまたは認知症であると診断された。
・MCIまたは認知症のリスクは、炭水化物の摂取割合が高い方で上昇し(上位四分位ハザード比:1.89、95%信頼区間:[1.17~3.06]、p=0.004)、脂質の摂取割合が高い方(0.56 [0.34~0.91]、p=0.03)やタンパク質の摂取割合が高い方(0.79 [0.52~1.20]、p=0.03)では減少した。
・炭水化物からのカロリー摂取率が高く、脂質およびタンパク質からの摂取率が低い高齢者では、MCIまたは認知症の発症リスクが増加する可能性が示唆された。

元論文
www.j-alz.com/issues/32/vol32-2.html
J Alzheimers Dis: Volume 32, Number 2
Rosebud O. Roberts, Lewis A. Roberts, Yonas E. Geda, Ruth H. Cha, V. Shane Pankratz, Helen M. O’Connor, David S. Knopman, Ronald C. Petersen (Handling Associate Editor: Francesco Panza)
Relative Intake of Macronutrients Impacts Risk of Mild Cognitive Impairment or Dementia 】


テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
先生、こんばんわ
いつも一件一件に、丁寧にお返事いただいているお姿尊敬します。いつも本当にありがとうございます。
質問させて下さい
よくブログに機能性低血糖症の場合炭水化物依存症レベルが重度・・・・・という記事を見かけますが、炭水化物依存レベルというのはどの様にして分かるものですか?

先生、低血糖症は治りますか?
糖質制限食を一生続け、炭水化物などは食べなくても良いですが、
糖質を食べても、血糖値の乱高下を起こさない体に戻れますか?

今は血糖値の乱高下による、ノルアドレナリンの作用が怖くて、炭水化物は一切取らない生活です。
ですが、たまねぎや切りぼし大根などの糖質の多い、お野菜を無性に食べたくなります。
最大3時間半くらいまでは、食事の間隔が開くようになりました。

一生糖質を取らなくてもですが、とっても大丈夫な体にいなれるならなりたいものです・・・・・
可能性はありますか?よろしくお願い致します。
2012/08/04(Sat) 21:58 | URL | mekimi | 【編集
今入院中なのですが、別の病院で血糖値に問題があるから、糖質が食べられない、と話しても病院食で出てくるのは白米です。
本当になんとかしてほしい。

良くなるものも治る気がしません。

荒木さんが開発されたパンは、どこで入手出来ますでしょうか?
出来れば入院中にそれを食べて体力つけたいです。
2012/08/05(Sun) 03:01 | URL | まゆこう | 【編集
Re: タイトルなし
mekimiさん。

正常な人でも、糖質を摂取すれば、血糖値の変動幅は、大きくなります。
糖尿病の人や機能性低血糖ほどの乱高下ではありませんが、あるていど変動幅が大きくなります。
一方、脂質・タンパク質は、血糖の変動幅は、ほぼありません。

機能性低血糖症を起こさないていどの、1回の食事の糖質摂取量があると思いますが、個人差があります。


炭水化物依存症のレベルですが、タバコ(ニコチン依存症)やお酒(アルコール依存症)と似たようなものと
考えられます。炭水化物依存症が重度の人は、そもそもやめることが困難ですね。

2012/08/05(Sun) 08:41 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: タイトルなし
まゆこう さん。

糖質制限ドットコム http://www.toushitsuseigen.com/

のパンが、糖質含有量が一番少ないので、推奨です。
2012/08/05(Sun) 08:43 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: 認知症について
優美 さん。

ネットでみると、果物が認知症を防ぐという文献もあるようです。

一方、農耕以前は、果物は時々手に入る「ラッキー食材」でした。

「ラッキー食材」を毎日大量に摂取するのは、人体のシステムには良くないと私は思います。
2012/08/05(Sun) 08:46 | URL | ドクター江部 | 【編集
『持久力には・・・』
8月4日、「ゆきだるまさん」からのコメントで
 『糖質は持久力向上には非常に重要な栄養素です。これは間違いありません。要は摂取サイクル、タイミングです。そして量です。持久力を必要とするアスリートの多数は、カーボローティングを実施しています。』がありました。

 私は以前から「炭水化物とスタミナ」の関係について疑問を感じていたので、夏井先生サイト(↓)で質問したところ、以下のお答えがありましたのでご紹介します。
 答えて下さったのは、糖質制限をしながらフルマラソンどころかウルトラマラソン(100Km)まで走る方だそうです。
 http://www.wound-treatment.jp/title_new_2012-07.htm

・質問1
 そもそも炭水化物を摂取してスタミナはつくのでしょうか?シロウトの勘ですが、どうもウソ臭い気がします。

・回答1
 確かにグリコーゲンローディングを行う事で、筋肉などに蓄えられるグリコーゲンの量は一時的には増やせるようです。しかし仰る通り、それがイコールスタミナUPには結びつかないと思います。ローディングで得られる恩恵はフルマラソンでも恐らくホンの5km程度ではないかと。オーバーペースなどがあればすぐ消し飛んでしまうようなアドバンテージにしかならず、今では「ローディングは不要です」と言う指導者も居ますね。

・質問2
 現在でもマラソンランナーの多くはレース前に大量の炭水化物を摂取するそうですが、空腹状態でマラソンを走ることはできないのでしょうか? レースの途中で給水する際、同時にスタミナ補給も可能ではないか、と思っていまるのですが・・・

・回答2
 ペースにもよりけり、なのでしょうが、フルマラソン程度なら十分可能です。今シーズンベストを出したレースでは、エネルギーゼリーを定期的に摂りながら走りました。でもコレは、スタミナ補給というよりは、低血糖を防ぐ事で、脳が運動ストップの指令を出すのを止める狙いでの摂取です。純粋にランニングに使用する糖分はスタートまでに筋肉に蓄えた「在庫」だけだと思います。

 もしかしたら「炭水化物=スタミナ」という考えは、「血糖値対策=カロリー制限」に似て「根拠のない常識」なのではないでしょうか?

 もし全部ではないにしても「スタミナ源=炭水化物」であるなら、短期間で絶食に近い減量を行い、その頂点で試合に臨むボクサーのスタミナの出ところは、一体どこにあるのでしょう?また疑問が増えてしまいました。
2012/08/05(Sun) 11:03 | URL | saty | 【編集
Re: 『持久力には・・・』
saty さん。

糖質制限食で、持久力がつきます。

少々心拍数が上昇する運動強度になっても、筋肉が「脂肪酸-ケトン体」をエネルギー源として
使い続けて、筋肉中のグリコーゲンを節約することができると、最後のラストスパートでしっかり
「ブドウ糖-グリコーゲン」をエネルギー源として利用できます。
筋肉中のグリコーゲン量が一定以下に低下すると筋肉は収縮できなくなり、動けなくなります。

マラソンなどの長距離では、筋肉のエネルギー源のほとんどを、「脂肪酸-ケトン体」でまかないます。
ブドウ糖-グリコーゲンはスパートの時だけです。

鍛えたアスリートは、鍛えることで
少々心拍数が上昇する運動強度になっても、筋肉が「脂肪酸-ケトン体」をエネルギー源として
使い続けて、筋肉中のグリコーゲンを節約することができるのでスタミナがつきます。

糖質制限食実践中なら、鍛えていなくても、
少々心拍数が上昇する運動強度になっても、筋肉が「脂肪酸-ケトン体」をエネルギー源として
使い続けて、筋肉中のグリコーゲンを節約することができるのでスタミナがつきます。

鍛えてないし、糖質制限もしていない人は、少し心拍数が上昇すると、筋肉細胞は
すぐに「ブドウ糖-グリコーゲン」に頼ってしまい、あっというまに動きが鈍くなります。
2012/08/05(Sun) 11:30 | URL | ドクター江部 | 【編集
いつもお世話になっております。
慶大医学部の坪井一男氏は著書「ごきげんな人は10年長生きできる(文春新書)」では「脳のエネルギー源となるのはブドウ糖だけではない」「『ケトン体』が脳のエネルギーとなるのだ。」と述べておられます。また、「炭水化物を減らすだけでうつもなおる!?」とも述べておられます。糖尿病専門医以外のお医者様の常識は、「炭水化物を減らす」ではないでしょうか。
2012/08/05(Sun) 13:12 | URL | 菜の花 | 【編集
Re: タイトルなし
菜の花 さん。

糖尿病専門医も含めて、糖質制限食に理解を示す医師が確実に増えていると思います。

循環器や脳卒中の専門医にも糖質制限食を取り入れようとする動きがあるのは嬉しい限りです。
2012/08/05(Sun) 18:34 | URL | ドクター江部 | 【編集
先生、お返事ありがとうございます

炭水化物、お砂糖類、デザートを一切やめられたと言うことは、炭水化物依存症ではないということですね?!!

サラダと、ゆで卵と言うランチのあとでも2時間後眠くなり、血糖値の乱高下を起こしているのかなと思いあせってしまいました・・・・

糖尿は良くなられた方がいらっしゃいますが
低血糖症は治る見込みがあるのでしょうか?

宜しくお願い致します。
2012/08/06(Mon) 07:27 | URL | mekimi | 【編集
お返事、有り難うございました。

此れからも注意深く観察して行きます。
2012/08/06(Mon) 07:48 | URL | 優美 | 【編集
まゆこうさんへ
Dr荒木のパンの事でしょう
www.low-carb.co.jp

Blogの2012年2月12日・19日のコメント、2012年4月18日の本文をご覧ください
2012/08/06(Mon) 14:04 | URL | 精神科医師A | 【編集
Re: タイトルなし
mekimi さん。

一定量以上の糖質を摂取しなければ、低血糖症は生じないと思います。

一定量には個人差があると思います。

農高前は糖質は、果物・ナッツ・根茎(山芋など)などの、時々手に入る
ラッキー食材でした。

そのラッキー食材を、毎日何回も大量に摂取すること自体が、とても変な食習慣と言えますね。
2012/08/07(Tue) 10:27 | URL | ドクター江部 | 【編集
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