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読売新聞・医療ルネサンス、糖質制限食に賛否両論という記事の検討②
おはようございます。

2012年7月26日の読売新聞・医療ルネサンスに糖質制限食に賛否両論という記事が載り、加藤浩樹さんから、コメントをいただきました。

加藤さん、情報をありがとうございます。

ルネサンスの記事ですが、最初に糖質制限食でHbA1cが、8.3%→5.8%に下がった、東京・新橋の糖質制限食専門の中華料理店「梅花」の経営者の梅橋さんの成功体験が紹介されています。

ここまではいいのですが、そのあと、

#1 ケトン体が増えすぎる危険な状態に陥った報告がある。
#2 死亡率、脳卒中や心筋梗塞の危険性が高まったという長期の追跡調査がある。

という文章が記載されていて、糖質制限食を実践している人には不安を与える内容です。

#2に関しては、信頼度の低い論文報告であることを、昨日記事にしました。

#1ですが、全世界で2例、アトキンスダイエット(糖質制限食)中の肥満女性がケトアシドーシスになった
という報告(ニューイングランド・ジャーナルとランセット)があり、(☆)(☆☆)それを心配される医師もおられます。

ごもっともとは思いますが、まず言えることは、全世界でアトキンスダイエット(スーパー糖質制限食)を実践した人は、少なくとも数十万人以上はいるので、この2例は非常にまれな特殊例ということができます。

論文を読むと2例とも、アトキンスダイエットで生理的ケトーシスがあった人が、たまたま胃腸疾患で嘔吐を数日繰り返して食事摂取もできず、脱水となり、脱水のためにアシドーシスが生じたと考えられます。いずれも短期間で回復しています。

すなわち、ことの本質は「嘔吐と食事摂取不能による脱水が原因のアシドーシス」であり、アトキンスダイエットは直接の関係はないと私は考察しました。

言い換えると、生理的ケトーシスがあって元気だった人に、「嘔吐・食事摂取不能→脱水→脱水によるアシドーシス」が加わって、結果としてケトアシドーシスを生じたということです。

例えば、江部康二は血中ケトン体値が1000μM/L(26~122)くらいあって、生理的ケトーシスですが正常で元気です。

もし私が一人で山に登って滑落して足を骨折して動けなくなり、水も飲めない状態になれば、数日で脱水によるアシドーシスになります。

この時発見されて入院すれば、初日はケトアシシドーシスということで、主治医は、重症で危険な状態と大騒ぎすることになるでしょう。

入院して生理的食塩水の点滴で脱水を補正すれば、ものの半日でアシドーシスはすぐに良くなり、元気回復です。

生理的ケトーシスは残りますが、もとの状態にもどるだけなので正常です。


ニューイングランド・ジャーナルとランセットの2例も、あくまでも私見ですが、同様に考えれば理解しやすいです。

一方、糖質の摂取によってのみ発症するペットボトル症候群(糖尿病ケトアシドーシス)(☆☆☆)は、1992年に聖マリアンナ医科大学の研究グループが初めて報告した病態です。正式には清涼飲料水ケトーシスといいます。

大量の液体の糖質を摂取することが、ペットボトル症候群の元凶です。即ち、糖質大量摂取以外には起こりえない病態ですが、今でも時々見かけます。

清涼飲料水ケトーシスの特徴
①清涼飲料水を大量に摂取する(一日平均約2リットル)
②青年期から中年にかけての男性に多い
③発症時に肥満があるが肥満歴を有する人が大半
④血縁者に糖尿病患者がいるケースが半分以上
⑤患者に病識がないか乏しい

液体糖質摂取によるペットボトル症候群(糖尿病ケトアシドーシス)は、日本だけでも少なくとも過去、数千人以上は報告されていて、中には死亡例もあります。

ペットボトル症候群は、決してまれな病気ではなく、日常診療で遭遇する病気です。

そしてその元凶は糖質の摂取であり、タンパク質・脂質は無関係です。

これらの事実に基づけば、「糖質制限食」と「高糖質食」のどちらが危険なのか、冷静に考えれば明らかですね。


江部康二


(☆)
Ketoacidosis during a Low-Carbohydrate Diet. N Engl J Med 2006; 354:97-98

(☆☆)
A life-threatening complication of Atkins diet
Lancet 2006;367:958

(☆☆☆)
ペットボトル症候群(糖尿病ケトアシドーシス)

ペットボトルを持ち歩いたりして、清涼飲料水を1日2~3リットル毎日飲み続ける人がいます。

もともと糖尿病の素因を持っていたり、軽度の糖尿病の人がこのように吸収されやすい糖質を多量に摂取していると、飲む度に血糖値が上昇してインスリンが追加分泌されるのですが、ついにはインスリンの供給が追いつかなくなり血糖値が高くなります。

一旦血糖値が高くなると糖毒*状態となります。それが続けば、糖尿病性ケトアシドーシスという危険な状態になり、ものの1~2週間で意識の混濁や昏睡に陥るケースもあります。

この様なときは、緊急入院して点滴で脱水を補正し、インスリン注射を一日3回して、血糖値をコントロールします。

コントロールできれば糖毒状態は急速に改善し、インスリン分泌能力も回復することがほとんどです。

*糖毒
① 高血糖の持続→膵臓のランゲルハンス島のβ細胞にダメージ→インスリン分泌低下
② 高血糖の持続→細胞レベルでのインスリン抵抗性増大

高血糖があると①と②が体内で生じます。インスリン分泌低下と抵抗性増大が生じれば、ますます高血糖となります。

≪高血糖の持続→インスリン分泌低下とインスリン抵抗性増大→高血糖の持続→≫

この悪循環パターンを、臨床的には「糖毒」 と呼びます。

糖毒の元凶は糖質摂取であり、タンパク質・脂質は無関係です。

なぜ、高血糖自体がインスリン分泌を低下させるのか、インスリン抵抗性を増大させるのか、最先端の研究で調べられてはいるのですが、はっきり言ってまだよくわからないのが現状です。



テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
YOMIURI ONLINEの記事
本日のYMIURI ONLINEに「極端な炭水化物制限「生命の危険も」…学会警鐘」 http://bit.ly/OqtVtY という記事が載っています。
学会としては、はっきりとした糖質制限食反対の方針のようですが、なぜこうなるのでしょう。
2012/07/27(Fri) 09:59 | URL | 長沢 | 【編集
YOMIURI ONLINEの記事に対して
昨年高尾病院に試験入院し、その時はお世話になりました。
さて、本日のYOMIURI ONLINEで【極端な炭水化物制限「生命の危険も」…学会警鐘】http://bit.ly/OqtVtY として学会としてはっきり反対の意思表示をしています。これに対してどうお考えでえすか?
2012/07/27(Fri) 10:16 | URL | 長沢 | 【編集
また、今日も読売に
江部先生、いつも情報有り難うございます。以前、肝硬変患者の糖質制限食の件でご質問させていただいた、東京タヌキです。とっても参考になり、苦しみのない糖尿人生活をおくれています。
さて、今日の讀賣新聞社会面に、さらに記事が出ました。糖尿病学会の見解と、理事長のコメントです。以下、全文貼り付けます。


讀賣新聞 2012年7月27日朝刊 社会面

極端な糖質制限健康被害の恐れ 日本糖尿病学会が警鐘

主食を控える「糖質制限食(低炭水化物食)」について、日本糖尿病学会は26日、「極端な糖質制限は健康被害をもたらす危険がある」との見解を示した。糖質制限食は、糖尿病の治療やダイエット目的で国内でも急速に広まっている。
同学会の門脇孝理事長(東大病院長)は読売新聞の取材に対し、「炭水化物を総摂取カロリーの40%未満に抑える極端な糖質制限は、脂質やたんぱく質の過剰摂取につながることが多い。短期的にはケトン血症や脱水、長期的には腎症、心筋梗塞や脳卒中、発がんなどの危険性を高める恐れがある」と指摘。「現在一部で広まっている糖質制限は、糖尿病や合併症の重症度によっては生命の危険さえあり、勧められない」と注意した。
一方、同学会では糖尿病の食事療法として、炭水化物を総摂取カロリーの50~60%にするカロリー制限食を勧めているが、この割合一を個々の患者の病態に合わせ、さらに減らせるかどうか検討を始める。

科学者の集まりである、医学の学会とは思えない、コメントですね。もっと前向きな意見が言えないものなのでしょうか。
2012/07/27(Fri) 10:23 | URL | 東京タヌキ | 【編集
いつも楽しく拝見しております。
以前スポーツジムに通っていたとき、スポーツドリンクを1Lの水筒にいれて運動中~後にガバガバのんでいました。
せっかく運動して血中の糖質を消費し脂肪を燃焼させようとしても、すぐに糖質の多い飲料水をとっていたとは・・・・そんなんで痩せるわけなかったということですね。
そしてスポーツドリンクをガバガバ飲んで血糖が上がるときに、もしかしたら恍惚感があったかもしれないと今考えております。
2012/07/27(Fri) 14:12 | URL | 腎臓外科医 | 【編集
安心しました
初めまして。先生の理論に至極賛同して夫の血糖値を下げる努力してます。
と言ってもナカナカ炭水化物と縁を切れない彼は夜のみ糖質オフ。グラクティブを飲んでいます。糖質制限一食だけですが実践してから数値が明らかに改善しました。ありがとうございます!
実は今日、美容室でダイエットの話が出まして低炭水化物の食事がいいと思う、と話したら美容師さんに脳梗塞になるから危険ですよ!とのこと。ネットで話題になってると言われました。
まさか! と思い検索したら、出る出る同じ内容の記事。これは、米やパンをどうしても食べて痩せたい〜という怠慢な人々が飛びついて英国の医療記事を流布させてるのか⁉と思ったくらいです。
自分は、糖尿病ではありませんが、二食糖質制限してます。夫の方がしないといけないのですが、元々痩せていて米かパンを朝と昼に食べないと働けないと言うので仕方なく認めてます。
私は徐々に体重が落ちてスッキリしました。全く苦痛はなく楽しくダイエットできます。
しかし、どこか不安になり江部先生のブログ拝見させていただき、安心いたしました。
私たち人類は穀物を栽培することでリスクの高い狩猟生活から食糧を自給する生活にシフトしたけど体の仕組みは糖化に抗えるように進化はしてないと私なりに先生の本を読んで解釈しました。
これからも実践します。
2012/07/27(Fri) 15:42 | URL | 知子 | 【編集
Re: YOMIURI ONLINEの記事に対して
長沢 さん。

2012年07月26日 (木)の本ブログ記事
「読売新聞・医療ルネサンス、糖質制限食に賛否両論という記事の検討」

2012年07月27日 (金)の本ブログ記事
「読売新聞・医療ルネサンス、糖質制限食に賛否両論という記事の検討②」

に書きましたように、日本糖尿病学会の見解は、根拠に乏しいものです。

私達も適宜、情報を発信して、糖質制限食論争が展開していくのはよいことと思います。
2012/07/27(Fri) 18:02 | URL | ドクター江部 | 【編集
YOMIURI ONLINEの記事
 最近多く見かけるこの種の垂れ流し記事には本当に呆れます。

 記事によると『炭水化物を総摂取カロリーの40%未満に抑える極端な糖質制限は、脂質やたんぱく質の過剰摂取につながることが多い・・・(以下省略)』とのことですが、少なくとも記事の中には何の医学的根拠も示されておりません。

 この様な発言をするなら『(ある訳ないでしょうが)炭水化物を60%も摂取させる現在の糖尿病治療食ガイドラインの医学的根拠と、その成果・実績・治癒の実例』を示し、更に危険の根拠とする医学的データに基いて『糖質制限食は危険だ』とすべきではないでしょうか(日本糖尿病学会の門脇理事長という方は本当に医師ですかね)?

日本糖尿病学会と製薬会社は、ついに

・糖質制限食が広まる
      ↓
・糖尿病患者が減る
      ↓
・飯の種がなくなり廃業に追い込まれる

という恐怖のシナリオに気付き、糖質セイゲニストを不安に陥れる作戦に出たか?と推察します。
2012/07/27(Fri) 18:26 | URL | saty | 【編集
私自身、糖質制限する事によって、長年患ってきた鬱を改善出来たので、こういう記事は非常に残念に思います。
2012/07/28(Sat) 07:10 | URL | まゆこう | 【編集
Re: 初めまして
fumy さん。

身長:156cm
体重:50kg

既に適正体重ですので、これ以上、減らす必要はないと思います。
2012/08/01(Wed) 13:39 | URL | ドクター江部 | 【編集
わたしは1型です
初めまして。わたしは1型で現在ランタス6単位のみで糖質制限して生活しています。
163センチ51㌔でもう少し減量はしたいのですが…
インスリンを打って総糖質量を数えて、活動量を考慮して…考えて打てば確かにコントロールは出来ます。出来ますが、わたしはインスリンを食前に打つことはかなりストレスが溜まります。食べるのを中断してほかのことが怖くて出来ません。
高血糖になれば罪悪感から、糖質量を減らし活動量を増やし今度は低血糖に…
そのストレスは、データだけでは分かりません。
インスリン打って食事をした後、シャワーを浴びたくても、低血糖が怖い…そんな恐怖から、糖質制限により解放されました。
表現がきつくなりますが、データからのみ分析する方々には、患者の精神的苦痛に対する理解が全くないと思います。
食べた→動かなきゃ→下げなきゃ下げなきゃ…
その苦しみからの解放はどんなデータを持ってしても、糖質制限以外では無理だと思います。
インスリン打って食べて高血糖になった患者が数値の為にどれだけ努力していたか…どれだけ虚しくなったことか…
完璧な治療とは言えなくても、現存するどんな治療よりも患者の苦痛を取り払い、食べるストレスから解放してくれるものはこれしかないと思います。
ただし、若くして発症した患者さんは糖質管理するのが一番だと思っています。
みんなと同じ食事をしたい気持ちは、発症しても捨てないで欲しいです。
2012/08/01(Wed) 22:58 | URL | えあ | 【編集
ご返答ありがとうございます。体重は、副産物として「これにつられて減ればいいなー」ぐらいの程度です。一番きがかりなのは、これ以上血糖値があがり決定的に「糖尿病」の烙印をおされてしまうことです。(母親が現在糖尿病で薬飲んでることもあり遺伝もあるのかなと思うので)。

これまで、糖尿病予備軍であるということから目をそむけたいために、健康診断の結果の空腹時血糖値やHbA1cの値を忘れようとしてきました。まだ康診断のたびに「食事と運動に気を付けて」と指導される程度で薬も飲んでいないし、特に治療もうけていませんが、今のうちに自力でどうにか正常値まで持っていこうと糖質制限をはじめてみました。始めるにあたって、あらためてここ3年の健康診断の値を見てみました。

         今年2月   2010年  2009年
空腹時血糖値   122     120    123
HbA1c      6.2     5.8    6.1

この数値って、深刻なのでしょうか?病院や医師によって、「食事にきをつければ大きな問題ではない」といわれる場合と「薬飲んでみますか?」といわれる場合があります。
体力勝負の不規則で付き合いの多い仕事やストレスもあり、かなり食欲があるタイプです。血糖値が気になり始めてからは食事には気を遣い、太らないように食材にも気をつけていましたが、仕事が忙しいときなどは、1日何も食べなかったり、おにぎり1個とか、調理パン2個とかですましていました。
糖質制限に切り替えるまでは、例にもれず、カロリー制限神話に従って食事を考えてきました。タンパク質といえば鶏肉、魚で、牛肉や豚肉はほとんど摂らず、食べても赤身やヒレ肉にしてきました。今回糖質制限にしてからは、毎日牛肉や豚肉、しかも脂身などがあるものを食べていますが、これまでなかなか減らなかった体脂肪率が1週間くらいで下がり始め、始めてから1か月弱ですが18%~19%を維持しているのが不思議です。あとは今年の健康診断が秋から冬にかけてあるのですが、そのときの血糖値がどうなっているか楽しみです。今後も変化や疑問があれば投稿いたします。
2012/08/02(Thu) 01:09 | URL | fumy | 【編集
Re: わたしは1型です
えあ さん。

163センチ51㌔・・・既にBMI19.2です。
BMI:20~25が一番、総死亡率が低いと思いますので、これ以上痩せない方がいいと思いますよ。

1型ですが内因性のインスリンがまだあるていど残っているので、
ランタスの1回注射でOKなのでしょうね。

「ランタス1回注射+スーパー糖質制限食」でコントロール良好を保てば
内因性インスリンも当分保たれることが、多いようです。
2012/08/02(Thu) 20:09 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: タイトルなし
fumy さん。

予備軍と糖尿病の間くらいなので、深刻ではありません。
糖質制限食で、まったく問題ないと思います。
2012/08/02(Thu) 20:30 | URL | ドクター江部 | 【編集
内因性インスリン
ご返事ありがとうございます。
内因性インスリンは0.214です。この数値をどう捉えたらよいか、良くわからないのですが…
活動量で消費する量を食事で取るようにしてます。筋トレも欠かさず。
減量よりもボディラインを正す方向で、血糖コントロールも合わせて頑張ります。
2012/08/03(Fri) 09:29 | URL | えあ | 【編集
2型DMと脂肪肝では?
 副作用と入れたら7月のブログへ、、 こんな場合ケトーシスに成り易い感じも有りますが、激しい運動をしなければカロリー制限で脂肪肝へも治療効果有や無しや、、
2012/09/16(Sun) 07:49 | URL | 平名 | 【編集
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