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糖質制限食だけがHbA1cを改善、RCT研究論文の解説
こんばんは。

2012年1月15日(日)第15回日本病態栄養学会年次学術集会(国立京都国際会館)「糖尿病治療に低炭水化物食は是か?非か?」ディベートセッションでスライドにしたイスラエルのRCT研究論文(*)の解説です。

ニューイングランド・ジャーナルは、数ある医学雑誌の中で最も高いインパクト・ファクターを誇っています。

言い換えれば世界で最も権威ある医学雑誌です。

その雑誌に載ったRCT研究論文ですから、エビデンスレベルは最高ランクと言えます。

職場で志願者を募り、職場のセルフサービスのカフェテリアでランチを食べるというユニークな研究です。

イスラエルではランチが一番メインの食事で、それを職場で摂るわけです。

322人を低脂肪食、地中海食、低炭水化物食に分け2年間追跡した研究です。


低脂肪食
女性1500kcal、男性1800kcal、
脂肪は総エネルギーの30%、コレステロール300mg/日

地中海食
女性1500kcal、男性1800kcal、
30-45 g/日 のオリーブオイル、5-7個/日 ナッツ、週2回の魚料理

低炭水化物食
カロリー制限なし
炭水化物20g/日で開始。最終的には120g/日摂取。
脂肪、たんぱく質は制限せず。

まず、36人の2型糖尿病患者を

低脂肪食群:11名
地中海食群:13名
低炭水化物食群:12名

無作為に振り分けて2年間観察し、低脂肪食群0.4±1.3%、地中海食群 0.5±1.1%、低炭水化物食群0.9±0.8%
HbA1cが改善しました。

このうち糖質制限食群だけがHbA1cを有意に低下させました。

空腹時血糖値については地中海食グループだけが有意に低下していたので、糖質制限食グループでHbA1cが改善したのは、食後高血糖を予防したことが寄与したと考えられます。

低炭水化物食でも、3ヶ月目からは、120g/日摂取の糖質を摂取しているので、空腹時血糖値改善に有意差がでなかった可能性があります。

ちなみにスーパー糖質制限食なら40~60g/日以下の糖質摂取です。

ついで2年間の平均体重減少は、脱落せず終了した277人において

低脂肪食 3.3 kg、地中海食 4.6 kg、低炭水化物食 5.5 kg

低炭水化物食が最も、体重減少効果が認められました。

HDLコレステロールは、低炭水化物食群で最も増加しました。

総コレステロール/HDLコレステロール比も、低炭水化物食群が最も低下・改善しました。

中性脂肪は、低炭水化物食群で低脂肪食群に比し、有意に改善しました。

LDLコレステロールは、3群で有意差がなかったです。

結論です。

本論文では、低炭水化物食群において、

HbA1cが有意に改善
体重は最も減少
HDLコレステロールは最も増加
総コレステロール/HDLコレステロール比も改善
中性脂肪も低脂肪食群に比し有意に改善

唯一LDLコレステロールだけは有意差がなかったですが、低炭水化物食(糖質制限食)の有効性、面目躍如ですね。


(*)
Iris Shai,et all:Weight Loss with a Low-Carbohydrate,Mediterranean,or Low-Fat Diet. NENGLJ MED JULY17,2008、VOL359. NO.3 229-241



江部康二
テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
あさひ内科クリニック
本日ネット検索していたところ、あさひ内科クリニックのホームページを見付けました。福島県郡山市で新井圭輔さんという京大医学部卒のお医者さんが開業している個人病院です。
そのトップページに3枚のスライドがあります。3枚とも図、写真満載で大変分かりよいものですが、糖質、炭水化物が糖尿病、メタボをもたらすとともに、過剰なブドウ糖が癌の原因になっていると強調しておられます。
実証として、癌患者に糖質制限をさせたところ、進行が穏やかになった、癌が小さくなった、癌特有の痛みがなくなり楽になったということです。少ない症例なので糖質制限が癌予防になるという理論は仮説であると控えめに言われていますが、大変頼もしい報告です。
また、糖質の過剰摂取は睡眠中も脳を働かせるため、睡眠不足、不眠症につながるということも述べておられます。江部先生からは不眠症との関係は伺ったことがないのですが、どのように思われますでしょうか?私は2年間スーパーを貫いてきましたが、確かに睡眠が深くなりました。
2012/02/23(Thu) 22:34 | URL | コバタケ | 【編集
先生、こんばんは。いつも有益な情報をありがとうございます。
質問なのですが、糖質制限食において、タンパク質・脂質を、「動物性」か「植物性」のどちらかを選ぶかによって、血糖関連も含めその他の検査数値の変化や体調などに、何か有意差はあるのでしょうか?
当方、肉や卵が嫌いなので、大豆、野菜でカロリーを摂っています。
「動物性」・「植物性」の脂質・タンパク質に優劣はあるのでしょうか?
オメガ3はサプリメントで摂取しています。
お忙しいかと存じますが、ご回答頂けたら幸いです。
2012/02/23(Thu) 22:35 | URL | さう~で | 【編集
Re: あさひ内科クリニック
コバタケ さん。

新井圭輔先生からは一度お手紙をいただきました。
きっちりとした医療と糖質制限食を展開しておられ、嬉しい限りです。

正常人においても精製炭水化物を普通に摂取するとグルコースミニスパイクが生じます。
このとき大量のインスリンが分泌されて、血糖値が下降し、
血糖値のミニ乱高下が生じます。
これが心理的に不安定になる要因の一つと思います。
従って糖質制限食で心理的に安定することが多く、睡眠も改善する可能性があると思います。
2012/02/23(Thu) 22:52 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: タイトルなし
さう~で さん。

血糖には差はありません。
他の検査データは、エビデンスと言えるほどの研究論文がないので、わかりません。

ただ日本脂質栄養学会は、動物性脂肪のほうが安全性が高いと明言しています。
2012/02/23(Thu) 22:55 | URL | ドクター江部 | 【編集
先生、早速のご回答ありがとうございました。
日本脂質栄養学会の発表のこと、調べてみます。

糖質制限というパラダイムの大転換で、多方面から根拠のない批判も多いかと存じますが、ブログの更新を陰ながら応援させて頂いております。

2012/02/24(Fri) 08:42 | URL | さう~で | 【編集
江部先生、こんにちは。
先日はお返事ありがとうございます。
江部先生のコメントに励まされています。
糖質制限食と毎日のウォーキング(夜一時間歩きます)、日中の移動は歩きで車は使いません、一日一万歩以上歩くようにしています。
楽しく目標を持って取り組んでいますが、ここでやる気をなくす・・・ストレスの存在があります。
私は自営業の夫と結婚して夫の親と同居です。
夫の親は両方とも認知症でおかしいので夫も私もストレスで精神を病みそうです。
私はウォーキングしたりして何とかごまかして生活しておりますが・・・ここのところ甘いものが無性に食べたくて仕方ありません。
パンが食べたくて仕方がないのです。
そんな欲求にはどうやって対応したらよろしいでしょうか?
パンは日中にロールパンくらいのを最高でも2つまでにして食べたら絶対に歩きます。
夜は夕食を少量にするか、最悪抜きます。
スーパーをやると決めた時に自分でルールを作りました。
また認知症の夫の両親が会社の代表になっているため世代交代して夫を代表にしたいのになかなか認知症で進みません。
これも考えるだけでストレスです。
最近では認知症の夫の両親を見るだけでも胃が痛いです。
頭がおかしくなりそうです。
そんな時はひたすら歩きます。
食べたくなってしまったら間食はしない方向で何を食べたらいいでしょうか?
あと便秘には何が効果的ですか?
主治医に言ったらプルゼニドを処方されました。
よろしくお願いします。
2012/02/24(Fri) 15:35 | URL | しげりん | 【編集
Re: タイトルなし
しげりん さん。

糖質制限食OKのパンもありますよ。
糖質制限ドットコム http://www.toushitsuseigen.com/

小腹が空いたときは、チーズ、ゆで卵、天日干しスルメ、干し貝柱、ナッツ類20粒・・・
いろいろあります。

便秘には、葉野菜をしっかり食べましょう。
2012/02/24(Fri) 16:38 | URL | ドクター江部 | 【編集
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