2012年01月31日 (火)
こんにちは。
2012.1.15・第15回 日本病態栄養学会 年次学術集会の立論を友人がテープ起こしして文字データにしてくれたので、ブログ記事にします。
個人情報ということもあり、是側の江部康二の立論のみを公開します。
一つの区切りが、1枚のスライドに相当します。
スライドなしで台詞だけですので、若干わかりにくいところもあると思いますが、臨場感を高めるということで、そのまま載せてみました。
スライド25枚で15分間の立論ですが、5枚のスライドはタイトルだけなので、かなりゆっくりわかりやすく話すことができたと思います。
DebateⅡ
糖尿病治療に低炭水化物食は 是か?非か?
日時:2012年1月15日 10:00~11:00
場所:京都国際会館
座長:門脇孝 先生( 東京大学 糖尿病・代謝内科、日本糖尿病学会理事長)
是側:江部康二(高雄病院)
非側:久保明 先生(高輪メディカルクリニック、東海大学 抗加齢ドック)
江部:
『それでは時間がもったいないので早速始めたいと思います。
私は是側から糖質制限食・低炭水化物食の有効性安全性長期予後ということで、お話したいと思います。
糖尿病治療において糖質制限食、低炭水化物食が有効である。
まず、これは米国糖尿病学会が、患者さんの教育用に配っている資料の記載です。
血糖を上昇させるのは糖質のみ、糖質は数分から120分で100%血糖に変る。タンパク質、脂肪は血糖値を上昇させない。
ここちょっと肝なんですけども、97年バージョンで今日本で一番出回っている訳本、池田先生のパーフェクトガイド、
タンパク質が50%血糖に変る、脂質が10%変るというのが97年版には載っていましたが、2007年版で削除されています。』
『で、これはアメリカ糖尿病学会の栄養勧告です。
これもそのきっちりある時点をおいてころっと変ってきています。
2008年度版より、低炭水化物食を肯定というかたちにきっちりかわっております。カーボカウントとか含めて、炭水化物を日常的に継続的に点検することを強く推奨しております。
減量が望まれる糖尿病患者には、低カロリー食、または低炭水化物食によるダイエットがランクAで推奨されました。
2007年までは同じ栄養勧告で炭水化物を1日130g以下に制限することは、推奨できないときっちり、明確に否定的な表現がADAの栄養勧告にあります。
で、その後2008年で初の肯定的な見解が出されて、2011年には有益性の保証期間が1から2年に延びました。そして2012年の最終最新の勧告でもこれを継承しております。
ですから2008年にADAは、ころっとある意味肯定的にかわっているということをしっかり説明したいと思います。』
『でこれは、RCT研究論文ニューイングランドジャーナルの有名な報文です。
糖尿病患者は36名を3群に分けて検討しています。2年間です。
従来の低脂肪食、カロリー制限ありが①番、
②番がオリーブオイルたっぷりまあ油たっぷりの地中海食、これもカロリー制限あり、
③はカロリー制限なしのハンディーのついた低炭水化物食。
でHbA1cに関して2年間検討した結果、カロリー制限無しのハンディがあつたにもかかわらず、低炭水化物食群だけがHbA1cを優位に改善させたという結論です。
つまり低脂肪食と地中海食はHbA1cを改善させなかったという2年間の結果です。』
『私たちが患者さんに実際に行っている一般にスーパー糖質制限食とか言っております。
高雄病院方式では、約12%ほどの糖質が入ります。でこれは、野菜に含まれる糖質です。白菜にも菜っ葉にも含まれています。
これが一番お勧めではあります。
従来の糖尿病食では大体55~60%の糖質ということで、ここに大きな差があります。』
『実際に高雄病院の症例ですが、カロリーをまず同一にしまして、従来の糖尿病食と糖質制限食で日内変動をとって入院患者さんできっちりデータを見てみました。』
『この方は28歳女性で検査時HbA1c6.1%、糖尿病食1400kcal糖質があります。
空腹時は88、食パン2枚を普通に食べて321。
といったかたちで空腹時の血糖は好ましい状態なんですが、食後の高血糖がカロリー制限1400kalでは全く防げておりません。
で同じ方、2日後薬は全くなし、1400kcalのスーパー糖質制限食、ご覧のように食後の血糖値の上昇は殆どないといっていいと思います。』
『これがグラフですが、カロリー制限1400kcal、糖質ありであれば巨大なグルコーススパイクを起こしています。
スーパー糖質制限食であれば1日の血糖変動幅が殆どない、安定した状態を保つことができます。』
『これはお薬を飲んだ場合です。
検査時、入院時にA1cが7.0%アマリールとメデットを内服されたまま、男性ですので1600kcalで糖質有りの食事をしていただきます。
そうすると薬を飲んでおられても240とか食後の高血糖が防げておりません。
これは同じ方を薬一切中止しまして2日後、スーパー糖質制限食、薬なしのハンディにも係わらず、ほぼ血糖値の上昇は無く、境界レベルですが殆ど正常といってもよいと思います。』
『今度はインスリン注射をされている方です。
A1c6.4%、発症時は10.5%である程度インスリンを打って良くなっているのですが、1200kcalのカロリー制限食では1日1回は200を超えています。
全くインスリン無しにして5日後に糖質制限食で血糖を測定したところ、全くインスリン無しにも係わらず、血糖値の変動は1日を通して殆どありません。』
『高雄病院には約600名の糖尿病の異なる患者さんが入院して来られました。特にこの5年位は毎年100名以上入院されてます。基本的に全ての患者さんに今症例で出しましたような日内変動の比較検討をおこなっております。
従来の糖尿病食では基本的に血糖値を上げる唯一の糖質が入っておりますので、提示した症例と似たようなもので、基本的に1人前の糖質を食べれば食後血糖は殆ど200を越えています。
糖質制限食では、ほとんどの例で先に申しましたように注射とか内服薬を無しにしたハンディがあっても、血糖変動幅は殆ど無く、食後高血糖を防ぐこと防ぐことができます。』
『これは最近のやつですが健康診断で11.7%A1c、空腹時血糖338で、この方はお父さんが私の患者さんだったので自分で糖質制限食を開始されました。
で、やって来られた時には既に良くなっていて、1ヶ月半でA1c8.4%、空腹時血糖87まで改善されていました。
あとはこんな感じでコントロール良好を保っています。
今までお示ししました症例ですけど、その別に特殊例ではありません。
先生方帰ってご自分の病院でもためされたらわかりますけれども、たまたまではなく、みんなこんなものになります。』
『私自身も10年間スーパー糖質制限食をやっております。2型の糖尿病です。
2002年開始時は、メタボのデータ全部・・・腹部CTまでとりましたけれど、全部みたしておりましたが、半年で10kg痩せて全て正常になりました。
A1c5.3、空腹時血糖103、脂肪たっぷりとっていますが中性脂肪39、HDL123、LDL107、ま、こんなものです。
それでも、例えば玄米でも一人前食べれば240~250とか軽くいきます。
私は、糖質制限食をしておれば正常人。普通に糖質を食べてしまえば糖尿人ということになります。
肝はケトン体です。必ず避けて通れないので言うときますけれども、1187と一般的の基準値26~122と比べればものすごく高いです。
インスリン作用が一定に保たれておれば、ケトン体がなんぼ上昇しても全く安全です。PHも正常です。
尿中のケトン体はもう出ません。
心筋、骨格筋、体細胞がしっかり血中ケトン体を利用しますので大体3月~半年で出なくなります。
効率が良くなります。腎の再吸収も高まると。』
『糖質制限食の利点、食後高血糖が殆ど生じない。1日の平均血糖変動幅も極めて少ない。基礎分泌インスリンがある程度保たれてる段階なら、空腹時血糖値も改善する。したがってHbA1cも速やかに改善する。
追加分泌のインスリンの必要性が極めて少ないので、疲弊していたβ細胞が休養できて回復します。中性脂肪値は速やかに改善します。
HDLコレステロールは増加します。LDLコレステロールに関して低下・不変・上昇の3パターンあるのですが、半年、1年、2年続けていかれたら殆どの方が基準値になります。
薬は必要ないか、最小限ですみます。』
『安全性に関する考察です。糖質制限食は高脂質、高たんぱく食になります。』
『これは、1980年から2000年の20年間8万人の女性看護士の研究です。
コホートですね。
低炭水化物食上位10%から順番に10段階作って一番多い炭水化物で10個に分けています。
一番少ない低炭水化物食が36%多い方は58です。
これで比べたところ高脂肪、高たんぱくの低炭水化物食に関して、一番高炭水化物食に較べて別に心臓病のリスクは上昇しなかった。
一方、総炭水化物摂取量は 冠動脈疾患リスクの中等度増加に関連。
そして高GLは冠動脈疾患リスク増加に強く関連していた。
ということですね。ニューイングランドジャーナルのコホート研究です。』
『で、ケトン食・・・ご存知の先生方もおられるかと思います。
脂質が75~80%、おそらく血中ケトン体は2000~4000マイクロモルになります。
これもインスリン作用がある程度保たれていればケトン体高値はきわめて正常で安全なものです。
コクランのライブラリー2010年、ナイス英国のガイドライン2011年、この両者において難性小児癲癇治療に正式にケトン食が採用されました。
スーパー糖質低減食よりさらに高脂質低糖質であるケトン食を公的なガイドラインが2つ採用されたことは、私にとってはうれしいことでした。
1920年代からケトン食は難知性小児癲癇の治療法として欧米でも日本でも実施されてきました。
で、90年間を経てとうとう安全性が確立して公的ガイドラインとして採用されたのかなという思いがあります。
もちろん、先生方ご存知のとおり、脳はブドウ糖だけでなく、ケトン体をなんぼでも利用することができます。
ケトン食の場合、例えばケトン体血中レベルが2000~4000の場合、脳のエネルギー源は殆どがケトン体です。
ブドウ糖はごく少量です。ケトン体をメインに脳はこの時は使います。』
『糖質制限食の長期的予後に関する考察です。』
『先ほどのニューイングランドジャーナル、
322人の肥満のかたがたを3グループに分けた。
で結局、低炭水化物食が体重減少効果、HDLコレステロールを一番増加、HbA1c値も優位差をもって改善。
すなわちRCT研究論文において低脂肪カロリー制限、地中会食カロリー制限に比べて低炭水化物食、カロリー制限なしが一番有効であった。
これらのデータがよければ当然長期予後もいいだろう。』
『これがそのデータ。
紫色の線が低炭水化物、赤い線が低脂肪カロリー制限食、従来の健康食は一番有効性が低かったです。』
『でJAMA等のRCT研究論文2007年、AtoZダイエット、
アトキンスからゾーン、ラーン、オーニッシュに行くに従って炭水化物が増えていきます。
でこれもRCTですけども、アトキンスが一番低炭水化物、結局低炭水化物食が体重を最も減少させて、血中コレステロールと中性脂肪を改善しました。』
『で、これはバーンスタイン先生、自らがⅠ型の糖尿病であって、12歳くらいからずっとインスリンを打っておられます。
で、本も書いておられます。
バーンスタイン先生がセカンドネームになっている論文ですけども、低炭水化物食が血糖コントロールを改善し、インスリン追加分泌を減少させて、メタボリックシンドロームの全ての指標を改善させたという結論です。』
『で、これは2000年から2007年まで、低炭水化物食と低脂質食を比較検討したRCT論文を解析した研究です。
ま、オベシティー・レビュー。国際肥満連合の公式ジャーナル。
体重減少、中性脂肪減少、HDLコレステロール増加は低炭水化物食が低脂質低カロリー食に比し有効ということです。13の電子データベースのメタアナリシスです。』
『で、糖質制限食の長期予後。
血糖値が改善します。
HbA1cも改善します。
中性脂肪値も改善します。
HDLコレステロールも改善します。
肥満も改善します。
LDLも1~2年で正常化します。
現在動脈硬化のリスク要因として確定している上記が全て改善します。
このことを思えば長期予後も良い可能性が高いと思います。
以上です。』
江部康二
2012.1.15・第15回 日本病態栄養学会 年次学術集会の立論を友人がテープ起こしして文字データにしてくれたので、ブログ記事にします。
個人情報ということもあり、是側の江部康二の立論のみを公開します。
一つの区切りが、1枚のスライドに相当します。
スライドなしで台詞だけですので、若干わかりにくいところもあると思いますが、臨場感を高めるということで、そのまま載せてみました。
スライド25枚で15分間の立論ですが、5枚のスライドはタイトルだけなので、かなりゆっくりわかりやすく話すことができたと思います。
DebateⅡ
糖尿病治療に低炭水化物食は 是か?非か?
日時:2012年1月15日 10:00~11:00
場所:京都国際会館
座長:門脇孝 先生( 東京大学 糖尿病・代謝内科、日本糖尿病学会理事長)
是側:江部康二(高雄病院)
非側:久保明 先生(高輪メディカルクリニック、東海大学 抗加齢ドック)
江部:
『それでは時間がもったいないので早速始めたいと思います。
私は是側から糖質制限食・低炭水化物食の有効性安全性長期予後ということで、お話したいと思います。
糖尿病治療において糖質制限食、低炭水化物食が有効である。
まず、これは米国糖尿病学会が、患者さんの教育用に配っている資料の記載です。
血糖を上昇させるのは糖質のみ、糖質は数分から120分で100%血糖に変る。タンパク質、脂肪は血糖値を上昇させない。
ここちょっと肝なんですけども、97年バージョンで今日本で一番出回っている訳本、池田先生のパーフェクトガイド、
タンパク質が50%血糖に変る、脂質が10%変るというのが97年版には載っていましたが、2007年版で削除されています。』
『で、これはアメリカ糖尿病学会の栄養勧告です。
これもそのきっちりある時点をおいてころっと変ってきています。
2008年度版より、低炭水化物食を肯定というかたちにきっちりかわっております。カーボカウントとか含めて、炭水化物を日常的に継続的に点検することを強く推奨しております。
減量が望まれる糖尿病患者には、低カロリー食、または低炭水化物食によるダイエットがランクAで推奨されました。
2007年までは同じ栄養勧告で炭水化物を1日130g以下に制限することは、推奨できないときっちり、明確に否定的な表現がADAの栄養勧告にあります。
で、その後2008年で初の肯定的な見解が出されて、2011年には有益性の保証期間が1から2年に延びました。そして2012年の最終最新の勧告でもこれを継承しております。
ですから2008年にADAは、ころっとある意味肯定的にかわっているということをしっかり説明したいと思います。』
『でこれは、RCT研究論文ニューイングランドジャーナルの有名な報文です。
糖尿病患者は36名を3群に分けて検討しています。2年間です。
従来の低脂肪食、カロリー制限ありが①番、
②番がオリーブオイルたっぷりまあ油たっぷりの地中海食、これもカロリー制限あり、
③はカロリー制限なしのハンディーのついた低炭水化物食。
でHbA1cに関して2年間検討した結果、カロリー制限無しのハンディがあつたにもかかわらず、低炭水化物食群だけがHbA1cを優位に改善させたという結論です。
つまり低脂肪食と地中海食はHbA1cを改善させなかったという2年間の結果です。』
『私たちが患者さんに実際に行っている一般にスーパー糖質制限食とか言っております。
高雄病院方式では、約12%ほどの糖質が入ります。でこれは、野菜に含まれる糖質です。白菜にも菜っ葉にも含まれています。
これが一番お勧めではあります。
従来の糖尿病食では大体55~60%の糖質ということで、ここに大きな差があります。』
『実際に高雄病院の症例ですが、カロリーをまず同一にしまして、従来の糖尿病食と糖質制限食で日内変動をとって入院患者さんできっちりデータを見てみました。』
『この方は28歳女性で検査時HbA1c6.1%、糖尿病食1400kcal糖質があります。
空腹時は88、食パン2枚を普通に食べて321。
といったかたちで空腹時の血糖は好ましい状態なんですが、食後の高血糖がカロリー制限1400kalでは全く防げておりません。
で同じ方、2日後薬は全くなし、1400kcalのスーパー糖質制限食、ご覧のように食後の血糖値の上昇は殆どないといっていいと思います。』
『これがグラフですが、カロリー制限1400kcal、糖質ありであれば巨大なグルコーススパイクを起こしています。
スーパー糖質制限食であれば1日の血糖変動幅が殆どない、安定した状態を保つことができます。』
『これはお薬を飲んだ場合です。
検査時、入院時にA1cが7.0%アマリールとメデットを内服されたまま、男性ですので1600kcalで糖質有りの食事をしていただきます。
そうすると薬を飲んでおられても240とか食後の高血糖が防げておりません。
これは同じ方を薬一切中止しまして2日後、スーパー糖質制限食、薬なしのハンディにも係わらず、ほぼ血糖値の上昇は無く、境界レベルですが殆ど正常といってもよいと思います。』
『今度はインスリン注射をされている方です。
A1c6.4%、発症時は10.5%である程度インスリンを打って良くなっているのですが、1200kcalのカロリー制限食では1日1回は200を超えています。
全くインスリン無しにして5日後に糖質制限食で血糖を測定したところ、全くインスリン無しにも係わらず、血糖値の変動は1日を通して殆どありません。』
『高雄病院には約600名の糖尿病の異なる患者さんが入院して来られました。特にこの5年位は毎年100名以上入院されてます。基本的に全ての患者さんに今症例で出しましたような日内変動の比較検討をおこなっております。
従来の糖尿病食では基本的に血糖値を上げる唯一の糖質が入っておりますので、提示した症例と似たようなもので、基本的に1人前の糖質を食べれば食後血糖は殆ど200を越えています。
糖質制限食では、ほとんどの例で先に申しましたように注射とか内服薬を無しにしたハンディがあっても、血糖変動幅は殆ど無く、食後高血糖を防ぐこと防ぐことができます。』
『これは最近のやつですが健康診断で11.7%A1c、空腹時血糖338で、この方はお父さんが私の患者さんだったので自分で糖質制限食を開始されました。
で、やって来られた時には既に良くなっていて、1ヶ月半でA1c8.4%、空腹時血糖87まで改善されていました。
あとはこんな感じでコントロール良好を保っています。
今までお示ししました症例ですけど、その別に特殊例ではありません。
先生方帰ってご自分の病院でもためされたらわかりますけれども、たまたまではなく、みんなこんなものになります。』
『私自身も10年間スーパー糖質制限食をやっております。2型の糖尿病です。
2002年開始時は、メタボのデータ全部・・・腹部CTまでとりましたけれど、全部みたしておりましたが、半年で10kg痩せて全て正常になりました。
A1c5.3、空腹時血糖103、脂肪たっぷりとっていますが中性脂肪39、HDL123、LDL107、ま、こんなものです。
それでも、例えば玄米でも一人前食べれば240~250とか軽くいきます。
私は、糖質制限食をしておれば正常人。普通に糖質を食べてしまえば糖尿人ということになります。
肝はケトン体です。必ず避けて通れないので言うときますけれども、1187と一般的の基準値26~122と比べればものすごく高いです。
インスリン作用が一定に保たれておれば、ケトン体がなんぼ上昇しても全く安全です。PHも正常です。
尿中のケトン体はもう出ません。
心筋、骨格筋、体細胞がしっかり血中ケトン体を利用しますので大体3月~半年で出なくなります。
効率が良くなります。腎の再吸収も高まると。』
『糖質制限食の利点、食後高血糖が殆ど生じない。1日の平均血糖変動幅も極めて少ない。基礎分泌インスリンがある程度保たれてる段階なら、空腹時血糖値も改善する。したがってHbA1cも速やかに改善する。
追加分泌のインスリンの必要性が極めて少ないので、疲弊していたβ細胞が休養できて回復します。中性脂肪値は速やかに改善します。
HDLコレステロールは増加します。LDLコレステロールに関して低下・不変・上昇の3パターンあるのですが、半年、1年、2年続けていかれたら殆どの方が基準値になります。
薬は必要ないか、最小限ですみます。』
『安全性に関する考察です。糖質制限食は高脂質、高たんぱく食になります。』
『これは、1980年から2000年の20年間8万人の女性看護士の研究です。
コホートですね。
低炭水化物食上位10%から順番に10段階作って一番多い炭水化物で10個に分けています。
一番少ない低炭水化物食が36%多い方は58です。
これで比べたところ高脂肪、高たんぱくの低炭水化物食に関して、一番高炭水化物食に較べて別に心臓病のリスクは上昇しなかった。
一方、総炭水化物摂取量は 冠動脈疾患リスクの中等度増加に関連。
そして高GLは冠動脈疾患リスク増加に強く関連していた。
ということですね。ニューイングランドジャーナルのコホート研究です。』
『で、ケトン食・・・ご存知の先生方もおられるかと思います。
脂質が75~80%、おそらく血中ケトン体は2000~4000マイクロモルになります。
これもインスリン作用がある程度保たれていればケトン体高値はきわめて正常で安全なものです。
コクランのライブラリー2010年、ナイス英国のガイドライン2011年、この両者において難性小児癲癇治療に正式にケトン食が採用されました。
スーパー糖質低減食よりさらに高脂質低糖質であるケトン食を公的なガイドラインが2つ採用されたことは、私にとってはうれしいことでした。
1920年代からケトン食は難知性小児癲癇の治療法として欧米でも日本でも実施されてきました。
で、90年間を経てとうとう安全性が確立して公的ガイドラインとして採用されたのかなという思いがあります。
もちろん、先生方ご存知のとおり、脳はブドウ糖だけでなく、ケトン体をなんぼでも利用することができます。
ケトン食の場合、例えばケトン体血中レベルが2000~4000の場合、脳のエネルギー源は殆どがケトン体です。
ブドウ糖はごく少量です。ケトン体をメインに脳はこの時は使います。』
『糖質制限食の長期的予後に関する考察です。』
『先ほどのニューイングランドジャーナル、
322人の肥満のかたがたを3グループに分けた。
で結局、低炭水化物食が体重減少効果、HDLコレステロールを一番増加、HbA1c値も優位差をもって改善。
すなわちRCT研究論文において低脂肪カロリー制限、地中会食カロリー制限に比べて低炭水化物食、カロリー制限なしが一番有効であった。
これらのデータがよければ当然長期予後もいいだろう。』
『これがそのデータ。
紫色の線が低炭水化物、赤い線が低脂肪カロリー制限食、従来の健康食は一番有効性が低かったです。』
『でJAMA等のRCT研究論文2007年、AtoZダイエット、
アトキンスからゾーン、ラーン、オーニッシュに行くに従って炭水化物が増えていきます。
でこれもRCTですけども、アトキンスが一番低炭水化物、結局低炭水化物食が体重を最も減少させて、血中コレステロールと中性脂肪を改善しました。』
『で、これはバーンスタイン先生、自らがⅠ型の糖尿病であって、12歳くらいからずっとインスリンを打っておられます。
で、本も書いておられます。
バーンスタイン先生がセカンドネームになっている論文ですけども、低炭水化物食が血糖コントロールを改善し、インスリン追加分泌を減少させて、メタボリックシンドロームの全ての指標を改善させたという結論です。』
『で、これは2000年から2007年まで、低炭水化物食と低脂質食を比較検討したRCT論文を解析した研究です。
ま、オベシティー・レビュー。国際肥満連合の公式ジャーナル。
体重減少、中性脂肪減少、HDLコレステロール増加は低炭水化物食が低脂質低カロリー食に比し有効ということです。13の電子データベースのメタアナリシスです。』
『で、糖質制限食の長期予後。
血糖値が改善します。
HbA1cも改善します。
中性脂肪値も改善します。
HDLコレステロールも改善します。
肥満も改善します。
LDLも1~2年で正常化します。
現在動脈硬化のリスク要因として確定している上記が全て改善します。
このことを思えば長期予後も良い可能性が高いと思います。
以上です。』
江部康二
江部先生
こんばんわ。
ディベ-ト実際の様子の報告ありがとうございました。臨場感あふれるもので、討論会での立論よく理解できました。
糖質制限食なら、薬やインスリンを使用せず、血糖値、HA1cが正常値に維持できることが明確に述べられているにもかかわらず、日本経済新聞、1/29(日)の記事では正しく伝えられていません。やはり、記者はうまく理解できなかったのか、居眠りでもしていたのかもしれないと思った次第です。
名古屋・h
こんばんわ。
ディベ-ト実際の様子の報告ありがとうございました。臨場感あふれるもので、討論会での立論よく理解できました。
糖質制限食なら、薬やインスリンを使用せず、血糖値、HA1cが正常値に維持できることが明確に述べられているにもかかわらず、日本経済新聞、1/29(日)の記事では正しく伝えられていません。やはり、記者はうまく理解できなかったのか、居眠りでもしていたのかもしれないと思った次第です。
名古屋・h
中華料理ヤン さん。
減量成功、良かったです。
ダイエット目的なら、1食の糖質30g以下でもいいのですが、
糖尿病の場合は、20g以下が望ましいですね。
1gの糖質が、体重64kgの2型糖尿人の血糖値を、3mg上げますので。
減量成功、良かったです。
ダイエット目的なら、1食の糖質30g以下でもいいのですが、
糖尿病の場合は、20g以下が望ましいですね。
1gの糖質が、体重64kgの2型糖尿人の血糖値を、3mg上げますので。
2012/02/01(Wed) 08:33 | URL | ドクター江部 | 【編集】
名古屋・hさん 。
日経の記者さん、いろんな医師から情報をとりすぎて、
個別の情報の信頼度が評価できなくて、
あのような表現になったのでしょう。
信頼度の高いRCT研究論文を、是側は3本揃えたのに対して、
非側は信頼度の低い英国砂糖局がスポンサーの一つの歪曲論文1本、
というあたりの明確な差を、理解できなかったのだと思います。
日経の記者さん、いろんな医師から情報をとりすぎて、
個別の情報の信頼度が評価できなくて、
あのような表現になったのでしょう。
信頼度の高いRCT研究論文を、是側は3本揃えたのに対して、
非側は信頼度の低い英国砂糖局がスポンサーの一つの歪曲論文1本、
というあたりの明確な差を、理解できなかったのだと思います。
2012/02/01(Wed) 08:42 | URL | ドクター江部 | 【編集】
ディベ-トお疲れさまでした。
完璧な感じですね。
ぐうの音も出なかったんじゃないですか。
暖かくなったら時間を作ってそちらに行きますのでよろしくお願いします。
完璧な感じですね。
ぐうの音も出なかったんじゃないですか。
暖かくなったら時間を作ってそちらに行きますのでよろしくお願いします。
2012/02/01(Wed) 10:10 | URL | iammichi | 【編集】
前から疑問に思ってたんですが、よく聞く説明に、
「食後高血糖に対処するために、インスリンが食後に大量分泌される。
それを繰り返していると、膵臓のβ細胞が疲弊して、インスリンが分泌能が低下していく」
がありますし、一般的な考え方として普及していると思います。
この考え方に何か根拠はあるのでしょうか?例えばエビデンスとして認められているような。
逆に考えれば、
「食後高血糖に対処するために、インスリンが食後に大量分泌される。
それを繰り返していると、膵臓のβ細胞がそれに対応して、
インスリン分泌が増大するよう強化される」
という考え方も出来るような気もするんですが…よろしくお願いします。
「食後高血糖に対処するために、インスリンが食後に大量分泌される。
それを繰り返していると、膵臓のβ細胞が疲弊して、インスリンが分泌能が低下していく」
がありますし、一般的な考え方として普及していると思います。
この考え方に何か根拠はあるのでしょうか?例えばエビデンスとして認められているような。
逆に考えれば、
「食後高血糖に対処するために、インスリンが食後に大量分泌される。
それを繰り返していると、膵臓のβ細胞がそれに対応して、
インスリン分泌が増大するよう強化される」
という考え方も出来るような気もするんですが…よろしくお願いします。
2012/02/04(Sat) 00:39 | URL | peavywagner | 【編集】
先生、リベートの結果報告有難うございました。
ところでもうすぐバレンタインですが、普通のチョコレートはやはり糖質が気になりますよね。
そこで大事な方々に過糖にならないように低糖なチョコレートを購入して、自分で生チョコ、トリュフを作ってみました。
思ったよりずっと簡単なんですね。
先生のブログで紹介されていた横浜の湘南台の先生が私の主治医なのですが、今度診察の折にプレゼントするつもりです。
糖質制限食を続けるには主食を制限することが一番ですが、もどきを上手に用いるともっと楽しくできますよ。例えば、ふすまパンや大豆麺はいいですね。今日ふすまパンの粉を使って、スポンジケーキを焼いてみました。5回粉を振るったら、ふすまの匂いが消えて美味しく焼けました。
これでケーキも自分で焼いて、友人にあげることができます。
先日糖尿病の友人にふすまパンのお惣菜パンやお菓子パン、チーズケーキを差し入れたときに
お庭に生っていた夏みかんを頂き、マーマレードを作りました。もちろんラカントで甘味します。
苦味がなんともいえない爽やかな味わいに初めての経験でした。
糖質制限をもっと楽しみましょうが、私の提案です。
ところでもうすぐバレンタインですが、普通のチョコレートはやはり糖質が気になりますよね。
そこで大事な方々に過糖にならないように低糖なチョコレートを購入して、自分で生チョコ、トリュフを作ってみました。
思ったよりずっと簡単なんですね。
先生のブログで紹介されていた横浜の湘南台の先生が私の主治医なのですが、今度診察の折にプレゼントするつもりです。
糖質制限食を続けるには主食を制限することが一番ですが、もどきを上手に用いるともっと楽しくできますよ。例えば、ふすまパンや大豆麺はいいですね。今日ふすまパンの粉を使って、スポンジケーキを焼いてみました。5回粉を振るったら、ふすまの匂いが消えて美味しく焼けました。
これでケーキも自分で焼いて、友人にあげることができます。
先日糖尿病の友人にふすまパンのお惣菜パンやお菓子パン、チーズケーキを差し入れたときに
お庭に生っていた夏みかんを頂き、マーマレードを作りました。もちろんラカントで甘味します。
苦味がなんともいえない爽やかな味わいに初めての経験でした。
糖質制限をもっと楽しみましょうが、私の提案です。
2012/02/05(Sun) 21:48 | URL | さくら | 【編集】
peavywagner さん。
興味深い質問ですので
お答えは記事にしたいと思います。
興味深い質問ですので
お答えは記事にしたいと思います。
2012/02/05(Sun) 21:57 | URL | ドクター江部 | 【編集】
さくら さん。
美味しく楽しく糖質制限食を、
実践しておられるのですね。
美味しく楽しく糖質制限食を、
実践しておられるのですね。
2012/02/05(Sun) 22:40 | URL | ドクター江部 | 【編集】
先生、質問ですがラカントsの食物繊維100g当たり99.5gとありますが、熱量0なら糖質は0なのでしょうか?砂糖も食物繊維は同じぐらいです糖質の表示はありませんが、カロリーがあるということは糖質があるということですよね。
ラカントsをを使ってお菓子作りをしているので、是非知っていたいのです。どうぞ宜しくお願いします。
ラカントsをを使ってお菓子作りをしているので、是非知っていたいのです。どうぞ宜しくお願いします。
2012/02/05(Sun) 23:00 | URL | さくら | 【編集】
さくらさんへ
ラカントSの公式サイトhttp://www.lakanto.jp/をご覧になってはいかがでしょう。
ラカントQ&Aに「エネルギーが0kcalのワケは?」という項目があります。
※念のため、回答をコピーペーストしておきますね。
(なお、ラカントSの類似品にはご注意を。)
※
エリスリトールは、体内でほとんどエネルギーにならない甘味料。
その90%以上が尿中に排泄されます。
吸収が容易でエネルギー発生量がきわめて少なく、血糖値などにも影響を与えません。
平成11年4月26日施行の「衛新第13号」、"栄養表示基準における栄養成分等の分析方法等について"
において、施行の「栄養表示基準」によるエネルギー換算係数においても、そのエネルギー値は
いずれも0kcal/gと測定されています。
現在、糖質のなかで唯一の、エネルギー"ゼロ"の甘味料です。
ラカントSの公式サイトhttp://www.lakanto.jp/をご覧になってはいかがでしょう。
ラカントQ&Aに「エネルギーが0kcalのワケは?」という項目があります。
※念のため、回答をコピーペーストしておきますね。
(なお、ラカントSの類似品にはご注意を。)
※
エリスリトールは、体内でほとんどエネルギーにならない甘味料。
その90%以上が尿中に排泄されます。
吸収が容易でエネルギー発生量がきわめて少なく、血糖値などにも影響を与えません。
平成11年4月26日施行の「衛新第13号」、"栄養表示基準における栄養成分等の分析方法等について"
において、施行の「栄養表示基準」によるエネルギー換算係数においても、そのエネルギー値は
いずれも0kcal/gと測定されています。
現在、糖質のなかで唯一の、エネルギー"ゼロ"の甘味料です。
2012/02/06(Mon) 10:16 | URL | ヘティ | 【編集】
ラカントsの糖質についての回答ありがとうございました。
糖質制限ますます楽しく出来そうです。
糖質制限ますます楽しく出来そうです。
2012/02/06(Mon) 15:36 | URL | さくら | 【編集】
1月29日日経電子版に掲載されておりました。
この時の久保明先生のスライドがm3に掲載されました。
http://medshare.m3.com/document/150206
http://medshare.m3.com/document/150206
2012/03/27(Tue) 09:43 | URL | koro | 【編集】
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