2012年01月18日 (水)
こんにちは。
evidence based medhicine(証拠に基づく医学)→略してEBM
EBMが現在、医学界を席巻しています。
医学界において、evidence(エビデンス、証拠)となるのは、基本的に医学雑誌に掲載された論文です。
定評ある医学専門誌に掲載された論文であることも、evidence(エビデンス、証拠)の大きな要素となります。
2012年1月15日に開催された、第15回日本病態栄養学会年次学術集会(国立京都国際会館)
「糖尿病治療に低炭水化物食は是か?非か?」ディベートセッション
において、私は是側として医学雑誌に発表されたエビデンスレベルの高いRCT研究論文を、3つスライドでだしました。
ディベートセッションで一番説得力があるのは、権威ある(インパクトファクターが高い)医学雑誌に載った、エビデンスレベルの高いRCT研究論文です。
私のスライドのニューイングンランドジャーナルのDIRECTという論文、米国医師会雑誌(JAMA)の「A to Z study」という論文がそれに相当します。
Obesity Reviews(国際肥満研究連合の公式ジャーナル)のRCT研究論文もなかなかのエビデンスレベルです。
非側の出されたスライド中のRCT研究論文は、英国砂糖局がスポンサーの一つであるDiabetesという医学雑誌のもので、冒頭の結論と本文の内容が違うという極めてエビデンスレベルの低いものでした。
2012年1月14日の「食品交換表とカーボカウント」ワークショップでも引用されたRCT論文は、上記の英国砂糖局がスポンサーのものでした。
病態栄養学会以外にも、この一年間、糖質制限食を批判する論文がいくつかでましたが、引用されているRCT研究論文は、英国砂糖局がスポンサーの一つである論文だけでした。
結局、どうやら本当に糖質制限食に否定的なRCT研究論文は、他にないようです。
当然とは言え、やはり安心します。
なおエビデンスレベルには法則があり
①無作為割り付け臨床試験(RCT)
②前向きコホート研究
③コホート内症例割り付け研究
④後ろ向けコホート研究
⑤etc・・・・
といった順番で、信頼度に差をつけられています。
これを研究デザインのヒエラルキーと呼ぶそうです。
EBMだけに頼る医療を目指しているわけではないのですが、今回はディベートセッションでしたので、EBMにも少し拘って立論を展開しました。
江部康二
evidence based medhicine(証拠に基づく医学)→略してEBM
EBMが現在、医学界を席巻しています。
医学界において、evidence(エビデンス、証拠)となるのは、基本的に医学雑誌に掲載された論文です。
定評ある医学専門誌に掲載された論文であることも、evidence(エビデンス、証拠)の大きな要素となります。
2012年1月15日に開催された、第15回日本病態栄養学会年次学術集会(国立京都国際会館)
「糖尿病治療に低炭水化物食は是か?非か?」ディベートセッション
において、私は是側として医学雑誌に発表されたエビデンスレベルの高いRCT研究論文を、3つスライドでだしました。
ディベートセッションで一番説得力があるのは、権威ある(インパクトファクターが高い)医学雑誌に載った、エビデンスレベルの高いRCT研究論文です。
私のスライドのニューイングンランドジャーナルのDIRECTという論文、米国医師会雑誌(JAMA)の「A to Z study」という論文がそれに相当します。
Obesity Reviews(国際肥満研究連合の公式ジャーナル)のRCT研究論文もなかなかのエビデンスレベルです。
非側の出されたスライド中のRCT研究論文は、英国砂糖局がスポンサーの一つであるDiabetesという医学雑誌のもので、冒頭の結論と本文の内容が違うという極めてエビデンスレベルの低いものでした。
2012年1月14日の「食品交換表とカーボカウント」ワークショップでも引用されたRCT論文は、上記の英国砂糖局がスポンサーのものでした。
病態栄養学会以外にも、この一年間、糖質制限食を批判する論文がいくつかでましたが、引用されているRCT研究論文は、英国砂糖局がスポンサーの一つである論文だけでした。
結局、どうやら本当に糖質制限食に否定的なRCT研究論文は、他にないようです。
当然とは言え、やはり安心します。
なおエビデンスレベルには法則があり
①無作為割り付け臨床試験(RCT)
②前向きコホート研究
③コホート内症例割り付け研究
④後ろ向けコホート研究
⑤etc・・・・
といった順番で、信頼度に差をつけられています。
これを研究デザインのヒエラルキーと呼ぶそうです。
EBMだけに頼る医療を目指しているわけではないのですが、今回はディベートセッションでしたので、EBMにも少し拘って立論を展開しました。
江部康二
norikky さん。
応援ありがとうございます。
今回の日本病態栄養学会で、医学界にかなりの橋頭堡を築けたと思います。
おそらく1200人くらいのディベート参加者のうち1000人くらいが、私のブログを覗いてくれてます。
応援ありがとうございます。
今回の日本病態栄養学会で、医学界にかなりの橋頭堡を築けたと思います。
おそらく1200人くらいのディベート参加者のうち1000人くらいが、私のブログを覗いてくれてます。
2012/01/19(Thu) 16:51 | URL | ドクター江部 | 【編集】
1/14のワークショップ「食品交換表とカーボカウント」
整形の中村Drは「炭水化物摂取が全カロリーの50-60%という食事指導に、エビデンスはあるのか」と質問した。
幣氏が「エビデンスはないです」と回答。
中村氏「エビデンスのないのに、あるかのように言うのはおかしい」
幣氏「低炭水化物食で悪化した例を昨年の学会で発表している」
中村氏「そういう例もあるが、よくなった例もあるはずです」
幣氏はそれ以上答えなかった。
□
日本病態栄養学会誌 13(5)154-154, 2010
2011年1月学会発表O-147
低炭水化物ダイエットから蛋白質制限食への転換を行った糖尿病腎症患者の栄養管理の一例
京都大学医学部附属病院 1疾患栄養治療部栄養管理室、2糖尿病・栄養内科
松原 亜海1、菅野美和子1、幣 憲一郎1、魚永多恵子2、泉 諒太2、
長嶋一昭2、豊田健太郎2、藤本新平2、稲垣 暢也2
【症例】63歳、男性。15年来の糖尿病歴があるも放置。糖尿病腎症2期、CKDstage3。脳出血(63歳時)にて入院時にインスリン療法開始となったが、その後インスリン使用を拒否し「低炭水化物ダイエット」を開始。血糖値は低下傾向認めたが、BUNの上昇、体重の著明な減少認め、以前から指摘されている腎機能障害の精査目的にて当院腎臓内科を受診。
腎エコー上腎萎縮、腎硬化症の合併を複合した糖尿病腎症を認めた。体重減少が続くため、これまで拒否していたインスリンによる治療と通常の糖尿病腎症の食事療法を行いたいとの希望あり当科紹介入院。「低炭水化物ダイエット」は入院前日まで継続しており、入院時の食事の聞き取り調査ではエネルギー1500kcal/day(23.9kcal/㎏IBW)蛋白質135g(22g/㎏IBW)、脂質95g、炭水化物25g、(P:F:C=36%:57%:7%)の高蛋白質・高脂質・低炭水化物の栄養組成であった。入院前Cre18㎎/dl、BUN49ng/dl、K5.1mEq/l。
入院後は1800kcal(28.7kcal/kgIBW)蛋白質60g(O.96g/㎏IBW)、脂質45g、炭水化物310g、(P:F:C=13%:18%:69%)、塩分6gにて開始。経過中、体重増加乏しいため2100kcal/day(33.5kcal/㎏IBW)に増加した。退院時BUN27mg/dlまで低下、Cre1.6mg/dl K4.8mEq/lと悪化はみられず、栄養指標も改善傾向認めた。
【考察・結論】極端な低炭水化物ダイエットから通常の糖尿病腎症食への変更により、栄養状態、患者QOLならびに食事療法コンプライアンスが改善した症例を経験した。高蛋白質食から低蛋白質食に変更する際窒素平衡を確認し標準体重当たり蛋白質1.Ogとしたが、Creは安定しBUNの低下がみられた。極端な栄養組成の食事療法は、摂食量の低下のみならず患者QOLも低下させていた。糖尿病患者に対する食事療法は、単に血糖値のみにならず合併症の有無(程度)、栄養状態および療養コンプライアンス等を総合的に考慮した上で適切な指導なされることが重要である。
整形の中村Drは「炭水化物摂取が全カロリーの50-60%という食事指導に、エビデンスはあるのか」と質問した。
幣氏が「エビデンスはないです」と回答。
中村氏「エビデンスのないのに、あるかのように言うのはおかしい」
幣氏「低炭水化物食で悪化した例を昨年の学会で発表している」
中村氏「そういう例もあるが、よくなった例もあるはずです」
幣氏はそれ以上答えなかった。
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日本病態栄養学会誌 13(5)154-154, 2010
2011年1月学会発表O-147
低炭水化物ダイエットから蛋白質制限食への転換を行った糖尿病腎症患者の栄養管理の一例
京都大学医学部附属病院 1疾患栄養治療部栄養管理室、2糖尿病・栄養内科
松原 亜海1、菅野美和子1、幣 憲一郎1、魚永多恵子2、泉 諒太2、
長嶋一昭2、豊田健太郎2、藤本新平2、稲垣 暢也2
【症例】63歳、男性。15年来の糖尿病歴があるも放置。糖尿病腎症2期、CKDstage3。脳出血(63歳時)にて入院時にインスリン療法開始となったが、その後インスリン使用を拒否し「低炭水化物ダイエット」を開始。血糖値は低下傾向認めたが、BUNの上昇、体重の著明な減少認め、以前から指摘されている腎機能障害の精査目的にて当院腎臓内科を受診。
腎エコー上腎萎縮、腎硬化症の合併を複合した糖尿病腎症を認めた。体重減少が続くため、これまで拒否していたインスリンによる治療と通常の糖尿病腎症の食事療法を行いたいとの希望あり当科紹介入院。「低炭水化物ダイエット」は入院前日まで継続しており、入院時の食事の聞き取り調査ではエネルギー1500kcal/day(23.9kcal/㎏IBW)蛋白質135g(22g/㎏IBW)、脂質95g、炭水化物25g、(P:F:C=36%:57%:7%)の高蛋白質・高脂質・低炭水化物の栄養組成であった。入院前Cre18㎎/dl、BUN49ng/dl、K5.1mEq/l。
入院後は1800kcal(28.7kcal/kgIBW)蛋白質60g(O.96g/㎏IBW)、脂質45g、炭水化物310g、(P:F:C=13%:18%:69%)、塩分6gにて開始。経過中、体重増加乏しいため2100kcal/day(33.5kcal/㎏IBW)に増加した。退院時BUN27mg/dlまで低下、Cre1.6mg/dl K4.8mEq/lと悪化はみられず、栄養指標も改善傾向認めた。
【考察・結論】極端な低炭水化物ダイエットから通常の糖尿病腎症食への変更により、栄養状態、患者QOLならびに食事療法コンプライアンスが改善した症例を経験した。高蛋白質食から低蛋白質食に変更する際窒素平衡を確認し標準体重当たり蛋白質1.Ogとしたが、Creは安定しBUNの低下がみられた。極端な栄養組成の食事療法は、摂食量の低下のみならず患者QOLも低下させていた。糖尿病患者に対する食事療法は、単に血糖値のみにならず合併症の有無(程度)、栄養状態および療養コンプライアンス等を総合的に考慮した上で適切な指導なされることが重要である。
2012/01/19(Thu) 21:13 | URL | 精神科医師A | 【編集】
精神科医師A さん。
貴重な情報をありがとうございます。
この症例は、糖質制限食中にやせてますし、1500kcalの低カロリーと異化亢進で
BUNが49mgで、クレアチニンは1.8mgです。
糖尿病腎症第2期で、クレアチニン1.8、カリウム4.8というのは、
脱水傾向のあった可能性もありますね。
従ってこの症例は、糖質制限食で腎機能悪化というより、低カロリーによる異化反応と脱水による
見かけ上の腎機能悪化であった可能性が高いと考えられます。
脱水の補正と、1800~2100kcalの糖質制限食で問題なかった可能性が高いですね。
貴重な情報をありがとうございます。
この症例は、糖質制限食中にやせてますし、1500kcalの低カロリーと異化亢進で
BUNが49mgで、クレアチニンは1.8mgです。
糖尿病腎症第2期で、クレアチニン1.8、カリウム4.8というのは、
脱水傾向のあった可能性もありますね。
従ってこの症例は、糖質制限食で腎機能悪化というより、低カロリーによる異化反応と脱水による
見かけ上の腎機能悪化であった可能性が高いと考えられます。
脱水の補正と、1800~2100kcalの糖質制限食で問題なかった可能性が高いですね。
2012/01/20(Fri) 15:50 | URL | ドクター江部 | 【編集】
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