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高脂肪の食事が善玉菌殺す??…北大グループ研究
こんばんは。

「高脂肪の食事が善玉菌殺す…北大グループ研究」という記事が読売オンラインに掲載されました。

結論から言えば、あくまでもラットの実験であり、ヒトには全く当てはまりませんのでブログ読者の皆さん、ご心配なく。


以下読売オンラインの記事を転載です。

【脂肪が多い食事を食べると、消化液(胆汁)が大腸の「善玉菌」を殺し、腸内細菌のバランスを壊すことが、北海道大の研究でわかった。

消化液の分泌が引き金となってメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)や大腸がんが発症する可能性を示しており、米消化器病学会の専門誌11月号に掲載された。

研究したのは同大農学部の横田篤教授(微生物生理学)らのグループ。ラットの普通のえさに、高脂肪食で分泌される濃度に近い胆汁を混ぜて10日間食べさせ、盲腸の細菌の変化を調べた。

通常は、大腸や盲腸で約1000種類の細菌が見つかるが、胆汁を混ぜたえさのラットは「クロストリジウム」に分類される菌が98・6%を占め、菌の8割はたった4種類になった。この菌が大半を占めるのは、米国の肥満患者の研究と同じ傾向だった。通常は1割ほどいる乳酸菌などは、ほとんど見つからなかった。
(2011年11月18日17時33分 読売新聞)】


どんな研究でも手軽なので、マウスやラットが実験動物として使われやすいです。

しかし、マウスやラットで高脂肪食の実験をすること自体が、根本的なカテゴリー・エラーなのです。(*- -)(*_ _)

なぜなら、マウスやラットなどネズミ類は、本来の主食は草の種子(即ち今の穀物)です。

草原が地球上の有力な植生として現れる鮮新世(510万年前)以降、ネズミ科の動物が出現して爆発的に繁栄します。

510万年間、草原の草の種子(穀物)を食べ続けてきたネズミに高脂肪食を与えれば、代謝が破綻するのは当たり前です。

ネズミの主食はあくまでも「穀物=低脂質食」なのです。

これは単純に、マウスの代謝に合わない(主食でない)高脂肪食を与えて病気を作るという実験です。

全ての代謝が狂って病気だらけになるのもいわずもがなです。

例えば、ゴリラの主食は「棘の多い大きな蔓や大きな草」です。

このように、超低脂質食が主食であるゴリラに高脂肪食を食べさせたら、代謝はガタガタになり、マウスやラットと同様、たちどころに様々な病気になるでしょう。

ゴリラだと、高脂肪食を食べさせることの間違いが、ラットよりイメージしやすいですね。

人類の主食が何であったかはともかくとして、農耕が始まる前の700万年は、穀物ではなかったことは確実です。

そして歴史的事実として、農耕の前は人類皆、糖質制限食でした。

またヒトの進化の過程で脳が急速に大きくなり、シナプシスが張り巡らされるためには、EPAとDHAの摂取が不可欠でした。

EPAとDHAは地上の植物性食品には含まれておらず、動物性食品にしか含まれていません。

従って少なくとも、肉・骨髄・昆虫・地虫・魚貝・・・などの高脂肪・高タンパク食を、脳が急速に発達した20万年前頃、必要充分な量、食べてたことは間違いないでしょう。

このように人類は本来高脂肪食には慣れているので、高脂肪食の安全性は高いのです。

ラットやゴリラと、ヒトの食性は全く異なっているのです。

結論です。

薬物の作用や毒性をネズミ類で動物実験するのは、研究方法として特に問題はないと思います(動物実験自体の是非はおいておきます)。

しかし、本来主食が全く異なるマウス・ラットなどネズミ類で、人類の食物代謝の研究をおこなうのは出発点から
根本的に間違っている可能性があるので注意が必要です。

研究者の皆さん、「薬物の動物実験」と「食物の動物実験」は、全く意味が異なることを認識してほしいと思います。そこのところ、是非よろしくお願い申し上げます。 m(_ _)m



江部康二
テーマ:糖尿病
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
いつも先生の著書やブログで勉強させて頂いております。ありがとうございます。
このニュースの記事を読んだとき、私はギョッとしました!
たしかに、ラットでの結果を、すぐにそのまま人間に当てはめることは考えものですが、ラットでの研究結果を経てからヒトにも応用して食品や薬剤の危険性・有効性を確かめているのも事実だと思います。
先生が「ヒトには全く当てはまりません」と仰る研究結果がございましたら、是非お教え頂きたいのです。糖質制限中でもあり、心配しております(涙)。
2011/11/19(Sat) 19:38 | URL | 糖質制限中人 | 【編集
先生、こんばんは!いつもお世話になってます^^
私もこのニュースを見ました。先生の仰るように、高脂肪食はネズミにはふさわしくないでしょうが、研究で与えたのは、高脂肪食ではなく、普通のエサ+10%の胆汁です。人間の場合も、胆汁が善玉菌を殺し、悪玉菌を増やすのはないでしょうか??心配です…。
2011/11/19(Sat) 19:45 | URL | ひろりん☆ | 【編集
この論文ですね
http://www.gastrojournal.org/article/S0016-5085(11)01081-X/abstract
2011/11/19(Sat) 20:08 | URL | 精神科医師A | 【編集
もしも?
人間の食物実験をするのなら、強いて挙げるならどの動物が近いのでしょうか?
2011/11/20(Sun) 01:19 | URL | DJニューエラ | 【編集
チーズについて
江部先生、お早うございます。

以前、一度質問させて頂いたミクママと申します。

私は糖尿ではありませんが、先生の説に感銘を受け、5年間続けたマクロを4か月前にやめ、徐々に主食を減らし、現在は、スーパーを実践して2週間になるところです。

先生は、細かな生理学的事実だけでなく、ヒトが500万年の歴史で何を食べてきたか、という大きな視点も持っておられ、そこに凡百の医師にはない鋭い知性を感じますし、儲け的には割が合うとは思われないアトピー学校をやっておられるところなど、倫理性も高く、とても尊敬しています。

さて、チーズに含まれるガラクトースを分解するガラクトキナーゼという酵素を日本人は持っておらず、そのために白内障になる、というはなしを目にしました。

この根拠の一つは、ラットによる実験のようなので、ヒトに当てはまるのか怪しいですが、疫学調査もあるようです。

そして、もっとも気がかりなのは、乳製品が牧畜以前にはなかったのだとしたら、乳製品には穀物ほど糖質は含まれていないとはいえ、そもそも生物学的ヒトにとって比較的新しい、不慣れな食材なのではないか、という点です。

私は、もともと華奢な体型な上に、現在スーパーを実践しているので、ともすると痩せすぎになってしまうため、チーズやバター(それとナッツ)でカロリーをかせいでいますが、このようにチーズやバターを多食することに少し不安があります。実際おなかがごろごろします(もっともこれはスーパーを実践し始めたことによる過度的な変化なのでしょうか)。

お忙しいところ申し訳ありませんが、お時間ありましたらご意見お聞かせ下さい。

では、失礼します。
2011/11/20(Sun) 05:57 | URL | ミクママ | 【編集
ゴリラの例はとてもわかり易かったです
江部先生、いつもあらゆる角度から、糖尿病への示唆を頂きありがとうございます。
新刊「主食をやめると健康になる ー 糖質制限食で体質が変わる!(ダイヤモンド社)」は(20)11.11.11に地元の本屋で購入して2度通読しました。らこ にとっては、今回の本が最も勉強になっております!

 本日ブログのマウス実験ですが、ゴリラ を例に出して頂き、目からウロコ でした。

 これからもご指導のほど、よろしくお願い申し上げます(ペコッ
2011/11/20(Sun) 08:27 | URL | らこ | 【編集
Re: タイトルなし
糖質制限中人さん。

そのような論文はないと思います。

しかし、イヌイットが高脂肪・高タンパクの伝統的食生活(生肉、生魚が主食)を続けていたころは、
大腸がんはほとんどありませんでした。

イヌイットがバノックという小麦の無発酵パンを主食として、30~40年後には
大腸ガン発症は欧米と変わらなくなりました。

このころはメタボという概念がないので、こちらは比較できませんが
まず伝統的食生活のイヌイットに内臓脂肪が多いということはなかったと思います。
心筋梗塞は大変少なかったですしね。
2011/11/20(Sun) 10:06 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: タイトルなし
ひろりん☆ さん。

糖質制限中人さんへの

私のコメントをご参照ください。
2011/11/20(Sun) 10:08 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: もしも?
DJニューエラ さん。

主食は全ての動物種で基本的に異なっています。
従ってそのような動物はないと思います。
2011/11/20(Sun) 10:17 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: チーズについて
ミクママさん。

ガラクトキナーゼ欠損症は、まれな遺伝的先天的疾患でガラクトース血症を生じ症状は重篤です。
肝硬変、腎不全、白内障、敗血症、髄膜炎などを、生じます。

それ以外の人は皆、赤ちゃんも成人もガラクトキナーゼを持っています。

ガラクトース血症は、酵素ラクターゼの減少による乳糖不耐症と混同されることが多いようですが、
全く異なります。

日本人はラクターゼが離乳後減少して、所謂乳糖不耐症となる人が多いのですが、
大量の牛乳を飲まない限り下痢・腹痛はありません。
またチーズやヨーグルトはラクトースがかなり分解されているので、
乳糖不耐症の人でも大丈夫です。


*参考
ガラクトース血症・ウィピキペディアです。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AC%E3%83%A9%E3%82%AF%E3%83%88%E3%83%BC%E3%82%B9%E8%A1%80%E7%97%87
2011/11/20(Sun) 10:58 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: ゴリラの例はとてもわかり易かったです
らこ さん。

拙著のご購入ありがとうございます。

糖尿病やメタボだけでなく、
「健康」という視野から、ヒトと糖質制限症を幅広く解説した本です。
参考になれば嬉しいです。
2011/11/20(Sun) 11:00 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: 排卵期からの高血糖について
へいはち さん。

排卵から生理3日頃までの血糖値の上昇、漢方を試す価値はあると思います。

漢方治療は、基本的に健康保険が使えます。
例外的に保険外のものもあります。
だいたい、3割負担で月に¥2000~数千円くらいまでです。

2011/11/20(Sun) 18:07 | URL | ドクター江部 | 【編集
有難うございます
早々のお返事ありがとうございました
遠方ですが、時間を見つけてご相談に伺おうと思います
その時はよろしくお願いします
2011/11/20(Sun) 20:09 | URL | へいはち | 【編集
感謝です
初めて投稿させていただきます。
いつも勉強させていただいております。ありがとうございます。

このラット実験の記事を読んで、1913年のロシアの病理学者ニコライ・アニチコワが、ウサギに卵を与えた実験の話を思い出してしまいました。
ヒトはヒト。ラットはラット。ゴリラはゴリラ。食べ物が違うんですよね。
先生の糖質制限食に出会って、食べ物(食べ方)に気を付けて、健診結果の改善がありましたので、感謝の報告をしたいと思います。

           平成22年    平成23年
HDLコレステロール    40       56
中性脂肪        103       36
LDLコレステロール  146      123
GOT            30       19
GPT            58       21
γGTP          44       19
空腹時血糖      222       97
HbA1C       未検査         4.8
尿酸           5.8        7.6

1年前の健診で、これはまずいと思い、糖質制限食に出会い、救われました。
スーパー糖質制限で、1年間で体重は15キロ減です。
尿酸値が高めですが、痛風発作もないので、先生のおっしゃるとおり様子を見たいと思います。
これからも、楽しく糖質制限を続けて行く所存です。よろしくご指導ください。
大げさですが、命を救われた思いです。ありがとうございます。
2011/11/21(Mon) 00:47 | URL | おおおお | 【編集
Re: 感謝です
おおおお さん。

素晴らしい改善ですね。
良かったです。
2011/11/21(Mon) 16:50 | URL | ドクター江部 | 【編集
主食とは
ご説明納得です。
人とラットは違うのに、健康に関して「高脂質食を食べさせたラットが・・・」ってテレビ番組をよく見かけます。
何万年も食べてきた物を食べないとだめですね。
私も、主食を減らすことで中性脂肪は改善しました。
血糖値も改善傾向です。
今後もブログ拝見させていただきます。
2012/05/15(Tue) 00:31 | URL | ばと | 【編集
>>EPAとDHAは地上の植物性食品には含まれておらず、動物性食品にしか含まれていません。

従って少なくとも、肉・骨髄・昆虫・地虫・魚貝・・・などの高脂肪・高タンパク食を、脳が急速に発達した20万年前頃、必要充分な量、食べてたことは間違いないでしょう。

などと記載されておりますが、
DHA,EPAは動物では魚類のみ、またDHA、EPAの元になるαリノレン酸は、植物では亜麻にありますが…

ま、亜麻はかなり特殊な植物なので、人類は魚類からαリノレン酸(DHA、EPA)を摂取していたのでしょう。
文章を訂正したほうがよいのでは?
2014/04/03(Thu) 21:11 | URL | 質問 | 【編集
Re: タイトルなし
質問 さん

ご指摘ありがとうございます。

ご指摘通り、人類は魚類からEPAやDHAを摂取していたと思います。
2014/04/03(Thu) 23:13 | URL | ドクター江部 | 【編集
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