FC2ブログ
久山町研究50周年記念講演会のご報告
こんばんは。

Mdayon さんから、久山町研究50周年記念講演会について、コメントいただきました。

実は私も、九州大学100年講堂で行われた、その講演会にいってきました。

【11/10/29 Mdayon
久山町研究50周年記念講演会

久山町研究50周年記念講演会に行ってきました。
http://www.envmed.med.kyushu-u.ac.jp/50th/

日本医学界のそうそうたるメンバーが一同に会したというところでしょうか。

配布資料もなく、スライドと口演だけでしたので、素人の小生に要約は無理ですが、、、

以下、キーワードから推測・補足していただけると良いのですが。

・門脇先生が、久山町での指導の結果糖尿病が激増した事実は述べていました。

しかし、その原因は

1.遺伝子要因
2.生活習慣
3.膵β細胞の障害

であるとしていました。

1.日本人・アジア人にはミトコンドリアDNA異常(3243変異)がある。欧米型の生活習慣を取り入れた結果、「PPARγ」「UBEZE」「KXNQ1」とあいまって、リスクアリル数が増加した。

2.生活習慣がメタボを招き、前立腺以外のすべてのがんを増加させた。それには「mTOR」「IRS-2」の関与が大きい。
 注目されるべきは「アディポネクチン」で、肥満を減少させ「インスリン抗体状況」を好転させる。
 カロリーを70%にすれば長寿になる。

3.一旦「膵β細胞の障害」が発生すれば、坂道を転がり落ちるごとく悪化する。

4.まとめ
 生活習慣・遺伝子・ゲノムコホートの検証が必要であり、いわば「オーダーメイド型医療」となるべきである。
 そのキーワードは「予測」「予防」「個別」「参加」(4つのP~)

結局、「糖質制限」には、まったく触れませんでした!!

・もうひとつ、中村先生の口演のなかで印象に残ったこと。

日本の「ゲノム解析体制」は世界に遅れをとっている。オバマ大統領やブレーヤ首相が「ゲノム解析」の成果発表に立ち会っているのに、日本ではどうか。

次世代「シークエンサー」開発が進めば、医療費の大幅な削減にもつながるはずである。】


Mdayon さん。
コメントありがとうございます。

基調講演 

『変貌する生活習慣病の現状と課題:久山町研究』

座長: 滋賀医科大学生活習慣病予防センター 特任教授 上島 弘嗣 先生
演者: 九州大学大学院医学研究院環境医学分野 教授 清原 裕

特別講演

『わが国における脳卒中の過去・現在・未来 ~その特徴と今後の展望~』

座長: 国立循環器病研究センター 名誉総長 尾前 照雄 先生
演者: 国立循環器病研究センター 名誉総長 山口 武典 先生

『2型糖尿病の成因 ~遺伝素因・生活習慣相互作用~』

座長: 九州中央病院 院長 飯田 三雄 先生
演者: 東京大学大学院医学系研究科糖尿病代謝内科 教授 門脇 孝 先生

『パーソナルゲノム医療に向けて』

座長: 九州大学大学院医学研究院病態機能内科学 教授 北園 孝成 先生
演者: 東京大学医科学研究所・ヒトゲノム解析センター
ゲノムシークエンス解析分野 教授 中村 祐輔 先生

Mdayon さんのご指摘通り、そうそうたるメンバーの特別講演が目白押しで、肝心の清原裕先生の基調講演が、皆さんと一緒の45分間だったのは残念でした。

質問とかする時間も全くありませんでした。参加者も、ほとんどが医療関係者のようでした。

特別講演は、山口先生、門脇先生、中村先生いずれも結構難しい内容でした。

中村先生のお話しが、高度な内容をわかりやすくという意味では、とても良かったです。

清原先生は、久山町は50年間人口がほぼ安定で、常に日本全体の年齢別構成比とほぼ一緒、つまり日本の縮図ということを強調しておられました。

日本の縮図の町で人口が安定しているので、疫学的研究が非常に実施しやすいということでした。

その意味でも世界にも類を見ない、質の高い研究であり、今後も注目したいと思います。

内容として、近年、久山町でも、糖尿病など代謝疾患が増加したことは強調されましたが、その原因とか、1988年から食事療法と運動療法をきっちり指導したのに、結局、糖尿病発症予防には失敗したというような考察とかはゼロでした。

データも2002年の検診のものまでで、新しいものはありませんでした。

久山町で、1988年と2002年に40~79才の年齢層の80%近い住民を対象とした、75g経口血糖負荷試験を用いた糖尿病の有病率調査が以下です。


男性
        1988         2002
糖尿病    15.0        23.6%
IGT    19.2        21.6%
IFG     8.0        14.7%
合計      42.2        59.9%


女性 
        1988         2002
糖尿病     9.9         13.4%
IGT     18.8         21.3%
IFG      4.9         6.6%
合計      33.6         41.3%

IGTとIFG合わせて糖尿病予備軍です。
(IGT:食後2時間血糖値が140mg/dl以上200mg/dl未満のもの)
(IFG:空腹時血糖値が110mg/dl以上で126mg/dl未満のもの)

14年間の「食事療法と運動療法」指導にもかかわらず、久山町では糖尿病・耐糖能異常が激増したのですが、日本の縮図である久山町がこうなのだから、日本全体もこれぐらい耐糖能異常があるはずだと清原先生は仰有ってました。

しかし、40才以上の男性住民の約60%が耐糖能異常というのは、異常事態です。

いくら何でも、日本全体でそんなに糖尿病・耐糖能異常はないと思います。

下記は、厚生労働省の調査データ 1997→2002年の5年間を比較したものですが、驚くべきことにあまり増えていません。

日本全体男性     1997      2002     
糖尿病 40才代     5.4       4.4%
      50才代    14.2      14.0%  
      60才代    17.5      17.9%
      70才代    11.3      21.3%


日本全体女性     1997        2002     
糖尿病 40才代     5.3       3.6%
     50才代     7.1       4.6%     
      60才代    10.6       11.5%
      70才代     15.5      11.6%


2002年の日本全体の統計では、糖尿病の人は、久山町より明らかに少ない%です。

14年間きっちり、食事療法・運動療法を指導した久山町の住民の方が、何の指導もしていない日本人全体の統計より、結果として糖尿病の人の%が多かったというパラドックスについては、清原先生は兎も角として、門脇先生も一言も触れられませんでした。

門脇先生が述べられたのは、糖尿病発症要因の一般論でした。

折角の世界に誇る久山町研究ですので、仮に都合の悪いデータでもしっかり分析して、久山町の住民の皆さんの健康改善に役立てて欲しいと願うのは、私だけではないと思います。



江部康二



テーマ:糖尿病
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
時間をかけて♪
みっちり教育してもかかってしまうなんて、本当に恐ろしいです。そう考えてみても、糖質制限を含めた食事療法は重要ですね。
さて、江部先生もお勧めされているラカントやロッテのZEROチョコを食べる様になりましたが、しっかりした甘さにも関わらず、糖質もカロリーもゼロなので、甘党の僕には助かります。
2011/10/30(Sun) 20:03 | URL | つくばのヤッシー | 【編集
実験結果のご報告
前回基礎インスリンが復活?したようでしたのでパスタ乾燥40g(糖質22.16g)とミートソース(糖質10g)で実験致しました!ただパスタは白い通常のものでなく茶色いやつです(ホールウィート・GIが低め?)

食前84→1h115→1h30m127→2h128→2h30m104

どうやら本当に復活したのかもしれません。
昔先生からベータ細胞の復活は半年位が目途とお教え頂きましたが、その頃は確か基礎インスリンは1代で、ちょっと食べると180とかは楽にあがっていました。
現在約2年経ち、私の場合更に復活したのかもしれません。

ただ今日はお昼に1時間位散歩したのでそのおかげかも知れませんので次回運動なしで実験いたします。

また私の場合1hが通常ピークなのですが、今回は2hでした。
これはホールウィートのパスタ(低GI)のせいかもですね。
次回は白米にしてみます。
2011/10/30(Sun) 20:38 | URL | けい | 【編集
Re: 時間をかけて♪
つくばのヤッシー さん。

ラカントはOKですが、
ロッテのZEROチョコは、キシリトールが甘味料と思います。
キシリトールは砂糖の半分くらい血糖を上げます。
2011/10/30(Sun) 20:52 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: 実験結果のご報告
けい さん。

耐糖能、改善したみたいですね。
よかったです。
2011/10/30(Sun) 20:54 | URL | ドクター江部 | 【編集
貴重なご指導を!
>江部先生、ありがとうございました。今後、僕の趣味のお菓子づくりに参考にさせていただきます。手作り低糖質菓子の達人になれる様に努力します。
2011/10/30(Sun) 21:38 | URL | つくばのヤッシー | 【編集
久山町研究講演会
こんばんは

久山町研究50周年記念講演会の内容は、糖尿病発症予防に失敗した原因は触れられていなかったのですね。
清〇先生も、門〇先生もとても頭の良い先生ですから血糖値を上げるのはカロリーではなく、糖質だと云う事はとっくに解っていらっしゃるでしょう。
経口血糖付加試験はブドウ糖液飲むわけで、決してオリーブオイル等の油を飲むわけではありませんので。私でも解ります。

これまで糖質たっぷりのカロリー制限の糖尿病食を推奨してきた指導的立場の人が、今さら間違っていましたとはとても言えないのでしょうね。
下手をすれば訴えられかねません。このまま突っ走るしかないのでしょう。

今の学会の役員が総入替になる5年先か10年先か知りませんが、大きく変るのはそこまでかかるのかもと感じてしまいます。
可哀想なのはそれまでにどんどん悪くなる患者の皆さんです。薬害問題のように後で大きな問題にならなければ良いですが。
2011/10/30(Sun) 22:55 | URL | モン吉 | 【編集
ZEROについて
講演会のご報告、ありがとうございます。
看護ジャーナルも拝読しました。
糖尿病治療は、壱に食事療法、弐に運動療法、三四がなくて、五に薬物療法と言われていましたが、カロリー制限食は、エビデンスレベルが低いのですね。
効果のない治療に取り組まされている人たちのためにも、私たち糖尿人も、地道に糖質制限を広めていきたいです。
ロッテのZEROについてですが、糖類はゼロですが、糖質は含まれています。キシリトールやマルチトールが甘味料として使われています。
糖類と糖質の違いは、先生の本や過去の記事を調べれば、分かると思います。
一日、一本から二本程度にしましょうね、ヤッシーさん。
2011/10/31(Mon) 00:34 | URL | よし | 【編集
お会いしたかったです!
 三宅先生は探してみたのですが、江部先生がお見えであったとは!
ひとことご挨拶をして、御礼を申し上げたかったです。そうすれば小生のモチベーションももっと高く維持できるしょうに。


 江部先生、おっしゃるとおり、「なぜうまくいかなかったのか?」という考察がすっぽり抜け落ちていました。日本医学会の重鎮がそろっていながら、これは何なのでしょうか!
「失敗学」の観点からみればまさに「落第」です。
事実に謙虚であるべきことは、お医者さんにも変わりありません。

 自分たちに都合の良い点ばかり披露しているようでは、パラドックスをあえて避けているのでしょうが、、、破綻するのが見えています。

 せっかくの講演会でありながら、「配布資料も無い・質問コーナーも無い」というのはそこらを意識していたのかなと思われます。知識の豊富な現代の一般人にとっては議論の俎上にも上がりえません。

 斯くの如き状況でありますから、江部先生や夏井先生のような先頭を走っていらっしゃる先生方のご苦労はまだまだ続くでありましょう。しかし、確実に時代のうねりは大きくなっていくであろうことは間違いありません。


2011/10/31(Mon) 06:45 | URL | Mdayon | 【編集
久山町の悲劇ですね
どこまで認めないんでしょうかねえ。
あきれてしまいます。
2011/10/31(Mon) 12:22 | URL | ちえ | 【編集
久山町研究講演会
久山町研究50周年記念講演会のご報告を拝見し、日経onlineの「こうなってますおじさん」という記事を思い出しました。なぜそういうことが起きたのかを考えないおじさんのことを「こうなってますおじさん」と呼んでいるとのことでした(佐藤治夫氏)。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20111020/223345/
以下抜粋します。
『ところが人によっては、分析や洞察というステップがすっぽり抜け落ちて、観察したことをそのまま口に出すしかできない。「トラブルが起きました。お客様は怒ってます」とかね。これを私は「こうなってますおじさん」と呼んでいます(ITpro『「こうなってます」は何も言っていないのと同じ』) 。
 お客さんが怒ってるかどうか見に行かない人よりはましだけど、今起きている現象がどの程度悪いのかとか、なぜそういうことが起きたのかを考えないので、事態収拾に全く役に立たない。』
2011/10/31(Mon) 17:58 | URL | 菜の花 | 【編集
アディポネクチン ← 糖質制限 (Obesity 誌)
門脇先生は、ことアディポネクチン研究に限っては、特異的に信頼できるんですよね。

> 注目されるべきは「アディポネクチン」で、
> 肥満を減少させ「インスリン抗体状況」を
> 好転させる。

そうそう、この部分だけは、門脇先生門下のご研究の中で、唯一、世界レベルです。

10年くらい前、レプチンが発見されたときは大騒ぎで、米国では、凡百の健康専門家がレプチン活用型ダイエットを提唱し、それなりに市販書も売れ、日本でも、その一部は紹介され、今なお影響を持っています。

しかし、その後、レプチンに抵抗性が発見されて以来、優秀な研究者はレプチンを見捨てて、アディポネクチン研究に走った。

門脇先生は、その転機の象徴となっただけでなく、その潮流を今なお自ら、推し進めておられる。偉大なことです。

さて、そのアディポネクチンですが、今月、そのアディポネクチンが、ローカーボ食事療法(糖質制限食)で、増える、ということが明らかになりました。

  http://www.nature.com/oby/journal/v19/n11/full/oby201160a.html

パチパチパチ!!!

泣く子も黙る、Nature傘下のObesity誌に所載の論文でございますよ~!!。

江部先生、門脇先生におかれましては、ぜひ当論文について、歴史に残る貴重なコメントを賜りたく、平にお願い致す次第です。

  (週刊バカ新潮ごときは無視しましょう。
   時間もったいないです)
2011/11/02(Wed) 22:37 | URL | 元熊男 | 【編集
コメントを投稿
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可