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HbA1c値と心血管イベントの関連性はJカーブを描く・欧州糖尿病学会
こんにちは。

第47回 欧州糖尿病学会(EASD2011) 【開催期間:2011年9月12日~16日】

において、またまた、興味深い研究報告が発表されました。

この研究は、2型糖尿病患者の血糖値低下のリスクを検証したものです。(☆)

以下、要約してみます。

対象となったのは、スウェーデンのプライマリケア施設において、1999年から2008年の間に2型糖尿病と診断され、あるいは血糖低下治療が行われ、年齢が35歳を超えている32,871例です。

4年間の追跡期間中、心血管複合イベントは718例で発症しました。

HbA1c値と心血管複合イベントの関連を見ると、経口血糖降下薬群、インスリン群のどちらの群においても、Jカーブ現象を認めました。

つまり、HbA1c値が高くても低くても、イベント発生リスクが上昇していました。

最もリスクが低くなったのは、経口血糖降下薬群ではHbA1c値が6.5%、インスリン群では7.0%のときでした。

この結果は、2008年の米国糖尿病学会で報告されたACCORD試験の

「HbA1c値6.0%未満を目指して厳格な血糖コントロールを行うと、全死亡リスクが上昇した」

という結論と一致しています。

また英国の医学雑誌Lancet誌2010年2月6日号に掲載された論文の

「2型糖尿病患者の死亡率はHbA1c7.5%前後が最も低い」

という衝撃的な研究報告とも一致しています。

一方

「教育水準とHbA1c値、心血管複合イベントの関連性を調べたところ、初等教育群では明らかなJカーブを描いたが、教育水準が高まるとともにHbA1c値が低いときの心血管複合イベント発生リスクの上昇が抑制され、高等教育群ではHbA1c値が低くてもリスクの上昇は認められなかった。」

とあります。

これは教育水準の高い人は血糖管理が上手で、低血糖リスクが回避できていた可能性があります。

インスリン注射や経口血糖降下剤を内服していて、厳格な血糖コントロールを目指した場合、食事に含まれる糖質と薬物量のマッチングが上手くいかないと、食前の低血糖や食後高血糖を頻回に生じ、1日の内で血糖変動の乱高下が起こります。

このことが、薬物を投与してHbA1cを一定以上下げると、死亡率が上昇することの大きな要因と考えられます。

2008年ACCORD試験、
2010年2月のLancet誌の論文、
2011年第47回 欧州糖尿病学会のスエーデンの報告、

3つの大規模な疫学研究で、Jカーブ現象が確認されたことの意味は大きいと思います。

すなわち、糖質を摂取しながら、薬物療法で厳格な血糖コントロールを目指すことは、明確に総死亡率を上昇させます。

スーパー糖質制限食なら、薬物に頼ることなく血糖コントロール良好を達成できて、食前の低血糖も食後の高血糖も生じず、一日を通して血糖変動がごく少なく安定した状態を保つことができるので、大血管イベント発症リスクは減少し総死亡率も減少すると考えられます。


江部康二


(☆) 以下 2011年9月17日の m3.comより転載

第47回 欧州糖尿病学会(EASD2011) 【開催期間:2011年9月12日~16日】

2型糖尿病患者ではHbA1c値と心血管イベントの関連性はJカーブを描く

2011年9月17日  カテゴリ:一般内科疾患・循環器疾患・内分泌・代謝疾患


ACCORD試験ではHbA1c値6.0%未満を目指して厳格な血糖コントロールを行うと、全死亡リスクが上昇することが示された。そこでスウェーデンLinkoping UniversityのC. J. Ostgren氏らは、2型糖尿病の大規模患者集団を対象にHbA1c値と心血管イベントの関連について検討し、その結果を9月12~16日にポルトガル、リスボン市で開催された第47回欧州糖尿病学会(EASD)で報告した。


本研究では、2型糖尿病患者の血糖値低下のリスクを検証し、さらに詳細な検討を行うために、大規模患者集団を糖尿病治療薬(経口血糖降下薬、インスリン)、教育水準で層別化し、HbA1c値と心血管イベントの関連を比較検討した。

対象となったのは、スウェーデンのプライマリケア施設において、1999年から2008年の間に2型糖尿病と診断され、あるいは血糖低下治療が行われ、年齢が35歳を超えている32,871例。さらに患者データをStatistics Sweden、National Cause of Death Register、National Hospital Discharge Register、National Prescription Registerのデータとリンクさせ、心血管複合イベント(急性心筋梗塞、心不全、脳卒中、心血管死)の発生状況を調べた。HbA1c値と心血管複合イベントの関連は、心血管疾患の既往のない症例を対象に、年齢、収縮期血圧(年間平均値で毎年更新)、教育水準で補正し、Cox回帰モデルを用いて検討した。

4年間の追跡期間中、心血管複合イベントは718例で発症した。HbA1c値と心血管複合イベントの関連を見ると、経口血糖降下薬群、インスリン群のどちらの群においても、Jカーブ現象を認めた(HbA1c値が高くても低くてもイベント発生リスクが上昇)。最もリスクが低くなったのは、経口血糖降下薬群ではHbA1c値が6.5%、インスリン群では7.0%のときで、HbA1c値が低い場合、95%信頼区間の幅が広かった。つまり患者によってリスクのばらつきが大きいと言える。この傾向は心血管死をエンドポイントとして検討を行った場合にも同様に認められた。

教育水準から患者を、初等教育群(小・中学校卒に相当)、中等教育群(高校卒に相当)、高等教育群(短大・大学卒以上に相当)の3群に層別化したところ、3群のHbA1c値の分布に違いは認められなかった。しかし、初等教育群に比べて中等教育群や高等教育群では、心血管複合イベントの発生リスクが有意に低かった。

さらに、教育水準とHbA1c値、心血管複合イベントの関連性を調べたところ、初等教育群では明らかなJカーブを描いたが、教育水準が高まるとともにHbA1c値が低いときの心血管複合イベント発生リスクの上昇が抑制され、高等教育群ではHbA1c値が低くてもリスクの上昇は認められなかった。

今回の検討から、HbA1c値と心血管複合イベントのJカーブ現象が再確認された。この結果を踏まえてOstgren氏は、「今後、糖尿病の治療ガイドラインでは、低血糖リスクがある治療を行う場合、HbA1c値の最低値を設けることが望ましい」と解説しつつ、「2型糖尿病で教育水準が心血管複合イベントのリスク因子であることはこれまで認識されておらず、今後さらなる検討が必要」と指摘した。

山岸 倫也(医学ライター)


テーマ:糖尿病
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
コーヒーが脂っこい食事の食後血糖値を上げる?
江部先生、こんにちは。
ネットからの情報ですが、イギリスのFamily Health Guide というニュースサイトによると、ファーストフードとコーヒーを一緒にとると食後の血糖値が2倍に上昇するとのことです。ファーストフードに含まれる飽和脂肪酸(肉や乳製品に含まれる)とカフェインの相互作用だそうです。

私はファーストフードは食べませんが、血糖値を上げないのであまり気にせず肉やチーズを多く食べています。食後にコーヒーやお茶もよく飲みます。カフェインは日本茶にも含まれてると思います。食後に飲まないようにすればよいのだとは思いますが、コーヒー大好きなのでちょっとがっかり。気になったニュースでした。

2011/09/26(Mon) 08:41 | URL | necobabar | 【編集
検診のご報告③ 9月26日分
今日、月検診に行ってきました。
普段なら、前夜はお酒を控え、緊張して出かけるところ、なんとシンデレラ・タイムに飲酒しました。おつまみは、ローソンで、炭水化物を計算して購入したものを食べ、余裕で、行ってきました。
やはり、体重測定の段階で、看護師さんから驚きの声がありました。私は用意した、エクセルで作った記録を提示し、ここ数か月の行動を説明しました。
いよいよ診察の段になり、数値を見て、医師も驚かれました。初めて、「江部式糖質制限食」を実践していることを、記録を示しながらお話ししました。
すると、医師は、否定はせず、「ただし、どんなものにでも炭水化物(糖質)は含まれているから。全く0とはいかないけどね。」と言いながら、2011年版『成分表』の本を引き出しから出して見せてくださいました。そして、「努力の結果がでているようなので、御薬はしばらくやめてみましょう」とも言ってくださいました。すでに、2か月以上、自己判断でお薬は飲んでいないのですが、私は、「はい。」とだけ答えました。
血圧も、110~80と良くなりました。いつも言われていた不整脈も出ていませんでした。
以下に、この1年間の記録を載せてみます。
P.S. 妻が10年くらい前に、毎日新聞の家庭欄で先生の記事を見て、私に言ったのに、当時は聞く耳を持たなかったと、今日になってポツリ。(笑)。切り抜きを探してみるとのことです。
今は、家族で、下記のような、「糖質制限食」を実施しています。
そして、現在、自己血糖値の測定は、妻にバトンが渡りました。1週間後は、次男に回ります。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
■月検診の記録。
年 月 日 ―  血糖値―HbA1c―BMI― 血   圧―アルブミン―尿糖―尿中ケトン体
●9.27/かかりつけ医による、診療スタート。
2010.09.27―173―7.5―26.7―130~80―     ―  ―
2010.10.27―152―7.2―26.1―130~90―     ―  ―
2010.11.26―146―6.6―27.9―120~90―     ―  ―
2010.12.24―146―6.4―27.9―120~90―     ―  ―
2011.01.25―170―6.9―26.2―130~80―     ―  ―
2011.02.24―178―7.2―26.5―130~90―     ―  ―
2011.03.28―163―6.7―28.1―130~90―     ―  ―
2011.04.25―174―6.8―27.8―130~90―     ―  ―
2011.05.26―155―7.1―28.1―120~80―     ―  ―
●5.27/「江部式糖質制限食」(スーパー)スタート。
2011.06.24―111―6.7―23.7―130~90―     ―  ― 2+
●メルビン250mg、自己判断で服用せず。
2011.07.25―123―6.1―23.9―130~90―     ―  ― 2+
2011.08.22―123―5.5―23.0―130~80―     ―  ― +
●医師より、メルビン250mgの投薬中止の指示あり。
2011.09.26―116―5.3―22.7―110~80―     ―  ― +
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
■血糖値、自己測定の記録
  空腹時  食前   後1時間  後2時間  食前後 1時間 後2時間
年 月 日         9時 ―12時半 ―13時半― 14時半― 18時― 19時 ― 20時
2011.09.13(火) 122―  *  ―133―  128 ― 106 ― 155―134
2011.09.14(水) 109― 101 ―125― 129  ―  * ― 111― 99
2011.09.15(木) 121― 121 ―256― 132 ― 84 ― 141―129
2011.09.16(金) 121― 113 ―133― 128 ―106 ― 132―122
2011.09.17(土) 111― 105 ―131― 105  ― 86 ― 111― 98
2011.09.18(日) 112―  97 ―170― 122  ― 92 ― 114―130
2011.09.19(月) 103―  *  ― 135―  97  ― 85 ― 108―105
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
*[塾](プレイング・マネージャー) [年齢]60歳と10カ月 [男性]
[勤務時間]8時半から23時or24時 [休日]月2~3回
*朝抜き、空腹時血糖値測定の後(9時)、トマトジュース200ml+オリーブオイル(スプーン大1杯)
*一日、アイスコーヒー(200ml、4~5杯)、ミルクがわりに、豆乳180ml。
*一日、“深蒸し茶”を“粉茶”にして煎れたもの500ml(TVで見て以来、毎日欠かさず。)
*大好物の<ラーメン、寿司、果物…>は、各月1の“掟破りデー”に。
*昼食(12~13時)、<糸蒟蒻200g+スープ+野菜、納豆(or豆腐)、卵、…>
500kcal、糖質15g
*夕食(18~19時)、ルクエ料理、<野菜、肉(or魚)、チーズ、トマト缶、調味料…>
700kcal、糖質30g
*寝酒(24~25時)、焼酎1合を4~5杯にする。辛口で薄さをカバー、量的満足感はある。
 おつまみ(例)2011.9.25(日)24時~、ローソンで購入。翌朝、検診日。
○パリパリごまわかめ   (1袋18g、70kcal、炭水化物6.4g)、
○アーモンド&マカデミア(1袋55g、379kcal、炭水化物9.8g)、
○あたりめ        (1袋22g、 72kcal、炭水化物0.1g)
    600kcal、糖質15g 
まだまだ初心者ですが、元気に塾生の指導に当たるため、まずは、自身の健康をと考え、「糖質制限食」の経験を積んでいきたいと思います。
なお、12月の「焼肉 南山」の会に家族で参加を申し込みました。九州からの参加ということで、せっかくなので、1泊して、ご利益のある神社・仏閣にお参りも考えています(笑)。
2011/09/26(Mon) 15:03 | URL | 三島  | 【編集
Re: コーヒーが脂っこい食事の食後血糖値を上げる?
necobabar さん。

血糖値を上昇させるのは糖質だけですので、
「スーパー糖質制限食+コーヒー」なら何の問題もありません。

またこの記事は、信頼度はいまいちと思います。
2011/09/26(Mon) 17:10 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: 尿毒症の指標について
jyuuza2lt さん。

腎機能が高度に悪化して全身の重篤な変化が出現すれば尿毒症と呼びます。
さらに悪化すれば人工透析が必要となります。

「人工透析導入基準」
があるようです。

http://202.216.128.227/%93%A7%90%CD%95S%89%C8/30.01.htm
のサイトをご参照ください。
2011/09/26(Mon) 18:04 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: 臨床雑誌内科2011年10月号
ただ今減量中 さん。

Annals of Internal medicine September 7 2010 vol.153 Issue5 p289-298
の論文の解釈ですね。

2011.06.27 (Mon)のブログ「スーパー糖質制限食に発ガンのリスクはあるのか?①」
に書きました通り、
この論文はあくまでも、総摂取エネルギーの35~42%を、
炭水化物から摂取しているグループにおける話です。
総摂取エネルギーの12%を糖質から摂取しているグループ は、
この論文のどこにも登場しないので、そもそも比較不能です。
比較検討しているとすれば、それはエビデンスではなく単なる憶測に過ぎません。

食後高血糖、グルコーススパイクが大きなリスクというのは、国際糖尿病連合及び私の考えです。
ここが、私と灰本先生との差だと思います。
2011/09/27(Tue) 22:10 | URL | ドクター江部 | 【編集
Cペプチドが急に減りました
お尋ね申し上げます。
スーパー糖質制限を実行して1年半たちます。
先日検査しましたら、Cペプチドが0.5になっていました。(3ヶ月前は1,2でした。)空腹時血糖値は75、HbA1cは5.5だったのですが・・・・・。

Cペプチドの低下にショックを受けています。急遽、インスリン接種ということになるでしょうか、それともスーパー糖質制限でコントロールできるのでしょうか。

御回答いただけましたらありがたいです。どうか、よろしくお願い申します。

小野
2011/09/28(Wed) 04:39 | URL | 小野 | 【編集
Re: Cペプチドが急に減りました
小野 さん。

「Cペプチド0.5、空腹時血糖値75」
ということは、基準値より低いインスリン(Cペプチド)でも、それで間に合っていることになります。
時々そういう人がおられます。
私も2011年6月、IRI:1.8(3~15μU/ml)、空腹時血糖値96mg
のことがあり、9月はIRI:3.5でした。

1型糖尿病は、免疫の誤作動でβ細胞が壊れていきます。
しかし2型糖尿病なら「空腹時血糖値は75、HbA1cは5.5」というデータで、
β細胞が傷害されることはないと思います。
2011/09/28(Wed) 08:59 | URL | ドクター江部 | 【編集
腎機能が心配です。
初めてお伺いします。
先日中野のセミナーで質問させていただきました。
大盛況で一人1つの質問でしたのでおおまかにさせていただきました。

父(78歳)ですが、60代のころからアルコールによる急性膵炎を3回ほどおこし、医者には通うものの薬はいい加減にのみ、運動もゴルフをやっておりました。最近は不整脈と頻脈が悪化しにゴルフもやめ、家でごろごろ酒をちびちびのまいにちでした。


この7月後半に時間の見当識がなくなり、痴呆状態となり脳外科でコルサコフ症候群と診断されました。
さすがに本人もまいったらしく、酒もやめ、スーパー糖質制限食をはじめました。

おかげさまで空腹時血糖値や、わずかながらHba1cもよくなりました。
ありがとうございます。

 しかし長年にわたる血糖コントロールの悪さがあり、腎臓が心配です。
クレアチニンも少しあがっているのでだいじょうぶでしょうか?
貧血もあります。貧血は栄養失調状態だったので数ヶ月で回復するとはおもいますが。

今後お米を食べたいといっているので1日のうちで血糖値をどう測ればよいか教えていただくとありがたいです。


ちなみにいまはタニタの尿糖計で食後2時間と就寝、早朝にはかってもらっています。
本人にはクルコーススパイクの話をして、血糖値を測ることは理解してもらっています。


データは
7月末           9月14日
クレアチニン       クレアチニン 
1.13          1.22

血糖値
226            117
Hba1c
7.6 6.8

少ないデータですがよろしくお願いします。
2011/09/29(Thu) 18:46 | URL | acco | 【編集
Re: 腎機能が心配です。
acco さん。

中野講演会ご参加、お疲れ様でした。

7月末           9月14日
クレアチニン       クレアチニン 
1.13          1.22

この段階でしたら、糖質制限食で血糖コントロール良好を保つ方が、クレアチニンに良いと思います。

空腹時血糖値:140mg→126mg→110mg未満を目指します。
食後1時間血糖値:180mg未満を目指します。
食後2時間血糖値:140mg未満を目指します。

炊いたご飯を食べるなら、1回の量は100gとか少なめにして、
食直前に、
グルコバイ(100)1錠+グルファスト(5)1錠
飲んで、上記目標が達成できればいいですね。
2011/09/30(Fri) 15:16 | URL | ドクター江部 | 【編集
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