2011年09月20日 (火)
おはようございます。
摂津のエクレアさんから、NHKの「ためしてガッテン」で
「腎臓を傷める原因として、高血圧・脂肪分の多い食事」
と紹介していたとのコメントをいただきました。
検証してみましょう。
【摂津のエクレア
腎臓を傷める原因
江部先生こんばんは。
先日NHKの「ためしてガッテン」と言うテレビ番組で、腎臓疾患の事を取り上げていました。
その中で、糸球体の血管が詰まり濾過能力が低下して、人工透析になると言う説明がなされてました。
腎臓を傷める原因として、高血圧・脂肪分の多い食事と紹介されてました。
でも実際は高血糖も腎臓を傷める大きな原因だと思うのですが。
実際に紹介された患者さんは、A1cが8%近くある高血糖の方ばかりでした。】
摂津のエクレア さん。
高血圧はともかく、脂肪分の多い食事で腎臓を傷めるという文献や根拠は、NHKの「ためしてガッテン」で示したのでしょうか?
私の知る限りでは、そのようなエビデンスはないと思います。
一方、高脂質・高蛋白食のイヌイットに腎不全が多いという報告はありませんので、高脂質食の腎臓への安全性の一つの根拠と思います。
また、Ketogenic Diet(ケトン食)が、2010年版COCHRANE LIBRARLY(コクラン ライブラリー)と、
2011年版NICE(英国政府ガイドライン)の、難治性小児てんかん治療に採用されたことも、安全性の評価として信頼できる情報です。
ケトン食は、脂質摂取比率が75~80%という、スーパー糖質制限食をはるかに上回る高脂質食です。
さて、2010年末の統計で人工透析導入の原疾患は
糖尿病腎症:16271人(43.5%) 平均年齢66.09才
慢性糸球体腎炎:7946人(21.2%) 平均年齢67.46才
腎硬化症:4355人(11.6%) 平均年齢74.61才
悪性高血圧:328人(0.9%) 平均年齢63.70才
で、圧倒的に糖尿病が多いですね。
このデータをみるとやはり、摂津のエクレアさんのご指摘通り、「高血糖」が腎臓を障害する最大のリスクということは、明白です。
糖尿病腎症は、通常糖尿病発症5~10年で、患者さんの約20%が第3期腎症(顕性腎症)に陥るとされています。
もっともこれらは血糖コントロールが悪いから、合併症を発症するわけです。
1) 空腹時血糖値126mg/dl未満→110mg/dl未満
2) 食後2時間血糖値180mg/dlmg/dl未満→140mg/dl未満
3) HbA1c6.5%未満→5.8%未満
上記①②③を達成していれば、合併症は予防できるし進行を阻止できるとされています。
高血圧ですが、糖尿病と合併している場合が結構多いです。
この場合は、血糖コントロールと共に、血圧のコントロールも腎障害の予防に大切です。
結論です。
A)高血糖とそれに伴う高血圧は腎障害のリスクとなる。
B)高脂質食が腎障害のリスクとなるという根拠はない。
C)イヌイットの事例やケトン食のことを考慮すれば、高脂質食は安全と考えられる。
NHKの「ためしてガッテン」またまた、いまいちでしたね。( ̄_ ̄|||)
江部康二
摂津のエクレアさんから、NHKの「ためしてガッテン」で
「腎臓を傷める原因として、高血圧・脂肪分の多い食事」
と紹介していたとのコメントをいただきました。
検証してみましょう。
【摂津のエクレア
腎臓を傷める原因
江部先生こんばんは。
先日NHKの「ためしてガッテン」と言うテレビ番組で、腎臓疾患の事を取り上げていました。
その中で、糸球体の血管が詰まり濾過能力が低下して、人工透析になると言う説明がなされてました。
腎臓を傷める原因として、高血圧・脂肪分の多い食事と紹介されてました。
でも実際は高血糖も腎臓を傷める大きな原因だと思うのですが。
実際に紹介された患者さんは、A1cが8%近くある高血糖の方ばかりでした。】
摂津のエクレア さん。
高血圧はともかく、脂肪分の多い食事で腎臓を傷めるという文献や根拠は、NHKの「ためしてガッテン」で示したのでしょうか?
私の知る限りでは、そのようなエビデンスはないと思います。
一方、高脂質・高蛋白食のイヌイットに腎不全が多いという報告はありませんので、高脂質食の腎臓への安全性の一つの根拠と思います。
また、Ketogenic Diet(ケトン食)が、2010年版COCHRANE LIBRARLY(コクラン ライブラリー)と、
2011年版NICE(英国政府ガイドライン)の、難治性小児てんかん治療に採用されたことも、安全性の評価として信頼できる情報です。
ケトン食は、脂質摂取比率が75~80%という、スーパー糖質制限食をはるかに上回る高脂質食です。
さて、2010年末の統計で人工透析導入の原疾患は
糖尿病腎症:16271人(43.5%) 平均年齢66.09才
慢性糸球体腎炎:7946人(21.2%) 平均年齢67.46才
腎硬化症:4355人(11.6%) 平均年齢74.61才
悪性高血圧:328人(0.9%) 平均年齢63.70才
で、圧倒的に糖尿病が多いですね。
このデータをみるとやはり、摂津のエクレアさんのご指摘通り、「高血糖」が腎臓を障害する最大のリスクということは、明白です。
糖尿病腎症は、通常糖尿病発症5~10年で、患者さんの約20%が第3期腎症(顕性腎症)に陥るとされています。
もっともこれらは血糖コントロールが悪いから、合併症を発症するわけです。
1) 空腹時血糖値126mg/dl未満→110mg/dl未満
2) 食後2時間血糖値180mg/dlmg/dl未満→140mg/dl未満
3) HbA1c6.5%未満→5.8%未満
上記①②③を達成していれば、合併症は予防できるし進行を阻止できるとされています。
高血圧ですが、糖尿病と合併している場合が結構多いです。
この場合は、血糖コントロールと共に、血圧のコントロールも腎障害の予防に大切です。
結論です。
A)高血糖とそれに伴う高血圧は腎障害のリスクとなる。
B)高脂質食が腎障害のリスクとなるという根拠はない。
C)イヌイットの事例やケトン食のことを考慮すれば、高脂質食は安全と考えられる。
NHKの「ためしてガッテン」またまた、いまいちでしたね。( ̄_ ̄|||)
江部康二
こんばんは
私もこのN〇Kの番組を大変期待して見ましたが、江部先生のブログで勉強
している者としては、なんか10年位遅れている感じがしましたね。
じん臓の機能を知るにはクレアチニンが大切だと云う事で
じん臓のろ過能力早見表というのをある市で作り患者に渡して
自分の現在のじん臓のろ過能力がどれ位残っているかを知ると
いうものがありました。
クレアチニンの数値をタテ軸、年齢をヨコ軸にして交わった処の数値が
現在の能力という事でした。
60以上が正常で60未満が4段階に別れ治療が必要になると
云うものです。
番組を見た方はクレアチニンを下げなければいけない事は
解ったでしょうが、ではどうすれば下げられるの?
ここで糖質制限食登場かと思いきや、話はそこで終わりでした。
皆さんそこが一番知りたかったのではないでしょうか。
じん臓の機能を知る数値としてはクレアチニンだけでシスタチンCとか
尿中アルブミンとかは出てきませんでした。
全体を見た私の印象は残念ながら今回も「ためしてバッテン」でした。
私もこのN〇Kの番組を大変期待して見ましたが、江部先生のブログで勉強
している者としては、なんか10年位遅れている感じがしましたね。
じん臓の機能を知るにはクレアチニンが大切だと云う事で
じん臓のろ過能力早見表というのをある市で作り患者に渡して
自分の現在のじん臓のろ過能力がどれ位残っているかを知ると
いうものがありました。
クレアチニンの数値をタテ軸、年齢をヨコ軸にして交わった処の数値が
現在の能力という事でした。
60以上が正常で60未満が4段階に別れ治療が必要になると
云うものです。
番組を見た方はクレアチニンを下げなければいけない事は
解ったでしょうが、ではどうすれば下げられるの?
ここで糖質制限食登場かと思いきや、話はそこで終わりでした。
皆さんそこが一番知りたかったのではないでしょうか。
じん臓の機能を知る数値としてはクレアチニンだけでシスタチンCとか
尿中アルブミンとかは出てきませんでした。
全体を見た私の印象は残念ながら今回も「ためしてバッテン」でした。
2011/09/20(Tue) 22:12 | URL | モン吉 | 【編集】
モン吉 さん。
「ためしてガッテン」は時に役立つ情報も放映するのですが、
今回は、私は見ていないのですが「ためしてバッテン」なのですね。
「ためしてガッテン」は時に役立つ情報も放映するのですが、
今回は、私は見ていないのですが「ためしてバッテン」なのですね。
2011/09/21(Wed) 08:04 | URL | ドクター江部 | 【編集】
伸一 さん。
「ためしてガッテン」
そのうち、取材に来るかもしれませんね。
「ためしてガッテン」
そのうち、取材に来るかもしれませんね。
2011/09/21(Wed) 08:48 | URL | ドクター江部 | 【編集】
血糖値とエネルギー量の関係からみると、
糖は、活動に必要なエネルギーを提供します。
高血糖(高エネルギー状態)の状態から、インスリンにより血糖値を低下させることは、高エネルギー状態から脱出することです。
しかし、インスリンにより血糖値を低下させても、未使用のエネルギーはまだ存在しています。
それは、
①糖尿病の初期、体が疲れる症状(焦性ブドウ糖(未消化のブドウ糖)、乳酸に変化→疲れやすい)
②糖尿病の場合、インスリン感受性細胞である肝脂肪筋肉などの細胞でエネルギー源がよく利用されず、血液中のブドウ糖がよく消費されないまま排出されます。
③インスリンは脂質に影響しないので、インスリンにより糖は脂肪に変化され貯蔵され続ける
などが推定できます。未消化の糖が中性脂肪にどれぐらい変化しているかはわかりませんが、生体には脂質が過剰に貯蔵され、脂肪を糖に変える能力は低下しているため、血液・体細胞などが高脂状態にあると考えられます。
よって、こうした高脂状態から脱出しないかぎり、糖→脂肪の代謝能力にストレスが生じ(能力は低下し)、しいてはインスリン量を増やして、糖→脂肪の代謝能力を向上させることになるのではないでしょうか。
④これらの脂質の異常の場合にはやはり血液中のリポ蛋白質に異常を生じるのではないでしょうか。
糖は、活動に必要なエネルギーを提供します。
高血糖(高エネルギー状態)の状態から、インスリンにより血糖値を低下させることは、高エネルギー状態から脱出することです。
しかし、インスリンにより血糖値を低下させても、未使用のエネルギーはまだ存在しています。
それは、
①糖尿病の初期、体が疲れる症状(焦性ブドウ糖(未消化のブドウ糖)、乳酸に変化→疲れやすい)
②糖尿病の場合、インスリン感受性細胞である肝脂肪筋肉などの細胞でエネルギー源がよく利用されず、血液中のブドウ糖がよく消費されないまま排出されます。
③インスリンは脂質に影響しないので、インスリンにより糖は脂肪に変化され貯蔵され続ける
などが推定できます。未消化の糖が中性脂肪にどれぐらい変化しているかはわかりませんが、生体には脂質が過剰に貯蔵され、脂肪を糖に変える能力は低下しているため、血液・体細胞などが高脂状態にあると考えられます。
よって、こうした高脂状態から脱出しないかぎり、糖→脂肪の代謝能力にストレスが生じ(能力は低下し)、しいてはインスリン量を増やして、糖→脂肪の代謝能力を向上させることになるのではないでしょうか。
④これらの脂質の異常の場合にはやはり血液中のリポ蛋白質に異常を生じるのではないでしょうか。
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