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乳ガンと空腹時インスリン濃度が正の関係・Int J Cancer2009
こんばんは。

食後高血糖が膵臓癌発症のリスクになるということは、世界糖尿病連合2007年発表の「食後血糖値の管理に関するガイドライン」により、明らかです。

また「Cペプタイド値が高い男性(高インスリン血症の男性)は、低い男性に比べ最大で3倍程度、大腸癌になりやすい。」という疫学調査が、厚生労働省研究班により2007年発表され論文として掲載されました。( Int J Cancer. 2007 May 1;120(9):2007-12.)

今回、2009年にInt J Cancerに掲載された米国の論文を見つけました。

Women's Health Initiative clinical trialsから5450人を平均8年間経過をみて、190人が乳ガンを発症しました。

閉経後の女性において、空腹時高インスリン血症は乳がんのリスクとなりましたが、高血糖は関連がなかったという結論です。

空腹時高インスリン血症ということは、米国の女性ですから、肥満によるインスリン抵抗性がおおいに関連していると思います。

空腹時高インスリン血症の日本女性は、そんなにいないと思います。しかし日本女性でも「肥満・インスリン抵抗性・高インスリン血症」のある人は、乳ガン要注意ですね。

高インスリン血症による発癌の機序は、インスリンが各種組織の成長因子であることが関わるとされています。
動物実験では、高インスリン血症が、各種癌細胞の形成や増殖に関与するとの報告があります。

高血糖に伴う発がんですが、仮説としては、高血糖により活性酸素が発生し組織への酸化ストレスが亢進し、DNA障害が生じ、発がんリスクとなる可能性があります。

また高血糖自体もDNA障害を引き起こし、DNA障害が発癌要因となる可能性があります。

ともあれ、高インスリン血症は男性の大腸癌、女性の乳癌のリスクとなることは間違いないようです。


以下の要約は、直訳ですが参考までに。


江部康二


International Journal of Cancer
Volume 125, Issue 11, pages 2704–2710, 1 December 2009

要約

実験や疫学的なエビデンスによれば、血液中の血糖やインスリンは、乳がんの発がんを促す可能性がある。

しかしながら乳がん発がんリスクと血中グルコースやインスリンとの関連を検討したコホート研究はほとんどない。そして、過去の研究の測定はベースライン1回だけである。

我々は、「women in the Women's Health Initiative clinical trials 」の6%のランダムなサンプルを使用してベースラインと1、3、6年後の空腹時血液サンプルの血糖値とインスリン値を解析して閉経後の乳がんリスクの縦断的な研究を実施した。

さらに観察研究として1%の女性の、ベースライン時と3年目の空腹時血液サンプルで測定されたグルコース値とインスリン値を分析に含めた。

我々はコックス比例ハザードモデルを使って、乳癌リスクとベースライン及び経過時の血清グルコース値およびインスリン値の関連をハザード比の95%信頼区間を評価した。

全ての統計的テストは2面的にした。ベースラインの血糖値とインスリン値を測定した5450人の女性の中で平均8年間の観察期間中に190人の乳がんが確認された。

全母集団において最高の三分位のベースラインインスリングループは最も低いグループに比べて倍の乳がん増加リスクがあった。(多変量ハザード比2.22、95%信頼区間1.39〜3.53)

そして介入試験に登録されていない女性に比べると3倍のリスクがあった。
(多変量ハザード比3.15、95%信頼区間1.61〜6.17)

血糖レベルはリスクと無関係であった。繰り返し測定の分析は、ベースライン分析の結果を支持した。これらのデータは、血清インスリンレベル上昇は、閉経後乳がんの危険因子である可能性を示唆している。

閉経後乳がんのリスクは、肥満と糖尿病で増加し、この両者はインスリン抵抗性の増加で特徴付けられ、結果として循環血中のインスリンとブドウ糖が増加する。

インスリンは、細胞増殖を促進し、動物モデルにおける乳がん成長を強める。

一方、ブドウ糖はインスリン抵抗性を悪化させ、悪性クローンに恩恵を与えがん細胞に発育の利点を供給する。それ故に比較的高レベルのブドウ糖やインスリンは乳がんの病因となるというのはうなづける。

過去の少数の研究では空腹時血糖値・インスリン値と閉経後乳がん発症リスクの関連を直接調査しているが、相反する結果が得られた。

しかしながら、これらの研究は1回のベースラインの測定のみに基づいている。繰り返した計測の解析により経過観察期間中、これらの要素の乳がんの発達における役割および関連の評価の精度を上げることができる。

それゆえに我々は乳がんリスクの縦断的研究を実施し、「Women's Health Initiative clinical trial」の参加者の6%の空腹時血糖値・インスリン値を、ベースライン、1、3、6年後に測定した(WHI-CT)。
そして観察研究として1%の女性のベースラインと3年目の測定を実施した(WHI-OS)。



☆☆☆☆☆
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/ijc.24609/full

Geoffrey C. Kabat et al.
Repeated measures of serum glucose and insulin in relation to postmenopausal breast cancer
International Journal of Cancer
Volume 125, Issue 11, pages 2704–2710, 1 December 2009


Abstract

Experimental and epidemiological evidence suggests that circulating glucose and insulin may play a role in breast carcinogenesis. However, few cohort studies have examined breast cancer risk in association with glucose and insulin levels, and studies to date have had only baseline measurements of exposure. We conducted a longitudinal study of postmenopausal breast cancer risk using the 6% random sample of women in the Women's Health Initiative clinical trials whose fasting blood samples, provided at baseline and at years 1, 3 and 6, were analyzed for glucose and insulin. In addition, a 1% sample of women in the observational study, who had glucose and insulin measured in fasting blood samples drawn at baseline and in year 3, were included in the analysis. We used Cox proportional hazards models to estimate hazard ratios and 95% confidence intervals for the association of baseline and follow-up measurements of serum glucose and insulin with breast cancer risk. All statistical tests were 2-sided. Among 5,450 women with baseline serum glucose and insulin values, 190 incident cases of breast cancer were ascertained over a median of 8.0 years of follow-up. The highest tertile of baseline insulin, relative to the lowest, was associated with a 2-fold increase in risk in the total population (multivariable hazard ratio 2.22, 95% confidence interval 1.39–3.53) and with a 3-fold increase in risk in women who were not enrolled in the intervention arm of any clinical trial (multivariable hazard ratio 3.15, 95% confidence interval 1.61–6.17). Glucose levels showed no association with risk. Analysis of the repeated measurements supported the results of the baseline analysis. These data suggest that elevated serum insulin levels may be a risk factor for postmenopausal breast cancer. © 2009 UICC

Risk of postmenopausal breast cancer is increased in association with obesity and diabetes, both of which are characterized by increased insulin resistance, with consequent increases in circulating levels of insulin and glucose.1, 2 Insulin promotes cell proliferation3, 4 and enhances breast tumor growth in animal models,5, 6 whereas glucose may exacerbate insulin resistance,7 favor the selection of malignant clones8 and provide a growth advantage to cancer cells.9 Therefore, it is plausible that relatively high levels of glucose and/or insulin may play a role in the etiology of breast cancer. The few prospective studies to date that have directly investigated the association between fasting glucose and insulin levels and risk of incident postmenopausal breast cancer have yielded conflicting results.10–18 However, each of these studies was based on a single measurement of glucose and/or insulin at baseline only. Analysis of repeated measurements obtained during follow-up may provide greater insight into the role of these factors in the development of breast cancer and increase the precision of estimates of association. Therefore, we conducted a longitudinal study of breast cancer risk in which fasting serum glucose and insulin levels were measured at baseline, and at years 1, 3 and 6 of follow-up in a 6% sample of participants in the Women's Health Initiative clinical trial (WHI-CT) and at baseline and year 3 in a 1% sample of the observational study (WHI-OS).
テーマ:糖尿病
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
教えて下さい。 増粘膜多糖類は糖質がたくさん入ってるのですか?
先生はじめまして

実は先生にお聞きしたいのですが、増粘膜多糖類の事ですがカロリー0と表示していますが、糖尿人は食べて大丈夫なのですか?増粘膜多糖類って何なのですか?教えて下さい。
2011/08/22(Mon) 21:10 | URL | なみだ | 【編集
なみださん
増年多糖類って何ですかって質問する前に、まずは自分で調べましょうや。ちょっと失礼じゃないですかね。
2011/08/23(Tue) 14:21 | URL | 高森 | 【編集
なみださん、安心ですよ
2009.04.20 の先生の記事に増粘多糖類について書かれていますよ。
結論を言いますと増粘多糖類は食物繊維なので安全だし、血糖値を上げないようです。いろんな加工食品に入ってますが糖尿の人も食べても大丈夫です。
2011/08/23(Tue) 18:04 | URL | さちこ | 【編集
乳がんや大腸がんは、血清ビタミンD値と相関するという話を聞いたことがあります。
肥満になると確かにインスリン抵抗性は上昇しますが、血清中のビタミンD値も低下します。
血清ビタミンD低値は糖尿病とも関連があるということですし、結局、お互いがお互いの原因になっているような感じなんでしょうね。

http://www.cancerit.jp/xoops/modules/cancer_reference/index.php?page=article&storyid=638
http://www.cancerit.jp/cancer_references/archive/No185_VitaminD3.html
2011/08/25(Thu) 21:47 | URL | 境界型手前人 | 【編集
Re: タイトルなし
境界型手前人 さん。

ビタミンD, なかなか興味深いですね。
2011/08/26(Fri) 16:33 | URL | ドクター江部 | 【編集
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