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ビタミンCとイヌイット、そして糖質制限食と野菜
おはようございます。

2011.07.15 (Fri)のブログ「糖質制限食のやり方のパターン」でビタミンCの必要性について述べました。

今回はビタミンCとイヌイット、そして糖質制限食と野菜ついて考えてみます。

4000年前、すでにカナダ極北やアラスカに、人類(モンゴロイド)が移住し居住していました。

現在のイヌイット文化と同様の生活様式をしていたとは、必ずしもいえませんが、セイウチ猟などを中心に生業としていたようです。

現在のイヌイットの生活様式の原型ですが、まず10世紀頃、アラスカイヌイットでホッキョククジラが主食の時代がありました。

その後200~300年で他の極北周囲地域、西はチュコト半島、東はグリーンランドまでホッキョククジラ猟が広まりました。この文化は、チューレ文化と呼ばれています。

12世紀から17世紀にかけて極北地域に寒冷化が起こり、それまで豊富だったクジラが少なくなりました。

そのため、クジラ以外のものを主食とせざるを得なくなり、各地域でチューレ文化は多様化して、独自の文化が形成されていきました。

イヌイットといえば、誰でもイメージするような、アザラシ猟をして雪の家に住むという文化は、15世紀頃に形成されました。

その後、ホッキョクイワナ、アザラシ、シロイルカ、カリブーといった食材がイヌイットの主食となっていきました。

この伝統的な食生活のころは、海生動物の生肉・内臓、生魚肉・内臓が主食で、穀物や野菜もなしで、果物もほとんどなしです。

海生動物や魚の内臓には、あるていどのビタミンCが含まれていると思いますが、野菜や果物ほどではありません。

イヌイットの好物であるマクタック(シロイルカの生皮)にビタミンCが含まれているとのことですが、量的には野菜や果物には到底及ばないと思われます。

キビヤックというイヌイット独特の発酵食品があります。

海鳥(ウミスズメ類)をアザラシの中に詰めこみ、地中に長期間埋めて作るそうです。

大変臭いそうですが、ビタミンCが豊富という説もあります。

しかし通常、発酵食品にはビタミンCは含まれていないと思います。

結局ビタミンCが豊富なのは、新鮮な野菜と果物、そしてサツマ芋とジャガ芋です。

内臓には少量含まれてますが、量的には野菜や果物には及びません。

こうなると、イヌイットが伝統的な食生活を続けていたころは、ビタミンCの補充はどうしていたのかという疑問が生じます。

イヌイットの伝統的食生活では、ビタミンC摂取量は少ない可能性が高いですし、ビタミンC血中濃度も低い可能性が高いです。

そして、ビタミンC不足による病気はどうなのでしょう?

1975年発表の、カナダの論文を読んでみました(*)。

やはりイヌイットのビタミンC摂取量は、カナダ白人と比較して、かなり少なかったです。

妊婦のビタミンCが不足していると、新生児高チロシン血症(**)になります。

イヌイットの高チロシン血症は、先天的なものではなく、ビタミンC不足によるものなので、ビタミンC投与で改善したと報告されています。

イヌイットの妊娠中の女性の平均ビタミンC摂取量は、28mg/日で、
血中ビタミンC濃度は、0.25mg/dl。

イヌイットの同年齢の非妊娠女性名の、平均ビタミンC摂取量は26mg/日で、
血中ビタミンC濃度は0.17mg/dl。

カナダの白人妊婦の、平均ビタミンC摂取量は、133mg/日で、
血中ビタミンC濃度は0.97mg/dl。

イヌイットの妊婦のビタミンC血中濃度は低くて、新生児高チロシン血症(**)の頻度が、カナダアングロサクソン人が0.5%に対して14.8%もありました。

イヌイットの血中ビタミンC濃度は、壊血病危険ラインの0.2mg/dl未満の場合も多く、歯肉出血が高率に見られたそうです。

イヌイットの場合は、血中ビタミンC濃度が低値であることは、壊血病と新生児高チロシン血症のリスクを高めていました。

イヌイットとビタミンC不足のことを考慮すると、スーパー糖質制限食においても、基本的には、野菜はしっかり摂取して、ビタミンCを確保することが必要と思います。

一方、アフリカのケニア南部からタンザニア北部にすむマサイ族は、血中ビタミンC濃度はイヌイットと同レベルの壊血病危険ライン0.2mg/dlの場合も多いのに、壊血病がみられないのは、不思議です。

またマサイ族と新生児高チロシン血症の文献は、英文でも発見できませんでした。


人類とビタミンC、謎は深まります。


江部康二



(*)
Neonatal hypertyrosinemia and evidence of deficiency of ascorbic acid
in Arctic and subarctic peoples
624-626 CMA JOURNAL/OCTOBER 4,1975/VOL.113
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1956727/pdf/canmedaj01544-0034.pdf


(**)メルクマニュアルより抜粋
チロシン血症

チロシン血症の子供では、アミノ酸のチロシンを完全に代謝することができません。このアミノ酸の代謝産物が蓄積するため、さまざまな症状が現れます。米国の一部の州では、新生児のスクリーニング検査でこの病気を調べています。

先天性チロシン血症にはI型とII型の2つのタイプがあります。I型チロシン血症が最も多くみられるのは、フランス系カナダ人やスカンジナビア系の子供です。普通、生後1年以内に肝臓や腎臓の機能障害、神経障害が起こります。そのため過敏性やくる病が現れたり、肝不全を起こして死亡することがあります。チロシン制限食はほとんど役に立ちません。治験段階の薬剤の中には毒性の代謝産物の生成を防ぐものがあり、I型チロシン血症の子供に効果があります。I型チロシン血症の子供の多くは、肝臓移植が必要になります。

II型チロシン血症はI型よりもまれな病気です。この病気の子供は精神遅滞を起こすことがあり、眼や皮膚にたびたび潰瘍が発生します。I型チロシン血症と異なり、チロシン制限食で病気の進行を防ぐことができます。



(***)チロシン
必須アミノ酸ではありませんが重要なアミノ酸であるチロシンは、フェニルアラニンという必須アミノ酸から作られます。

チロシンは脳や神経が正常に働くために必要不可欠なアミノ酸で、神経伝達物質であるドーパミン やノルアドレナリンの前駆体となり、脳機能を活性化させる働きがあります。

チロシンは感情や精神機能、性的衝動を脳内でつかさどる重要な神経伝達物質であるドーパミンやノルアドレナリン の前駆体です。納豆やチーズ、みそなどの表面に白く析出してくる結晶や、若いタケノコの切り口に見られる白いアクがチロシン で水には溶けにくい性質があります。

テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
現状報告、質問など
お早うございます。
糖尿病がどんどん良くなる・・・のスーパーを実践して1か月半になります
お陰さまで血糖値のコントロールは空腹時110以下食後も180以下で推移しています。もう少し頑張らないといけないのかなという思いもあるのですが・・・・
糖尿と診断された時の値があまりにも高かったので(595、A1c:11.7)目の検査も受けましたが今のところ糖尿による病変はないとのことで一安心です。
唯、関係ないとは聞いたのですが気になるのは乱視が進行した事です、このような事象があるのしょうか?
2点目は足の裏の前半分ぐらいのじりじりしたしびれ感の取れないことです。ほとんど感じない時もたまにあるのですが・・・・・・これも糖尿の関係でしょうか?
3点目起床時でも100を切らないこと、1時間程度後の朝食前は少し上昇して110程度の時もあります。(暁現象とか理由はお聞きしました)食後は1時間値で150から180なのですがこの程度のコントロールでいいのでしょうか?
今月末3回目の血液検査を予定していますのでお知らせしたいと思います。2回目の時、中性脂肪の値が半分以下に下がっていたのに感激したのですが脂肪分の摂取が多いのに不思議です。(2回目がたまたまだったのか3回目を期待して待っているところです。)
お忙しいと思いますが時間が取れましたらよろしくお願いします。
2011/07/17(Sun) 12:36 | URL | ほりぐち | 【編集
Re: 現状報告、質問など
ほりぐち さん。

乱視は関係ないと思います。
足の裏のしびれは、糖尿病神経障害の可能性があります。
コントロール良好を保てば改善することもありますが、個人差があります。
中性脂肪は炭水化物摂取で上昇します。

糖尿病合併症予防のためには

① 空腹時血糖値140mg/dl未満→126mg/dl未満→さらには110mg/dl未満
② 食後2時間血糖値180mg/dlmg/dl未満→さらには140mg/dl未満
③ 理想的には食後1時間血糖値180mg/dl未満
④ HbA1c6.5%未満→さらには5.8%未満

①②③④の糖尿人の目標達成を目指してくださいね。
2011/07/17(Sun) 19:13 | URL | ドクター江部 | 【編集
こんにちは。

最近読んだ本にマサイ族のビタンミンCに関する記載がありましたので、紹介申し上げます。

「牛の首を矢でひと突きし、その血を発酵乳に混ぜて飲む習慣もあった。
血の赤血球には酸素を運ぶヘモグロビンが含まれ、鉄分が多い。牛の生き血にはビタミンCも含まれる。まさか、こうした栄養学的知識を踏まえて、牛の血を混ぜているわけではないだろうが・・・・・・。マサイ族の健康のもとになっていることには間違いない。」

書名:食でつくる長寿力
著者:家森幸男
発行所:日本経済新聞出版社
発行日:2008/10/8
記載個所:第46頁

なお、以前ご説明頂きましたアクトスについては服用中断し様子をみることになりました。糖質制限に注意していますので、A1cはそう上がらないであろうと期待しております。
2011/07/23(Sat) 11:58 | URL | アル中かも | 【編集
Re: タイトルなし
アル中かも さん。

確かに家守先生は、牛の生き血からビタミンCを摂取していると述べておられますね。

牛の血漿中のビタミンC濃度は、1.4~3.6mg/dLであり、
人の血漿中ビタミンC濃度0.6–1.4mg/dLより高値です。

しかし、それでも、牛の血を1リットル飲んでもせいぜい30mgですから、
やはり、牛の血でビタミンCが充分量摂取できるとは言えません。

2010.09.22 (Wed)のブログ「マサイ族の食生活とビタミンC考」をご参照ください。
2011/07/23(Sat) 16:39 | URL | ドクター江部 | 【編集
江部先生

すでに検討済みのことを申し上げてしまいました。失礼致しました。
2011/07/24(Sun) 12:19 | URL | アル中かも | 【編集
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