2011年07月05日 (火)
こんにちは。
2011.06.24 (Fri)食後高血糖は有害!「食後血糖値の管理に関するガイドライン」IDF2007
2011.06.27 (Mon)「スーパー糖質制限食に発ガンのリスクはあるのか?①」
2011.06.30 (Thu)「高インスリン血症と高血糖と発がんリスク」
ここ何回か、本ブログでがん関連の話題を提供してきました。
今回も糖尿病とがんのお話しです。
日本医事新報(*)にて「糖尿病と発癌のリスク」という質問に、九州大学大学院医学研究院環境医学教授池田文恵先生、清原裕先生が回答しておられます。
以下その要約です。
『近年の疫学・臨床・基礎研究により、糖尿病と悪性腫瘍との間に密接な関連が存在することが明らかにされつつある。
糖尿病と全悪性腫瘍発症の関係について、2つの大規模な報告がある。
A) 韓国のJee等は空腹時血糖値140mg/dl以上で、男女とも悪性腫瘍の発症リスクが有意に上昇すると報告。(2005年)
B) 米国のNHANES I(全米栄養健康調査1)からの報告でも男性の糖尿病患者群で悪性腫瘍発症のリスクが有意に高かったと報告。(1995年)
その他欧米の研究報告によると、糖尿病により発症率が有意に上昇するとされる悪性腫瘍には、膵臓癌、大腸癌、肝臓癌、前立腺癌、乳癌、子宮内膜癌がある。
胃癌については、久山町研究において、空腹時血糖値と胃癌発症の間に正の関係があると報告。(2005年)肺癌と糖尿病との関係では報告はない。これは肺癌に及ぼす喫煙の影響が強いためと考えられる。』
『糖尿病が発癌のリスクを上昇させる機序は明確にされていないが、いくつかの可能性が考えられる。まず<高血糖に伴うDNA傷害><インスリン抵抗性と高インスリン血症>などが考えられる。
高血糖に伴う反応により活性酸素が発生し組織への酸化ストレスが亢進しDNA障害が生じる。また高血糖自体もDNA障害を引き起こす。DNA障害が発癌要因となる。
インスリン抵抗性と高インスリン血症による発癌の機序は、インスリンが各種組織の成長因子であることが関わる。動物実験では、高インスリン血症が、各種癌細胞の形成や増殖に関与するとの報告がある。
その他として、糖尿病に密接に関係する肥満による機序が考えられている。近年の基礎研究によれば脂肪組織から分泌される、レプチン、アディポネクチン、TNF-α、インターロイキン-6、肝細胞増殖因子といった様々なサイトカインが注目されている。
これらが抗アポトーシス作用、細胞増殖作用、血管新生作用などを有することから、癌細胞の発育促進に関与する可能性が示唆されている。』
このように糖尿病は、確実に癌発生のリスクとなることがあきらかとなってきています。
その機序を大別すると以下の3つに集約されます。
①高血糖のリスク
②高インスリン血症のリスク
③肥満のリスク
①②③の全てが、糖質制限食でコントロール可能です。
インスリン注射やSU剤は、糖尿病治療に必要不可欠のものですが、それだけに頼っていては②③はクリアできません。
また、インスリン注射やSU剤内服中でも、糖質を摂取すれば食後高血糖を生じることが多いです。
さらに、外部からのインスリン注射でも、内部の自分のインスリンでも、血中濃度が高いほど、発がんのリスクは増えます。SU剤でインスリン分泌促進させることも同様のリスクがあります。
発がんリスク軽減のためにも、現在インスリン注射やSU剤で治療しておられる糖尿人の皆さん、主治医ともよく相談されて、糖質制限食で薬の量を減量することを目指して下さいね。
(*)日本医事新報 No.4303(2006年10月14日) 91-92ページ
江部康二
2011.06.24 (Fri)食後高血糖は有害!「食後血糖値の管理に関するガイドライン」IDF2007
2011.06.27 (Mon)「スーパー糖質制限食に発ガンのリスクはあるのか?①」
2011.06.30 (Thu)「高インスリン血症と高血糖と発がんリスク」
ここ何回か、本ブログでがん関連の話題を提供してきました。
今回も糖尿病とがんのお話しです。
日本医事新報(*)にて「糖尿病と発癌のリスク」という質問に、九州大学大学院医学研究院環境医学教授池田文恵先生、清原裕先生が回答しておられます。
以下その要約です。
『近年の疫学・臨床・基礎研究により、糖尿病と悪性腫瘍との間に密接な関連が存在することが明らかにされつつある。
糖尿病と全悪性腫瘍発症の関係について、2つの大規模な報告がある。
A) 韓国のJee等は空腹時血糖値140mg/dl以上で、男女とも悪性腫瘍の発症リスクが有意に上昇すると報告。(2005年)
B) 米国のNHANES I(全米栄養健康調査1)からの報告でも男性の糖尿病患者群で悪性腫瘍発症のリスクが有意に高かったと報告。(1995年)
その他欧米の研究報告によると、糖尿病により発症率が有意に上昇するとされる悪性腫瘍には、膵臓癌、大腸癌、肝臓癌、前立腺癌、乳癌、子宮内膜癌がある。
胃癌については、久山町研究において、空腹時血糖値と胃癌発症の間に正の関係があると報告。(2005年)肺癌と糖尿病との関係では報告はない。これは肺癌に及ぼす喫煙の影響が強いためと考えられる。』
『糖尿病が発癌のリスクを上昇させる機序は明確にされていないが、いくつかの可能性が考えられる。まず<高血糖に伴うDNA傷害><インスリン抵抗性と高インスリン血症>などが考えられる。
高血糖に伴う反応により活性酸素が発生し組織への酸化ストレスが亢進しDNA障害が生じる。また高血糖自体もDNA障害を引き起こす。DNA障害が発癌要因となる。
インスリン抵抗性と高インスリン血症による発癌の機序は、インスリンが各種組織の成長因子であることが関わる。動物実験では、高インスリン血症が、各種癌細胞の形成や増殖に関与するとの報告がある。
その他として、糖尿病に密接に関係する肥満による機序が考えられている。近年の基礎研究によれば脂肪組織から分泌される、レプチン、アディポネクチン、TNF-α、インターロイキン-6、肝細胞増殖因子といった様々なサイトカインが注目されている。
これらが抗アポトーシス作用、細胞増殖作用、血管新生作用などを有することから、癌細胞の発育促進に関与する可能性が示唆されている。』
このように糖尿病は、確実に癌発生のリスクとなることがあきらかとなってきています。
その機序を大別すると以下の3つに集約されます。
①高血糖のリスク
②高インスリン血症のリスク
③肥満のリスク
①②③の全てが、糖質制限食でコントロール可能です。
インスリン注射やSU剤は、糖尿病治療に必要不可欠のものですが、それだけに頼っていては②③はクリアできません。
また、インスリン注射やSU剤内服中でも、糖質を摂取すれば食後高血糖を生じることが多いです。
さらに、外部からのインスリン注射でも、内部の自分のインスリンでも、血中濃度が高いほど、発がんのリスクは増えます。SU剤でインスリン分泌促進させることも同様のリスクがあります。
発がんリスク軽減のためにも、現在インスリン注射やSU剤で治療しておられる糖尿人の皆さん、主治医ともよく相談されて、糖質制限食で薬の量を減量することを目指して下さいね。
(*)日本医事新報 No.4303(2006年10月14日) 91-92ページ
江部康二
はじめまして、江部先生。
いつも著作やブロブを見て、糖尿病などの知識を得ています。ありがとうございます。ニュースを見て、ひとつ質問をしたいのですが・・・
読売新聞にて以下のようなニュースが配信されました。
私のこれまでの知識から、この5大疾病は、糖質制限食で改善されるように思いましたが、そう思ってよろしいのでしょうか?
----------------------------------------------------------------------------------
4大疾病、精神疾患加え5大疾病に…厚生労働省
読売新聞 7月6日(水)19時22分配信
厚生労働省は6日、「4大疾病」と位置付けて重点的に対策に取り組んできたがん、脳卒中、心臓病、糖尿病に、新たに精神疾患を加えて「5大疾病」とする方針を決めた。
うつ病や統合失調症などの精神疾患の患者は年々増え、従来の4大疾病をはるかに上回っているのが現状で、重点対策が不可欠と判断した。
同省は同日、国の医療政策の基本指針に精神疾患を加える方針を社会保障審議会医療部会で示し、了承された。この指針を基に都道府県は地域医療の基本方針となる医療計画を作る。
4大疾病は2006年に重点対策が必要な病気として指針に明記。それを受けて都道府県が、診療の中核を担う病院の整備や、患者を減らすための予防策など、具体的な対策を立てた。
医療計画は5年に1度見直され、次回は13年に予定している都道府県が多い。
同省の08年の調査では、糖尿病237万人、がん152万人などに対し、精神疾患は323万人に上る。
いつも著作やブロブを見て、糖尿病などの知識を得ています。ありがとうございます。ニュースを見て、ひとつ質問をしたいのですが・・・
読売新聞にて以下のようなニュースが配信されました。
私のこれまでの知識から、この5大疾病は、糖質制限食で改善されるように思いましたが、そう思ってよろしいのでしょうか?
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4大疾病、精神疾患加え5大疾病に…厚生労働省
読売新聞 7月6日(水)19時22分配信
厚生労働省は6日、「4大疾病」と位置付けて重点的に対策に取り組んできたがん、脳卒中、心臓病、糖尿病に、新たに精神疾患を加えて「5大疾病」とする方針を決めた。
うつ病や統合失調症などの精神疾患の患者は年々増え、従来の4大疾病をはるかに上回っているのが現状で、重点対策が不可欠と判断した。
同省は同日、国の医療政策の基本指針に精神疾患を加える方針を社会保障審議会医療部会で示し、了承された。この指針を基に都道府県は地域医療の基本方針となる医療計画を作る。
4大疾病は2006年に重点対策が必要な病気として指針に明記。それを受けて都道府県が、診療の中核を担う病院の整備や、患者を減らすための予防策など、具体的な対策を立てた。
医療計画は5年に1度見直され、次回は13年に予定している都道府県が多い。
同省の08年の調査では、糖尿病237万人、がん152万人などに対し、精神疾患は323万人に上る。
2011/07/07(Thu) 18:59 | URL | ひろポン | 【編集】
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