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インクレチンとSU剤のインスリン分泌促進作用機序の違いについて
こんばんは。

インクレチンとSU剤のインスリン分泌促進作用機序の違いについて、肥満人さんから、コメント・質問をいただきました。

復習を兼ねて、考えてみましょう。

今回の記事は、一部、小難しいところがあるので、飛ばして読んで貰ってもいいですよ。

【11/06/23 肥満人
インククレチンについての素朴な疑問です
江部先生
糖尿に関する根源的な解説
思わず納得です!

ちょうど
インクレチンのことについても
記述されていましたので

日ごろ 素人なりに 感じていた 素朴な疑問を コメントさせていただきます

よくSU剤はすい臓にムチ打つ(24時間)といわれますがインクレチン関連製剤も作用機序はちがっても β細胞に働きかけて インスリンを出させるという点はSU剤とかわりないように思えます。
ただ、インクレチン関連製剤が鞭打ついうことはほとんどいわれていないのですが これは インクレチン関連製剤が理論的には 消化器官が糖分を吸収したときのみ 作用することになっていて (グルファストのような速攻型製剤同様)作用時間がごく短時間なためダメージが少ないということで二次無効の可能性はすくないのでしょうか?】



肥満人さん。
コメント、ありがとうございます。

まずインクレチンとSU剤の作用機序には、明確な違いがあります。

インクレチンは、食事摂取により消化管から分泌され、インスリン分泌を促進するホルモンで、上部小腸にあるK細胞から分泌されるGIPと、下部小腸にあるL細胞から分泌されるGlp1があります。

Glp1の主な生理作用はインスリン分泌促進作用ですが、それ以外に膵グルカゴン分泌抑制作用、消化管運動抑制作用、インスリン感受性亢進作用、そして膵β細胞保護・増殖作用が認められています。GIPはGlp1に比べると作用は弱いとされています。

そして、Glp1やGIPを分解するDPP-4という酵素を阻害して分解を抑制し、インクレチンの血中濃度を上昇させて保つのが、DPP-4阻害剤(ジャヌビア、エクア、ネシーナなど)です。

さて、上述のようにインクレチンがインスリン分泌を促す仕組みと、SU剤がインスリン分泌を促す仕組み(☆)は、実は異なっています。

難しい箇所は省いて、超簡単に言うと、SU剤はβ細胞表面のSU受容体と結合して、カリウムチャンネルを閉じっぱなしにしてしまい、その結果カルシウムが細胞内に流入してインスリンを分泌させます。

この場合、SU剤の作用時間(24~12時間)の間は、血糖が高かろうが低かろうが関係なく、ずっとインスリンはだだ漏れ状態です。だから低血糖が生じやすいのですね。

そして、インスリンを分泌しっぱなしのβ細胞が、疲弊していく可能性があるわけです。

まあ、SU剤というのは、人為的に無理矢理カリウムチャンネルを閉じて、β細胞を騙しているようなものですかね。

一方、インクレチンは、糖質や脂質を摂取すると消化管から分泌されて、β細胞のインクレチン受容体に作用してβ細胞内のサイクリックAMPを上昇させ、インスリン分泌の増幅経路に働きます。

こちらは、糖質を食べて血糖値が上昇し、β細胞内にとりこまれてATPが産生されて、カリウムチャンネルが閉じてカルシウムが細胞内に入ってきたときだけ、増幅経路に働いてインスリンを分泌させます。

血糖値が下がって108mg/dlくらいになると、β細胞はブドウ糖を取り込まなくなり細胞内カルシウムは増加しないので、インクレチン濃度が高くても増幅経路は作用せず、インスリンは分泌されません。

つまり、

1)糖質摂取→血糖値上昇→糖輸送体でβ細胞内にブドウ糖取り込み→β細胞内ATP上昇→カリウムチャンネル閉鎖→脱分極→カルシウムチャンネル活性化→細胞内カルシウム濃度上昇→インスリン分泌

という、ブドウ糖刺激によるインスリン分泌の一般的な経路の最後の過程

A)細胞内カルシウム濃度上昇→インスリン分泌

の経路をインクレチンによるβ細胞内サイクリックAMP上昇が増幅させて、
インスリン分泌を促すわけですね。

B)「β細胞内『カルシウム濃度+サイクリックAMP濃度』上昇」→インスリン分泌増幅

というわけです。

こういう作用機序なので、インクレチンは血糖値が高いときのみに、インスリン分泌作用を有し、108mg/dl以下に血糖値が下がってきたら、インスリン分泌作用がなくなるわけなので、単独使用では低血糖は理論的には起こりません。

またSU剤のように、24時間β細胞を鞭打つといった側面は皆無なので、β細胞も疲弊しないのだと思います。


江部康二



(☆)<SU剤の作用機序とブドウ糖刺激による一般的なインスリンの分泌経路>

血液中のブドウ糖濃度が上昇すると、ブドウ糖は膵臓のβ細胞の表面に発現するGLUT2(糖輸送体2)により、細胞の中に取り込まれます。

取り込まれたブドウ糖は代謝を受け、ミトコンドリアでATP(エネルギー)が産生されます。このATP濃度が増すと、β細胞表面のカリウムチャンネルが閉じます。

そうするとKが細胞外にでなくなり、細胞膜の脱分極が起こり細胞内外で電位差が生じます。

その結果、カルシウムチャンネルが活性化しカルシウムが細胞内に流入します。カルシウム濃度が上昇すると、β細胞は活発になり、インスリンを分泌します。

この一連の流れが、ブドウ糖刺激による一般的なインスリンの分泌経路です。

SU剤は、カリウムチャンネルの一部を構成するSU受容体と結合して、ATP濃度とは無関係にカリウムチャンネルを閉じてしまいます。

SU剤によりカリウムチャンネルが閉じてしまえば、上述の一般的なインスリン分泌経路の一連の流れと同様に、(Kが細胞外にでなくなり、細胞膜の脱分極が起こり細胞内外で電位差が生じ、カルシウムチャンネルが活性化し)カルシウムが細胞内に流入しカルシウム濃度が上昇し、β細胞は活発になりインスリンを分泌します。


テーマ:糖尿病
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
糖質制限について
お久しぶりです。

相変わらず、体重はあまり減りませんが、増えずに維持している感じでいてます。


実は、1ヶ月前に肝転移が見つかりラジオ波の治療を済んだばかりなんですが、今日、また見つかり今回は手術になりそうなんです。

そこで、先生にお聞きしたいことがあります。

血液検査の結果、血糖が59くらいから65くらいで、低すぎると言われ(絶食の人の数字だと)尿素窒素は8.4前後で正常、クレアチニンは0.77で正常、問題はeGFRが68で低すぎるらしく、これ以上腎臓の数字が下がってくると造影剤の検査が出来なくなるからと、少し水分を多く取るように言われました。

そこの先生方は私が、糖質制限をしていることを知りません。

先生の本で、腎機能がよくない人は糖質制限を実行しないほうがいいと書いてあったように思います。

この数字で先生ならどのような判断をなされますか?

私としてはこのまま続けて生きたいのですが・・

時間のあるときにお答えお願いします。
2011/06/23(Thu) 20:26 | URL | みかん | 【編集
Re: No title
銀 さん。

データ的には、糖尿病型ではなくて、境界型ですね。

たまに、糖質摂取するていどなら、薬はいらないと思います。

緩やかでいいので、糖質制限食をお続けくださいね。
2011/06/23(Thu) 20:57 | URL | ドクター江部 | 【編集
ご回答ありがとうございました。
ちなみに21時に測定したら186mq/dlでした。
2011/06/23(Thu) 21:14 | URL | 銀 | 【編集
Re: 糖質制限について
みかん さん。

お久しぶりです。

「クレアチニンは0.77で正常」

糖質制限食実践において、何の問題もありません。
美味しく楽しく糖質制限食、お続け下さい。
2011/06/23(Thu) 23:25 | URL | ドクター江部 | 【編集
はじめまして
こんにちは。
いつもblog拝見してます(^ω^)

私は152cm50kgの18歳です。
高校を卒業し運動量が減ってしまったので、摂取カロリーを減らしてダイエットしようと思いました。

栄養とか考えず、単にカロリーの制限を行っていたところ、頭痛と下痢が起こり、毎日だるさを感じるようになりました。

また、お腹が空いてないときでも、一日中お腹が鳴るようになってしまいました。

福島住みのため、地震によるストレスもあるのかもしれませんが、この症状はカロリー制限のせいでしょうか?

でもやっぱり痩せたいんです!

是非アドバイスお願いします。
2011/06/24(Fri) 08:51 | URL | 佐藤 | 【編集
早速のご回答ありがとうございます
江部先生 早速のご回答ありがとうございます

糖尿人一般
糖質制限でコントロールが完璧にはいかない
糖尿人や
糖質制限がどうしても不十分になってしまう糖質制限人
にとって
副次的な二次的手段として
インクレチン関連製剤が
SU剤などに比べてずっと使いやすい
製剤だということがよくわかりました
最終的には糖質制限のみでのコントロールを目標に
時にはインクレチン関連製剤の手もかりつつ
QOLの高い糖質コントロールよる血糖コントロール生活を
続けていくときの強い味方ができた気がします。

本当にありがとうございました。
2011/06/24(Fri) 09:54 | URL | 肥満人 | 【編集
No title
突然ですが教えて頂ければと思いコメントさせて頂きます。
私は糖尿人となって20年になります。2年前、不摂生が祟って眼底出血を起こし手術をしました。その後は
気をつけて生活していましたが、体重の増加に悩んでいたところ、江部先生の糖質制限食に出合い、本を購入
して、糖質制限食を始めることになりました。
インスリン治療をしていますので、5月28日から血糖測定をして、自分でインスリンの量を調整しながら
6月23日の定期検診日での結果を楽しみにしていたのですが・・・・・

          4月21日          6月23日
HbA1c      7.6             6.9
CPK        98              601
LDH        183             239
TC         188             243
アセトン体       (―)             (1+)
 
朝夕、ランタス 6単位 ・ノボラッビット 2単位
朝夕、ノルバスク5mg・オルメッテク20mg 
の処方となりました。

お昼にグルファストを服用していたのですが、スーパー糖質制限を始めてから中止していて今回は投薬無しと
してもらいました。
主治医は「身体が危険な状態になっているので、もっと糖質を摂りなさい」と糖質制限には否定はしない
けど・・・・・という態度でした。
ただ、私自身も CPKの異常な数値に驚いています。
このまま続けていても大丈夫なのか?何か改善した方が良いのか?
教えて頂けたらと思い書き込みをさせて頂きました。

週に2~3回 テニスをしています。
夜中に伸びをした時に、ふくらはぎが攣るような感じはありました。

宜しくお願い致します。
2011/06/24(Fri) 11:19 | URL | さかな | 【編集
Re: はじめまして
佐藤 さん。

152cm50kg
なら、BMI21.6で、適正体重ですね。

カロリー不足にならないように、脂質とタンパク質はしっかり摂取して、
緩やかな糖質制限で、適正体重を維持してくださいね。
2011/06/24(Fri) 15:35 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: No title
さかな さん。

本のご購入ありがとうございます。

CPKは、糖質制限食とは無関係です。
前の日にテニスとかしていれば、筋肉運動の結果として、CPKが上昇します。
筋トレでもCPKが上昇します。

尿中アセトン体の陽性は、糖質制限食による生理的なもので、問題はありません。
糖質制限食を続けられてよいと思います。
2011/06/24(Fri) 15:42 | URL | ドクター江部 | 【編集
No title
早速のお返事 有り難うございました。
前日、テニスのレッスンが有り、脚部にかなりの筋肉痛がありましたので、その結果だと考えて(*^^)vこのまま継続して糖質制限食を頑張ります。美食家ダイエットの食欲をそそられるレシピにもチャレンジしていきたいと思います。
余談ですが、糖質制限食を始めてから身体が軽くなり、テニスの時のフットワークもコーチに褒めてもらえるぐらいになっていまして・・・・・
それが検査結果に裏目に出てしまったということなのかもしれませんね。
このまま頑張ります(*^_^*)
2011/06/24(Fri) 20:09 | URL | さかな | 【編集
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