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武田のアクトス、仏で新規患者への投与禁止-膀胱がんリスク?
こんばんは。

2011年6月10日、メディアに

「武田のアクトス、仏で新規患者への投与禁止-膀胱がんリスク?」

といった内容の記事が掲載されました。


http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110610-00000001-cbn-soci
武田のアクトス、仏で新規患者への投与禁止-膀胱がんリスクで
医療介護CBニュース 6月10日(金)12時17分配信

フランス政府の医薬品規制当局は6月9日、武田薬品工業の糖尿病治療薬アクトスとコンペタクト(アクトスとメトホルミンの配合剤)の新規患者への投与を禁止したと発表した。武田によると、フランスの規制当局が独自に行った疫学調査で、アクトス投与群は非投与群に比べ膀胱がんリスクが有意に高いことが確認されたため。現在投与中の患者については、医師が個別に判断する。

フランスの規制当局の対応を受け、欧州医薬品庁(EMA)は20日から23日にかけて開かれる医薬品委員会(CHMP)の月例会議で、アクトスと膀胱がんのリスクの関係を検討する。

アクトスは昨年度全世界で3879億円を売り上げた武田の最主力製品で、このうちフランスを含めた欧州での売上高は295億円。】


北里研究所病院糖尿病センター長、山田悟氏が「アクトスと膀胱がん」に対する論考をしておられます。☆(参考)

山田氏の論考を参考に、以下、簡単に要約してみました。

まず、アクトス(ピオグリタゾン)は発売前の研究において、雄ラットで膀胱がんを増やす作用が報告されています。しかし、この作用は雌ラットでは確認されていません。

今回のフランスの疫学調査も、男性においてのみ、アクトスで膀胱癌のリスクが有意差をもって認められたということです。

KPNC(Kaiser Permanente Northern California)試験は、米食品医薬品局(FDA)の要請を受けて武田薬品工業が米国カリフォルニア州で実施しているアクトスとと膀胱がんの関係を評価するための疫学研究です。

10年間の試験期間が予定されており、今年(2011年)4月号のDiabetes Careにその5年時での中間解析結果が報告されました(Diabetes Care 2011; 34: 915-922)。

それによると,1997~2002年に登録された19万3,099人の患者のうち、アクトス内服患者3万173人をアクトス非内服糖尿病患者16万2,926人と比較したところ、全体では有意な膀胱がんの増加は認められなかったものの、2年以上使用している患者ではぎりぎりで有意なリスクの増加が認められました。

上述のように、フランス政府の決定はありましたが、欧州医薬品庁(EMA)や米国医薬品庁(FDA)は、アクトス使用には制限を加えず、モニタリングを続けるということです。

アクトスは、体重増加、浮腫、心不全などの副作用が一定懸念され私自身は、もともとほとんど使っていません。

一方、前医で処方され副作用もなく経過がいい糖尿人で、糖質制限食がキッチリできない人には、そのまま継続処方することがあります。

糖質制限食がキッチリできる人もいれば、できない人もいます。

今後は、アクトスに関して、男性には今まで以上の慎重投与というスタンスで、いきたいと思います。

一方、痩せ型の女性糖尿人には、体重増加作用を期待して、アクトス少量投与も選択肢の一つかとは思います。



江部康二



以下は

医師のための専門情報サイトMTPro(エムティープロ) 株式会社メディカルトリビューン2011年6月11日号に掲載された、北里研究所病院糖尿病センター長、山田悟氏のアクトスと膀胱がんに対する論考です。

いつもながら、ニュートラルでわかりやすい解説となっています。

☆(参考)

【「ピオグリタゾンの膀胱がんリスク」を考察する
フランスの新規処方禁止勧告を受けて

北里研究所病院糖尿病センター 山田 悟

問題の背景:見えない情報が不安と憶測,不適切な判断を生みかねない

6月11日の日本経済新聞紙面に掲載された「フランスの行政当局は『アクトス(ピオグリタゾン)服用で膀胱がんの発症リスクがわずかに高まる』との調査結果をもとに,糖尿病患者へ新たに処方しないように武田薬品工業の仏子会社へ指示した」との記事をご覧になった方も多いと思う(関連記事1,関連記事2)。

今回の仏医薬品庁(Afssaps)の決定は,同国内での疫学調査CNAMTS(Caisse d’assurance maladie de travailleurs salaries)に基づくものであるが,この試験の結果は現時点では英文でのpublicationがない。よって,情報は不十分なのであるが,見えない情報が不安と憶測をもたらし,不適切な判断を生むことだけは避けたいと考え,現時点でわたしの知りうる情報を,それに関連する文献とともに提示し,わたしなりに考察してみたい。

ポイント1:勧告の根拠は仏国内疫学調査CNAMTS

ピオグリタゾンは発売前の研究において,雄ラットで膀胱がんを増やす作用が報告された。しかし,この作用は雌ラットでは確認されず,また,雌雄を問わずマウスでも確認されなかったので,雄ラットに特有の現象と考えられていた。

ところが,ピオグリタゾンの動脈硬化症の予防効果を証明したとされるPROActive試験(Lancet 2005; 366: 1279-1289)において,有意ではないもののピオグリタゾン群での膀胱がんの増加が示唆されたこともあり,各国でピオグリタゾン使用患者での膀胱がんの発症率を検討する疫学試験が計画された。

CNAMTSは仏国内の保健データベースであるSNIIRAM(System national interregimes de l’assurance maladie)内の約150万人の糖尿病患者(年齢40~79歳)に関する2006~09年のデータを用いて,膀胱がんの発症率を検討した後ろ向きコホート研究である。登録された糖尿病患者は149万1,060人であり,うち15万5,535人がピオグリタゾン内服患者(男性53.8%)であり,133万5,525人がピオグリタゾン非内服患者(男性53.4%)であった。ピオグリタゾン非内服患者のうち68.2%がメトホルミン,55.5%がスルホニル尿素(SU)薬,27.6%がインスリンを使用していた。

ポイント2:男性ではピオグリタゾン内服患者で膀胱がんリスクが上昇

各種糖尿病薬の投与患者における膀胱がんの発症率を,当該薬剤以外の薬剤投与患者における膀胱がんの発症率と比較して得られたハザード比(HR)は以下の通りであった(表1)。

このデータからピオグリタゾンは男性において膀胱がんのリスクが有意に上昇していると判定された。そこで,ピオグリタゾンの投与期間や累積投与量で分類してリスクの上昇の程度を検討したところ,HRは以下の通りであった(表2,3)。


私の考察1:米国のKPNC試験やAERSでも類似の結果だが…

前述のように,ピオグリタゾンの持つデメリットとして膀胱がんの可能性が雄のラットで指摘されていたために,ほかにも両者の関係を検討する試験が実施されている。

KPNC(Kaiser Permanente Northern California)試験は,米食品医薬品局(FDA)の要請を受けて武田薬品工業が米国カリフォルニア州で実施しているピオグリタゾンと膀胱がんの関係を評価するための疫学研究である。10年間の試験期間が予定されており,今年(2011年)4月号のDiabetes Careにその5年時での中間解析結果が報告されている(Diabetes Care 2011; 34: 915-922)。

それによると,1997~2002年に登録された19万3,099人の患者のうち,ピオグリタゾン内服患者3万173人をピオグリタゾン非内服糖尿病患者16万2,926人と比較したところ,全体では有意な膀胱がんの増加は認められなかった(HR 1.2,95%CI 0.9~1.5)ものの,2年以上使用している患者では有意なリスクの増加が認められていた(同1.4,1.03~2.0;表4,5)。

また,FDAの副作用報告(AERS)を後ろ向きに解析した研究 (Diabetes Care 2011; 34: 1369-1371)では,オッズ比(OR)は4.30(2.82~6.52)でピオグリタゾン使用者での膀胱がんの発生報告が有意に多かった。

ただし,この研究ではアカルボース(OR 5.12倍)やグリクラジド (同3.56倍)でも膀胱がんの発生頻度が有意に高くなっており,興味深いことに,グリクラジドが有意にORが高かった一方で,グリベンクラミドは0.33と有意にORが低かった。

私の考察2:今の時点でのピオグリタゾンの中止は不要であろう

こうして見てみると,いずれの試験においても,全体もしくは部分的な集団においてピオグリタゾン内服者での膀胱がんの増加が報告されている。したがって,ピオグリタゾンの膀胱がん増加に対する懸念を払拭することはできない (‘白’とは言えない)。しかし,はっきりと膀胱がんを増加させているのかと問われれば,それも今の時点では断言できないであろう (‘黒’とも言えない)。

CNAMTSについては,ピオグリタゾン内服女性のHRは (統計学的に有意ではないが)1を下回っており,かつ累積投与量や投与期間が大きくなるにつれてHRが大きくなっておらず,ピオグリタゾンが生物学的に膀胱がんを増加させているという印象を持てない。

KPNCについては,武田薬品工業がサポートについている試験での負の作用の報告で信憑性が高いが,中間報告における2年以上使用している患者でのぎりぎりで統計学的に有意なHRの上昇であり,最終報告を待ちたいところである。

FDAのAERSについては,報告バイアスがあり,有害作用の発症率の計算に使用してはいけないデータである。同じスルホニル尿素 (SU)薬であるグリクラジドとグリベンクラミドの膀胱がんに対する相違 (片や有意な上昇で,片や有意な低下)を見ても,データが科学的な作用と一致するかに疑問がある。また,同じデータベースを用いて解析された先日のElashoffらのインクレチン関連薬に関するがんの報告 (「インクレチン関連薬の膵炎・腫瘍への有害性を注視せざるをえない」,「『インクレチン関連薬の膵炎・腫瘍リスク』論文を撤回させた? EASDステートメント」,「不可解な再掲載,インクレチン関連薬と膵炎・腫瘍」)を見ても,それぞれの薬剤で注目されている有害作用の報告がどうしても多くなる気がする。

そう考えると,黒と断言できない膀胱がんを恐れて,新規処方を停止したという仏行政当局の決定は時期尚早に思える。一方,同国政府の決定はあってもピオグリタゾンの使用には制限を加えず,モニタリングを続けるという欧州医薬品庁(EMA)やFDAのスタンスに共感を覚える。今の時点では,ピオグリタゾンが膀胱がんへのデメリットを持つ可能性は否定できないが,臨床上得られるメリットとのバランスを考えながら,慎重に処方していくというスタンスが大切であろう※。


山田 悟(やまだ さとる)氏

1994年,慶應義塾大学医学部を卒業し,同大学内科学教室に入局。東京都済生会中央病院などの勤務を経て,2002年から北里研究所病院で勤務。現在,同院糖尿病センター長。診療に従事する傍ら,2型糖尿病についての臨床研究や1型糖尿病の動物実験を進める。日本糖尿病学会の糖尿病専門医および指導医。(本文へ戻る)

※ KPNC試験の結果からは,ピオグリタゾンを糖尿病患者1万人に1年間投与したときに予想される膀胱がん発症リスクが1.27人増加することになり,PROActive試験の成績からは,ピオグリタゾンを大血管障害の既往を有する2型糖尿病患者1万人に1年間投与することで心筋梗塞が約40人,主要な動脈硬化症(心血管死,心筋梗塞,脳卒中)が約70人減少することが示唆される。】

テーマ:糖尿病
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
糖質制限食
はじめてコメします。6月のはじめに糖尿病であることが発覚しました。母も糖尿病により命を落としています。それを目の当たりにしながら、不摂生を続けた自分を恥じています。ですが、なってしまったものは後悔しても遅いので、前向きに治療に専念しようと思っております。私ははっきり言って肥満です。152cm74kgです。A1cは10.1でした。現在、食事療法と運動療法、投薬をおこなっております。(メデット250mg食後1錠)血糖測定器を購入し、色々な状況で血糖値を測定して様子をみているところです。先生のおっしゃる糖質制限食を厳密にではありませんが、実行してみました。(朝・昼:主食あり、夜:主食なし)そうすると、確かに血糖値はあがりません。食後2時間の血糖値は120程です。今回、お伺いしたいのは、やはりこれは炭水化物をとっていないから、血糖値が上昇しないというだけで、また炭水化物をとれば血糖値は上がるということなんですよね?糖尿病は治らない・・と聞いた事がありますが、糖質制限食をやめて、普通の人と同じような食事ができる生活には戻らないのでしょうか?とりあえず、痩せるということが大前提なのですが、糖質制限を続け標準体重にすれば、また普通の食生活を送る事ができるようになるのでしょうか?
2011/06/17(Fri) 05:05 | URL | ika | 【編集
No title
>雄ラットで膀胱がんを増やす作用が報告されています。
>しかし、この作用は雌ラットでは確認されていません。

このようなことは珍しくないことなのでしょうか?

また今後、国内でのアクトス使用についてどのように危惧されてますか?
2011/06/17(Fri) 08:50 | URL | ふじむら | 【編集
江部先生、はじめまして。

早速質問で恐縮なのですが、私の母は糖尿病と診断され、インスリンはまだ不要の軽度との事で、病院の医師と栄養士の指導で、江部先生の著者を参考に、糖質除去食を実践し、おかげ様で、血糖値は正常範囲にすぐおさまりました。

しかし、病院の転勤で来た新しい担当医が、脳は糖質でしか働かないから、白米を大食すべし、日本古来からの主食だから、良いに決まっているから従いなさい、という主張の人で、食事も栄養士さんの反対もむなしく、主食に三食白米180グラムに変更になってしまいました。
母は元々両膝が悪くてロクに動けなくなって入院して、糖尿病も発刊した次第です。
医師と対立したせいか、白米を勝手に残さないように看護士の監視付きなので、即刻転院か、自宅療養させたいと思っています。

膝より糖尿病の方が重大だと思います。
母は家でも白米はそれ程食べておらず、主食のように食べていたジャガイモとコーンが悪かったと思います。

長々とすみません。
2011/06/17(Fri) 10:49 | URL | マァちゃん | 【編集
Re: 糖質制限食
ika さん。

152cm74kg→BMI32 です。

「インスリン抵抗性+インスリン分泌不足」が合わさって「インスリン作用不足」となり
糖尿病を発症します。

インスリン分泌能力があるていど残っていて、肥満によるインスリン抵抗性が主たる要因で
糖尿病を発症したなら、肥満改善でインスリン抵抗性が改善すれば
100/100の回復は無理でも、80/100くらいの回復はあり得ます。
その場合は見かけ上は正常に近い耐糖能になると思います。
それで、緩やかな糖質制限食をしておけばまた糖尿病型になることを予防できます。
2011/06/17(Fri) 16:46 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: No title
ふじむら さん。

私も門外漢なので、断定はできませんが、性差はいろんな病気であります。

アクトスは男性には膀胱癌リスクの可能背はあり得るので、要注意ですね。
女性はアクトスで男性よりむくみがでやすいので要注意です。

痩せ型の女性で、浮腫などの副作用がでてなければ、選択肢の一つです。
2011/06/17(Fri) 17:00 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: タイトルなし
マァちゃん

本のご購入ありがとうございます。
理解のある医師の転勤、残念でした。

「主食に三食白米180グラム」
これでは100%、食後高血糖になるので危険です。

即刻転院か、自宅療養がよいと思います。
2011/06/17(Fri) 17:04 | URL | ドクター江部 | 【編集
アクトス
アクトスについてのご解説、男性には今まで以上の慎重投与とのご見解、ありがとうございます。

糖質制限をキチンとやれずに、アクトス服用中の身としましては、どうリスクを取るべきか、悩ましい限りです。主治医とよく相談致します。

最後の※印個所の1年間投与で1.27人増加は、仮に10年服用を続ければ10倍の12.7人増加と単純に考えていいのでしょうか。

ちなみに、毎日2合の飲酒は、平均寿命は5年ほど延びるが、発がんリスクは1万人中3000人→3060人のようですから、リスクとしては飲酒や喫煙よりはかなり低いように感じます。
2011/06/17(Fri) 18:48 | URL | アル中かも | 【編集
Re: アクトス
アル中かも さん。

基本的にはそうです。
一方、アクトスの投与総量と投与年数が増加するに従って
膀胱癌も増える傾向にあるので要注意です。
2011/06/18(Sat) 08:49 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: タイトルなし
ひろえさん。

電話相談はしておりません。
2011/09/14(Wed) 13:05 | URL | ドクター江部 | 【編集
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