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低血糖とブドウ糖とインスリン作用不足とGLUT1
こんにちは。

今回は、低血糖とブドウ糖について、でぃあべーちゃ  さんから、コメント・質問をいただきました。


【11/04/25 でぃあべーちゃ

おひさしぶりです。最近は気が緩んでときどき炭水化物を大量にたべてしまうことがありますが、なんとかやっております。

さて、質問があります。

2型でインスリン分泌能の低い人が、低血糖で倒れたとき、 ジュースなどを飲ませても、間に合わないのではないでしょうか。
病院では緊急時点滴でブドウ糖をいれたりすると聞きますが、そもそも細胞内に取り込むことが大変しづらくなっているはずなのに、 そんなんで間に合うのでしょうか。
糖分をとり高血糖になってもエネルギー転換できない状態は そうそう変わらないはずだとおもうのですが。なにかスイッチがあって 別の機構が働くとかあるんでしょうか。。。

昨日相方と考えておりましたが、 どうも素人の知らない変数がありそうだ、と一旦考えるのやめました。】



でぃあべーちゃさん。
お久しぶりです。

インスリン作用が不足して糖尿病が発症します。

『インスリン分泌不足+インスリン抵抗性(インスリンの効きが悪い)』

が合わさって、インスリン作用不足です。

インスリン作用があるていど以上不足すると、高血糖になってしまいます。

空腹時なら126mg/dl以上、食後なら200mg以上となります。

つまり、インスリン作用不足のために、正常血糖値では筋肉・脂肪細胞内に血糖(ブドウ糖)を取り込めないので、高血糖にして辻褄を合わせているわけですね。

そういうインスリン作用が不足している糖尿人が、何らかの理由で70mg/dl未満の低血糖になったとして、
ブドウ糖を10gくらい飲んで30mg上昇しても、血糖値は100mgくらいにしかなりませんから、でぃあべーちゃさんの危惧されるように、細胞はブドウ糖を取り込めないのではないかという不安もでてきますね。

低血糖症状には、交感神経症状と中枢神経症状があります。

血糖値が下がると、血糖を上昇させるホルモン(インスリン拮抗ホルモンのグルカゴン・カテコールアミン・成長ホルモンなど)の分泌が増えて血糖値を上げるように調節します。この交感神経系のホルモン(カテコールアミン)により現れるのが動悸・冷汗・震えなどの症状です。
これ以上血糖が下がると中枢神経の機能が低下して危険だという警告症状でもあります。

日常のエネルギー源がブドウ糖である脳にとって、血糖が50~60~70mg/dl未満になると、脳の機能が低下してきます。

あくび、空腹感、無気力、倦怠感、計算力減退・・・さらに進んで、血糖値が30mg/dl以下になると異常行動、意識喪失、けいれん、昏睡などが生じ、生命の危険があります。

さて、人体で赤血球だけはミトコンドリアがないので、唯一ブドウ糖しかエネルギー源にできません。

脳や網膜は、日常的にはブドウ糖をエネルギー源にしていますが、ケトン体や脂肪酸もエネルギー源にできます。

脳は血液脳関門のため、脂肪酸の大きさでは利用できないのですが、ケトン体を利用します。

断食などで数日間をかけて徐々に血糖値が下がった時は、ケトン体の血中濃度が充分上昇しているので、肝臓の糖新生が上手くカバーできずに血糖値が下がっても、いわゆる低血糖発作にはなりません。

例えば、私が30代に初めて本断食(水だけでゼロカロリー)をしたとき、血糖値は35mg/dlまで下がりました。

当時は炭水化物を日常的によく食べていたので、肝臓の糖新生能力が万全ではなかったのでしょう。

従来の考えでは、当然意識不明のはずですが、その時普通に外来診察も行っていました。

私のケースを考察してみると、血糖値35mgのとき、脳はケトン体を主エネルギー源として活動していたとしか考えられません。

本断食中の初期の血中ケトン体は2000~3000レベルで、基準値(26~122)に比べてはるかに高値です。このケトン体レベルは、小児難治性てんかんの治療食であるケトン食と同等です。

このレベルの血中ケトン体濃度があれば、血糖35mgでも、脳は充分活動できるということになりますね。

少し脱線しましたが、本題に戻ります。

低血糖になったとき、ブドウ糖を10g飲めば、とりあえず70mg/dl以上には上昇しますので、交感神経症状は回復します。

細胞が血糖を取り込むためには、糖輸送体(GLUT)が必要です。そして肝心の脳ですが、脳細胞の糖輸送体はGLUT1です。GLUT1はインスリンに無関係で常に細胞表面にありますので、血流さえあればいつでも血糖値を取り込めます。

すなわち、ブドウ糖内服で血糖値が70mg/dl以上になれば、血流が確保されている限り、脳細胞は簡単にブドウ糖を取り込めるのです。糖尿人におけるインスリンの作用不足は、一切関係ありません。こうしてブドウ糖10gの内服で中枢神経症状も改善します。

またインスリン作用が欠落しているレベルは、さすがに重症過ぎて困るのですが、最低限の基礎分泌のインスリンが確保されていれば、筋肉や体細胞はケトン体や脂肪酸を、もともと日常的にエネルギー源として利用してますので少々インスリン作用が不足していても特に問題はないのです。

筋肉や脂肪細胞以外の体細胞も糖の取り込みに関して、インスリンに依存しているわけではありません。

ブドウ糖の細胞内への取り込みに関して、インスリン作用に依存しているのは、GLUT1~14のうち筋肉細胞と脂肪細胞に特異的なGLUT4だけです。



江部康二

テーマ:糖尿病
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
Re: こんばんは☆
ドリーム さん。

了解です。
2011/04/27(Wed) 13:02 | URL | ドクター江部 | 【編集
ありがとうございました。
江部先生

ブログで回答いただいて、ありがとうございました。
人間にはエネルギー交換ルートが何本もあって、Glut4はその一部なんですねえ。脳にはケトン体と糖の2系統があり、しかも糖取り込みはGlut1なのでインスリン不要、ということを理解しました。

低血糖で意識不明になったとか聞きますが、数時間程度なら脳と内臓が守られればすぐ死ぬことはないということですね。

赤血球は糖が必要、ということですが、赤血球って輸送体なしで取り込めるんでしょうか?それともGlut4以外なんでしょうか。


今後もよろしくお願いいたします。
2011/04/27(Wed) 13:46 | URL | でぃあべーちゃ | 【編集
Re: ありがとうございました。
でぃあべーちゃ さん。

赤血球や網膜も糖輸送体はGLUT1なのです。
2011/04/27(Wed) 23:47 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: 血糖値が299!
ポロ さん。

もう1ヶ月くらいスーパー糖質制限食を続けられて、HbA1cの測定など病院にいかれたらどうでしょう。

甘いものは、
糖質制限ドットコム http://www.toushitsuseigen.com/
小樽フィッシャーマンズキッチン http://www.ofk-jp.com/
などなら、大丈夫ですよ。
2011/04/28(Thu) 21:27 | URL | ドクター江部 | 【編集
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