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農耕前のGLUT4とインスリン、果糖は貴重な中性脂肪蓄積システム・続き
おはようございます。

今回は、昨日の記事の続きで、果糖と中性脂肪について考えてみます。

果物に含まれる糖質の主成分の果糖ですが、実におもしろい性質を持っています。

果糖が脂肪合成を誘導しやすい糖質であることは、以前から知られています。

ヒトにおいて、高果糖食が肝臓での脂肪合成を促進し、血中の中性脂肪濃度を上昇させ、インスリン抵抗性を生じることが報告されています。

果物中の果糖は、GLUT5によって吸収されますが、血糖にはほとんど変わらずに肝臓まで運ばれ、ブドウ糖代謝系に入ります。このとき果糖は、ブドウ糖より急速に代謝されるという特徴があります。

果糖は、肝臓での脂肪合成酵素群の発現を促進させる作用も持っており、急速に代謝されることと合わせて、とても中性脂肪に変わり易いのです。

このように、現代では、は中性脂肪をためやすく肥満しやすい性質をもっており、要注意食材といえます。

さて、それでは再び、狩猟・採集時代の人類の食生活を考えてみましょう。

果物には果糖、ブドウ糖、ショ糖などの糖質が含まれています。10万年や20万年前に、アフリカの人類のご先祖が、運良く果物にありついたとき、

A)『ブドウ糖やショ糖→血糖値少し上昇→インスリン追加分泌少量→GLUT4が脂肪細胞表面に移動して血糖を取り込んで中性脂肪に変えて蓄積』

B)『果糖→インスリンとは無関係にGLUT5により吸収されて肝臓に運ばれて速やかに中性脂肪合成』

これらA)B)の2つのシステムが稼働したはずです。

A)B)の2つのシステムは、農耕以前の人類の食生活と生存競争において、極めて重要な意味を持っていたと考えられます。

即ち、体に中性脂肪を蓄えることは、ご先祖にとって、飢餓に備えるための唯一無二のセーフティーネットであったからです。

果糖がインスリンに依存せずに、肝臓でブドウ糖より速く代謝され中性脂肪に変わるのも、農耕以前の人類においてはとても大きな利点であったと考えられます。

体脂肪をあるていど蓄えることができるのが、現世人類の大きな特徴です。特に現世人類の女性の乳房とお尻は、脂肪の蓄積装置としてはとても優れたものであり、現世人類が6属21種の人類の中で唯一生き残った大きな理由の一つと言えます。

現世人類のごく普通の体型の女性なら、その体脂肪により、水さえあれば母子ともに2ヶ月くらいは生存可能という大きなアドバンテージがあるのです。



江部康二


☆☆☆☆
昨日(2011.4.22)のブログ記事を再掲します。

こんばんは。

ここ3回、肥満や中性脂肪やインスリンやGLUT4について考えてきました。

今回は、さらに突っ込んで、インスリンやGLUT4の役割を、農耕が始まる前の狩猟・採集時代にまで遡って考察してみました。

大変興味深い大胆な仮説を思いつきましたので、是非読んでくださいね。 (^^)

そもそも、GLUT4は、今でこそ(農耕開始以後)獅子奮迅の大活躍なのですが、農耕前は、ほとんど活動することはなかったと考えられます。

つまり、農耕後、日常的に穀物を摂取して、食後血糖値が上昇するようになってからは

『食後血糖値上昇→インスリン追加分泌→GLUT4が筋肉細胞・脂肪細胞表面にトランスロケーション』

というシステムが、毎日食事のたびに稼働するようになりました。

しかし、狩猟・採集時代には、穀物はありませんので、たまの少量の糖質摂取(果物やナッツ類)で、ごく軽度血糖値上昇があり、インスリン少量追加分泌のときだけGLUT4の出番があったに過ぎません。年間を通して、時々運良く、果物やナッツ類が採集できた場合のみですね。

この頃は、血糖値は慌てて下げなくてはいけないほど上昇していないので、GLUT4の役割は、筋肉細胞で血糖値を下げるというよりは、脂肪細胞で中性脂肪を作らせて冬に備える役割のほうが、はるかに大きな意味を持っていたと思います。

すなわち、農耕以前は「インスリン+GLUT4」のコンビは、たまに運良く糖質(野生の果物やナッツ類)を摂取して時だけ、もっぱら中性脂肪生産システムとして活躍していたものと考えられます。

そして農耕以前の糖質を摂取しない日常の食生活においては、「インスリン+GLUT4」のコンビは、ほとんど働く必然性はなかったわけです。

同じ糖輸送体でも、GLUT1(脳・赤血球・網膜の糖輸送体)のほうは、インスリンには無関係に常に細胞表面にあって、農耕前も農耕以後も24時間常に活動しているわけで、GLUT4とは大きな違いがあります。

また、糖質を摂取すれば血糖値が上昇し、インスリンには無関係に、肝臓に取り込まれてグリコーゲンを蓄積しますが、余った血糖が中性脂肪に変えられます。

この中性脂肪蓄積システムも、農耕後には日常的に稼働していますが、狩猟・採集時代には、食後血糖値の上昇はほとんどないので、肝臓に取り込まれるブドウ糖もごく少量であり、中性脂肪に蓄積されるほどはなかったと思います。


<続く >

次回は、果糖と中性脂肪の考察です。


江部康二
テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
No title
こんにちは。
果糖について質問があります。
果糖は血糖値を上げない、と思っていたのですが、
純粋な果糖(粉)だけを摂取し測ってみたところ、
糖質と同じように1gあたり3mg程度の上昇がありました。
これは代謝経路が”普通”と違うということでしょうか。
果糖に反応することはどのように考えたらいいのでしょうか。
ご意見をお聞かせいただければ幸いです。
2011/04/23(Sat) 09:10 | URL | lulu | 【編集
Re: No title
lulu さん。

一般には果糖は20%くらいしか血糖値に変わらないとされています。
GIも20くらいとかなり低いです。

一方、バーンスタイン医師によれば、糖尿病の人では血糖値を上昇させるとしています。
よくわからないとことがあります。
2011/04/23(Sat) 10:00 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re:
お返事ありがとうございます。
バーンスタイン医師はそんなふうにおっしゃっているのですね。

私自身は食後高血糖および低血糖があり、
検査では糖尿病基準にはならないのですが、
果物の影響は大きいです。

ご参考までに・・・

HbA1cは糖質制限を始めてから上がりました。
5.0→5.8 です。
毎食後、高血糖(200以上)になっていたのに、
その後低血糖で60以下になっていたため、
HbA1cが低目に出ていたということになりますよね。
空腹時血糖値も60-80でした。
こういった場合糖尿病とは診断されないことに危惧を覚えます。
自己血糖値測定をしなかったら・・・と思うと、運が良かったと思わざるをえません。






2011/04/23(Sat) 16:28 | URL | lulu | 【編集
アドレナリンと血糖値のこと
いつもありがとうございます。今日は落ち込んでしまいました。というのは、二か月ぶりに測った朝の空腹時血糖値が、何と125もあったのです。これまでは100前後で推移していました。

心当たりといえば、玄米食に甘んじ殆ど3食、茶碗半分くらい口にしていたことと、甘いものも少し口にすることが増えていたことです。
血糖測定も疎かになっていました。
いつのまにか、体重も2キロ増えてしまいました。本当にバカだったと思います。最近、片づけものに没頭し、気分も高揚ぎみでやる気満々の状態でした。夜更かしも続いているので、こんな状態の時には血糖値も上がるのでしょうか。

それに、膀胱炎も久しぶりに発症したのと、顔の頬と足や手にかゆみのない赤い発疹が出現しました。ひのき花粉症の所為かと勝手に思い、塗り薬をぬっていたら治まりましたが、以前血糖値が高くなると、アトピーに似た症状が出ていたように思います。

高血糖と皮膚病は関連があるのでしょうか。膀胱炎の薬、クラビット錠を昨日まで、5日間飲みました。膀胱炎の尿検査で尿糖も見られたようで、何とプラス3と言われました。 食後2時間半でしたが、ショックでした。 糖尿病にすでになっているかもしれないと言われました。明日血液検査の結果が出ますが、糖尿病の判定が出たら、薬を処方されると思います。もちろん糖質制限を続けますが、糖質を摂らなければならない外食などのときには、どういう薬を処方してもらえば良いのでしょうか。
今日の昼食は、玄米30g、あじのから揚げ1尾、鳥から揚げ3個、ミニトマト2個、キャベツ2枚程度のみで、食後1時間が209でした。3時間後に、裂きイカ2本、コーヒー1杯をクリープ入りで飲み、昼食から5時間後が143でした。犬の散歩に10分出た後には、124になっていましたが、その1時間後には、何も食べていないのに、132になっていました。
夕食には、豚肉50グラムとキャベツ2枚の油いため、豆腐3分の1個のみでしたが、2時間後がまだ152もあります。今少しパニック気味になってるから下がらないのでしょうか。質問ばかりすみません。後悔しながら、すがる思いで書いてしまいました。コメント頂けたら有り難いです。
2011/04/23(Sat) 21:54 | URL | よよ | 【編集
糖新生でしょうか
簡易測定器での朝空腹時血糖値がいつもは100前後だったのが、昨日119で今日はじめて125となりショックを受けました。玄米食に甘んじ、つい食べ過ぎた感があります。

最近家の片づけが楽しくなり、ハイテンションで夜更かししてしまうこともあり、アドレナリンが出過ぎている所為かとも。
暁現象のこと以前目にしましたが、自分には関係ないと思い余りよく理解していなかったのですが、早朝血糖値が高くなるのは糖新生と関わりがあるのでしょうか。低血糖を防ぐための防御反応として起こることだというように解釈していますが、間違いでしょうか。正常人では起きないのでしょうか。時間がありましたらお教えください。
2011/04/23(Sat) 22:50 | URL | よよ | 【編集
糖新生について
いつもアドバイス頂き有難うございます。

糖質制限をしているつもりで少し油断してしまいました。境界型に甘んじていました。毎食玄米だからと少しづつ食べ、主食抜きだったからと、甘い間食などしているうちに体重が2キロ増え、朝の空腹時血糖値がこれまで100前後で推移していたものが、簡易測定器で125となってしまいました。測定も疎かになっていました。
膀胱炎になり尿検査で糖が+3と出てしまいました。食後2時間半です。
赤い発疹など皮膚症状も出ています。愚かでした。
以前はよく低血糖をおこしていましたが、最近は無いのです。ということは、インスリンが出ていないからでしょうか。糖新生はどうして起きるのでしょうか。食物が摂りこまれないときに、エネルギーを補給する反応が糖新生だと理解してよろしいでしょうか。
そうすると、もし極端な糖質制限で、インスリンを体が必要としない場合には、常に糖新生が起きて血糖値を上昇させるのでしょうか。そのあたりを時間が許せばお教えいただけたらと思います。
2011/04/24(Sun) 11:22 | URL | よよ | 【編集
アスパルテーム
こんにちはお忙しい中すみません                                   http://www.thinker-japan.com/thinkwar.html                             の中にある健康について考えると言う項目に                              アスパルテームのことが書かれていますが本当でしょうか?
2011/04/24(Sun) 12:34 | URL | マルちゃん | 【編集
申し訳ありません
昨日の投稿は送信不能と出たため、届いていたとは知りませんでした。糖新生は過去のブログで勉強し納得しました。今パニックになってしまっています。昨日より野菜もわずか肉も少量しか摂ってないのになぜか、二時間後が153もあります。油断でこれほど進むとは、糖尿病恐るべしです。何を食べても上がりそうで正直怖くなっています。
2011/04/24(Sun) 18:47 | URL | よよ | 【編集
Re: Re:
lulu さん。

糖質制限食でHbA1cが上がることはないと思います。
過去1~2ヶ月の平均値ですので、これから下がり始めると思います。
糖質制限食で食後高血糖も機能性低血糖も改善しますので。
2011/04/24(Sun) 20:10 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: アスパルテーム
マルちゃん

アスパルテームは以前からいろいろ言われていますね。
一応、米国食料医薬品庁で許可している甘味料です。
いろんな意見があると思いますが、私は総量規制を守れば
OKと思います。
2011/04/24(Sun) 20:36 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: 申し訳ありません
よよさん。

もう一度、きっちりスーパー糖質制限食をされては如何でしょうか?
スーパー糖質制限食実践をしばらく継続すれば、疲弊していた膵臓のβ細胞が回復する可能性もあります。
2011/04/24(Sun) 20:39 | URL | ドクター江部 | 【編集
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